第8週目レビュー

第8週目レビュー

今季後半戦に突入した第8週目。トップランカー同士の熾烈なサバイバルゲームもあれば上位チームがまさかの敗戦を喰らう番狂わせもあり見どころたっぷりのウィークエンドとなりました。今後のカンファレンスタイトル争いやプレーオフ進出争いにも大いに影響をおよぼすことになるであろう第8週目を振り返ります。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ペンシルバニア州立大28、ミシガン大21

ペンシルバニア州立大(ペンステート)がスタジアムを真っ白に染める「ホワイトアウト」を発令して大御所ミシガン大を迎えたこの一戦。ホームの大歓声をバックに7位のペンステートが16位のミシガン大を撃破。7連勝目でこの大舞台を切り抜けました。

試合は出だしからペンステートペース。QBショーン・クリフォード(Sean Clifford)のパスが冴え一時は21対0と大きくリードを突き放せば、今季随一の力を持つとされる彼らのディフェンス陣が相手QBシェイ・パターソン(Shea Patterson)に仕事をさせず押せ押せムードで前半を折り返します。

しかし後半になってようやくミシガン大オフェンスが目を覚まし、パターソンのパスが決まりだしてRBザック・シャーボネット(Zach Charbonnet)のランTDをお膳立てしにわかに反撃の兆しを見せます。が、第4Qに入ると再びクリフォードの53ヤードパスTDが炸裂。返しのミシガン大の攻撃でもパターソンが1ヤードTDランを決めて点差を再び1TD差に詰めます。試合終了間際にはミシガン大が同点を狙う決死のドライブを見せ、相手陣内10ヤードラインにまで進撃。最後の4thダウンプレーではパターソンからのTDとなり得たパスをロニー・ベル(Ronnie Bell)が痛恨の捕球ミス。結局これが事実上の終局となりミシガン大は2年前に続き再びビーバースタジアムでのホワイトアウトで散りました。ミシガン大にとってみれば後半にエンジンがかかったものの前半のスロースタートが響き結果的に時すでに遅しと言う感じが強かったです。

クリフォードは最近のペンステートではレジェンドとも言えたQBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)の後継者として今季から先発を担う若手QB。しかしこれまで1742パスヤードに16TD、2INTと中々の安定感を誇っています。そしてそれはこのミシガン大戦でも顕著で、パサーとしての能力に加え機動力もあるクリフォードを止めるのは容易ではなく、その証拠にここまでペンステートの平均得点数は30点以上。

先週のアイオワ大戦に加えこのミシガン大戦で真の力が試されたクリフォード率いるペンステート。ここまでは彼らの合格点を与えたいですが、もし彼らがこのまま勝ち進みカレッジフットボールプレーオフ(CFP)に出場するつもりなのであれば、クリフォードはこの勢いを止めることなく突き進まなければなりません。しかも今後4試合のうち3試合はミシガン州立大ミネソタ大オハイオ州立大という強敵が続くことを考えればなおさらです。

一方のミシガン大ですが、今回7位のペンステートに負けたことでジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督のミシガン大でのトップ10チームとの戦績が1勝10敗と大舞台での弱さを露呈。この敗戦はまだ2敗目ですが開幕前の期待の高さを考えると2敗以上のがっかり度があります。このままだと混戦続くBig Tenカンファレンスで下の方に埋もれてしまいかねません。


アラバマ大35、テネシー大13

10月の第3土曜日(3rd Saturday in Octorber)」という異名を持つ深南部の有名なライバリーゲームであるこの試合ですが、ここ最近の力の差は歴然であり、今年もそれに漏れず全米1位のアラバマ大テネシー大を撃破。これでアラバマ大が対戦成績でこのカード13連勝目を飾り今季無敗を守りました。

しかしこの試合でアラバマ大はスターQBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)を足首の怪我で前半早々に失い、バックアップのマック・ジョーンズ(Mac Jones)が投入される事態に陥りました。経験値の低いジョーンズが起用されたことでアラバマ大オフェンスはパスからラン重視のオフェンスにシフト。RBナジー・ハリス(Najee Harris)、ブラアン・ロビンソン(Brian Robinson Jr)らが活躍し、タガヴァイロアが入部する以前のアラバマ大のオフェンスを見ているようでした。

テネシー大も先発QBブライアン・マウワー(Brian Maurer)を脳震とう(Concussion)でKOさせられ、代わりに元々の先発QBだったジャレット・グアランタノ(Jarrett Guarantano)が途中出場。しかし彼はアラバマ大ゴールラインすれすれまで進撃するもボールをファンブルしそれがアラバマ大DBトレヴォン・ディグス(Trevon Diggs)にリターンTDされるというお粗末さ。最後は3番手のQBであるJ.T.シュラウト(J.T. Shrout)が投入される始末。

アラバマ大のタガヴァイロアの足首は思いの外芳しくなく、なんと日曜日に手術を受けたほどの重傷でした。もっともこの手術は昨年彼が受けたものと同じもので(左右は違いますが)、治療を早めるための手術だったのだそうです。アラバマ大は次戦がアーカンソー大、その次が試合のないバイウィーク、そしていよいよ全米2位のルイジアナ州立大との決戦を控えます。その大一番まで約3週間ありますから、今回手術に踏み切ったのは回復してLSU戦までに間に合うと踏んだ上での決断だったのでしょう。アラバマ大はタガヴァイロアが居ると居ないのでは全く別のチームとなってしまいますから、彼の回復度には大いなる注目が集まりそうです。

 

ルイジアナ州立大36、ミシシッピ州立大13

全米2位のルイジアナ州立大(LSU)は先週同じサウスイースタンカンファレンス(SEC)西地区所属のミシシッピ州立大と対戦しこれを36対13で退け7連勝目を飾りました。

この日のLSUもスターQBジョー・バロウ(Joe Burrow)の活躍でアウェーチーム感を全く感じさせない安定感を見せました。バロウはこの試合で4TDを獲得しまだ5試合を残しているもののすでに今季トータルパスTD数が29に。これで彼はLSUのシーズントータルパスTD数でマット・マック(Matt Mauck)氏とジャマーカス・ラッセル(JaMarcus Russell)氏が持っていた大学記録を抜き新レコード樹立。まだ試合数が残っているバロウはこの記録を更に更新し続けていくことでしょう。このことだけでもバロウが如何にLSUにおいて特別なQBであることがわかると思います。

オハイオ州立大52、ノースウェスタン大3

先週金曜日に行われたこの試合、オハイオ州立大はハイズマントロフィー候補QBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)とRB J.K.ドビンズ(J.K. Dobbins) らの活躍で敵地ながら相手を完全攻略。また全米ナンバーワンの呼び声高いDLチェイス・ヤング(Chase Young)率いるディフェンス陣もノースウェスタン大オフェンスに何も仕事をさせずにほぼ完封勝利。昨年のBig Tenカンファレンス優勝決定戦と同じ顔合わせとは思えない一方的な試合に終わりました。

オクラホマ大52、ウエストバージニア14

オクラホマ大のハイズマントロフィー候補QBジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)が5TDを奪う活躍を見せウエストバージニア大を大差で粉砕。今シーズンのレコードを7勝0敗とし全米トップレベルのチームであることを見せつけてくれました。

この日のオクラホマ大オフェンスはほぼ完璧な出来で、全米1位となる1試合平均獲得ヤード(621ヤード)、全米3位となる平均獲得点数(50.2点)を誇る爆発力をウエストバージニア大相手に披露。前半だけでハーツは12投中11投のパスを成功させ110ヤードに2TDを獲得。また足でも64ヤードに1TDを稼ぎハイズマントロフィー筆頭候補にふさわしいパフォーマンスを見せました。後半もその勢いは衰えることなく苦手とされていたディープパスも難なく成功させ、リンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督のシステム下で水を得た魚のような活躍で大量得点に貢献しました。

先週テキサス大を倒しカンファレンスタイトルレースで大きく前進したオクラホマ大。今後のスケジュールを見ると11月16日のベイラー大戦以外は難なく白星をゲットできそうな試合ばかりで彼らが3年連続プレーオフに進出する可能性が高まってきました。

イリノイ大24、ウィスコンシン大23

全米6位のウィスコンシン大がBig Tenカンファレンスでも中堅無いしその下とされてきたイリノイ大に乗り込み楽に7勝目を手中にして次戦のオハイオ州立大への弾みとすると思われたこの試合。しかしなんとイリノイ大がここまで無敗だったウィスコンシン大からまさかのアップセットで大金星を手に入れ、ウィスコンシン大のプレーオフ進出への希望に大ダメージを与えました。おそらく今季これまで行われてきた試合の中でも最大級の番狂わせと言えます。

ウィスコンシン大はこの試合に至るまで6試合で255得点29失点と圧倒的強さを見せつけてきたチーム。完封勝利も4つ記録するなど攻守ともに全米随一のものを持っていると思われていただけに、このイリノイ大戦での敗戦は青天の霹靂と言える大惨事でした。

次週のオハイオ州立大とのショーダウンに目がくらんだのか・・・。鉄壁のディフェンスはイリノイ大に141ヤードもランで稼がれ、9クォーターぶりのTDを許す失態も犯します。またQBジャック・コーン(Jack Coan)は後半の重要な場面で反撃を自ら止めてしまうINTパスをしでかし、2点差リードで迎えた第4Q残り時間2分半で自陣47ヤードラインで相手に攻撃権を与えてしまいます。結果このチャンスを元にイリノイ大は39ヤードのFGを試合終了と同時に決め歴史的アップセットを完結させたのです。

ウィスコンシン大のハイズマントロフィー候補RBジョナサン・テイラー(Jonathan Taylor)は試合開始早々に生涯ランヤード5000ヤード超えを記録。まだ3年生なのにこの数字を叩き出したのはすごいことで、来年もし彼が再びウィスコンシン大に戻ってくることがあればさらにこの記録が伸びていくことは確実です。が、それもこれも試合に負けてしまったためにこの大記録は色あせてしまいました。

これで今週末のオハイオ州立大との一騎打ちの重要度が少し落ちてしまいましたが、それでもウィスコンシン大がカンファレンスを制してプレーオフへの希望をつなぐためには負けられない試合となります。残り数日でチームがこの配線から立ち直れるか・・・。ポール・クリスト(Paul Chryst)監督の手腕が試されます。

またイリノイ大のロヴィー・スミス(Lovie Smith)監督としてはNFLから2016年にカレッジに移ってきて以来の大金星。この勝利を糧に是非ともボウルゲーム出場を達成してほしいものです。

オレゴン大35、ワシントン大31

全米12位のオレゴン大が25位のワシントン大をアウェーで撃破。Pac-12カンファレンス代表としてプレーオフに進出するというシナリオを現実のものとさせるための貴重な1勝を獲得しました。

超カレッジ級QBジャスティン・ハバート(Justin Herbert)が4TDを含む280パスヤードでしょうりに貢献。これでオレゴン大はカンファレンス戦で無傷の4勝目。北地区制覇に大きく前進しました。

ワシントン大QBジェイコブ・イーソン(Jacob Eason)も負けじと3TDを含む289パスヤードを記録しましたが一歩及ばず。チームもこれで3敗目となり現実的な目標は勝ち越して高ランクのボウルゲームに出場することにシフトしていきそうです。

ユタ大21、アリゾナ州立大3

上のゲームと同じくPac-12カンファレンスにおいて重要なマッチアップとなった全米13位のユタ大と17位のアリゾナ州立大の一戦は予想を裏切る一方的な試合展開でユタ大が完勝。彼らの擁する強力ディフェンスがアリゾナ州立大の若いオフェンスを完全に押さえ込みカンファレンス南地区レースで一歩抜き出ました。

ユタ大RBザック・モス(Zach Moss)が177ヤードに2TDをラン出稼ぎユタ大フットボール部のラッシュ記録を塗り替えれば、DEブラッドリー・アナイ(Bradlee Anae)がQBジェイデン・ダニエルズ(Jayden Daniels)に3つのQBサックを御見舞し、アリゾナ州立大にトータルでたったの136ヤードしか許しませんでした。

アリゾナ州立大もユタ大から4つものターンオーバーを引き出しはしましたが、どれも得点に結びつけることは出来ず。ダニエルズは18投中成功させたパスはたったの4回。ヤード数も25ヤードということで、1INTと合わせても1年生としての若さがモロに出てしまったゲームとなりました。

ブリガムヤング大28、ボイジー州立大25

両校ともバックアップQBを起用しなければならないという状況の中非常に激しいディフェンス同士の戦いとなったこの試合。トリックプレーを多用したブリガムヤング大が全米14位のボイジー州立大を倒す金星を獲得。ボイジー州立大に今季初の黒星を叩きつけました。

ボイジー州立大はここまで14位で「グループオブ5」出身チームとしては最高位のチーム。シーズン後のボウルゲームの中でもさらに価値があるとされる「ニューイヤーズ6」ボウルのいずれかに「グループオブ5」出身の最高位チームが自動的に出場できることを考えると、この敗戦でボイジー州立大がその出場権をゲットする可能に大いに影響をあたえることになり、同時にそれは他の「グループオブ5」出身チーム(サザンメソディスト大シンシナティ大アパラチアン州立大など)にチャンスが訪れたということにもなります。

テキサス大50、カンザス大48

全米15位のテキサス大はここまでカンファレンス戦で全敗のカンザス大に大苦戦。

第4Q残り2分47秒でテキサス大がTDを奪い47対40と試合終盤で点差を1TD差としますが、カンザス大はたったの96秒で75ヤードの侵攻を見せTDを奪います。しかしここでレス・マイルズ(Les Miles)監督は同点ではなくリードを奪うべく2ポイントコンバージョンを結構。このギャンブルが功を奏して試合時間残り1分ばかりを残して48対47とリードを奪います。

テキサスQBサム・エリンガー(Sam Ehlinger)に残された時間は71秒。まさかホームでカンザス大にやられる訳にはいかない彼らは決死の強襲を見せ、最終的には33ヤードのFGを試合時間終了と同時に決めて50対48とギリギリのところで再逆転に成功。ウィスコンシン大がイリノイ大に敗れたような世紀の番狂わせを何とか逃れました。

ベイラー大45、オクラホマ州立大27

無敗街道を突き進む全米18位のベイラー大オクラホマ州立大と対決。オクラホマ州立大はランク外チームであるにも関わらずラスベガスのオッズメーカーはベイラー大不利というオッズをつける試合でした。その予想通りか試合は終始オクラホマ州立大リードで進みますが、第3Q途中からベイラー大オフェンスが目を覚まし後半だけで35得点を一気に獲得。結果的に45対27という十分な点差をつけて勝利を手にし連勝記録を7に伸ばしました。

ベイラー大が開幕後7勝無敗というのは2015年度以来のこと。このときはアート・ブライルス(Art Briles)が指揮し連勝記録を8まで伸ばしていました。今年のベイラー大がどこまで勝ち進めるのか大変気になるところです。

サザンメソディスト大45、テンプル大21

今季のシンデレラストーリーを紡ぐサザンメソディスト大は6勝無敗で先週テンプル大戦を迎えましたがこれを45対21で撃破。1982年以来の7勝0敗でこのシンデレラエクスプレスはまだまだ止まる気配を見せません。

テキサス大からの転校生シェーン・ビューシェル(Shane Buechele)が自身最高となる457ヤード(6TD)を投げ、そのうちの250ヤード(3TD)をWRレジー・ロバーソン(Reggie Roberson)がキャッチ。追いすがるテンプル大を後半一気に退けたSMUが終わってみればダブルスコアで同じアメリカンアスレティックカンファレンス(AAC)に所属するテンプル大から貴重な1勝をもぎ取りました。

これでSMUは同カンファレンス西地区で首位を守り夢のカンファレンスタイトル、さらにはボイジー州立大が敗れたため「グループオブ5」の盟主として「ニューイヤーズ6」ボウルに出場するという大きなゴールに近づきました。次戦はここまで3勝4敗のヒューストン大、その次にはメンフィス大、さらにそこから2週間後には海軍士官学校とまだまだ強敵が残っていますが、ここまできたら行き着くところまで是非とも突き進んでもらいたいものです。

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