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ルイジアナ州立大、オルジェロン監督と離別へ

ルイジアナ州立大、オルジェロン監督と離別へ

今週日曜日(10月17日)、ルイジアナ州立大エド・オルジェロン(Ed Orgeron)監督と今季限りで袂を分かつ決断を下したことが明らかになりました。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

やんちゃだった若き日のオルジェロン監督

ルイジアナ州出身のオルジェロン氏は1979年に同州の旗艦大学であるルイジアナ州立大に進学してフットボール部に所属しますが程なくしてノースイースタン州立大へ転校。ここを卒業後にコーチングの道へ足を踏み入れます。

母校に学生コーチとして従事したあといくつかの大学を歩き渡り1988年にマイアミ大のディフェンシブラインコーチに就任。ここで数多くのDL選手をオールアメリカンへと育て上げ、また現在俳優として活躍中のドゥウェイン・ジョンソン(ザ・ロック)をマイアミ大へと勧誘した張本人でもあります。その間マイアミ大は1989年と1991年に全米制覇を成し遂げており、オルジェロン氏はコーチング初期において多くの甘い汁を吸うことになります。

しかし1991年頃から彼の悪態が目立つようになり、女性へ暴行を働いた疑惑だとか酒場で喧嘩沙汰になったとかいう事件を起こしたことで1992年にはマイアミ大を離れざるを得なくなり、1年間はコーチングから離れて実家に戻り親のもとで再起を伺うことになります。

そして1994年にニコルズ州立大にてコーチングに復帰したオルジェロン氏はポール・パスクアロニ(Paul Pasqualoni)監督に誘われてシラキュース大へやってきます。私生活で問題を抱えていた過去があったにもかかわらずセカンドチャンスを与えてくれたパスクアロニ監督にはオルジェロン氏は感謝してもしきれないと後年話しています。


ヘッドコーチへの道

シラキュース大で3年間コーチングをした後、1998年には西海岸の名門サザンカリフォルニア大(USC)でピート・キャロル(Pete Carroll、現シアトルシーホークス)監督の下DLコーチに就任。キャロル監督と意気投合したオルジェロン氏はDLコーチだけでなくリクルーティングコーディネーターも任され2004年には年間最優秀リクルーターの賞を受賞。チームもこの間2度ナショナルチャンピオンに輝きました。

USCでの手腕を買われてオルジェロン氏は2005年からSEC(サウスイースタンカンファレンス)のミシシッピ大の監督に就任。しかし自身初となった監督職では3年間で10勝25敗と撃沈。2007年度シーズン直後に解雇されてしまいます。

その後は地元ルイジアナ州に戻りニューオーリンズセインツのDLコーチを1年務め、USC時代に同僚だったレーン・キフィン(Lane Kiffin、現ミシシッピ大監督)氏が監督を務めるテネシー大に合流。さらにキフィン監督がUSCの監督に就任した際には彼に追随して自身2度目となるUSC付きとなります。そして2013年シーズン中にキフィン監督が成績不振で解雇されると臨時監督としてオルジェロン氏はUSCを率いることに。

このシーズンではオルジェロン体制で6勝2敗としトータル9勝4敗でシーズンを終えましたが、キフィン監督の正式な後継者には当時ワシントン大で監督を務めていたスティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian、現テキサス大監督)氏が指名され、最終候補と言われていたオルジェロン氏はUSCを去る事に。

そして2015年、オルジェロン氏はルイジアナ州立大のDLコーチに就任。レス・マイルズ(Les Miles)体制の一員として「母校」(1年しか在籍していませんでしたが)に戻ってきた事になります。そして2016年度シーズン、2勝2敗となったところで大学はマイルズ監督をシーズン途中にもかかわらず解雇。その後釜として臨時監督に指名されたのがオルジェロン氏でした。残された8試合をオルジェロン体制でルイジアナ州立大は6勝2敗で乗り切りシーズンレコードを8勝4敗としたところでチームはオルジェロン氏を正監督に昇格したのでした。

ルイジアナ州立大監督としてのオルジェロン氏

自身2度目となった監督職。しかもそれが自身の出身州であるルイジアナ州の旗艦大学であり、それが名門であったとしたらそれはオルジェロン監督にとってはまさにドリームジョブだったはずです。就任時に56歳だったことを考えれば自身にとってここで自分のキャリアを終えるくらいの意気込みを持っていたことでしょう。

ルイジアナ州立大での正監督として初年度となった2017年度シーズン、オルジェロン監督は当時ピッツバーグ大で腕を成らせていたマット・カナダ(Matt Canada)氏をオフェンシブコーディネーターとして招聘。トータルで9勝4敗となりますが、オルジェロン監督とカナダ氏の反りが合わずオルジェロン監督はたったの1年でカナダ氏を解雇。

続く2018年度シーズンはスティーヴ・エンスミンガー(Steve Ensminger)氏をOCに据えて躍進。一時はCFP(カレッジフットボールプレーオフ)ランキングで3位にまでつけますが、終盤に対戦した1位のアラバマ大に敗れ、さらにはテキサスA&M大との7度のオーバータイムの末に敗れた2敗のせいでランキングの順位を落とし結果的に10勝3敗に。それでも二桁勝利数を挙げたことは彼の契約を2022年まで更新するのには十分に足りる結果でした。

そして2019年。この年は開幕時6位で出発しますが、あれよあれよという間に連勝を重ね迎えた全米1位のアラバマ大との直接対決(当時ルイジアナ州立大は2位)にて遂に白星を獲得。そのまま彼らは圧倒的強さでCFPに進出し、オクラホマ大ならびにクレムソン大に完勝。史上最強とも言えるチームを擁して全米王座に輝いたのです。

このチームからは2020年のNFLドラフトにて14人がプロ入りを果たすというとんでもない層の厚さで、その最先鋒となったQBジョー・バロウ(Joe Burrow)は最優秀選手賞であるハイズマントロフィーを獲得しこのドラフトでも総合第1順目に選ばれるなど時の人となり、その他にも現在各プロチームで活躍するほどの力を持つ選手がゴロゴロいました。

また、オフェンス面ではニューオーリンズセインツからジョー・ブレディ(Joe Brady)氏を呼び寄せ、ディフェンス面ではデイヴ・アランダ(Dave Aranda)氏をコーディネーターに据えたのもバッチリとハマりました。そしてこのチームをまとめ上げたオルジェロン監督はルイジアナ州立大で押しも押されぬカリスマ的存在となったのです。

優勝から一転・・・

2019年度のサクセスによりオルジェロン監督は一気に一流監督として見られるようになっていきますが、この年のチームからは上記のように先発メンバーがごっそりNFL入りを果たし、OCのブレディ氏はNFLカロライナパンサーズのOCに抜擢され、またDCのアランダ氏もBig 12カンファレンス所属のベイラー大新監督に就任するためにルイジアナ州立大を抜け、オルジェロン監督は大幅なチームの再建を余儀なくされます。

そこに来て2020年は新型コロナウィルスのパンデミックに襲われ練習が満足にできないオフシーズンが続き、結果的には5勝5敗と惨敗。優勝チームの翌年の戦績としては史上稀に見る不調で、チームの内容的にも2019年と比べれば大幅に戦力ダウンしていたのは明らかでした。

またこの年、大学後援者が選手たちに不適切な金銭を譲渡していたというスキャンダルが発覚。NCAAが調査に乗り出しその結果シーズン後に行われるボウルゲームの出場資格を剥奪されるという事態に。オルジェロン監督が直接関わっていないとはいえこの時からすでに暗雲は立ち込めていました。

そして2021年度シーズンの今年。開幕時には全米16位発進するも初戦のUCLA戦に敗れると一気にランク外へ転落。10月に入るとアーバン大ケンタッキー大に連敗し、しかも試合内容がルイジアナ州立大らしくないピリッとしないものでファンの鬱憤は貯まる一方。

そして10月16日、当時全米20位のフロリダ大と対戦したルイジアナ州立大。負ければいよいよオルジェロン監督不要論が最高潮に達するかと言われたこの試合、いつになく立ち上がりからリードを奪ったルイジアナ州立大は途中フロリダ大の追撃を食らうも最終的にランクチームをホームで下すアップセット。今シーズン最大の白星を上げてオルジェロン監督の首を繋いだ・・・かと思われました。

しかしその翌日である10月17日、ルイジアナ州立大は今シーズン後にオルジェロン監督と袂を分かつという決断を下し、最強と謳われたチームを率いて全米制覇を達成した2019年からたったの2年で監督の座から降ろされるという急展開を迎えたのです。

背景

ルイジアナ州立大はカレッジフットボール界において5本の指に入ると言っても過言ではないくらいプレミアムなプログラムです。全米に約130チームあるFBS(フットボールボウルサブディビジョン)の中でも過去20年間で全米優勝を果たせたチームの数は限られています。そんな中でルイジアナ州立大は3度も全米制覇を成し遂げており、毎年優勝レースに絡んでいくことはほぼ義務化されていると言っても過言ではありません。

またルイジアナ州という高校生フットボールが盛んでありなおかつそのレベルが高い州にある唯一のフラッグシップ大学という環境から、リクルーティングにおいては絶対的有利な条件を持っています。州内の優秀な高校生が自ら進んで進学したいと思わせてくれるこの環境は実は全米中探してもそんなに多くはありません。

大学のサポートも手厚く、いい選手が毎年揃い、ブランド力もあれば当然毎年チームに寄せられる期待の大きさはそれに比例して大きくなります。それは逆に言えば結果を残せなければすぐにでも非難の声が上がるという温床があるとも言えます。

また近年は同じSEC西地区に所属しているライバル・アラバマ大にやられっぱなしであり、彼らを超えることが出来なければSEC優勝決定戦にも出場できないわけです。さらにアラバマ大が毎年安定してCFPに出場できているのだから我々だってそれは可能なはずだ、という内外からの声もありそれが監督に重圧としてのしかかるという現状もあります。ただルイジアナ州立大の監督はそれ相応のサラリーを受け取っており、それを理解した上でチームの上に立つ人物であることも事実ではありますが。

振り返ってみると、オルジェロン監督はこれまで決して敏腕監督だったという印象はあまりありません。ミシシッピ大では初トライだったとはいえ散々でしたし、その後渡り歩いたチームでもコーディネーターを務めたことは一度もありませんでした。USCで臨時監督に就任したときにしろ、ルイジアナ州立大で臨時監督に就任したときにしろ、たまたまタイミングが合った時にそれぞれのチームにいたという状況がそのチャンスを与えたとも言えるかと思います。

そういった意味で個人的には就任当初から「この人で大丈夫か?」と思ったものです。2019年度に史上最強と謳われたチームを率いたときも、QBバロウ、RBクライド・エドワーズ・へレイヤー(Clyde Edwards-Helaire)、WRジャスティン・ジェファーソン(Justin Jefferson)、ジャマー・チェイス(Ja’Mar Chase)、LBケイラヴォン・チェイソン(K’Lavon Chaisson)、パトリック・クイーン(Patrick Queen)などそうそうたるメンバーがこのシーズンに「たまたま」揃ったという感は否めなく、またOCジョー・ブレディ氏の存在は大きく、当然DCアランダ氏の手腕もあり、まさにすべてがタイミングよく揃ったシーズンだったという印象が強かったのです。

それがオルジェロン監督の手腕によるものだったのかどうかはわかりませんでしたが、当然チームの長としてその評価を受けるのは当然のこと。そしてそれにより上がってしまったハードルに自らつまずいてしまった形になったのでした。

また2019年からルイジアナ州立大にやってきたオルジェロン監督のボスである体育局長スコット・ウッドワード(Scott Woodward)氏の存在も見逃せません。大学アメフトにおいて体育局長と監督の関係は切っても切れないものであり、関係が密になれば多少チームが不調に陥っても体育局長のバックアップによりクビはつながるものですが、そうでない場合はクビを切られるのもよくある話です。

ウッドワード氏にとってオルジェロン監督は自分が起用した人物ではありませんでした。当然彼らの個人的な関係がどうなのかは知る由もありませんが、自分の息がかかっていない監督が不調続きならばその監督のクビを切ることなど造作もない事なのでしょう。

また解雇のタイミングも興味深いものがあります。

確かに開幕戦で敗れてランク外に転落して以来チームの調子は上がらず前半戦ですでに3敗を喫してCFPはおろかSEC西地区優勝レースでもすでに脱落。オルジェロン監督への逆風は強まるばかりでした。

しかしそんな折前述のようにフロリダ大から大きな金星を得る試合を終えたばかりでのこの「仲違い」。ここからチームは盛り返していくかも・・・という矢先にウッドワード氏はオルジェロン監督体制に早々に見切りをつけたわけです。

その背景にはすでに何がおきてもウッドワード氏はオルジェロン監督を留任しないことをすでに決めており、にもかかわらずここからチームが万が一でも上向きになってしまってオルジェロン監督を解雇しづらくなってしまう前に手を打ったのではないかという推測もできます。そう考えるとウッドワード氏とオルジェロン監督の関係はからなずしも良好ではなかったのではないかと思ってしまうのです。

ウッドワード氏はルイジアナ州立大にやってくる前はテキサスA&M大、さらにはワシントン大の体育局長を歴任してきました。そしてワシントン大ではクリス・ピーターセン(Chris Petersen)監督、テキサスA&M大ではジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher)監督という大物を射止めてきたという過去があります。特にフィッシャー監督とは10年間で7500万ドル(1ドル100円計算で約75億円)という破格の契約内容を締結。ヘッドコーチ狩りにおいては大胆な決断をすることで知られている人物です。

フィッシャー監督率いるテキサスA&M大は2週間前にあのアラバマ大を見事に下す大金星を挙げましたが、自分の息のかかったフィッシャー監督がその快挙を成し遂げたのを見届けたウッドワード氏がその翌週にオルジェロン監督を「解雇」する決断を下したのは偶然ではないのかも知れません。

というのも彼ら二人の関係性からウッドワード氏は次期ルイジアナ州立大監督にはフィッシャー監督を狙っているとも噂されているからです。7500万ドルも払って自分がテキサスA&M大に呼び寄せた人物がアラバマ大を喰うほどのチームを育て上げている・・・。そうなればウッドワード氏がフィッシャー監督を再び懐においておきたいと思うのはごく自然な流れなのです。

この噂を受けてフィッシャー監督は記者との囲み取材でルイジアナ州立大監督の座の質問を受けましたが、「自分はテキサスA&M大が大好きだし、ここを離れる予定はない」とさらっと受け流しました。しかし過去にもそう言いながらチームを離れた監督は山程存在しますから、今後オルジェロン監督の後釜がどうなるかはオフシーズン最大の話題となること間違いありません。

ちなみにルイジアナ州立大は今季最終戦でテキサスA&M大と対戦することになっています。このあたりも何か因縁じみたものを感じずに入られません。

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