2019年度春季トレーニングリポート【その6】

2019年度春季トレーニングリポート【その6】

4月も半ばを過ぎいよいよ春季トレーニングシーズンも終わりに近づいてきました。トレーニングの締めくくりとなる紅白戦も毎週末のように各地で行われていますが、今回は前回に引き続き先週末紅白戦を行ったミシガン大、オハイオ州立大、フロリダ大、ペンシルバニア州立大の様子を簡単にご紹介します。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ミシガン大

就任5季目を迎えるジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督としてはいよいよタイトルを獲りたいところ。これまでリクルーティングなどで大きな話題を振りまき、カレッジフットボール界を騒がせてきた人物ですが、ここ1年はそれまでの鳴りを潜め、落ち着き感を漂わせています。それを反映しているのか、春季トレーニング中のミシガン大が話題に上がってくることはありませんでした(春季トレーニング自体が話題を振りまかないという点もありますが)。そんな中行われた彼らの紅白戦には2万人弱という割と少なめな観客が足を運びました。

紅白戦という環境でチームの真意を探るのは簡単ではありませんが、少なくとも先週行われた試合を見る限りではミシガン大のオフェンスには多少の変化が見られました。例えばこれまで見られなかったサインボードを使ってプレーを選手に伝達することとか、ノーハドルを多用していることとか、クロスパターンやロングボウルの頻度の高さなどがそれに当たりますが、それはおそらく今季からオフェンシブコーディネーターを務める元アラバマ大コーチのジョシュ・ガティス(Josh Gattis)氏の影響のせいでしょう。その新オフェンスは紅白戦とは言え非常にスムースに見受けられました。

多くのアナリストよによれば2019年度のミシガン大チームはここ最近でも最も層の厚いチームとなるだろうと言われています。それはハーボー監督らのアグレッシブなリクルーティングの結果だと言えます。そのお陰でチームには多くの有能下級生達が自分たちの出番を待っているという状況が出来上がっています。それは2019年度シーズンだけでなく将来的にも好材料だといえます。それをこの紅白戦では証明してくれました。


オハイオ州立大

2019年度を迎えるにあたり大きな変革期を迎える名門オハイオ州立大。名将アーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督が引退し来季からライアン・デイ(Ryan Day)氏が指揮をとることになります。昨シーズンマイヤー監督が3試合謹慎中にデイ氏が代理監督として3連勝でその危機を乗り越えたことが新監督に任命された大きな理由であります。さらに昨年まで先発QBとして活躍したドゥウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins)はNFL早期ドラフト入りを表明しチームを去ってしまいました。

そんな感じで大変革の気配を感じるオハイオ州立大ですが、QBに関して言えばこのサイトでも紹介してきたとおりジョージア大からの転校生、ジャスティン・フィールズ(Justin Fields)を迎え、しかも彼がNCAAから即時プレー可能の特例措置を認められたため、ハスキンズなきあとフィールズが新先発QB候補として名乗りを上げることになりました。

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そのフィールズは紅白戦にて13投中4投のパス成功率とぱっとしませんでした。131ヤードを記録はしましたが、それも98ヤードのロングTDパスをWRビンジメン・ヴィクター(Binjimen Victor)に決めたことで100ヤード超えが達成されたのみ。その逆に対戦相手(スカーレットチーム)のQBを務めたマシュー・ボールドウィン(Matthew Baldwin)は36投中20投を投げ246パスヤードに2TD、2INTとフィールズよりも活躍する場面が目立ちましたが、敵チームもこの試合を見ることになりますから、フィールズ起用の手の内を明かすまいと敢えて彼にプレーを多くさせなかったのかもしれません。

ちなみに試合のハーフタイム中にパンターであるドルー・クリスマン(Drue Chrisman)が彼女に内緒でプロポーズを敢行!どうやら「イエス」と言ってもらえたみたいで良かったです!

フロリダ大

フロリダ大では長らく確固たるQBが現れてきませんでした。昨年のフェリペ・フランクス(Feleipe Franks)もカイル・トラスク(Kyle Trask)とのバトルを勝ち抜いて先発の座をなんとか勝ち取ったのですが、どうやら春季トレーニングを見る限り来季の先発の座はこの春の時点ですでにフランクスのものとなったようです。彼らの紅白戦では327パスヤードに4TDという素晴らしい数字を残し、ダン・マレン(Dan Mullen)監督を大いに喜ばせました。

またフランクスやトラスク、さらには1年生(レッドシャツ)のエモリー・ジョーンズ(Emory Jones)らのパスの受け手となったWR陣の層の厚さも明らかになりました。トレヴォン・グライムス(Trevon Grimes)はフロリダ大の紅白戦新記録となる195レシーブヤードに2TD、またフレディー・スウェイン(Freddie Swain)も100ヤード超えを果たすなどし、5人の異なるレシーバーがレシーブTDを披露。ダイナミックなオフェンスを旨とするマレン監督のスキムを体現できる選手が多く揃っています。

そして2年生となったDBジョン・ヒギンズ(John Huggins)はトラスクのパスをインターセプトして80ヤードのリターンTDを決めるなど高い運動神経を披露。来るシーズンにおいて彼の活躍にも期待できそうです。

ところで紅白戦終了時メディアのインタビューに答えたマレン監督はこの日の観客動員数に言及。大学側から公式に発表された人数は39,476人だったのですが、マレン監督は「41,014人だったっけ?」とうそぶいたのです。実はこの数字、昨年度の対フロリダ州立大のスコア、41対14に瓜二つ。州内ライバルであるフロリダ州立大を意識してのブラックジョークだったようです。

ペンシルバニア州立大

絶対的QBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)がいよいよ卒業したペンシルバニア州立大では次期QBが誰になるのかに関心が寄せられています。順当に行けばトミー・スティーヴンス(Tommy Stevens)がマクソーリーの後釜になるはずですが、現在スティーヴンスは怪我からの回復途中。その間実力をつけていたのが2年生のショーン・クリフォード(Sean Clifford)で、この日の紅白戦でも1軍オフェンスを牽引。その成長は著しいです。それに危機感を抱いたのか、つい先日スティーヴンスはNCAAのトランスファーポータルに登録。これは転校することに興味がある選手が登録するシステムで、これにより他校のコーチたちがその選手に接触することが許されるのです。登録したからと言って転校しなければならないというわけではありませんが、その気がないなら登録することはしないわけですから、マクソーリーの影で散々出番を待ったスティーヴンスが出場機会を確実なものにするために転校することを決めたとしてもわからない話ではありません。しかしもしそうなればたとえクリフォードが成長著しいと言ってもコーチ陣にとっては頭痛の種となりそうです。

またジェームス・フランクリン(James Franklin)監督の優れたリクルーティング力によりチームの層は熱くなっては来ていますが、RBからはマイルズ・サンダース(Miles Sanders)がNFLドラフト入り、WRからはジュワン・ジョンソン(Juwan Johnson)がオレゴン大へ転校、OLからはライアン・ベイツ(Ryan Bates)とコナー・マクガヴェン(Connor McGovern)がドラフト入りするなどしたため、これらのユニットのオーバーホールは必至。QBポジションと相まってプレシーズンキャンプのオフェンスの建て直しに注目が集まります。

そんな中大きな期待を背負うのがLBマイカ・パーソンズ(Micah Parsons)です。元5つ星リクルートの2年生は昨年1度しか先発出場していないにも関わらずトータル82個ものタックルを計上。今年は全米にその名を轟かせる可能性大です。これまで多くの偉大なるLBを輩出し「ラインバッカーU」と呼ばれる同チームにおいて、あのラヴァー・アーリントン(LaVar Arrington)氏と同じ背番号「11」を背負うパーソンズが次世代の「ラインバッカーU」を支えます。その他にもDL、DBとディフェンス陣は軒並みタレントを維持しており、守備陣はまず安泰と言えそうです。

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