コロナで露呈したカレッジフットボール界の「怪物の尾」【中編】 - ANY GIVEN SATURDAY

コロナで露呈したカレッジフットボール界の「怪物の尾」【中編】

コロナで露呈したカレッジフットボール界の「怪物の尾」【中編】

*前編はこちら

今週末いよいよ2020年度シーズンが開幕します(実際はFCSオースティンピー大セントラルアーカンソー大が先週末に試合を行っていますが)。来週にはアトランティックコーストカンファレンス(ACC)とBig 12カンファレンスが、そして9月26日にはサウスイースタンカンファレンス(SEC)がそれぞれ開幕予定しています。ただSECはコミッショナーのグレッグ・サンキー氏が9月19日に最終的に今季開催するかどうかの決断することになっており形の上では流動的になっています。

一方、当サイトでも何度も触れていますが上に挙げた3つのカンファレンスと同じく「パワー5」所属のBig TenカンファレンスPac-12カンファレンスコロナウイルスの影響を受けて今季不参戦を表明。Big Tenに限って言えばこの決断に猛反発した所属大学がその後も秋季開催のオプションを模索していましたが、昨日各大学長らが投票を行い11対3で秋スポーツ開催延期の決断を支持。彼らの淡い希望は水の泡となってしまいました。

ここまでのゴタゴタ

6月にNCAAが各大学キャンパス内での自主トレを解禁してから現在に至るまで紆余曲折ありました。クラスター感染が起こって活動一時休止に追い込まれたチームが出たり、5月に起こったミネソタ州での事件(白人警官が公衆の面前で黒人を死に至らしめた事件)が起きたことでカレッジスポーツ内でもこれに抗議する行動(Black Live Matter運動)が起きたり、またカレッジアスリートの権利を訴える運動がPac-12カンファレンスで起きたり・・・。

関連記事Black Lives Matter

そしてカレッジフットボールが開催されるのかどうかという最中でアイビーリーグなどのいくつかのFCSカンファレンスが秋季のスポーツ開催を見送る決断を下すと、その波は遂にFBSにも及び、ミッドアメリカンカンファレンス(MAC)、マウンテンウエストカンファンファレンス(MWC)がキャンセル(延期)を決定すると前述の通りBig TenとPac-12の大御所たちも遂にそのトリガーを引き、それにより本格的に2020年度シーズンの開催は危ぶまれたのでした。

それでも先にも述べた3つのパワー5カンファレンス軍はBig TenとPac-12とは別の道を歩むことを決意しコロナ禍が収束する気配を見せない中開幕へと邁進中であります。それを見たBig Tenカンファレンスは開幕を見送る決断をしたコミッショナーであるケヴィン・ワレン(Kevin Warren)氏を批判し独自に秋季開催の道を探るなどしましたが、結局その道も今の所閉ざされたままです。


リーダーシップの欠如

ここまでの経緯を見て分かるのは、まずコロナウイルスのパンデミックがいかにカレッジスポーツ界を揺るがしたかということ(当然これは全ての人々の生活にも言えることですが)、そして数々のチームおよびカンファレンスが集まって形成されるこのカレッジフットボールにまったく統一性が感じられないということです。

前回の記事でも少し触れましたが、NCAA(全米大学体育協会)1部の中でも最上位に位置されるフットボールボウルサブディビジョン(FBS、旧1部A/D1-A)が特別扱いされている現実、そして大学スポーツを取り締まるはずのNCAAがこの現状を許してしまっているという状況。この構図は今に始まったことではありませんが、今回のコロナ禍の影響でこの矛盾した構図があぶり出されてしまったというわけです。

NCAAはルールを決めてそれを守らなければ処罰するという団体であり大学スポーツを管理運営するのがその存在意義でありますが、そういった団体は得てして批判の的になるのが常です。だからというわけではありませんが、NCAAはリーダーシップが欠如していると批判されて久しいです。

参考記事NCAAとディビジョン

確かにことコロナウイルスの蔓延に関しては全米中に点在するチームやカンファレンスを全て同じように扱うことは出来ないでしょう。それは地域によって感染の度合いは違いますし、キャンパスがある街の構成も地域によってまちまちだからです。

しかし今回に関してはNCAAの決断は後手後手に回っている感じは否めません。それはやはりマネーパワーの強いパワー5カンファレンス群に忖度している感じが見て取れることも遠からず関係しているのではないでしょうか。NCAAはメディカルアドバイザーからの進言などを考慮して他のディビジョンの全秋スポーツを凍結する決断をしています。つまり彼らはこの秋大学スポーツを開催するのは得策ではないという意思を持っている訳です。しかしそれをFBSにも強制できないという奇妙な関係が顕になったのです。


統一性のないカンファレンスたち

さらにリーダーシップの欠如の副産物で生まれたのは各カンファレンスの統一性のなさです。

明白なところで言えばBig TenとPac-12が開催しないと決断を下したのに対して、他の3つのパワー5カンファレンス群は開催へ向けて未だに前進しているという点。

パワー5カンファレンス群はエンタメとしてのカレッジフットボールの実質的な本丸ですが、この5つの巨大カンファレンスが足並みを揃えないというところに幾ばくかの疑念を感じてしまいます。

NCAAにしろ各カンファレンスにしろコロナ禍でのスポーツ開催を決定する過程において最優先課題は選手の安全確保と大々的に語っています。そしてそれを左右するのはコロナウイルス感染に関する医学的データです。そのデータというのは動かざる事実(のはず)ですから捏造でもない限りコロナウイルスの動向はある程度その数値やトレンドを見れば見えてくるはずです。

しかし問題はそのデータを解釈する受けての問題であり、あるデータを見てそれを「大変なものだ」と解釈するか「そうでもない」と解釈するかは人それぞれ違うということが起きているのではないかという疑念が生まれるわけです。

コロナウイルスに関しては現状でまだわからないことはたくさんありますが、ことスポーツ競技に関して言えばもし感染してしまった場合の長期的リスクがあるのか無いのかというのは当然まだ判断できる段階にはありません。

現在危惧されているのはコロナウイルスに感染することによって心筋炎(Myocarditis)が引き起こされるのではないかということです。まだ研究が必要な分野だとは思いますが、この心筋炎とコロナウイルスの関連性がBig Tenカンファレンスにシーズン中止という決断を下すことを促したと言われています。Pac-12もこの事実を元にBig Tenに追随したわけです。

心筋炎とコロナウイルスとの関連性は何もBig Tenが独占している情報ではなく、メディアでも普通に取りだたされています。ただこれを危険だと感じるかどうかはそれぞれの人間次第というわけで、Big TenならびにPac-12のメディカルアドバイザーたちはこの事実を見過ごせないと判断し、それ以外のカンファレンスのメディカルアドバイザーたちはプレーしても大丈夫と判断したことになります。ACCのメディカルアドバイザーでデューク大医学部勤務のキャメロン・ウォルフ医師は今季現状でも安全にフットボールはプレーできる、と断言しています。

同じデータを扱いそれを解釈する医師たちもその道でトップを行くエキスパートたちであるにも関わらずどうして結論が異なってしまうのか・・・。それはここまで語ってきたようにデータの受けての解釈の仕方の違いもありますが、医学のように人の命に関わる事において医師によって放たれる言葉が違ってしまうことはいかがなものでしょう。


覇権争い?

こんなことが起きてしまった背景にはそれぞれのカンファレンスが蜜に連絡を取り合っていないということが懸念されています。例えばBig Tenのチーム内でどれだけの選手がどのようにコロナに感染してしまったのか、そして回復までにどれだけの時間がかかったのか、そのような生のデータがカンファレンスの間で共有されていないという情報筋の話もあります。

ですからBig Tenが最初にシーズンを見送る決断を下したのは他のカンファレンスにとっては寝耳に水だったそうですし、そうなると他の3つのカンファレンスが「俺達は意地でも開催まで持ち込んで見せる」と息巻く結果を招いてしまったとしても不思議ではありません。

ACCではノースカロライナ大ノースカロライナ州立大などでコロナ感染がキャンパスで広がっているそうですが、一般学生がリモート授業に移行したあとでもフットボール部は未だに開幕へとひた走っています。ひょっとしたら彼らはここまで来たらもうあとには引けない、他の2カンファレンスに遅れを取ることは出来ないと意固地になっているのかもしれません。

ACC、Big 12、SECは互いの顔色を見ながら次に誰が脱落するかを様子を見ながら開幕へひた走っているようにも見えます。最後までシーズンを終えることが出来た時、そこまでシーズンを延命させることが出来たカンファレンスがそうでないカンファレンスをあざ笑うというシナリオ・・・。そうなれば開催を回避したBig TenやPac-12は

いずれにしてもトップカンファレンス群であるパワー5の連中がそれぞれの組織内で独自の道を歩んでいることが現在のようなカオスを生んだと言っても過言ではないでしょう。それはNCAAが全てのディビジョンの手綱をガッチリと引けないという現状に起因していると思いますし、それが今回のコロナ禍で露呈してしまったわけです。

(つづく)

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