一蓮托生【オクラホマ大プレビュー】

一蓮托生【オクラホマ大プレビュー】

QBジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)は過去3年間アラバマ大にてファンの記憶に残る素晴らしい選手に成長しました。が、それも昨年は後輩であるトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)に先発の座を奪われ、結局昨シーズン後に自身が持つ最後のプレー資格をアラバマ大以外で行使することを決断。アラバマ大を去って向かった先はオクラホマ大でした。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

オクラホマ大は昨年のハイズマントロフィー受賞者で2019年のNFLドラフトで総合ドライチ選手となったQBカイラー・マレー(Kyler Murray、現アリゾナカーディナルス)を失いました。そのチームをハーツが転校先に選んだことはごく自然なことともいえます。アラバマ大とオクラホマ大はスクールカラーも似ていますしね(笑)。

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昨年CFP準決勝で対決したハーツとマレー

しかしマレーの後を継ぐというのはいかにアラバマ大で先発経験があるハーツといえども荷が重くないとは言えないはずです。彼はアラバマ大を卒業した後に転校していますから、オクラホマ大で今年から試合出場が可能です。そしてチームを率いるリンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督は過去にベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield、現クリーブランドブラウンズ)、そしてマレーと2年連続ハイズマントロフィー受賞QBを輩出していますから、3人目のハイズマントロフィー受賞者としてハーツには期待がかかってしまうのは仕方のないことです。

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オクラホマ大時代のメイフィールド(6)とマレー(1)

メイフィールドにしてもマレーにしてもライリー監督が自ら引き連れてきた選手ではありませんが(両人とも前監督のボブ・ストゥープス氏がリクルートしてきました)、ハイズマントロフィーを受賞するほどの有能QBに育て上げたライリー監督の腕は確かなものです。

そのライリー監督のシステムにハマれば誰でも名QBになるのか・・・それは定かではありません。しかし多かれ少なかれQBというのはコーチがお膳立てしたプレーを理解し体現する能力を必要とされますから、ハマるプレーを組み立てることのできるコーチの存在は大きいはずです。ライリー監督の十八番はパス重視のエアーレイドオフェンスを主軸にしていますが、彼の持ち駒である選手の能力を十分に生かせるように微調整してあるオフェンスですので、やはりその点はライリー監督の手腕であると言えます。

ハーツは経験豊富で実績もあるQBです。ですからライリー監督下で彼の全てをリフォームする必要はありません。が、彼のシステムにハマるためには調整は必要となってきます。

アラバマ大での3年間で最初の2年間を先発QBとしてプレーしたハーツですが、先発QBとしての戦績は25勝2敗と素晴らしい数字を残しています。パス成功率は61パーセントで総パスヤードは4861ヤード。奪ったTD数は40に対しINTはたったの10。昨年ハイズマントロフィーレースでマレーと最後まで争ったタガヴァイロアがチームに居なければハーツが先発を務めていたことでしょうから、そうなれば上記の数字は更に上がっていたことでしょう。

しかし振り返ってみると、彼が1年生だった2016年時のオフェンシブコーディネーター、レーン・キフィン(Lane Kiffin、現フロリダアトランティック大監督)氏、並びに2017年時のOCブライアン・デイボール(Brian Daboll、現バッファロービルズOC)氏はオフェンスをなるべく簡素化し、ショートパスを軸に組み立てていました。その理由の一つとしてハーツがミドル・ロングレンジのパスを不得意としていたからです。

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2016年度シーズンのハーツとキフィン氏

それに比べ、ライリー監督の息の掛かったメイフィールドとマレーはその点に関して言えば何の問題もありませんでした。両人が持つ強肩、タイミング、ポケット内での冷静さを持ってあらゆるレンジにおいて敵ディフェンスを攻略していったからです。ハーツもそのポテンシャルを持っては居ますが、問題はその安定度です。

これまでのハーツを見てみるとスナップ後に相手ディフェンスを読む時間が短いのです。ポケット内で我慢できなくなるとすぐスクランブルしてしまう癖があるわけです。ここであと1、2秒我慢できればルートが開けてくるというケースも恐らくあったことでしょう。それが恐らくミドル・ロングレンジパスが前述の二人よりも数字的に劣っている理由の一つです。

ただ、昨年のSEC優勝決定戦で負傷したタガヴァイロアの代役として起用されたハーツはジョージア大のディフェンス相手に過去2年間に比べるとかなりポケットで我慢できていたように見えました。それはOCダン・イーノス(Dan Enos、現マイアミ大OC)氏の手腕によるところが大きいのでしょうが、これは今季のオクラホマ大でプレーする上でポジティブな点と言えましょう。

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ジョージア大戦での逆転勝利の立役者となったハーツ

春季トレーニング、そして夏のプレシーズンキャンプを通してライリー監督の指導下でその点にさらに磨きがかかっていれば、経験値、パワー、走力でトップクラスのハーツが本当にオクラホマ大3人目のハイズマントロフィー受賞QBとなる可能性も出てくるかもしれません。実際ラスベガスのあるオッズを見ると、ハーツが今季ハイズマントロフィーを獲得する確率はオクラホマ大に転校してきた時に少し上がったといいますから。

(ちなみに今のところラスベガスが見る最有力候補はクレムソン大トレヴァー・ローレンスとハーツの元チームメートであるタガヴァイロアだそうです)

ライリー監督は今のところ2019年度の先発QBを指名していません。それはハーツと元5つ星リクルートであるスペンサー・ラトラー(Spencer Rattler)の間で争われることになっており、ラトラーのモチベーション維持のことも考えればライリー監督はギリギリまで先発QBが誰になるか決断することはないでしょう。が、ここまできてハーツが先発QBとならないシナリオはまず考えられません。ラトラーがハーツを上回らない限りは。

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ライリー監督はハーツを昇華させることができるか

昨年のオクラホマ大はディフェンス陣が崩壊したその穴を埋めるようにマレーが大活躍し、その結果カレッジフットボールプレーオフ(CFP)に駒を進めることができ、彼自身もハイズマントロフィーを獲得できたという事実があります。恐らくそのディフェンスは今季成長していることでしょうが、昨年のチームはマレーが牽引したという事実は変わりません。そして恐らく似たような状況にハーツも直面しなければならなくなるでしょう。アラバマ大では超強力ディフェンスのバックアップを受けていたハーツですが、同じことをオクラホマ大ディフェンスに期待するのは・・・どうでしょうか。

ここ最近のカレッジフットボール界においてハーツほど転校生が注目をあびることはありませんでした。もし彼が先発QBの座を確保し結果を残すことができれば、彼のレガシーは永遠に語り継がれることでしょうし、プロの世界への道も開けてきます。そしてライリー監督にしてみれば、ハーツの短所を克服させてメイフィールド、マレーに続くエリートQBに育て上げることができれば、QB育成の名伯楽として彼の名は確固たるものになるのです。

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