ローズボウル
#8 ウィスコンシン大 vs #6 オレゴン大
1月1日午後5時(日本時間1月2日午前7時)キックオフ
ローズボウル(カリフォルニア州パサデナ市)
カレッジフットボール界に存在するボウルゲームの中でも特別扱いされている6つのボウルゲームを「ニューイヤーズ6」ボウルと呼びますが、そのうちの2つが毎年CFP(カレッジフットボールプレーオフ)の準決勝に指定されます。今年はご存知かと思いますがピーチボウルとフィエスタボウルがそれに当たりますから、当然6つのボウルゲームの中でもこの2つのボウルゲームには重要な意味合いが込められます。
しかし今回紹介するローズボウルは「ニューイヤーズ6」の中でも特に格式の高いボウルゲーム。歴史的に見れば最古のボウルゲームであり、長い間Big TenカンファレンスチャンピオンとPac-12カンファレンスチャンピオンが東と西の覇権争いを続けてきた由緒正しい試合なのであります。CFP(さらに言えばその前身のBCS)が導入されてからもCFPの準決勝戦に指定されない限りこのBig Ten対Pac-12の対決図式は維持されており、今回出場するウィスコンシン大(Big Ten)とオレゴン大(Pac-12)はCFPに出場できませんでしたが、一方でローズボウルに出場することに大いなる意義を感じていることでしょう。
参考記事ボウルゲーム両チームそれぞれ過去にローズボウルで3勝を挙げていますが、ちょうど8年前には同じカードでのローズボウルが開催されており、この時は45対38でオレゴン大が勝利。両チーム合わせて83点という数字は当時のローズボウル新記録となりましたが、この記録は2017年のサザンカリフォルニア大対ペンシルバニア州立大(52対49でUSCが勝利)、そして2018年のジョージア大対オクラホマ大(54対48)に塗り替えられますが、非常にいい試合だったと記憶しています。因みにこの時のウィスコンシン大のQBは現シアトルシーホークスのラッセル・ウィルソン(Russell Wilson)でした。
今年の両チームのディフェンスは失点数で全米トップ10入りするほどの強力な守備力をもつチーム。オレゴン大は全米8位となる1試合平均失点15.7点、ウィスコンシン大は10位となる16.1点ということで相手に得点を許さないことで試合の流れを牛耳ってきたチームたちです。ウィスコンシン大は今季完封試合が実に4試合もありましたし、オレゴン大もシーズン中5試合連続でTDを1つしか許さなかったというどちらも超絶な記録を残してきたのです。
しかしプレーオフ進出をかけて負けられない試合が続いていたシーズン終盤に両チームとも痛い敗戦(ウィスコンシン大はイリノイ大、オレゴン大はアリゾナ州立大に)を喫したためどちらもプレーオフ進出を逃してしまいました。とはいえ、レギュラーシーズン終了から4週間が経ち双方ともこの大一番に準備は万端となっていることでしょう。
ウィスコンシン大オフェンス vs オレゴン大ディフェンス
オレゴン大ディフェンスにとって最大の仕事はウィスコンシン大のランアタックを止めることにあります。その先陣を切るのが今年最優秀RBに贈られるドークウォーカー賞を2年連続で受賞したジョナサン・テイラー(Jonathan Taylor)です。
ウィスコンシン大RBジョナサン・テイラー
今年3年生のテイラーは既に1、2年生時に1900ヤード以上を記録しており今季も高い期待を背負ってシーズンを迎えましたが、その期待に十分答える働きをしてきました。そしてオハイオ州立大とのBig Tenカンファレンス優勝決定戦では148ヤードを走りきりトータルヤードを1909ヤードとして3年連続1900ヤード超えを達成しました。3年連続でこの数字を叩き出したRBはカレッジフットボール史上後にも先にもテイラーのみで、大学生涯ヤードも6080ヤードという大台に乗っており、これをたった3年で記録したところに彼の凄さを感じます。もし来年のシニアシーズンもチームに戻ってくることがあればおそらくNCAAのランレコードをすべて塗り替えることが予想されますが、NFL入りしようがしまいが彼の名前が後世まで語り継がれることは明らかです。
そのテイラーを止めることがオレゴン大ディフェンスの使命となりますが、オレゴン大のランディフェンスは全米10位となる1試合平均106.8ヤードと相手のランアタックを止めることに関してはある程度の自身を持っていると思われます。今季彼らが相手RBに115ヤード以上を許したのはワシントン大のサルヴォン・アーマッド(Salvon Ahmed)のみ。
そのディフェンスの核となるのはDLトロイ・ダイ(Troy Dye)とケイヴォン・ティボデウ(Kayvon Thibodeaux)の二人。特に鳴り物入りでオレゴン大入りした1年生のティボデウは注目の選手です。テイラーは今季これまでオハイオ州立大という強力ディフェンスを持つチームと2度も対戦してきましたが、このダイとディボデウというツートップを擁するフロントセブンの力もオハイオ州立大のそれと甲乙つけがたいものです。オレゴン大DL陣とウィスコンシン大のエリート級OL陣のマッチアップ、そしてテイラーがオレゴン大のフロントセブンを切り崩せるのかに注目したいです。
オレゴン大期待の新人DLケイヴォン・ティボデウ
オレゴン大オフェンス vs ウィスコンシン大ディフェンス
オレゴン大の攻撃時に注目したいのはQBジャスティン・ハバート(Justin Herbert)と彼を守るOL陣、それらに挑戦状を挑むウィスコンシン大ディフェンス、特にLBザック・バーン(Zack Baun)とクリス・オー(Chris Orr)とのマッチアップです。
ザック・バーン(左)とクリス・オー(右)
バーンはこれまで12.5個のQBサック、オーもそれに負けじと劣らない11.5個ということでこの二人のLBが織りなすブリッツは超カレッジ級。チームとしてもトータルサック数は全米7位の80個、そしてQBサックによるヤードロスは全米2位の346ヤードとなっています。今年2度対戦したオハイオ州立大戦でもQBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)からそれぞれの試合で5つずつQBサックを奪いました。
オレゴン大オフェンスは往々にして球離れの早いミッドレンジへのパスを得意とするチームですから、ウィスコンシン大のフロントセブンがハバートへ容赦ないプレッシャーを掛け続けられれば彼のリズムを崩すことは大いに可能でしょう。
オレゴン大QBジャスティン・ハバート
しかしそれが出来ければポケット内でハバートが自由にディフェンスを読む時間を与えることでウィスコンシン大のバックフィールドに大いなる負担を与えることになります。過去2年間NFLスカウトから熱視線を注がれ続けたハバートは体格、リリース、パスの正確性、機動力とどれをとっても一級品であり、パスディフェンスに脆弱性を持つウィスコンシン大にとってはこの点が一番不安なところ。
総評
テイラーとハバートという両チームのスター選手に注目が集まることは仕方のないことですが、この試合の行方はウィスコンシン大QBジャック・コーン(Jake Coan)とオレゴン大ディフェンスとのマッチアップに委ねられていると言えそうです。
今季ここまで犯したINTパス数がたったの4つのコーンと奪ったINTパス数が全米2位となる19個という数字を持つオレゴン大ディフェンスの対決。ここまで最低でも300回のパスを投げて4つしかINTパスを放っていないQBはコーンを合わせて6人いますが、そのうちの一人であるジェイデン・ダニエルズ(Jayden Daniels)を擁したアリゾナ州立大は見事にオレゴン大から勝利を奪っています。
ウィスコンシン大QBジャック・コーン
ウィスコンシン大ディフェンスはアリゾナ州立大よりも数倍強力なディフェンスを持っていますから、コーンがミスを侵さない試合運びを遂行することができれば僅差の試合になった際にウィスコンシン大有利となりそうです。とくにテイラーがランアタックを構築できればハバートをベンチに座らせておく時間が長くなることにつながり、たとえウィスコンシン大DB陣がパスに弱いとしても競り勝つ可能性はあります。
オレゴン大としては何としてもテイラーを100ヤード前後に押さえ込み、彼を封じ込めることでコーンのパスアタックという一元的なオフェンスを引き出したいところ。そこからミスの少ないコーンからターンオーバーを引き出せれば試合の流れをぐっとオレゴン大に引き寄せられるかもしれません。