続・Coaching Carousel【2019年度版】

続・Coaching Carousel【2019年度版】

先日シーズン後に各地で起きていた監督やアシスタントコーチの解雇劇をお伝えしましたがその続報をお届けします。今回は前回お伝えした際に空きが出たチームがどのコーチを新監督に据えることになったのかが主な内容となります。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ミシシッピ大

マット・ルーク(Matt Luke)監督を解雇していたミシシッピ大が白羽の矢を立てたのがフロリダアトランティック大レーン・キフィン(Lane Kiffin)監督でした。

5年契約でトータル2100万ドル(1ドル100円計算で約21億円)というコントラクトを結んだキフィン新監督。かつてテネシー大を率いたこともあるということでサウスイースタンカンファレンス(SEC)に凱旋してきたということになります。

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レーン・キフィン監督

これまで最年少NFL監督としてオークランドレイダースの監督を務めたこともあるキフィン監督はテネシー大、サザンカリフォルニア大、フロリダアトランティック大とまだ44歳ながら数多くのFBS監督経験がある人物。

しかしやはり最近ではオフェンシブコーディネーターを務めたアラバマ大での3シーズン(2014-2016)が際立っていると思います。

2009年から10年間で5度のナショナルタイトルを獲得してきたアラバマ大において2015年度のナショナルタイトルチームのオフェンスを指揮したキフィン氏。カレッジフットボール界の異端児としてしられていた彼がUSCから解雇されたのもびっくりしましたが、彼の才能を見込んでOCに抜擢したニック・セイバン(Nick Saban)監督の決断にもびっくりさせられたものです。

アラバマ大での手腕を見込まれて2016年の年末にフロリダアトランティック大の新監督に就任することが決まっていたキフィン氏でしたが、同じ頃カレッジフットボールプレーオフ(CFP)に進出が決まっていたアラバマ大にはシーズンが終了するまでOCを兼任することを決定していました。そんな状況で臨んだCFP準決勝戦でのワシントン大戦でアラバマ大は勝ちはしたもののオフェンスは精彩を欠き、それはキフィン氏がフロリダアトランティック大の監督職とOCを兼任していたためだという憶測が流れていました。

参考記事2016年度ピーチボウルレビュー

そしてクレムソン大とのナショナルタイトルゲームまであと1週間というところでセイバン監督はなんとキフィン氏をOCから外して袂を分かつ大英断に打って出ます。結局アラバマ大はデショーン・ワトソン(Deshaun Watson、現ヒューストンテキサンズ)率いるクレムソン大に敗れてしまうわけですが、こんな感じで物別れに終わったキフィン監督がセイバン監督に特別な感情を抱いているとしても何ら不思議ではありません。

フロリダアトランティック大では初年度の2017年にいきなり11勝3敗でカンファレンスUSAを制すると翌年の2018年こそ5勝7敗と惨敗しましたが、今年は再び二桁勝利(10勝3敗)を収めてカンファレンスタイトルを手にするとボカレートンボウルに出場を決めサザンメソディスト大との対戦が決まっていました。

そんな折ミシシッピ大の新監督に選ばれたわけですが、ミシシッピ大はキフィン監督を大歓迎。またミシシッピ大はアラバマ大と同じSEC西地区に所属するということでセイバン監督との対決は不可避。おそらくキフィン監督はセイバン監督にリベンジをと燃えることでしょうから、来年以降のこの両校の対決はメディアの注目を集めそうです。

ちなみに元ミシシッピ大監督のルーク氏ですが、新たにジョージア大のOLコーチに就任することが決まりました。


フロリダ州立大

今シーズン途中に2年目のウィリー・タガート(Willie Taggart)監督を解雇していたフロリダ州立大。レギュラーシーズンを終えて何とかボウルゲーム出場資格である6勝を確保してサンボウルに出場(アリゾナ州立大と対戦)することになっています。

そして新監督ですが、名門復活を新たに託されることになったのはメンフィス大マイク・ノーヴェル(Mike Norvell)監督です。

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マイク・ノーヴェル監督

過去4年間メンフィス大の監督を務めたノーヴェル監督。2005年までFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)のセントラルアーカンソー大という小さな大学でプレーしていたことを考えると現役引退後たった15年足らずで名門フロリダ州立大の監督に就任という若手急先鋒の監督なわけです。

メンフィス大では38勝15敗でどのシーズンも最低8勝を挙げるという安定感。ただメンフィス大は「グループオブ5」チームであり、今回就任したフロリダ大はその上の「パワー5」チーム。同じカンファレンスにはクレムソン大という超強豪校もいるわけですが、フロリダ州立大の監督を任されるからにはこのクレムソン大を超えていくことを求められますから、いよいよトップレベルでノーヴェル監督がどれだけの手腕を振るうことが出来るのかが試されることになりそうです。

フロリダアトランティック大

最初に紹介したキフィン監督に去られて空きが出ていたフロリダアトランティック大がキフィン監督の後釜に指名したのが、たった今紹介した元フロリダ州立大監督のタガート監督です。

フロリダ州立大では2年間で9勝12敗と振るいませんでしたが、一方でタガート監督が受け継いだチームは規律が崩壊状態でありタガート監督が彼色にチームを染め上げるにはあと数年かかると言われていたこともあり、たった2年での解雇には同情する声も上がっていました。

ただかつて彼が率いたウエスタンケンタッキー大サウスフロリダ大を再建した手腕を持つタガート監督ですから、同じ「グループオブ5」のフロリダアトランティック大なら彼の力が十分発揮されそうです。またタガート監督はフロリダ州におけるリクルーティングに於いて豊富な土壌を有していることもあり、キフィン監督が築いた土台を引き継いですぐに良い結果が出そうです。

まだ43歳と若いタガート監督ですから、ここでまた腕を磨き直せば再び「パワー5」チームからお声がかかっても不思議ではありません。

サウスフロリダ大

チャーリー・ストロング(Charlie Strong)監督を解雇したサウスフロリダ大が次期監督に選んだのはクレムソン大の共同オフェンシブコーディネーターであるジェフ・スコット(Jeff Scott)氏です。

2008年から母校であるクレムソン大でコーチングに勤しんできたスコット氏は2015年から現役時代にチームメートだったトニー・エリオット(Tony Elliott)氏と共同でOCに就任。2016年度と2018年度のナショナルタイトル獲りに大きく貢献しました。

そのオフェンス力とリクルーティング力を買われて今回サウスフロリダ大の新監督に就任することになったスコット氏ですが、この仕事が彼にとって初の監督職となります。今年トータルオフェンスで全米112位と沈んだサウスフロリダ大を再建するのは簡単なことではありませんが、ここでの出来次第ではスコット氏がさらに上のチームに将来的に引き抜かれることも大いに考えられます。

ボストンカレッジ

2013年から7年間ボストンカレッジを率い通算成績44勝44敗という記録を残して解雇されたスティーヴ・アダージオ(Steve Addazio)監督。その彼の後継者に選ばれたのがオハイオ州立大の共同オフェンシブコーディネーターであるジェフ・ハフレイ(Jeff Hafley)氏です。

コーチングの道に足を踏み入れてからカレッジ及びプロレベルで主にDBコーチを務めてきたハフレイ氏は今年からオハイオ州立大のDBコーチ兼共同DCを務めてきました。その彼が操る今季のオハイオ州立大ディフェンスは全米3位となる1試合平均失点数12.5点を記録。

これまで大学レベルで監督を務めた経験がないハフレイ氏ですが、オハイオ州立大という名門校でディフェンスを任されたという事実、そしてそのノウハウをボストンカレッジにも注入できるのではないかという期待から今回彼に白羽の矢が立ったわけです。

クレムソン大以外はどんぐりの背比べな状況に陥っているアトランティックコーストカンファレンス(ACC)ですから、ハフレイ監督にもボストンカレッジをこのカンファレンスで戦える集団に返ることは可能なはずです。

最近では全米の表舞台に出てこなくなったボストンカレッジですが、2007年にマット・ライアン(Matt Ryan、現アトランタファルコンズQB)を擁したときにはランキングにおいて最高で2位まで上り詰めたこともあります。果たしてハフレイ新体制でボストンカレッジがどこまで名を挙げることが出来るでしょうか。

コロラド州立大

そのボストンカレッジから解雇されたばかりのスティーヴ・アダージオ氏ですが、再就職先は驚くほど早く決まりました。それがマウンテンウエストカンファレンス所属のコロラド州立大です。

コロラド州立大のファンの間ではチームのOBで現在オハイオ州立大でRBコーチを務めるトニー・アルフォード(Tony Alford)氏を熱望する声も上がっていましたが、大学側は監督経験者を優先的にインタビュー。その中には元テネシー大監督で現在アラバマ大のオフェンシブアナリストを務めているブッチ・デーヴィス(Butch Davis)氏や元インディアナ大監督で現在オハイオ州立大でOCを務めるケヴィン・ウィルソン(Kevin Wilson)氏の名前も上がっていましたが、結果的にアダージオ監督がこの椅子を射止めました。

ここまでテンプル大とボストンカレッジで監督経験のあるアダージオ監督の生涯成績は57勝55敗。決して有能監督という訳ではありませんが、コロラド州立大のバジェット(資金)を考えるとアダージオ氏ぐらいで落ち着くのかな・・・と。

ミズーリ大

今季4シーズン目を終えたバリー・オドム(Barry Odom)監督と袂を分かったミズーリ大が目をつけたのがアパラチアン州立大イーライ・ドリンクウィッツ(Eli Drinkwitz)監督です。

まだ36歳と非常に若いドリンクウィッツ監督ですが、昨年自身初の監督職としてアパラチアン州立大監督に就任。そして11勝1敗と素晴らしい数字を残し「グループオブ5」チームながら全米20位に座っています。

結果的にアパラチアン州立大では1シーズンだけしか指揮を獲っていませんが、この11勝1敗という手腕が認められて強豪ひしめくSEC所属のミズーリ大で腕試しです。が、やはりこの若さで監督経験が1年しか無いドリンクウィッツ監督を指名したミズーリ大側の危ういギャンブル的側面は否めません。おそらく解雇させられたオドム元監督も「俺のクビを切って雇ったのがこいつか!」と思っていることでしょう(笑)。

ちなみにドリンクウィッツ監督のミズーリ大就任会見でチームの目標を「(アパラチアン州立大が所属していた)サンベルト・・・じゃなくてSEC東地区で勝つことです」とカンファレンス名を間違ってしまいました・・・(サンベルトはアパラチアン州立大が所属するカンファレンス)。これが後で笑い話となるといいのですが。

アーカンソー大

アーカンソー大の新監督は同じSEC所属のジョージア大で監督補佐兼OLコーチを務めていたサム・ピットマン(Sam Pittman)氏に決定しました。

SEC内でもトップクラスのOLコーチおよびリクルーターとして知られるピットマン氏。現在58歳となる同氏にとってこのアーカンソー大での仕事が初の監督業となります。

しかしピットマン氏にとってはある意味古巣凱旋となる今回の異動。というのも彼は2013年から3年間アーカンソー大でOLコーチ兼リクルーティングコーディネーターを務めていたからです。

過去3年間8勝28敗で3年連続ボウルゲーム出場をのがしているアーカンソー大。2010年2011年には2年連続で二桁勝利を挙げたこともありましたが、この時の監督だったボビー・ペトリノ(Bobby Petrino)監督が起こしたスキャンダル(チームスタッフと不倫関係にあったこと)を期にチームは強豪ひしめくSEC西地区内で埋もれる存在となってしまいました。

現在1位のルイジアナ州立大、常勝アラバマ大アーバン大ミシシッピ州立大テキサスA&M大に加え、前述の通りキフィン監督を新監督に迎えたミシシッピ大と熾烈を極めるSEC西地区においてアーカンソー大が台頭するのは並大抵のことではありません。果たしてピットマン新監督がこれまで蓄積してきたコーチングの手腕でアーカンソー大がどこまで伸びるのか期待したいです。

UNLV

ネバダ大ラスベガス校(UNLV)の新監督にはルイジアナ州立大のスーパーディフェンシブコーディネーター、デイヴ・アランダ(Dave Aranda)氏就任が濃厚だという噂が流れましたが、結果的にこの椅子はオレゴン大オフェンシブコーディネーターであるマーカス・アロヨ(Marcus Arroyo)氏のものとなりました。

過去3年間オレゴン大に所属したアロヨ氏ですが昨年と今年は単独でOCを担当。次期NFLドラフトでも注目を集めるQBジャスティン・ハバート(Justin Herbert)を育てる手腕を見せました。

ただUNLVは過去20年間で勝ち越したことがあるのがたったの3回ということで長きに渡り低迷しているチーム。コーチングに携わる人物ならいずれ何処かで監督職にありつきたいと思うところでしょうが、果たしてアロヨ氏にとってUNLV監督就任が吉と出るか凶と出るか・・・。

オールドドミニオン大

オールドドミニオン大の新監督にはペンシルバニア州立大のOCリッキー・レイン(Ricky Rahne)氏が就任しました。

2014年からペンシルバニア州立大はジェームス・フランクリン(James Franklin)監督に率いられていますが、フランクリン氏が前チームであるヴァンダービルト大から移ってきたときに一緒に引き連れてきたのがレイン氏。QBコーチ、TEコーチを経て2年前にOCを任されてきたレイン氏ですが、ペンシルバニア州立大の台頭を裏で支えたコーチの一人として腕を磨き、今回「グループオブ5」所属ではありますが長としていちチームを統率するチャンスを手に入れました。

ニューメキシコ大

ニューメキシコ大はシーズン後にボブ・デイヴィ(Bob Davie)が辞意を表明したことを受け次期監督を探していましたが、卒業生であり今季までアリゾナ州立大でDCを務めていたダニー・ゴンザレス(Danny Gonzales)を起用することを決めました。

卒業後すぐに母校でコーチ道に身を投したゴンザレス氏は10年間母校で指導したあと一時コーチングから離れましたが、2011年にサンディエゴ州立大でコーチング復帰を果たすと2017年には同チームでDC、そして最近2年間はアリゾナ州立大でDCを務めていました。

自身初の監督業が母校でのものということになりゴンザレス監督としてはまたとないチャンスだったことでしょう。ニューメキシコ大もUNLVと同様勝つことが非常に難しいチームではありますが、母校の監督に就任するということはそう簡単に巡ってくるものではありません。結果がどうなるかはわかりませんが、大学としてはこれ以上無い人材だったといえるのではないでしょうか。

テキサス大サンアントニオ校

テキサス大サンアントニオ校の新監督に選ばれたのは元アーカンソー大の監督補佐兼RBコーチだったジェフ・トレイラー(Jeff Traylor)氏でした。

1989年から2014年までの26年間をテキサス州の高校レベルのコーチとして過ごしたトレイラー氏は2015年にテキサス州の名門・テキサス大のコーチ陣に抜擢され、そこからサザンメソディスト大を経て2年前にアーカンソー大に加入。生まれも育ちもテキサスっ子のトレイラー氏にとってテキサス大サンアントニオ校での監督職というのは自身初のヘッドコーチ経験となります。

フレズノ州立大

ジェフ・テッドフォード(Jeff Tedford)監督が健康上の理由からフレズノ州立大の監督を持することが発表されましたが、その後継者としてインディアナ大のオフェンシブコーディネーターであるカレン・デボアー(Kalen DeBoer)氏が起用されることがわかりました。

インディアナ大でOCを務める前の2年間、デボアー氏はフレズノ州立大でQBコーチを務めていたという縁もあり、それが今回の起用の決め手となったのでしょう。

今季インディアナ大は全米13位となる1試合平均308.7パスヤードを記録しており、その立役者となったデボアー氏は密かなライジングスターだったのです。彼にとってはNCAAレベルで初の監督職となりますが、NCAAとは別のNAIAレベルで監督を務めたことがあるのは多少の強みと言えるでしょう。

その他

テキサス大が新DCとして元ラトガース大監督のクリス・アシュ(Chris Ash)氏を起用。

サザンカリフォルニア大OCグラハム・ハレル(Graham Harrell、元テキサス工科大QB)氏はヘッドハンティングの的になっていましたが、USCに残留することが決定。

メンフィス大はフロリダ州立大へ去っていったマイク・ノーヴェル監督の後継者としてOLコーチのライアン・シルヴァーフィールド(Ryan Silverfield)氏の昇格を決定。

・そのノーヴェル監督はメンフィス大からDCのアダム・フラー(Adam Fuller)を、アーバン大からOCのケニー・ディリンガム(Kenny Dllingham)氏をフロリダ州立大スタッフに抜擢。

アーバン大は新OCに元アーカンソー大監督のチャド・モリス(Chad Morris)を起用。

アーカンソー大は新DCに元ミズーリ大バリー・オドム氏起用を発表。

サウスカロライナ大は新DCに元コロラド州立大監督のマイク・ボボ(Mike Bobo)氏の起用を決定。

ユタ大はDCモーガン・スカリー(Morgan Scalley)氏と長期契約を提携。噂ではカイル・ウィッティンガム(Kyle Whittingham)監督が引退した際の監督候補に内定しているとか。

アパラチアン州立大は新監督にチームのOLコーチだったショーン・クラーク(Shawn Clark)氏の昇格を発表。

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