Game of the Century II【ルイジアナ州立大vsアラバマ大リキャップ】

Game of the Century II【ルイジアナ州立大vsアラバマ大リキャップ】

全米中が注目した第11週目の目玉ゲーム、2位のルイジアナ州立大と3位のアラバマ大の試合。深南部では有名なライバリーでもあるこのマッチアップは今年までアラバマ大が8連勝中。最後にルイジアナ州立大がアラバマ大に勝ったのが2011年のレギュラーシーズン。この時はルイジアナ州立大が1位、アラバマ大が2位ということもあり「世紀のゲーム(The Game of the Century)」などと謳われました。それを踏まえ今年のこのゲームはずばり「世紀のゲームパート2」と位置づけられたのですが・・・。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ドナルド・トランプ大統領夫妻も駆けつける厳戒態勢で行われたこの試合、いつもなら毎年必ずナイトゲームなのですが今回は大人の事情で3時30分キックオフ。試合前はルイジアナ州立大有利とされる中、アラバマ大のホームスタジアムであるブライアント・デニースタジアムは真紅に染まりレギュラーシーズンにも関わらず異様な興奮度に包まれた中試合は始まりました。

前半戦

試合開始まで出場が微妙だったアラバマ大QBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagoviloa)が先発として登場。彼は3週間前のテネシー大戦で足首を負傷しその翌日に手術を受けたため、実戦は3週間ぶりとなりました。彼の足首の出来が勝負を左右するとも言われましたが・・・。

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試合はアラバマ大の先攻で始まりましたが、タガヴァイロアがWRヘンリー・ラグス(Henry Ruggs)に一投目から20ヤードのパスを繋げるとスタジアムはタガヴァイロア復活を祝う大歓声。その後も確実に相手陣内に攻め込みますが、相手陣内8ヤードラインでタガヴァイロアがボールをファンブルし相手にリカバーされてせっかくの先制のチャンスを逃します。

返しのルイジアナ州立大の攻撃ではQBジョー・バロウ(Joe Burrow)が3連続パスを成功させ、最後はWRジャマー・チェイス(Ja’Marr Chase)への素晴らしい33ヤードパスTDが決まって彼らがまず先手を打ちます。

さらにアラバマ大はパントでパンターがボールを後方にそらす失態を犯し相手に絶好のフィールドポジションを与えてしまいます。これをすかさずものにしたルイジアナ州立大はFGを決めて10対0とリードを広げます。

いいところがなかったアラバマ大ですが、第1Q終了間際にPRジェイレン・ワドル(Jaylen Waddle)の77ヤードのリターンTDが決まり彼らがこの日初得点をスコアボードに刻みます。

しかしその後はルイジアナ州立大のペースで進みタガヴァイロアが自陣奥深くでパスINTを犯すなどして前半終了残り30秒からなんと2つのTDを奪われて33対13という大量得点差を付けられてしまったのです。

前半はとにかくルイジアナ州立大が押せ押せムード。アラバマ大もタガヴァイロアの術後3週間とは思えないパフォーマンスを見せましたが、ミスも目立ち怪我の影響及びチーム力の差がモロに出てしまいました。


後半戦

なんとか後半立て直して流れを引き寄せたかったアラバマ大は第3Q最初のルイジアナ州立大のドライブでバロウからファンブルを引き出していい出だしを見せますが3&アウト。中々チャンスを活かせない展開が続きましたが、ボールをRBナジー・ハリス(Najee Harris)に託すプレーを重用しリズムを掴み始めます。そしてタガヴァイロアからハリスへのパスTDとハリスのTDランで一気に14点を計上し、点差が33対27と5点まで詰め寄ります。

死んだように静まり返ったホームのファンたちですがこの2得点で彼らのボルテージは急上昇。火がついてしまったアラバマ大を誰も止められないと思われましたが、返しの攻撃でバロウが鬼神のごとしパフォーマンスでルイジアナ州立大のドライブを活かし続け最後はクライド・エドワーズ・ヘレイアー(Clyde Edwards-Helaire )のランTDが決まり再びルイジアナ州立大がリードを広げ、せっかくのアラバマ大の反撃ムードを摘むんだのです。

なんとしても早々に得点して逆転のチャンスを得たかったアラバマ大は14プレーを4分半かけてこなし最後はWRジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy)への5ヤードパスTDでなんとか再び点差を5点に縮めます。しかし残された時間は5分半。ここでアラバマ大ディフェンスはルイジアナ州立大オフェンスを止めなければならなかったのですが、ここに立ちはだかったのがバロウだったのです。

彼は1度はフィールド中央付近でQBサックを食らいスタジアムのボルテージはマックス状態となりますがさすがハイズマントロフィー最有力候補。これに動じずボールをアラバマ大陣内へ進めます。そして迎えたこの試合の最大のキープレー。敵陣29ヤードラインで迎えた3rd&2ヤード。エドワーズ・ヘレイアーにハンドオフするかと見せかけたバロウがQBキープでアラバマ大ディフェンスの裏をかき見事にコンバート。そして最後はエドワーズ・へレイアーのTDランでダメ押しとなる46点目を叩き込み、10万人以上の観客で埋まったブライアント・デニースタジアムを沈黙させたのです。

試合時間の残りは1分半。誰もが終わった・・・と思っていたところタガヴァイロアが電光石火の85ヤードパスTDを一投目からWRデヴォンタ・スミス(DeVonta Smith)に決めてたったの16秒で3度目となる5点差に詰め寄ります。もしかして・・・と思わせるには十分な雰囲気が漂いましたが、オンサイドキックはルイジアナ州立大に確保され、さらにアラバマ大にしてみれば絶対に止めなければならなかったファーストプレーでエドワーズ・へレイアーに12ヤードの激走を許し1stダウンを奪われて万事休す。アラバマ大の追撃も虚しく遂にルイジアナ州立大が憎きライバルから8年ぶりに白星を奪ったのでした。

総評

試合を終えて振り返るとスタッツだけみればかなり似通った数字が並んでいます。

しかしそれでもこの試合の内容を反映しているものが3つ。まずは1stダウンの数。ルイジアナ州立大が7つも多いですが、バロウがこれでもかとドライブを活かす好プレーを連発したことがここに現れています。

次はターンオーバー。ルイジアナ州立大1に対しアラバマ大2と大差はありませんが、タガヴァイロアが放ってしまったINTパスはレッドゾーンでの失敗だったためこれがなければまた事態は変わっていたかもしれません。

そしてボール所有時間(タイム・オブ・ポゼッション)。アラバマ大が約25分のところルイジアナ州立大が約35分と10分以上の差があります。ここからもルイジアナ州立大が巧みにボールをコントロールしていたことが伺えます。

目立ったのはアラバマ大ディフェンスが例年よりもダウングレードしていたということ。特にフロントセブンの力不足は明らかでDL陣は中々相手OL陣の壁を抜けることが出来ず、ポケットの中でバロウにプレーを決めさせるに充分な時間を与えてしまっていました。そして2列目のLB陣のミスタックルが連発。ディフェンス王国のアラバマ大らしからぬパフォーマンスでした。

ただアラバマ大OL陣はルイジアナ州立大DL相手に素晴らしいパスプロを見せ、怪我で機動力が落ちているタガヴァイロアをほぼ守り抜きました。だからこそ術後3週間の足首ながらタガヴァイロアは418ヤードも投げきったのです。

そのタガヴァイロアですが前半はすこし精彩を欠いていたように思えますが後半チームがRBハリスを多用することにシフトチェンジしたおかげで彼のパスが活きるようになり結果的には全米随一のバックフィールドと言われるルイジアナ州立大DB陣から400ヤード以上を彼の肩で奪ったのです。

が、この試合で決定的な差となったのがルイジアナ州立大QBバロウの存在。さすがハイズマントロフィー最有力候補と謳われるだけある存在感でオフェンスを見事に牽引。アウェーというやり辛い状況の中常に冷静沈着。かと思えば身を挺してファーストダウンを取りに行く鬼神のごとしQBランを見せるなどしてアラバマ大ディフェンスを翻弄。彼のQBキープはアラバマ大ディフェンスに何度も襲いかかりましたが、彼らはバロウを止めることが出来ませんでした。今シーズンはのこり1ヶ月ありますが、この試合を見た限りではバロウのトロフィー獲得はほぼ確定なんじゃないかと思わせてくれるくらいの抜群のパフォーマンスでした。

今後への影響

サウスイースタンカンファンレンス(SEC)西地区同士の激突となったこの試合を制したルイジアナ州立大は地区優勝に向けて大きく前進。2011年以来のリーグタイトル獲得、並びにカレッジフットボールプレーオフ(CFP)進出にまた一歩近づきました。

一方アラバマ大としてはここまで5年連続CFPに出場していますがその連続記録に黄色信号が灯りました。アラバマ大が西地区タイトルをゲットするには残りのミシシッピ州立大アーバン大の試合に勝つだけでなく、ルイジアナ州立大があと2敗しなければならないのですが、彼らの残りの対戦相手はミシシッピ大アーカンソー大テキサスA&M大ということで彼らがこの3チームから2敗するとは考えられないからです。

となるとアラバマ大に残された道はSECタイトルを手に入れることなくCFP出場を果たした2017年のようなシナリオが必要になってきます。彼らとしては4つ目の椅子に座ることが目標になるでしょうが、これには彼らより上にランクされるチームたちが落っこちてくる必要があります。ということはこのルイジアナ州立大との敗戦後の2回目のCFPランキングでアラバマ大がどこまで順位を落とすのかにかかってきます。焦点は選考委員会がアラバマ大をオレゴン大ユタ大オクラホマ大の順位にどう絡めてくるのかです。

4位のペンシルバニア州立大ミネソタ大からアップセットを食らってしまいましたから(後日アップします)空いた2つの席に入ってくるのは順当に行けばクレムソン大ジョージア大でしょう。ジョージア大はSEC東地区チャンプとしてルイジアナ州立大とカンファレンス優勝決定戦で対決することになるでしょうから、ここでジョージア大が負ければ最終的に4つある席の1つが開くことになります。ここにPac-12の王者が食い込むのか、Big 12チャンプのオクラホマ大(もしくはベイラー大)が食い込むのか、はたまた1敗でタイトルのないアラバマ大が滑り込むのか。これが今考えられる大雑把なシナリオだと思います。

何れにせよ「ゲーム・オブ・センチュリーII」というのにふさわしいゲームでしたが、内容を見る限りはタガヴァイロアが100%でなかったとしてもルイジアナ州立大が攻守においてアラバマ大よりも1枚上だったといのが筆者の率直な感想です。これがルイジアナ州立大の新たな時代の幕開けなのか、そしてアラバマ大帝国陥落の予感なのか、はたまたこの敗戦をモチベーションとしてアラバマ大の逆襲があるのか。今後4週間がまた楽しみになりました。

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