エクストラポイント【第1週目】

エクストラポイント【第1週目】

先行き不安

華やかに始まった2019年度のカレッジフットボールですが、一方で昨年不発に終わりそのリベンジとして今年開幕を迎えつつも敢え無く撃沈したチームも数チームありました。

その最たるチームがテネシー大フロリダ州立大。テネシー大は「負けるはずのない」ジョージア州立大にまさかのホームでの逆転負け。そしてフロリダ州立大は「グループオブ5」の雄・ボイジー州立大にこれまた逆転負け。今年こそはと期待がかかっていただけにこの敗戦はテネシー大のジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)監督とフロリダ州立大のウィリー・タガート(Willie Taggart)監督にとって大変な痛手です。ふたりとも今年それぞれのチームで2年目を迎えていますが、どちらのチームもかつてカレッジフットボール界を席巻したチームであり、ファン層の求めるハードルが非常に高いことで知られています。

まだ開幕戦を終えたばかりですが、テネシー大及びフロリダ州立大では何かざわついた感じがしているように思えます。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

USCも危機?

今年結果を残さなければ後がないと言われているサザンカリフォルニア大クレイ・ヘルトン(Clay Helton)監督。その初戦は同じ西海岸出身のフレズノ州立大でしたが、31対23で何とか白星発進を成し遂げました。

しかし悪い知らせも。今年2年生となったQB J.T.ダニエルズ(J.T. Daniels)が前半中に膝に怪我を負い、検査の結果スポーツ選手としては致命傷となる前十字靭帯(ACL)断裂だったことが判明。ダニエルズの2019年度シーズンはあっという間に幕切れとなってしまいました。

ダニエルズの負傷につき新たな先発QBには1年生のケドン・スロヴィス(Kedon Slovis)が任命される模様。フレズノ州立大戦では8投中6投成功で57ヤードを投げ0TDに1INT。しかも57ヤードのうち41ヤードは長い1本のパスで稼いだものであり、ダニエルズが退いた後の後半はランプレーを軸に切り抜けました。今年からオフェンシブコーディネーターにグラハム・ハレル(Graham Harrell、元テキサス工科大QB)氏を迎え、超パスオフェンスに移行していたサザンカリフォルニア大ですが、少なくとも現時点でスロヴィスのためにプレーコーリングを変える予定は無いのだとか。今週末のスタンフォード大戦でその真価が問われます。

名将の目にも涙

今年からノースカロライナ大を率いることになったマック・ブラウン(Mack Brown)監督。かつてはテキサス大監督を務め、2005年度にはヴィンス・ヤング(Vince Young)氏らを擁して全米制覇も成し遂げた名将です。そのブラウン監督は1988年から10年間ノースカロライナ大で指揮を取っていたことがあり、今年から第2次政権が始まったことになるわけですが、その開幕戦でサウスイースタンカンファレンス(SEC)のサウスカロライナ大と対決。

この試合では終始サウスカロライナ大にリードされるも第4Qにディフェンスが踏ん張り、相手QBジェイク・ベントレー(Jake Bentley)から2つのパスINTを誘発。最後はベントレーにQBサックを食らわして第4Qだけで無失点。その間にQBサム・ハウウェル(Sam Howell)の2つのTDパスで逆転に成功してブラウン監督に初勝利をプレゼントしたのです。

その試合後のインタビューに応えたブラウン監督ですが、6年ぶりの現場復帰ということもあったのか質疑応答中に思わず涙ぐむシーンも。

今年はノースカロライナ大にも注目してみたいと思います。

サウスカロライナ大の新QB

そのノースカロライナ大に敗れたサウスカロライナ大ですが、ベントレーが足に怪我を負い戦線を離れることが分かりました。今年4年生のベテランQBはその経験値からオフェンスの主軸となることが期待されていましたが、その一方でもう一皮剥けて欲しいあと一つ何かが足りないQBでもありました。

そのベントレーに代わって先発を務めるのは期待の新人ライアン・ヒリンスキー(Ryan Hilinski)。2019年度のリクルーティングクラスでは全米で2番目に優れたプロスタイルQBという評価を受けており、巷ではベントレーの怪我がなくてもヒリンスキーにチャンスが回ってくるのではないかと言われていたくらいの逸材です。

ちなみにこのヒリンスキーですが、彼は元ワシントン州立大QBで昨年1月に精神的な病から自らの命を絶ってしまったタイラー・ヒリンスキー(Tyler Hilinski)の弟。彼らの兄であるケリーさんもカレッジでQBを務めたことがありまさにQB一家なわけです。ライアンの活躍をタイラー兄さんはきっと空から見守ることでしょう。

ルーク・フォードを解放せよ!

以前ジョージア大からイリノイ大に転校したTEルーク・フォード(Luke Ford)に関する試合出場資格をめぐるお話を紹介したことがありました。簡単に言うとフォードは病気で寿命が近づいているイリノイ州に住んでいるおじいさんに自分のプレーする姿を見せたいために名門ジョージア大を敢えて離れてイリノイ大にやってきたのですが、NCAAはルークに今年から試合に出場できるようにする特例を認めず、彼の晴れ姿をおじいさんは今年見ることができなくなった、という話でした。

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このNCAAの判断に無慈悲と感じた人は多く(私もその1人ですが)、イリノイ大のファンたちも当然怒っています。そして先週の開幕戦であるアクロン大戦でファンたちはNCAAへの強烈なメッセージをスタジアムから送ったのです。

「FREE LUKE FORD 82」つまり背番号82のルーク・フォードを解放しプレー資格を与えよ!というメッセージが込められています。恐らくNCAAが心変わりすることはないでしょうが、フォード一家にすればこのサポートは心に響いたことでしょうね。

Ouch!!

最新ランキングで8位となったノートルダム大ですが、初戦はルイビル大とのアウェーゲームでこの試合を35対17と無難に勝利で切り抜けました。ノートルダム大の期待のQBイアン・ブック(Ian Book)はこの日193ヤードに1TDと可もなく不可もないパフォーマンスを見せましたが、その中でも最も印象に残ったパスは自身のWRへのものではなく、相手チーム、しかもそのチアリーダーへのものでした。

このチアリーダーによると鼻を骨折したのだとか。試合に負けただけでなく彼女にとっては忘れられない試合となってしまったようです。

セイバン監督も唸る

昨年までアラバマ大に所属し今年からオクラホマ大でQBを務めるジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)ですが、彼は開幕戦のヒューストン大との試合で6つのTDに508ヤードのトータルオフェンスヤードというとんでもない数字を残してオクラホマ大のいち員としてセンセーショナルなデビューを飾りました。

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アラバマ大では26勝2敗という戦績を誇るも後輩のトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagavailoa)との先発争いに昨年敗れ、ハーツはタガヴァイロアのバックアップに甘んじていました。先発から降ろされたハーツはすぐさま転校することも出来ましたがアラバマ大に残留。そしてSEC優勝決定戦のジョージア大戦では負傷退場したタガヴァイロアに代わって出場して逆転勝利をお膳立てしました。

個よりもチームを優先させたハーツには全米から賛辞が寄せられましたが、そんなハーツをオクラホマ大に転校した後でも応援するファンは多いはず。そしてオクラホマ大でもまだまだやれることを証明したわけですが、彼の元監督でもあるアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督もハーツの活躍を喜んでいる人の1人です。

「試合は見てはいないが本当に素晴らしいプレーを見せたと聞いています。転校先で彼が成功していることは本当に嬉しいことです。」とハーツのプレーに関して質問されたセイバン監督は応えました。

まだまだシーズンは長いですが、こうなるとハーツとタガヴァイロアがハイズマントロフィー授賞式で一緒に着席している姿や、カレッジフットボールプレーオフ(CFP)でアラバマ大とオクラホマ大が対戦するようなシナリオを欲してしまいます。そうなったらどんなTVドラマよりも面白いストーリーとなりますよね。

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