2019年度フィエスタボウルレビュー

2019年度フィエスタボウルレビュー

クレムソン大29、オハイオ州立大23

今季CFP(カレッジフットボールプレーオフ)の準決勝戦第2試合目となったフィエスタボウルは2位のオハイオ州立大と3位のクレムソン大との対決。13勝0敗同士の戦いは史上初ということで大きな注目が集まりました。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

オハイオ州立大はQBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)とDLチェイス・ヤング(Chase Young)という2人のハイズマントロフィーファイナリストを擁し、先刻オクラホマ大に勝利して早々と決勝戦進出を決めたルイジアナ州立大と追い越し追い越せの全米1位のポジションを争ってきたチーム。一方のクレムソン大は昨年のナショナルチャンピオンながらここまであまりリスペクトされてこなかった無敗チーム。とくにクレムソン大はここまでの道のりが他のプレーオフチームよりも平坦だったこともありこの準決勝戦で彼らの真価が問われると言われてきまいた。

第1Qから試合のペースを握ったのはオハイオ州立大。FGとRB J.K.ドビンズ(J.K. Dobbins)の68ヤードランTDで10対0とクレムソン大をリードすると第2Qにはさらに2つのFGを決めて前半終盤まで16対0と2TD以上の差をつけます。

ちなみにドビンズはこのランでオハイオ州立大のレジェンドでもあるエディ・ジョージ(Eddie George)氏が持っていたシーズントータルランヤードのスクールレコードを塗り替えました。

今季ここまで常に相手を駆逐する展開で勝利を収めてきたクレムソン大にとってここまで点差をつけられるという経験が皆無で、それこそ試合前までにささやかれていた「オーバーレーテッド(過大評価)」が真実味を帯びてきたかに見えました。ディフェンスの知将であるDCブレント・ヴェナブルズ(Brent Venables)氏の織りなすパスラッシュをオハイオ州立大OL陣がことごとく潰し、QBフィールズにディフェンスを読むのに十分な時間を献上。クレムソン大ディフェンスがフィールズに届かない苛立ちの時間が過ぎていったのです。

しかしそこで我を忘れなかったのがディフェンディングチャンピオンの強み。QBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)はまだ2年生ながら既に昨年ナショナルタイトルゲームに出場しアラバマ大から大量得点を奪う経験をしており、追いかける展開になっても少しの焦りも見えませんでした。

第2Q中盤に敵陣内へ攻め込むクレムソン大ですが、途中相手DBショーン・ウェイド(Shaun Wade)がローレンスに激しいブリッツ。テクニック的にはクリーンなタックルに見えましたが、ウェイドのヘルメットがローレンスのヘルメットにモロに激突。これがターゲッティングの反則となりクレムソン大が1stダウンを与えられただけでなくウェイドが即退場処分になるというオハイオ州立大ディフェンスとしては痛い結果に。

結局このドライブでRBトラヴィス・エティエン(Travis Etienne)が8ヤードのTDランを決めてようやくクレムソン大がこの日最初の得点をゲットします。

さらに次のクレムソン大のドライブではローレンスが67ヤードのロングランTDを決めて2分もかからずに点差を16対14と一気に2点差に縮めます。

これで一気に流れがクレムソン大に傾き、しかも前半終了間際には第1Qだけで141ランヤードを稼いでいたドビンズが足首を捻る不運な怪我に見舞われます。

第3Qに入ると再び一進一退の攻防が続きこのクォーター2度目のクレムソン大の攻撃でオハイオ州立大が相手陣内で4thダウンを迎えますが、キャメロン・ブラウン(Cameron Brown)が痛恨のラフィン・ザ・パンターの反則を犯してしまい、クレムソン大がドライブを継続。そしてこのチャンスをものにしたクレムソン大がこの日ランアタックで相手ディフェンスに攻略されていたエティエンへローレンスがショートパスを送り、それをエティエンが53ヤード走りきって見事TD。いよいよクレムソン大が逆転します。

16対0の状態から21連続得点でクレムソン大がリードを奪い彼らの押せ押せムード全開となります。しかしオハイオ州立大も負けじと第4Q残り時間約12分でフィールズからWRクリス・オラヴェ(Chris Olave)へのTDパスが決まって彼らが再びリードを取り戻します。

試合残り時間10分で再び攻撃権を得たオハイオ州立大はここから時間を削りながらゆっくりとクレムソン大陣内へ攻め込むポゼッションゲームを展開。相手に反撃のチャンスを与えまいと時間が刻一刻と過ぎていきますが、クレムソン大ディフェンスが踏ん張り残り時間約3分で反撃のチャンスを得ます。そしてここからが王者クレムソン大の真骨頂。

自陣6ヤード地点からの攻撃となりましたがローレンスが自身の足とWRアマリ・ロジャース(Amari Rodgers)への38ヤードパスを決めて一気にオハイオ州立大34ヤード地点へ急襲。そしてローレンスがQBドローと見せかけてオハイオ州立大のフロントセブンがそれに反応したところその隙間を縫って出たエティエンへショートパス。それをエティエンがエンドゾーンまで運び34ヤードのパスTDを決め、残り時間2分を切って再びクレムソン大が逆転!

2ポイントコンバージョンも決めてスコアを29対23としますが、個人的にはむしろこの速攻は速攻すぎたのではないか、約2分あればフィールズ率いるオハイオ州立大オフェンスが逆転のドライブを決めることが出来るのではないか、とさらなるドラマの予感。

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後のないオハイオ州立大は最後の望みをかけて敵陣内へ進撃。フィールズが次々とパスを決めて残り時間37秒というところでクレムソン大陣内23ヤードまで詰め寄ります。オハイオ州立大の逆転なるか、それともクレムソン大が踏ん張るか、手に汗握る局面を迎えましたが、待っていたのは滅多にフィールドが見せることのないINTパス。エンドゾーンへ放たれたフィールズのパスは無情にもDBノーラン・ターナー(Nolan Turner)の手中に収められ絶体絶命。最後の最後にクレムソン大ディフェンスがハイズマントロフィーファイナリストに立ちはだかり見事この激戦に勝利。2年連続4度目の決勝戦進出を果たしたのです。

この試合の立役者はやはりクレムソン大QBローレンス。パスでは259ヤードに2TDと飛び抜けてすごい数字を残しませんでしたが、RBエティエンが36ヤードに抑えられていたところローレンスが自身の足で107ヤードも稼いでドライブを救い続けたことです。6インチ6フィート(約198センチ)に220パウンド(約100キログラム)という長身ながら相手ディフェンスをかき回せるのに十分な機動力も持ち合わせている非常にレアな身体能力の持ち主。昨年度のタイトルゲームではその肩でアラバマ大ディフェンスを蹴散らしましたが、この試合では足でオハイオ州立大相手に活路を見出したのです。

またヴェナブルズ氏の後半のアジャストメントも素晴らしかった。特にフィールズから奪った最初のINTはLBアイゼア・シモンズ(Isiah Simmons)をあえてバックフィールドに下げフィールズから今季2度目となるINTを奪った場面は圧巻でした。

オハイオ州立大もリードされても焦らず反撃する底力を見せましたが、2014年以来の悲願のナショナルタイトルまであとすこし手が届きませんでした。

第2Qにエンドゾーンでドビンズが落としたTDパス、ウェイドの退場処分、ラフィン・ザ・パンターの反則、フィールズの2つのINTパス、そして第3Qに起きたこのシーン。

一度はジャスティン・ロス(Justyn Ross)がファンブルしたボールをDBジョーダン・フラー(Jordan Fuller)がリカバーしてリターンTDを決めますが、ビデオ判定の結果ロスはボールをしっかりとキャッチしていなかったと判定されてファンブルではなくインコンプリートパスと覆されたのです。スローモーションだとロスはしっかりとパスをキャッチしているようにも見えますが、実際のスピードだとキャッチしてボールをコントロールしたとは判定できない、というのがビデオリプレーの末の見解のようです。これはどちらにも転べる判断だとも言え、試合の流れを左右しかねない決定にライアン・デイ(Ryan Day)監督も試合後に「受け入れるのは難しい判定だった」と話しています。

先にも述べたように今シーズンストレングス・オブ・スケジュールが貧弱で大した対戦相手と試合をしてこなかったと言われ続けたクレムソン大でしたが、オハイオ州立大というトップチーム相手を退けそんな雑音を一蹴。連勝記録も29に伸ばしいよいよ二連覇をかけて今季最強の名高いルイジアナ州立大との頂上決戦を迎えることになります。

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