大学生アスリートが自身の肖像権などを用いてお金を稼げるシステムであるNIL（Name/Image/Likeness）。このブローカー的機関をコレクティブ（Collective）と呼びますが、Big Tenカンファレンスの強豪校であるオハイオ州立大の学生アスリートをサポートするコレクティブ、「THE Foundation」に同校のOBで現ヒューストンテキサンズのQBであるC.J.ストラウド（C.J. Stroud）が活動資金を寄付することが分かりました。
「THE Foundation」の発表によると、ストラウドはオハイオ州立大のOBとして初の高額ドナーだということです。
この「THE Foundation」が設立されたのが2022年のことですが、これを立ち上げたのが同じくオハイオ州立大のOB、カーデル・ジョーンズ（Cardale Jones）氏です。
ジョーンズ氏といえば、カレッジフットボールプレーオフ（CFP）が最初に導入された2014年度シーズンに同校をCFP初優勝に導いたQB。当時はブラクストン・ミラー（Braxton Miller）氏とJ.T. バレット（J.T. Barrett）氏に次ぐ3番手のQBでしたが、ミラー氏が肩の怪我で早々に戦線離脱し、さらに開幕時から先発を張っていたバレット氏も、伝統の一戦であるミシガン大との試合で足首を骨折。この試合に勝つもバレット氏を失ったオハイオ州立大はBig Ten優勝決定戦を元々3番手だったジョーンズ氏で挑むことになります。
当時全米6位だったオハイオ州立大はそのカンファレンス優勝決定戦で全米11位だったウィスコンシン大と対戦し、これを59対0で完封勝利。ジョーンズ氏はこの試合のMVPを獲得し、初年度となったCFPタイトルゲームに駒を進めることになります。
そのCFP準決勝戦では1位シードだったアラバマ大を42対35で下し決勝戦へ進出。そしてナショナルタイトルゲームではオレゴン大と対決。この年ハイズマントロフィーを獲得したマーカス・マリオタ（Marcus Mariota）率いるオレゴン大に42対20と快勝し、見事2002年以来の全米制覇を成し遂げ、ジョーンズ氏はその中核選手として活躍したのでした。
ただ翌年の2015年には開幕QBにこそ任命されるも、2014年後半ほどの活躍を見せることができず、のちにバレット氏に先発の座を奪われてしまい、このシーズン後にNFLドラフトにアーリーエントリーして第4巡目にてバッファロービルズに指名を受けますがNFLでは芽が出ず、さらにXFLやCFL、インドアリーグなどを転々とするも結局2023年夏を最後にプレーの現場からは退いています。
そんなジョーンズ氏は現在オハイオ州立大があるオハイオ州コロンバス市で不動産業に携わっていますが、その傍ら母校の後輩たちをサポートするためにこのコレクティブ「THE Foundation」を立ち上げたわけです。
その「THE Foundation」によると、ストラウドは「プラチナドナー」となったとしていますが、同コレクティブでプラチナドナーになるためには5万ドル（1ドル100円計算で約500万円）から10万ドル（約1000万円）を寄付することとなっていますので、今回ストラウドがどれだけ寄付をしたのかがなんとなく分かりますね。
このところ3年連続でBig Tenカンファレンスのタイトルを逃すばかりか、宿敵ミシガン大にも3連敗し悔しい思いをし続けているオハイオ州立大。その権威奪還のために今オフチームの補強に余念がありませんが、最近ではUCLAの監督をしていたチップ・ケリー（Chip Kelly）氏をオフェンシブコーディネーターに招聘するという大胆な組閣もしています。
そして当然選手の補強にも余念がありませんが、つい先月引退を表明したニック・セイバン（Nick Saban）氏がいたアラバマ大からトランスファーポータル経由でオールアメリカンCBケイレブ・ダウンズ（Calem Downs）や同じくアラバマ大出身の5つ星QBジュリアン・セイイン（Julian Sayin）、カンザス州立大からQBウィル・ハワード（Will Howard）、そしてミシシッピ大のエースRBクインション・ジュドキンス（Quinshon Judkins）らを獲得しています。おそらく彼らの獲得にはジョーンズ氏の「THE Foundation」などのコレクティブ経由の高額なNILディールが絡んでいると見られます。
母校の復活のためにかつてのヒーローであるジョーンズ氏がコレクティブを立ち上げ、さらに昨シーズンにNFLデビューシーズンに大活躍してルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したストラウドが後輩のために一肌脱ぐ・・・。オハイオ州立大の華麗なるカムバックが期待できる・・・かも。
