2019年度CFP全米王座決定戦リキャップ

2019年度CFP全米王座決定戦リキャップ

14勝無敗 vs 14勝無敗。ハイズマントロフィー受賞QB vs 次期ハイズマントロフィー有力候補QB。エド・オルジェロン(Ed Orgeron)監督 vs ダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督。タイガー vs タイガー。2019年度シーズンの頂点を決めるCFPナショナルチャンピオンシップゲームが1月13日夜にルイジアナ州ニューオーリンズ市にあるメルセデスベンツ・スーパードームで行われました。

結果は御存知の通り42対25でルイジアナ州立大が2007年以来の自身4度目の全米タイトルを獲得。15勝無敗の完全チャンプとして長いカレッジフットボール史にその名を刻むシーズンを完遂させたのです。

今回はその頂上決戦の激戦を振り返ってみたいと思います。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

第1クォーター

ニュートラルサイトと言いながらルイジアナ州立大からは1時間半しか離れていないニューオーリンズ市で開催された今年のタイトルマッチということもあり、ルイジアナ州立大にとってはホームのような雰囲気の漂ったメルセデスベンツ・スーパードーム。ドナルド・トランプ大統領夫妻も見守る中、そのルイジアナ州立大のキックオフで試合の幕が開けました。

自陣25ヤードからの攻撃となったクレムソン大はQBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)が立て続けにパスを成功させ、WRジャスティ・ロス(Justyn Ross)への35ヤードのパスで一気にルイジアナ州立大陣内へ侵入。

さらに攻め込み敵陣25ヤードまで進むもローレンスがサックを喰らい、さらにはディレイ・オブ・ゲームの反則を取られて15ヤードも減退してしまいせっかくのチャンスをモノに出来ずパントを強いられます。

ルイジアナ州立大の最初のドライブではファーストプレーでクレムソン大フロントセブンがQBジョー・バロウ(Joe Burrow)に激しく襲いかかり、あわやセーフティーかと思われましたがそのプレッシャーから抜け出したバロウがスクランブルから38ヤードのミラクルパスをTEタデウス・モス(Thaddeus Moss)に通しますが、「無資格レシーバーのダウンフィールドへの侵入(インエリジブル・プレーヤー・ダウンウィールド)」の反則を取られてこのプレーは無効に。しかし初っ端からバロウは度肝を抜くプレーを見せてくれました。

が、結局このドライブは3&アウトでルイジアナ州立大もパントを余儀なくされました。そんな感じで両チームの2回目のドライブでも膠着状態が続きますが、特にクレムソン大フロントセブンのアグレッシブなブリッツがバロウのリズムを崩しているのが印象的で、この時点で彼らのディフェンシブコーディネーターであるブレント・ヴェナブルズ(Brent Venables)氏の作戦が功を奏しているように見受けられました。

試合が動いたのはクレムソン大の3度目のドライブ。ローレンスがTEブレイデン・ギャロウェイ(Braden Galloway)への42ヤードのロングパスを通します。この際WRティー・ヒギンズ(Tee Higgins)がイリーガルブロックの反則を取られて15ヤードの減退を喰らいますが、これで一気にルイジアナ州立大陣内へ攻め込みます。

そして最後はローレンスのQBキープでエンドゾーンに飛び込みクレムソン大が先制。ルイジアナ州立大が有利とされた中で出だしの流れはクレムソン大に流れるという意外な展開になりました。

ヴェナブルズ氏操るクレムソン大ディフェンスは序盤からバロウらルイジアナ州立大オフェンスを撹乱することに成功。しかしバロウは試合前にヴェナブルズ氏との対決を「チェスゲームのよう」と表現したように彼は徐々にヴェナブルズ氏のディフェンスを読み始めます。スペースやワンオンワンのマッチアップを見つけるのに長けるバロウが動いたのが第1Q残り時間2分20秒。スターWRジャマー・チェイス(Ja’Marr Chase)への52ヤードのロングTDパスを決めて試合を同点に。スタジアムに駆けつけたファンたちに火を付けたのです。

結局第1Qは7対7の同点で終了。この時点でクレムソン大ディフェンスがバロウに1TDしか与えず、一方オフェンスがローレンスの活躍でうまくボールを運ぶなどしてややクレムソン大のペースとなっていました。


第2クォーター

第2クォーター 第2Qに入っても試合はクレムソン大が主導権を握り、開始早々FGを決めて3点のリードを奪うと10分43秒にはリバースからのヒギンズの36ヤードランTDが決まって更に点差を10点に広げます。

ルイジアナ州立大が10点差を付けられて追う展開となった試合は今季ここまでなく、ひょっとして本当にクレムソン大が彼らに土をつけることができるのではないかと誰しもが思い始めていたことでしょう。 しかしここまで実に6チームものトップ10チームを相手にしてきたルイジアナ州立大は焦りません。返しのドライブでバロウからチェイスへの56ヤードのロングパスで一気に敵陣内3ヤードへ侵入すると最後はバロウの気迫の3ヤードTDランで点を奪い返し再び3点差にリードを縮めます。

そしてこのへんから少しずつローレンスに変調が訪れます。それまでサクサクと通せていたパスが徐々に通らなくなり、1stダウンを奪えずにドライブを継続することができなくなっていきました。 そこを見逃すはずがないバロウ。ジャスティン・ジェファーソン(Justin Jefferson)への22ヤードパスとクライド・エドワーズ・へレイヤー(Clyde Edwards-Helaire)への23ヤードのパス、さらに再びジェファーソンへの3連続パスで一気にクレムソン大陣内14ヤードラインまで攻め込むと今度はこの日二つ目となるチェイスへの14ヤードのフェードパスがエンドゾーンで決まって遂にルイジアナ州立大が逆転します。

自陣23ヤードラインからたったの4つのパスで電光石火にTDを決めたバロウ。いよいよ彼のギアがかかった見事なドライブでした。 そしてその後のクレムソン大の攻撃ですが、ローレンスのパスがとにかくハマらない。徐々に押し込まれる感じが目に見えてわかり完全にモメンタムはルイジアナ州立大に傾いていました。 前半残り時間3分半で再び攻撃権を得たルイジアナ州立大はエドワーズ・へレイヤーの25ヤードラン、並びにクレムソン大のパスインターフェアレンスの反則にも助けられ残り時間がなくなる中ジリジリとクレムソン大陣内へ攻め寄ります。

またクレムソン大陣内35ヤードラインで迎えた3rd&10、残り時間はたった21秒。タイムアウトも使い果たしたというこの状況でオフェンシブコーディネーターのスティーヴ・エンスミンガー(Steve Ensminger)氏はなんとバロウにデザインQBドロー。これが功を奏し残り時間14秒で6ヤードラインまで攻め込みます。個人的にはこのプレーがすべてを決めたと言ってもいいかと思います。

これで前半終了間際にFGでハーフタイムを迎えるかと思われましたが、バロウはモスへの6TDを難なく決めて7点を追加。11プレーの95ヤードドライブを3分半でこなしてTDまでこぎつけたこのルイジアナ州立大の攻撃は圧巻でした。

ハーフタイム

前半開始時に攻守で流れを掴んだクレムソン大でしたが、その流れを自分のもとに手繰り寄せたのはルイジアナ州立大でした。序盤こそスロースターだったもののバロウは前半を終えて270パスヤードに3TD。走っても55ヤードに1TDと本領発揮。また全米ナンバーワンWRチェイスはすでに162ヤードに2TDを記録しこの二人のホットラインが熱すぎて手がつけられない模様。 クレムソン大DCヴェナブルズ氏のディフェンスを読み徐々に崩すことに成功したバロウに対してローレンスは相手チームのDCデイヴ・アランダ(Dave Aranda)氏のゲーム内でのアジャストメントの影響を受けてプレッシャーを感じパスの精度が落ちていきます。

このままだとズルズルとルイジアナ州立大ペースで試合を持って行かれてしまう感じが拭えないクレムソン大。コーチ陣がどのようにハーフタイム中に戦略を練り直してくるかが非常に注目されました。

第3クォーター

後半はルイジアナ州立大の攻撃からスタート。すでに11点差がついておりこれ以上離されたくないクレムソン大でしたが、第1Q開始時に見せたようなアグレッシブさが復活。見事に相手に1stダウンを与えること無く攻撃権を得るという最高の出だしとなります。しかもパント時にルイジアナ州立大がリターナーへのインターフェアレンスの反則を犯してクレムソン大が15ヤード前進となり50ヤード地点からの攻撃という絶好のチャンスを得たのです。

そしてこのドライブでは6プレー中実に5プレーがランプレーというOCトニー・エリオット(Tony Elliott)氏とジェフ・スコット(Jeff Scott)氏の奇策が功を奏しRBエティエンの3連続ランプレーでクレムソン大がTD奪取。2ptコンバージョンも成功させてスコアを28対25とし点差を3点まで縮めてきました。

そして続くルイジアナ州立大の攻撃はまたも3&アウト。ヴェナブルズ氏の采配が再び効果を出し始めました。が、そんな折クレムソン大ディフェンスに不運が。この試合では全米ナンバーワンLBに贈られるバトカス賞を受賞したアイゼア・シモンズ(Isaiah Simmons)はバロウのパス対策として3列目まで下がる役目を負わされており、2列目の中心はLBジェームス・スカルスキ(James Skalski)が担っていました。そのスカルスキがWRジェファーソンへのタックルの際ターゲッティングの反則を取られて即退場処分となってしまったのです。

結果的に言うとこのスカルスキの退場がクレムソン大ディフェンスには命取りとなるのですが、このプレーの直後にバロウからモスへの4ヤードTDパスが決まりルイジアナ州立大が追加点。

後半開始時にクレムソン大が流れを取り戻したかに思われましたが、そこでしっかりと反撃してその流れを我が物にしたルイジアナ州立大。これで心打ち砕かれたクレムソン大選手も少なからずいたでしょう。 さらにローレンスの不調は続き敵陣内へ侵入することもままならない状況。

そして第3Q終了間際に迎えたルイジアナ州立大の攻撃、クレムソン大陣内27ヤード地点からのFG。これが決まれば2スコアゲームとなってしまい事実上のトドメとなっていたことでしょうが、このFGが外れクレムソン大は首の皮一つのところでつながります。

しかしルイジアナ州立大のミスFGというまたとない幸運を得たクレムソン大でしたが、このチャンスを活かせず三度3&アウト。点を取り急ぐ気持ちもわかりますが、後半開始時に効果を発揮したランプレーがそれ以降姿を消してしまったのが疑問に感じました。

第4クォーター

いよいよフィナーレまであと15分。この時点でスコアは35対25と10点差であり、数字的には1クォーターあれば何がこるかわからないと考えるのが普通でしたが、流れ的にはルイジアナ州立大がこのまま持っていってしまいそうな雰囲気が漂っていました。クレムソン大としては何としても追加失点を阻止し、オフェンスの蘇生を期待したいところでしたが・・・。 第4Q開始時のルイジアナ州立大のドライブにおけるバロウのパス成功率は6投中6投すべてを成功させるというパーフェクトなパフォーマンスで最後はWRテレンス・マーシャル(Terrace Marshall)への24ヤードパスTDが決まりダメ押しの42点目をスコアに叩き出したのです。

このTDでナショナルチャンピオンを確信したバロウは「優勝リングは頂いた!」と言わんばかりのこのパフォーマンス。

結局この後クレムソン大オフェンスは為す術無く相手陣内に足を踏み入れることすら出来ず、最後はこの日のローレンスの不調を少々するかのようなファンブルであえなく撃沈。最後はバロウが4thダウンをコンバートするなどしてしっかりとボールをキープしそのまま試合終了を迎えることになります。

結果的にやはり光ったのはバロウの無敵のパフォーマンスと彼を取り巻くレシーバー陣の活躍。そしてローレンスに仕事をさせなかったディフェンス陣の働きと彼らを指揮したアランダ氏の手腕が光った試合でした。

そのローレンスはポテンシャルは十分ながらまだ2年生という若さや経験不足が露呈された感じ。ヴェナブルズ氏のディフェンスも前半と後半の開始時には十分機能しましたが、試合が進むにつれてバロウならびにエンスミンガー氏とパスコーディネーターのジョー・ブレディ(Joe Brady)氏らに看破された形となりました。

バロウはこの日トータルで5TDに絡む活躍。これで1シーズン最多パスTD数(60)、最多トータルTD数(65)、プレーオフ史上最多トータルTD数(13)、タイトルゲーム史上最多パスヤード(463ヤード)という記録ずくめのパフォーマンスでカレッジフットボールの歴史上でも類を見ない圧倒的なシーズンを終えたのでした。

これでルイジアナ州立大は12年ぶり4度目の全米制覇を達成。1シーズンに7チームものトップ10チームをなぎ倒し、他を寄せ付けない試合内容で2019年度シーズンを駆け抜けていきました。SECチャンピオン、ハイズマントロフィー、最優秀監督賞、そしてナショナルタイトル。獲れるものすべてを掻っさらい彼らは全米の頂きに君臨したのでした。

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