エクストラポイント【第11週目】

エクストラポイント【第11週目】

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ベースボール・マガジン社 (編集)

お祭り騒ぎ!

先週憎きアラバマ大を8年ぶりに倒し溜まりに溜まった鬱憤を晴らすことができたルイジアナ州立大。スコアは46対41と僅差ではありますが、全体的に見てルイジアナ州立大の方がチームとして一枚上でした。

試合が終わった瞬間のチームの喜び方は様々でした。サイドラインで泣く者、勝者の美酒ならぬスポーツドリンクのシャワーを浴びるもの、スターQBを担ぎ上げるもの・・・。アウェーながらルイジアナ州立大一行はこの勝利に酔いしれたのでした。

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チームメートに担がれるQBジョー・バロウ

またこの試合を観戦していたアラバマ大志望のリクルートたちに向かって「俺達と一緒にプレーしよう!」と叫んで勧誘したりとある意味なんでもありでした(笑)。

そして試合後のルイジアナ州立大ロッカールームでは大興奮のエド・オルジェロン(Ed Orgeron)監督が炎のスピーチ!!

“We’re going to beat their ass in recruiting. We’re going to beat their ass every time they see us. You understand that? Roll Tide what? F*** you.”

(俺達はリクルーティングでも奴らを叩きのめし、これからは何度対戦しようが奴らの叩きのめす。分かったか?ロールタイドがなんだって?ファXXユー!)

とにかくお祭り騒ぎの試合後だったのですが、このビデオのオルジェロン監督の言葉はかなずしも紳士的ではなく、これがSNSで出回ってしまったから大変。後日オルジェロン監督はこのビデオが外に出てしまったことを謝罪しました。

しかしもともとロッカールームで起きたことは門外不出とするもの。コーチだって人間ですし、彼らがアラバマ大に長年苦渋を飲まされてきたわけですから、これくらい言わせてあげたって構いませんよね?


What a Catch!

このルイジアナ州立大の大勝利にはQBジョー・バロウ(Joe Burrow)が大いに貢献し、シーズン後に贈られる最高峰の個人賞であるハイズマントロフィーをほぼ手中に収めたと言ってもいいくらいのパフォーマンスを見せてくれました。

ただもちろん彼だけでこの試合に勝っただけでなく当然ながらチーム全体の力があったこそなのですが、その中でも前半残り時間約1分というところで見せたバロウのパスを受けたWRサデウス・モス(Thaddeus Moss)のキャッチが超技巧技だったのです。

ビデオでよく見るとキャッチした際につま先ほんの数ミリがインバウンドに残っていて確かにキャッチなのですが、ビデオリプレーで見てみるとモスは一度アウトオブバウンドになりそこから戻ってきてキャッチしており、ルールブックによるとこのキャッチはインコンプリートパス扱いされるはずなのです。

しかし長いビデオ判定の末このキャッチは成功ということでルイジアナ州立大はアラバマ大1ヤードラインから1stダウン。結局ここを起点としてTDを奪い点差を広げたのです。

ただルール上は許可されないキャッチのはずなのにビデオ判定に持ち込まれた末に判定が何故覆されなかったのか。疑問に思ったのは筆者だけではないはず

通常選手は自分の意思でラインの外へ出てしまった場合はボールに触れることが許されていません。しかし不可抗力(大抵の場合は相手選手に押されて外に出た場合)のケースだと外に出ても戻ってきてパスを受け取ることが出来るというルールがあります。

リプレーを見るとモスは相手ディフェンダーのカベレージを受けていますが明らかにコンタクトはありません。つまりモスは自分の力で外に出てしまったわけですから、この場合は彼はパスを受け取ることができないのです。

なら何故インコンプリートパスの判定に覆らなかったのか。それはどのようにしてアウトオブバウンドになったのかというのはビデオ判定の管轄外だからなのです。というのはフィールド上の判定はモスがインバウンドにとどまってパスをキャッチしたというものでしたが、この場合ビデオ判定で確かめることができたのはモスの足がキャッチの際にインバウンドにあったかどうかということだけであり、彼がキャッチする直前に相手に押されて外に出たのかどうかというのはビデオ判定外事項なのです。

だからビデオ判定員はモスが自力で外に出たのかどうかなどは判定する必要もなければ覆す必要もなかったわけです。故にモスのキャッチは認められルイジアナ州立大の追加点に繋がったのですね。

ビデオ判定でも判定の対象となるプレーとそうでないプレーがありちょっと複雑。それはカレッジでもNFLでも同じです。

ちなみにこのモス、名前から冊子が突いた方もいるかもしれませんが、彼はあのレジェンド、ランディー・モス(Randy Moss、元マーシャル大)の息子。現在アメリカのスポーツ専門局ESPNでNFLのアナリストをしている彼はTV番組で息子のスーパーキャッチを紹介されて大盛り上がり。才能は遺伝するというわけですね。

Row the Boat!

第11週目に盛り上がったのは上記の試合だけではありません。全米4位のペンシルバニア州立大を17位のミネソタ大が倒した試合も大いに盛り上がりました。試合後には観客が所狭しとフィールドになだれ込みミネソタ大ファンの海と化すなど1904年以来の9連勝をキャンパスを上げてお祝いしたのです。

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試合後のTCFバンクスタジアム。すごい光景です。

ミネソタ大といえば第2次世界対戦前に強豪チームとされてきましたが、1941年にナショナルタイトルを取った以降は中堅校と化し、過去100年間で二桁勝利数を上げたのは2003年度シーズンのみ。そんな彼らを率いることになって3年目となるのがP.J.フレック(P.J. Fleck)監督。

フレック監督は2016年度に「グループオブ5」のウエスタンミシンガン大で13勝1敗という素晴らしい成績を収めその実績を買われてミネソタ大にやってきました。ウエスタンミシガン大でのモットーだった「舵を漕げ!(Row the Boat)」(みんなで力を合わせて同じ方向へ向かわなければゴールにはたどり着けない、という意味が込められています)をミネソタ大にも持ち込みたったの3年で9連勝という偉業を成し遂げているのです。

非常に情熱的なフレック監督は厳しい規律でチームをまとめ上げるアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督というよりは、そのカリスマ性で若い選手達に訴えていくクレムソン大ダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督のようなタイプの人物。それを如実に示したのがペンシルバニア州立大戦で勝った後のロッカールームでのこの一幕。

これが大学監督の振る舞いだというのですから!こういう監督だからこそ選手たちは付いて行きたくなるんでしょうね。そんな敏腕監督だからこそ他の大学からヘッドハンティングされる可能性も出て来るでしょうが、掴んだ魚を逃さまいとミネソタ大はつい先日フレック監督と7年の契約延長を結び、年収も100万ドル上乗せとなる460万ドル(1ドル100円計算で約4億5000万円)に跳ね上がりました。また彼がもし別のチームに移籍した時に発生する違約金(バイアウト費)も400万ドルと高額になり、ミネソタ大がフレック監督に長期政権を築いて欲しいという本気さが現れています。

ミシガン州立大よ何処へ行く・・・

Big Tenカンファレンスミシガン州立大は2015年にCFPに進出するなど強豪校として知られてきましたが、その翌年に3勝9敗とガタ落ちしたかと思えば2017年には10勝を挙げて復活。しかし2018年に7勝6敗とギリで勝ち越すと近年は安定感が全くないチームとかしてしまいました。そして今年はここまで4勝5敗。いいところが全くありません。

2007年からチームを指揮するマーク・ダントニオ(Mark Dantonio)監督はアラバマ大のセイバン監督がミシガン州立大の監督だったときにチームのDBコーチを務めていたことがあり、コーチングスタイルはセイバン監督のものに通じるものを持っています。リクルートしてくる選手たちも俗にいう「ブルーカラー(労働者階級)」出身の子ばかりで、派手さはなくてもタフネスさでのし上がってきたチーム。

しかしここ最近のチームの感じを見ているとダントニオ監督の手腕に陰りが見えてきたのかな・・・と感じずにはいられません。個人的に派手さがない地味なこのミシガン州立大が結構お気に入りなのですが・・・。ダントニオ監督も地元では往々にして認められている監督ですからこの結果を受け入れられない人は多いでしょうが、この流血状態をどこかで止血してあげないと致命傷となりかねます。

またダントニオ監督が就任して以来これまで11人の選手が性的暴行事件を起こしていたり、2017年にレイプ事件を起こしていた元選手がかつて同じような事件を高校時代に起こしていたにも関わらずそれを知りながらダントニオ監督はこの選手をリクルートしていたとか、最近はあまりいい話が彼の周りには存在しません。そこにきてこのフットボール部の体たらくぶり。このままダントニオ政権が終わりを告げてしまうのかと思ってしまうのもしょうがない話です。

ダントニオ監督の去就問題がチラつく中、彼のボスである大学の体育局長ビル・ビークマン氏はダントニオ監督の去就問題など話に上がったことはない、という発言をして噂話をもみ消しダントニオ監督支持を明らかにしました。しかしその翌日となった先週のイリノイ大戦では一時28対3と大量リードを奪うもまさかの大逆転負けを喫してしまい、この結果を見てもビークマン氏が同じセリフを吐けるのかというファンの声まで上がる始末。

関連記事イリノイ大37、ミシガン州立大34

しかもこの試合では第4Q残り10分をきり31対24でまだミシガン州立大がリードしている状況でQBブライアン・レウワーキ(Brian Lewerke)の頭部に相手選手が激しく激突。その直後の様子を見ると明らかにふらついている姿を見ることができます。

チームメートも助けを呼ぶような仕草を見せますがレウワーキはベンチに下げられることなくプレーを続行。その直後に放ったパスがインターセプトされて76ヤードのリターンTDに。点差を31対30と1点差にまで縮められてしまうのでした。

頭部への怪我と言えば「脳震とう(Concussion)」を思い浮かべますが、ここ数年の世間での認知度を考えればこの怪我を軽く見ることはできません。そんな中彼を使用し続けたことにも批判が集まりそうです。

(試合後ミシガン大学側はレウワーキは医師団から診察を受けてプレー続行を許可されたという声明を発表しました。)

どちらにしてもこれまでなら負けることなど考えられなかったイリノイ大に大逆転負け。そしてこの敗戦で彼らは4連敗。残りはミシガン大、ラトガース大、メリーランド大の3試合を残していますが、このうち2勝しなければボウルゲーム出場権を逃してしまいます。果たして彼らは今シーズンをサルベージすることができるでしょうか?

 

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