新たなライバリー勃発?!

新たなライバリー勃発?!

カレッジフットボール界は現在オフシーズンであり、大学では場所によっては卒業式シーズン真っ只中。部としては6月から始まるサマートレーニングまでの束の間の休息中ということにもなります。そんな中でこの時期だとNCAA(全米大学体育協会)がルールの改正を行ったとか、監督の契約が更新されたとか、その程度のニュースが出回るのが普通なのですが・・・。

アメリカではここ24時間の間にとんでもない「戦争」が勃発!オフシーズンの静けさをぶっ飛ばしています。

それがアラバマ大ニック・セイバン(Nick Saban)監督とテキサスA&M大ジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher)監督とのバトルなのです。

Saban Wants Parity…

まずはこのバトルの話をする前に、セイバン監督が先週5月13日にSECネットワーク/ESPNのコメンテーターであるポール・ファインバウム(Paul Finebaum)氏のラジオ番組での話を紹介しましょう。

SEC(サウスイースタンカンファレンス)に詳しいファインバウム氏は見た目によらず難しい質問もガンガン投げかけることで有名な歯に衣着せぬ人物。かつてはそれでセイバン監督の怒りを買ったこともありましたが、逆にその根性が評価されているスポーツジャーナリスト。そんな彼がこの日セイバン監督にカレッジフットボールの現状について質問を投げかけるとセイバン監督はこのことについてこう答えました。

もし現状でカレッジフットボール界に取り戻したいものを一つ挙げるとしたらそれはParity(皆が同じ条件下であること)だ。

例えば皆が同じ数のスカラシップ(スポーツ奨学金)を手にすることとか、大学で同等の学業のサポートを受けられることとか、同じレベルの医療サービスを受けられることとか、そういったことは現在バランスを保てていないと思う。これでは大学アメフトはもとより大学スポーツにおいてParityに悪い影響を及ぼしかねない。

さも真っ当なコメントだとは思うのですが、これが過去10年間に5度もナショナルタイトルをとり、リクルーティングランキングでも常にトップを維持しているアラバマ大の監督の口から出たことで「お前がいうなよ」という声が挙がりました。

これに反応した人物の中には、かつてセイバン監督の下で攻撃コーディネーター(OC)を務め、現在はアラバマ大と同じSEC所属のミシシッピ大HCであるレーン・キフィン(Lane Kiffin)監督です。

キフィン監督は飄々とした性格でSNSも積極的に利用するアウトスポークンな人物なのですが、かつてのボスのこのコメントに彼はこうツイッターで呟いていました。

ポール(ファインバウム氏)、GOAT(=セイバン監督)にちゃんと「Parity」の意味を教えたのか?

「Parity」= 平等な条件下にあること、特にステータスや賃金において

🤔

要するにキフィン監督も「セイバン監督、あんたがそれをいうか?」と言いたい訳です。

勝てないチームの監督が言うならばまだしも、現在ダイナスティを築いていると言われているアラバマ大のセイバン監督から言われても全く説得力がありませんよね。


バトルの火種

そして今週5月18日。バトルの火蓋が切って落とされるのです。

この日セイバン監督はアラバマ州のバーミンガム市で行われた地元のビジネスのためのイベントに呼ばれてトークショーを行なっていました。この中での発言がこのバトルの火種となったのです。

話の内容は現在非常にホットなトピックとされる「NIL(Name/Image/Likeness、自身の肖像権でお金儲けができるシステム)」についてでした。

この動画の最初の5分間ではセイバン監督はNILが何なのか、NILがもたらす現状、そしてそれに対するアラバマ大のスタンスなどを話していますが、ここまでは非常に真っ当な話をしており、その内容は何らおかしなものではありませんでした。

しかしNILを利用して「選手を金で釣る」と言う話題になると話は急展開を迎えます。

・・・去年我々のリクルーティングランキングは2位で1位はテキサスA&M大でした。その彼らはリクルーティングクラスの全員を金で釣ったのです。NILのディールを用いて。

我々は誰1人として金で釣ってはいません。しかしながら我々のこのスタイルがいつまで持つかはわかりません。と言うのも他のたくさんのチームが選手を金で釣ってリクルートしているからです。

なんとセイバン監督はテキサスA&M大を名指しで「彼らは選手を買っている」と公共の場で言ったのです。

NILの現状の話は近日中に別の記事で上げようと思いますが、当サイトのポッドキャストですでに話しているのでお時間がある方はチェックしてみてほしいのですが、NILで選手を買うと言うのは、金銭的に大学を補助しているブースター(後援者)と呼ばれる人たちがNILのディールという名目で大金を支払う代わりに選手を大学へ進学させる、と言う仕組みのことを言います。

NILは元々CM出演料とか、自身のブランドの立ち上げとか、YouTubeやTikTokなどで得ることのできる収入を可能にするためのものでしたが、それを利用して応援する大学チームにいいリクルートが流れていくようにブースターたちが暗躍していると言う現在の崩壊したシステムでもあります。

当然これは禁止されていることなのですが、NCAAのルールだけでは監視することができずまさに現在NILの状況は無法地帯。これが色々なところで行われていると言われ、その中の1つがテキサスA&M大だとセイバン監督は批判してしまった訳です。

現在GOAT(Greatest Of All Time、史上最高)コーチとも言われるセイバン監督の言葉だからこそ重みがありますが、もっと衝撃的なのはテキサスA&M大の監督であるジンボ・フィッシャー監督はかつてセイバン監督の元(ルイジアナ州立大での4年間)で攻撃コーディネーターを務め、ここまで非常に親しい間柄にあると言われていたことです。

ある意味身内に対して刃を向けた形になってしまったセイバン監督のコメントでしたが、全米のメディアもこれに敏感に反応し、そういう噂があったとはいえ実際にそれがセイバン監督の口から出たことでテキサスA&M大およびフィッシャー監督にはさらなる疑惑の目が向けられることになったのです。

フィッシャー監督の反撃

そんなことを言われてしまったフィッシャー監督でしたが、全米中がどのような反応を見せるのかと興味津々だったところ、その翌日となる5月19日にはフィッシャー監督が緊急会見を開くことを決定。当然アメリカのスポーツメディアはフィッシャー監督がどのような反論をするのかと大きな注目を集めましたが、その内容は反論どころの騒ぎではありませんでした。

とにかくフィッシャー監督はめちゃめちゃ怒っています。そしてかつてのボスであり良い関係を気付けていたと思われるセイバン監督に対しても公然にその怒りをぶちまけたのです。

これは本当に卑劣なことです。

(テキサス州では高校生がNILを通じて収益を得ることは禁じられていることから)17歳そこらの高校生並びに彼らの家族に州法を犯していると言っている。我々は法律を破ってはいないし、選手を金で釣ってもいない。なんのルールも破られてはいない。

・・・(セイバン監督の)望むようにことが進まないと、あのナルシストは他人の邪魔をしようとする。なんとも馬鹿げた話だ。

「Parity」がどうのと言う話をしているようだが、真実を知りたいなら彼の下でコーチをしていたことのある人たちに話を聞いてみればいい。「Parity」なんてないことがわかるはずだ。

・・・中には自分のことを「神」か何かと思っている人間もいるようだが、その「神」が何をしてきたかを調べてみればいい。きっとあなた方が知らなければよかったと思う事実がたくさん出てくるはずだ。彼をフットボールの皇帝に仕立て上げたのは我々のような彼に仕えたコーチたちであり、彼の過去を知りたければそういった人物たちに話を聞くべきだ。

また質疑応答でセイバン監督と話をしたかと聞かれるとフィッシャー監督は「電話がかかってきたけれど取らなかった。我々の関係はもうおしまいだ。」と話し「彼は本性をあらわしたんだ。史上最高のコーチらしいけどね(嘲笑的に)」と突き放していました。

ルイジアナ州立大(LSU)でタッグを組み、2003年のナショナルタイトル獲りを果たした2人。2004年にはセイバン監督はマイアミドルフィンズの監督に就任するためにLSUを去りましたが、フィッシャー監督はセイバン監督を追随せずにLSUに残留。のちにフロリダ州立大へと移籍します。この際フロリダ州立大で指揮をとっていたのはあのレジェンドであるボビー・バウデン(Bobby Bowden)氏でした。

この日の別の質問ではフィッシャー監督は「ボビー・バウデンのような監督からは色々なやり方を教わったが、その他の(セイバン監督のことを暗に示して)監督からはさまざまなしてはいけない事を学んだ。だから誰も彼の元に戻ってコーチングを続けたいと思わないのだ。」とも話し、かつてのボスへのリスペクトは皆無となっていました。

何よりも公共の面前で怒りを露わにし、GOATと言われるかつての師への言葉とは到底思えない言い方で真っ向から選手を買ったという疑惑を否定してセイバン監督を糾弾するフィッシャー監督の様子はショッキングでした。

ただどうやらこの2人は実はそこまでツーカーの中であったわけではなかったという話もこれを機に流れてきています。

この会見直後から全米のスポーツネットワークはこのバトルの話で持ちきり。カレッジフットボール界でも類を見ない、大御所監督同士の公共の面前での指の差し合いは今後の展開を考えただけでもオフシーズンにおいてダイナマイト級の話のネタとなったのです。

前述のキフィン監督もこれに反応。

何にでも反応するキフィン監督自身が開いた口が塞がらないと言うくらい、この2人のバトルには皆が驚かされたのです。

どっちが悪い?

当然名前を挙げて批判してしまったセイバン監督が火種になっていることは否めません。あそこで口を濁しておけばこんなふうにはならなかった訳ですから。フィッシャー監督をあそこまで怒らせたことは少なからずセイバン監督も「言いすぎた」と思っていることでしょう。

しかしフィッシャー監督に関しても何も公共の場でカウンターパンチを食らわすことはなかったんじゃないかとも思ってしまいます。メディアやネタに飢えたファンたちにとってはまたとない場外乱闘事件なのでしょうが、一方でいい大人が(しかも56歳のフィッシャー監督が70歳のセイバン監督に食ってかかっている)テレビを通じてお互いのことを暴露し合うと言うのは正直見ていてみっともないと思ってしまいます。

確かにその背景にはNILの存在があり、ルールがほぼない現状で陰で何をしていてもバレなければそれでいいと言う風潮が普通になってきています。それによってリクルーティングの勢力図が変わってきたのは確か。

アラバマ大およびセイバン監督としては、ここまで10年間で7度もリクルーティングランキングで首位を獲得してきていますから、そこにいきなりテキサスA&M大が食い込んで来ればどうしてこうなったと思うことでしょう。そこでこんな数字もあります。

 

フィッシャー監督が就任して以来のテキサスA&M大のリクルーティング


2018年:五つ星リクルート0️⃣
2019年:五つ星リクルート2️⃣
2020年:五つ星リクルート2️⃣
2021年:五つ星リクルート1️⃣


*ここでNILが導入される


2022年:五つ星リクルート7️⃣

 

5つ星リクルートは5段階評価で最上級であり、各年30人程度しかいない超逸材。それを2022年にテキサスA&M大は7人も囲った訳です。特にこの年はミシシッピ大、ミシシッピ州立大、アーカンソー大、LSUに負けて4敗を喫した訳ですが、このシーズンを見て7人もの5つ星選手が進学を決めようと思った決め手はなんだったのか・・・と考えてしまいます。

NIL導入と時を同じくしてテキサスA&M大が飛躍的にリクルーティングで成功したことをみれば自ずとNILを利用するような何らかの動きがあったとしても不思議ではないと思ってしまいますよね。

もしそれが本当ならば、石油マネーが潤沢でミリオネアがたくさんいると言われるテキサス州において巨額のNILディールを高校生リクルートたちにちらつかせることはわけないことなのかもしれませんが、全米でも比較的お金持ちではないとされるアラバマ州においてそう言った大金持ちの数はテキサス州のそれとは比べ物になりません。

そうなれば長い目で見て金銭力のないアラバマ州にあるアラバマ大にとっては、お金で有能な高校生を釣ることができるテキサスA&M大に王座を奪われるとセイバン監督が感じたとしてもおかしくはありません。

現に今年のリクルーティングクラスはテキサスA&M大が史上初となる1位を獲得しましたし、また昨年度には彼らはアラバマ大を倒す金星をあげているのですから。

参考記事テキサスA&M大41、アラバマ大38

そうなれば負けず嫌いのセイバン監督がこの現状を維持できない(Not Sustainable)アラバマ大にとって現在のNILを濫用したリクルーティングではお金持ちのブースターを多く抱える大学にリクルーティング戦争でやられてしまうと恐れているのでしょう。

リクルーティング力はチーム力に直結していると言っても過言ではなく、リクルーティング戦争で遅れを取れば将来的にチーム力も落ちてしまいます。そんな危惧があったからセイバン監督はこんなコメントを発してしまったのでしょうね。

気持ちは分かりますが、一方で「テキサスA&M大が選手を買った」と言うのは裏が取れていのかと言う話にもなります。証拠もないのに憶測や噂話だけでテキサスA&M大を糾弾したとすれば、彼らにしてみればいい迷惑ですし、セイバン監督の信用性も落ちてしまいます。

またフィッシャー監督も「セイバン監督の過去を掘り返せばものすごい悪事を働いたことがわかる」などと言っていましたが、だったらその証拠を出せと言うことになりますし、仮にNCAAが調査に動き出したらそれに加担していた自分にも火の粉が及ぶと言うことにならないでしょうか?

「火のないところに煙は立たない」とは言いますが、公共の場でこんな発言を言い合うなんてことは今まで見たこともありません。コーチ界ではこういった事は暗黙の了解で名指しで批判し合うことはしないことになっているようですが、今回は2人ともこの秘密の掟を破ったことになります。

今後は・・・

セイバン監督の発言から24時間も経たずに2人の関係は破綻し新たなライバリー関係が生まれると言う急展開を見せました。今月末にはSECのコーチ会議が行われることになっており、ここでいきなりこの2人は顔を合わせることになりますから、この会議にはかなりのメディアが注目するでしょうし、また10月8日には両校の直接対決があり、この試合が話の中心になるのは目に見えています。

ただ、公共の面前でのこのバトルにSECのコミッショナーであるグレッグ・サンキー氏は苦言を呈して騒動を収めるためのコメントをすでに残しています。

「SECが定めるスポーツマンシップにおいて、今回の騒動はこれに反している。公共の面前でお互いを批判し合うのは何の解決策にもならないし、現在カレッジフットボール界に存在する問題を打開する上で妨げにしかならない」と文書で発表しました。

またフィッシャー監督の会見でもあったように、セイバン監督はフィッシャー監督に電話を掛けていたようですが、フィッシャー監督はこのコールを拒否。それを受けてかセイバン監督は同じ日に出演したラジオ番組で、名指しで批判したことは間違っていたと謝罪の意を表しています。

何にしても今後この2人の関係がどうなるのか興味は尽きません。

ところで・・・

ところで、セイバン監督がテキサスA&M大がリクルートを金で釣ったといった件の後のコメントを聞いていくと、彼はさらにジャクソン州立大も選手に100万ドル(1ドル100円計算で約1億円)払ったと豪語していました。

恐らくこの情報も憶測か噂話を元にしているのでしょうが(もしくは真実を知っているのかも?)、このことに関して黙っていなかったのがジャクソン州立大HCのディオン・サンダース(Deion Sanders)監督でした。

明日にはセイバン監督が話していることが嘘であることを明らかにする。今朝息子にこのニュースのことを突きつけられて起こされた。トラヴィス・ハンターに100万ドル払ってジャクソン州立大に勧誘したと!我々と共にプレーしようとする人間に我々はお金を支払うなんてことはしない!

セイバン監督はトラヴィス・ハンター(Travis Hunter)の名こそ出していませんが、彼のことを指していることは明らか。ハンターは去年の総合ナンバーワンリクルートであり、その彼がFBS(フットボールボウルサブディビジョン)チームではなく、その下部サブディビジョンであるFCS(フットボールチャンピオンシップ)のジャクソン州立大へ進学したのは全米の度肝を抜きました。

セイバン監督もハンターをリクルートしていたようなので、その過程で何が起きたのか実は知っているのかもしれませんが、当時から一貫して自分達は選手をお金で釣っていないと主張しているサンダース監督にとってはセイバン監督が公共の面前で自分達を批判したことは許せるはずがありません。

当のハンターはこんなツイートを残しています。

俺が100万ドル貰ったって?でもうちの母ちゃんは3つのベットルームしかない家で5人の子供を育ててるけど

つまり100万ドルあれば家族はもっといい生活ができている、つまり俺は貰っていないと主張しているわけですね。まあこれだけでは100万ドル貰っていない証拠にはなりませんが、これをリツイートしたのがサンダース監督。

俺だって100万ドルも貰ってないよ!草

(草、っていうの初めて使ってみました。使い方あってる?🤣)

もうここまで来ると誰が本当のことを喋ってるのかわからなくなります・・・。

ちなみにサンダース監督はセイバン監督と共にアメリカの保険会社「アフラック」のCMに出演しています。

この騒動の後にこの2人はまた共演を果たすのでしょうか・・・。

ただサンダース監督は「(こんなことがあっても)セイバン監督のことは好きだ。でもこのことに関してはプライベートの場ではなく、公衆の場で話し合いを持つべきだ。だってこの話が公衆の場から始まったのだから、皆にその話を聞く権利がある。」と話しています。

フィッシャー監督との関係もそうですが、セイバン監督とサンダース監督の関係も気になるところです。

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