やるからには勝ちたい・・・それはどのチームも目指すところですが、当然ながら勝者あるところに敗者あり・・・。それが勝負の世界の定めであります。強豪チームとそうでないチームの差がどんどん離れていくFBS(フットボールボウルサブディビジョン)ではいつまでたっても勝ち越せないチームも居たりします。一方で強豪や名門とされるチームも負のスパイラルにハマると負けが込んできたりして、それが結果的にコーチ陣の退陣というような結果に繋がったりします。
昨年もそのような名のあるチームなのに負け越してしまったチームが幾つかありましたが、今回はその中で2019年度シーズンにはその悔しさをバネに復活して勝ち越すと思われるチームを独断で5チーム選んでみました。
ネブラスカ大
古豪ネブラスカ大の再建を託されて昨年母校に凱旋したスコット・フロスト(Scott Frost)監督でしたが、その初年度の滑り出しは0勝6敗と最悪なものでした。1年目とはいえ、長い歴史を持つネブラスカ大にて史上最悪の出だしを記録してしまったことは「彼で本当に大丈夫なのか?」と思わせるには十分でした。
しかし2017年に彼が指揮して無敗記録を樹立したセントラルフロリダ大での1年目(2016年)もまた厳しいスタートを切っていました。その彼がたったの2年でセントラルフロリダ大をシンデレラチームに仕立て上げたのですから、今年2年目となるネブラスカ大でも同じことが起きるのではないかと感じているファンは少なくないでしょう。
実際昨年の後半6試合を4勝2敗で乗り切ったネブラスカ大はQBエイドリアン・マルティネス(Adrian Martinez)を軸に将来に向けての希望を残してシーズンを終えました。昨年4勝8敗と沈みましたが、今年はプレシーズンランキングで24位にランクされたりと周囲の期待も上がっています。セントラルフロリダ大で2年目に達成した全勝シーズンを再現できるとは思えませんが、少なくとも勝ち越してBig Tenカンファレンス西地区でその存在感を見せるまでに盛り返してくるのではないでしょうか。
参考記事2年目のマジック?【ネブラスカ大プレビュー】メリーランド大
メリーランド大といえばOLジョーダン・マクネアー(Jordan McNair)が不幸の死を遂げ、それに関連してD.J.ダーキン(D.J. Durkin)監督が謹慎処分になり、それが解けて現場復帰するとそれを良しとしないファンの大きな批判をうけて大学側はダーキン監督を解雇。ポテンシャルの高かったメリーランド大はそのドタバタ劇の中で5勝7敗に沈みました。
関連記事メリーランド大、ダーキン監督を謹慎解除するも翌日解雇に
そしてチーム再建のために白羽の矢が立ったのがアラバマ大でオフェンシブコーディネーターを務めていたマイク・ロックスリー(Mike Locksley)氏。彼は以前メリーランド大に所属していたこともあり信頼度は高く、また当時リクルーティングの際にメリーランド州周辺の高校チームらと絶大なる絆を築いていたこともあって、彼の起用は理にかなっていました。
ダーキン前監督のフットボールコーチとしての手腕は確かなもので、特にリクルーティングでも毎年結果を残してきた人物でした。ですからチームの選手の質は中々のものであり、そのロースターを受け継いだロックスリー監督にとって既に土台は出来ていると言ってもいいと思います。
昨年先発QBだったカシム・ヒル(Kasim Hill)は膝の前十字靭帯(ACL)を昨シーズン中断裂し、しかもオフシーズンにはテネシー大に転校していってしまいました。しかしながらチームにはテレル・ピグローム(Tyrrell Pigrome)というベテランが残っています。またRBタイ・ジョンソン(Ty Johnson、現デトロイトライオンズ)も卒業してしまいましたが、リクルーティングのお陰で次期戦力は揃っており、特にアンソニー・マクファーランド(Anthony McFarland)はBig Tenカンファレンスでも名を挙げるポテンシャルを秘めた選手です。
昨年のスキャンダルでズタズタになってしまったメリーランド大ですが、リクルーティングで養った層の厚さと、アラバマ大でコーチとして経験を積んだロックスリー監督ならば、彼らが5勝7敗という昨年のレコードを上回ることは十分可能だと思います。
テネシー大
テネシー大では「災難」となったブッチ・デーヴィス(Butch Davis)政権後のチームを立て直す大役を元アラバマ大ディフェンシブコーディネーター、ジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)氏に昨年託しました。その2018年度シーズンのテネシー大は「ロッキートップ」から谷底まで全て見るアップダウンの激しいシーズンを経験したのです。
デーヴィス前監督の最終シーズンだった2017年度は創部史上最悪という4勝8敗であり、これ以上ないというほど下に落ちていました。プルイット監督はまずこの負けに慣れてしまったチームを立て直し、いずれは1990年代のあの強かったテネシー大に戻ることがゴール。昨年はアーバン大やケンタッキー大というランカーたちから白星を奪い残り2試合で1勝すればボウルゲームに出場できる6勝に手が届くというところまで行きました。
しかしミズーリ大に50対17と大敗すると、同じテネシー州出身のヴァンダービルト大にも38対13で敗れ5勝7敗となり2年ぶりのボウルゲーム出場はなりませんでした。特にライバルと言いながら総合成績74勝33敗5分けという圧倒的対戦記録を持っていたヴァンダービルト大に敗れたのは、2016年から3連敗という記録も相まって、プルイット体制に期待を寄せいていたファンにため息をつかせてしまいました。
しかし明るい材料もありました。昨年のディフェンス陣は若く経験の浅い選手ばかりでしたが、ディフェンス畑でコーチングをしてきたプルイット監督、しかもアラバマ大という強豪チームで養ってきた英知とリクルーティング術をすれば、このユニットは今後どんどん良くなっていくはずです。
またQBジャレット・グアランタノ(Jarrett Guarantano)が頼れるQBに成長する必要もありますが、先程メリーランド大のところでも触れたようにカシム・ヒルがテネシー大入りしており、この先発争いの競争はグアンタラノには良い刺激となるはずです。
今季に関しての不安材料はOL陣。昨年崩壊したこのユニットは立て直すことがテネシー大にとって最大の課題です。ここにはポテンシャルの高い新入生が何人かすでに名を挙げており、またアラバマ大からの転校生であるブランドン・ケネディー(Brandon Kennedy)も怪我さえ完治していればいい戦力になるに違いありません。
ジョージア大、フロリダ大と合わせてかつてSEC東地区の三巨頭のいちチームに数えられていたテネシー大。今年が彼らにとってその位置に復活する年かどうかはわかりませんが、少なくとも勝ち越してボウルゲームに出場することは可能なのではないでしょうか。
フロリダ州立大
この記事でも紹介したように昨年のフロリダ州立大は地に落ちていました。ウィリー・タガート(Willie Taggart)新体制となった記念すべき2018年度は5勝7敗と失速。彼らが負け越したのはなんと1976年以来ということで、それと同時にボウルゲーム出場も36年ぶりに逃しました。
ジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher)前監督がテキサスA&M大へと去った後にフロリダ州立大にやってきたタガート監督でしたが、チームはタガート監督の厳しいチーム方針に継いていくことが出来ず、先発QBデオンドレ・フランシス(Deondre Francois)は怪我から復帰するも怪我を負う前ほどのシャープさを失い、またその遠因とも言えるオフェンシブラインの崩壊・・・。昨年は36つものQBサックを許し、また1キャリーのランヤードが3ヤードにも届かない(130チーム中129位!)とチームの屋台骨が崩れ何もかもがうまういかないシーズンとなってしまったのです。
しかしそのオフェンシブラインもその経験を活かし昨年よりも大きくなって返ってくることでしょう(あれより下回ることはないでしょうから)。フランシスは結局退部してFCSのハンプトン大へ転校してしまいましたが、彼が怪我していたときの代役だったジェームス・ブラックマン(James Blackman)がウィスコンシン大からの転校生アレックス・ホーニブルック(Alex Hornibrook)との先発争いに競り勝ち先日先発に任命されました。ブラックマンがだめでも経験豊富なホーニブルックがいるQB陣はある意味安泰といえるかもしれません。
どちらにしろリクルーティングではある程度の成功を収めている(全米14位)フロリダ州立大ですから、少なくとも昨年の記録を下回ることはないでしょう。もし仮にそうなってしまったとしたら・・・その時は2年目とは言えタガート監督のクビは怪しくなるかもしれません。
カンザス大
昨シーズン後各地では監督の解雇および新雇用の話が飛び交っていましたが、その中でも驚きの起用となったものにアリゾナ州立大のハーム・エドワーズ(Herm Edwards)氏とカンザス大のレス・マイルズ(Les Miles)氏が挙げられるかと思います。
関連記事元ルイジアナ州立大監督のマイルズ氏の再就職先は・・・マイルズ氏といえばSECの強豪ルイジアナ州立大(LSU)で12年間チームを指揮した名将。2007年にナショナルタイトルを獲ると2011年にもBCSナショナルタイトルゲームに出場。そこではアラバマ大に負けはしましたが、LSUでの通算成績114勝34敗と数字的には全く悪くありませんでしたが、ナショナルタイトルを再び欲した大学側によって解雇されてしまったのが2016年度シーズン途中。それ以来マイルズ氏に触手を伸ばすチームは何故か現れませんでしたが、2019年度ようやく彼が現場に復活してきます。
カンザス大は過去2007年に12勝1敗という凄い成績を残したシーズンがありはしましたが、基本的には(言葉は悪いですが)Big 12カンファレンスのお荷物チームと言われ続けてきました。そのチームがマイルズ氏のような著名コーチを招聘できたことにまず驚いたのです。
とはいえ、マイルズ新監督が就任したからと言ってカンザス大が今年からいきなり強くなるということはちょっと願い過ぎかもしれません。が、前監督のデヴィッド・ビーティ(David Beaty)氏指揮下のチームは昨年3勝9敗という成績ながらディフェンス陣が前年度よりも向上していたという事実もありますから、それを引き継ぐマイルズ監督としては嬉しい話でしょう。
現実的に言ってオクラホマ大、テキサス大、オクラホマ州立大などがせめぎ合うBig 12カンファレンスにおいてテキサス大が彼らに立ち向かえるとは思えませんが、LSUでその存在感を放っていた「Mad Hatter」がサイドラインに戻ってくるだけでも個人的にはカンザス大に肩入れしたくなってしまいます(笑)。将来的に8勝ないし9勝チームに育つ可能性はありますが、今回ここにカンザス大を紹介したのは私の希望的観測によるところが大きいです(汗)。