2019年度CFP全米王座決定戦プレビュー⑤【コーチ対決】

2019年度CFP全米王座決定戦プレビュー⑤【コーチ対決】

ルイジアナ州立大、クレムソン大両チームとも素晴らしいタレント揃いのチームであることはこれまでのプレビュー記事でお分かりいただけたかと思います。ボールをスナップし、パスを投げ、それをキャッチしたり、タックルを食らわせるのは当然選手たちなわけですが、一方で彼らを指導し、戦略を練り、プレーをコールするコーチ陣の存在も忘れてはなりません。

そこで全米王座決定戦プレビュー第5弾の今回は各チームのコーチ陣を見てみたいと思います。

ルイジアナ州立大

今季ルイジアナ州立大で3シーズン目となるエド・オルジェロン(Ed Orgeron)監督は2016年にそれまでチームを率いていたレス・マイルズ(Les Miles、現カンザス大)監督がシーズン途中に解雇されたあとに臨時監督を経て正式なHCに任命されました。マイルズ前監督は2007年度のナショナルタイトルを獲得したときの監督であり、ルイジアナ州立大の顔とも言うべき存在でした。しかし常に変化するカレッジフットボールの流れに合わせることができずに大学側はマイルズ監督解雇という苦渋の選択を強いられたのです。

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エド・オルジェロン監督

そこまでしてHCに据えられたオルジェロン監督でしたからマイルズ前監督以上の結果を残すことが義務付けられていました。

オルジェロン監督にとってルイジアナ州立大でのHC職は自身二度目となります。一度目は2005年から2007年までのミシシッピ大。1998年から2004年までサザンカリフォルニア大でDLコーチ等を務め、ピート・キャロル(Pete Carroll、現シアトルシーホークス)監督下で2003年度と2004年度のナショナルイトル獲得に貢献。そして2005年にミシシッピ大にやってくるわけですが、ここでの3年間は10勝25敗と惨敗。何の結果も残せず解雇されてしまいます。

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ミシシッピ大時代のオルジェロン監督

この時のオルジェロン監督はゾーンブロックとサザンカリフォルニア大で使用されていた2バックシステムを織り交ぜてSECのチームに挑みますがあえなく撃沈。またとにかく事あるごとに選手・コーチに怒鳴り散らしてフラストレーションを露わにするスタイルも火に油を注ぎ最初のHCとしての経験はほろ苦いものとなってしまいました。

しかしそれから時は流れニューオーリンズセインツテネシー大サザンカリフォルニア大、そしてルイジアナ州立大とチームを渡り歩き前述の通り2016年度途中からルイジアナ州立大の監督を任されます。

もともとルイジアナ州出身だったオルジェロン監督としては州の旗艦大学であるこのチームで指揮を執れることは生涯の夢であり、この機会を逃さまいとセカンドチャンスに賭けます。

2度目の監督職となったルイジアナ州立大でのオルジェロン監督はミシシッピ大の当時の彼とは明らかに変わっていました。サイドラインで顔を真っ赤にして声を張り上げるのは変わっていません。しかしそれは怒り散らすのではなく選手を激しく鼓舞するシャウトであり、決してかつてのようにすべてをコントロールしようとしている姿ではありませんでした。

ポジションコーチには彼らの仕事をさせる。コーディネーターたちには彼らに戦略を任せる。自分がすべてを管理するのでなく部下たちを信じて自分はチームの長としてのカリスマ性を発揮してチームをまとめ上げることに徹したのです。

そしてスティーヴ・エンスミンガー(Steve Ensminger)氏をオフェンシブコーディネーターに昇格させ、これまでのルイジアナ州立大の十八番でもあったラン重視オフェンスから敵DB相手にミッド・ロングレンジのパスをアタックしていくスタイルに徐々にオフェンスは変化。極めつけは今シーズンから元ニューオーリンズセインツスタッフのジョー・ブレディ(Joe Brady)氏をWRコーチ並びにパスゲームコーディネーターとして迎えるとチームのオフェンスは劇的に昇華し、1試合平均のパスヤードは全米2位となる397.2ヤードにまで上昇したのです。

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エンスミンガー氏(左)とブレディ氏(右)

またディフェンス面では2016年以来デイヴ・アランダ(Dave Aranda)氏をコーディネーターとして起用しています。ルイジアナ州立大に来る前はウィスコンシン大で3年間DCを務めていたアランダ氏はその間トータルディフェンスで9位(2013年)、9位(2014年)、2位(2015年)とウィスコンシン大を屈指のディフェンスチームに育て上げました。

その手腕を買われてルイジアナ州立大にやってきたのですが、2016年は5位、2017年は12位、2018年と2019年はは少し順位を落として26位と29位となっていますが、全米でも上位レベルの守備力をもつチームを指揮していることに変わりはありません。

実際彼の腕を見込んで他チームがヘッドハンティングをもくろんできましたが、手放したくないルイジアナ州立大はアランダ氏と2018年に4年契約で総額1000万ドル(1ドル100円計算で10億円、年収2億5千万円)という破格の契約を結んだのです。この数字はアシスタントコーチが手に入れるサラリーとしては現在最高額のものです。

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DCのデイヴ・アランダ氏

アランダ氏のモットーは3−4ディフェンスのベースにRPO(ランパスオプション)に対抗する新種の対策と言われる「タイトフロント(Tite Front)」を多用するディフェンス。相手をインサイドから攻めさせず外へと追い込む作戦です。また身体能力の高いLB陣を使って質の高いゾーンカベレージも可能。

ただ今年はフロントセブンのレベルが通常より若干低いせいか、シーズン途中から3−4から4−3に変更して選手の能力をカバー。それが見事にハマってなんとかここまで無敗でこぎつけることが出来ました。状況に応じて作戦を建て替えられるというのもアランダ氏が有能たる所以です。

そして今回のタイトルゲームで彼のディフェンススキムがクレムソン大オフェンスにどう立ちはだかるか、どのような作戦を練ってくるのか気になるところです。


クレムソン大

クレムソン大を率いるのは今年で12年目を迎えるダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督。彼の4年目となった2011年度シーズン以来今年まで9年連続二桁勝利シーズンを記録してきましたが、2014年ころまではいいところまでチームは成績を残すも肝心要の試合でボロが出てカンファレンスタイトルゲームに進めなかったりすることがよくありました。そのため、詰めが甘いこともしくは重要な試合で負けてしまうことを指す造語として「クレムソニング(Clemsoning)」なんて言葉が生まれるという悔しい思いをしてきたのです。

しかし2015年度以来所属するアトランティックコーストカンファレンス(ACC)を5連覇。カレッジフットボールプレーオフも5年連続出場を果たし、過去4年間で2度もナショナルタイトルを獲るまでにチームは大成長。押しも押されぬ常勝チームになり今ではアラバマ大に取って代わる新たなダイナスティの到来とも言われています。

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ダボ・スウィニー監督

スウィニー監督の特徴といえばとにかくポジティブで実直なところ。言うべきところは歯に衣を着せずに発言しますし、学生アスリートと同じ目線に立てるカリスマ的監督です。モチベーションを上げるのに非常に長けておりそんなスウィニー監督に選手たちはみな付いて行きたがるのです。

彼の右腕左腕となるコーディネーターたちも優秀です。

今年もオフェンシブコーディネーターを務めるのはトニー・エリオット(Tony Elliott)氏とジェフ・スコット(Jeff Scott)氏。この二人はクレムソン大のOBであり同じ時期ともにチームでWRとして切磋琢磨し合ったチームメイトなのです。ですから共同でOCを務めることに変な違和感は無いのでしょう。

そのスコット氏ですがレギュラーシーズン後にサウスフロリダ大の次期監督に就任することが決定。クレムソン大はスウィニー監督のものコーチ陣の入れ替わりがほぼ無い非常に珍しいチームでしたが遂にスコット氏がHCになるべく旅経つ時が来ました。

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サウスフロリダ大監督とOCを兼任するスコット氏

スコット氏はタイトルゲームまでクレムソン大のOCとサウスフロリダ大のHCを兼任しています。前試合のフィエスタボウルでは監督就任から1週間はサウスフロリダ大キャンパスのあるフロリダ州タンパ市に残り新任監督としての業務をこなし、試合数日前にクレムソン大に帰還してエリオット氏とオハイオ州立大戦にむけた再調整を行いました。

実はエリオット氏はスコット氏のサウスフロリダ大での就任会見に参戦し親友の晴れ舞台を見届けました。それほどにツーカーな関係である二人は短期間ながらオハイオ州立大戦で勝利を収め、二人での共同OCとして最後の試合に臨むことになります。

一方のディフェンシブコーディネーターは上に挙げたルイジアナ州立大のアランダ氏と並び称される凄腕DCブレント・ヴェナブルズ(Brent Venables)氏です。

ヴェナブルズ氏は現在カレッジフットボールのコーチング界に多くのコーチを送り出した本流である元カンザス州立大監督のビル・シュナイダー(Bill Snyder)氏の流れを汲む人物。そこから派生したボブ・ストゥープス(Bob Stoops)氏に見初められてオクラホマ大でDCを務めるとその腕を買われて2012年にクレムソン大に移籍。以来スウィニー監督の重要な補佐として現在の常勝クレムソン大の育成に大きな影響を及ぼしてきました。

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クレムソン大DCのヴェナブルズ氏

2016年には全米のトップアシスタントコーチに贈られるブロイルズ賞を受賞(ちなみに2017年は上記のエリオット氏が受賞。今年はLSUのブレディ氏)。誰もが認める敏腕コーチとして名を馳せていますが、そろそろヘッドコーチになっても良さそうなのにスウィニー監督に忠誠を尽くしています。それだけスウィニー監督が仕事をしやすいボスだということなのでしょう。

ヴェナブルズ氏のディフェンスは4−3のベースディフェンスを敷きますが、見た目はシンプルでも彼のプレーコールは非常に緻密で複雑。いかに相手QBを混乱させミスリードさせるかに長けているコーチです。また汎用性の高いLB(今年ならアイゼア・シモンズ)を1人下げて2列目3列目から頻繁にブリッツをかけるアグレッシブさも持ち合わせています。

今年度誰も止めることができなかったエンスミンガー&ブレディ氏のルイジアナ州立大オフェンスをディフェンスの鬼才・ヴェナブルズ氏がどう止めるか・・・。今から楽しみで仕方ありません。

===

カレッジフットボール界きってのだみ声で感情を隠さずチームをまとめ上げてきたオルジェロン監督と、今時の若い選手たちの目線に立ってそのカリスマ性で強固な結束力をチームで作り上げてきたスウィニー監督。オルジェロン監督が勝てば自身初、スウィニー監督が勝てば3つ目となる全米王座の栄冠。そしてブロイルズ賞を獲得した人物が両チーム合わせて3人いるなどどちらも今をときめくコーディネーターたちを擁しており、彼らがどのようにお互いを分析して作戦を立ててくるかという点にも注目していただきたいです。

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