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2020年度全米大学王座決定戦プレビュー⑦【展望】

2020年度全米大学王座決定戦プレビュー⑦【展望】

いよいよ今年のCFP(カレッジフットボールプレーオフ)全米大学王座決定戦が今日(1月11日、日本時間1月12日)がフロリダ州マイアミガーデンにあるハードロックスタジアムで行われます。

今季は新型コロナウイルスのパンデミックの影響を多大に受け開幕すら危ぶまれましたが、紆余曲折を経てこの最終局面を迎えます。スケジュールは大幅に変更を余儀なくされ、ある時は試合がキャンセルになり、ある時はスター選手が感染して欠場したり、またある時は開幕を見送ったカンファレンスらが心変わりして途中参加したり・・・。

後にも先にもこれ以上無いという特異なシーズンとなった2020年度。そのカオスを生き延びた2チーム、アラバマ大オハイオ州立大が雌雄を決する時を迎えたのです。

参考記事

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ストーリーライン

今季12勝0敗でCFP第1シードのアラバマ大は2017年度以来3度目のCFPナショナルタイトルを、そして今季7勝0敗でCFP第3シードのオハイオ州立大は2014年度以来2度目のCFPナショナルタイトルを狙います。

全米制覇という大きなくくりで言えば、アラバマ大が勝てば18度目、オハイオ州立大が勝てば9度目の偉業ということになります。ちなみにアラバマ大が保持するタイトル17度獲得はFBS(フットボールボウルサブディビジョン)において史上最多です。

しかし過去10年間だけ見てみるとアラバマ大は4度(2011、2012、2015、2017)もタイトルを手にしており、彼らはニック・セイバン(Nick Saban)監督の下ダイナスティーを謳歌しています。オハイオ州立大は前述の通り2014年以来のタイトル取りを目指しますが、それ以前は2002年までさかのぼらねばならず、両校とも名門に変わりはありませんがここ最近だけを見ると圧倒的にアラバマ大が覇権を牛耳っているといえます。

またここまでアラバマ大で合計5つの全米制覇を成し遂げているセイバン監督にとって、今回の試合で勝てばアラバマ大のレジェンド、ポール・ブライアント(Paul Bryant)監督に並ぶアラバマ大最多優勝監督となります。しかしもっと言えば通算全米制覇数はルイジアナ州立大時代に1度手に入れたタイトルを入れて7つ目となり、カレッジフットボール史上単独の最多タイトル監督に躍り出ることになります。


観戦のポイント

アラバマ大オフェンスをオハイオ州立大がどう止めるか?

今季1試合平均約48点というハイスコアなオフェンスを擁するアラバマ大。それもそのはず、チームにはハイズマントロフィーを獲得したWRデヴォンテ・スミス(DeVonta Smith)、そのファイナリストのうちの一人であるQBマック・ジョーンズ(Mac Jones)、さらに投票で5位だったRBナジー・ハリス(Najee Harris)とポジション毎に全米を代表するスキルプレーヤーを抱えるスター軍団なのです。

しかもアラバマ大OL陣はその年の最優秀OLユニットに贈られるジョー・モアー賞も今季獲得しており、オフェンス面で言えば非の打ち所がありません。

そんな彼らを攻略できた相手チームは今季おらず、試合をすればまさに無双状態。このオフェンスをオハイオ州立大ディフェスがどのように防ぐのかに注目が集まります。

攻撃権があれば必ずと行っていいほどTDを奪ってくるアラバマ大を何とかスローダウンさせようと極端な布陣を敷いたのがアーカンソー大でした。彼らはパスのディフェンス用に8人もの選手をドロップバックさせる作戦を取り、ボールを自分たちの前に置いてとにかく長い距離をやられないことに全力を注ぎました。この作戦は開始時こそ功を奏したかと思われましたが、結局前半を終えた時点で37対3と撃沈。とにかく防ぐことが不可能に近いのです。

それはスミスやハリスといった超一流のタレント選手がいるからだけでなく、やはりQBジョーンズのディフェンスを読む能力とロングレンジパスの高い精度、そしてモーションを多用してミスマッチを誘発させるオフェンシブコーディネーターのスティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian)氏の手腕によるところが大きいです。

参考記事テキサス大、動く

となればオハイオ州立大がいかにジョーンズならびに彼を守るOL陣を崩すことが出来るかにかかっています。プレッシャーを掛け続けジョーンズがポケット内で焦るようなことがあればオハイオ州立大にも大いにチャンスが訪れると見ます。

オハイオ州立大DL陣のステータス

そのアラバマ大OL陣並びにジョーンズにプレッシャーをかけるためにはフロントセブン、とくにDL陣のハイパフォーマンスが必須ですが、DEタイリーク・スミス(Tyreke Smith)とDTトミー・トギアイ(Tommy Togiai)が新型コロナウイルスの影響(おそらくコンタクトトレーシング/濃密接触者追跡)で出場できるかどうかわからないという話が流れています。

DL陣にはオールアメリカン(2ndチーム)のハスケル・ギャレット(Haskell Garrett)が健在ですが、ジョーンズのタイミングを少しでも狂わせたいオハイオ州立大としてはフルストレングスのDL陣が必要不可欠。果たして今夜オハイオ州立大のロースターにどれだけ穴が空いているのか見ものです。

QBフィールズの怪我の状況

オハイオ州立大QBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)は準決勝戦のクレムソン大戦で脇から腰にかけて相手のタックルにより強打。負傷直後は痛みに顔を歪めるシーンが多くテレビに映し出されていました。後半は痛み止めの効果もあり合計6TDという素晴らしいプレーを見せてくれました。

怪我の詳細は明らかにされていませんが、その様子からおそらく肋骨が折れているのではないかと言われており、痛み止めがなければフィールズにとってはかなり厄介な怪我だといえます。試合後のインタビューでは10ヤードのパスでも激痛が走ったと言っていましたし。

今回のタイトル戦でも鎮静剤を打たれることが予想され痛み自体は感じないかもしれません。ただもし同じ患部にまた相手からタックルを受けたとしたら・・・。それは痛み止めを処方したとしても再び激痛がフィールズを襲うことになるでしょう。そうなれば彼からのプロダクションは激減しかねませんから、ライアン・デイ(Ryan Day)監督も極力フィールズをスクランブルさせないプレーコールでオフェンスを組み立ててくるに違いありません。

これがアラバマ大ディフェンスにとって有利となるかどうかは分かりません。なぜならフィールズのパス能力はジョーンズと比べても遜色ないと言われているからです。しかし一方で彼はポケットの中でボールを持ちすぎるという悪い癖もあります。フィールズがアラバマ大ディフェンスにタックルされる度にファンの心臓は止まりそうになるでしょうね。

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RBサーモンはどれだけランでヤードを稼げるか?

ポゼッションの度にスコアを重ねていくアラバマ大を止める手立てとして他に考えられることは、はなから相手に攻撃権を与えなくすることです。ではどうやってやるのか。

それは自分たちのポゼッションをなるべく長くすることによってアラバマ大オフェンスをサイドラインに縛り付けることです。なるべくじわじわと攻め込むことによって時間を稼ぎながら最終的に点を取りに行くという戦法。この作戦に無くてはならないのは効果的なランアタックです。ラン攻撃主体ならばプレーがアウトオブバウンズにいかない限りゲームクロックは止まること無く動き続けるからです。

この戦法をアラバマ大に使ったチームがローズボウルで対決したノートルダム大でした。前半から彼らはRBカイレン・ウィリアムス(Kyren Williams)にボールを預ける回数が多く、時間を費やしながら相手陣内へ攻め込もうとするドライブが見られました。しかし彼らも結局は31対14と2TD以上の差をつけられて敗戦。

ただオハイオ州立大にはトレイ・サーモン(Trey Sermon)がいます。このサイトでも何度も紹介してきましたが彼は過去3試合で1試合平均200ヤード超えの走りを見せてきています。アラバマ大ディフェンスが今季これまで対戦してきた中でも明らかに最強のラッシャー。もしフィールズの機動力が怪我の影響で激減するならばサーモンのランアタックはオハイオ州立大がアップセットを完遂するためには必須事項です。

WRワドルは出場するのか?

前回のプレビュー記事でもご紹介しましたが、怪我で戦線を離れていたアラバマ大WRジェイレン・ワドル(Jaylen Waddle)がこのタイトルマッチに向けて先週練習を再開。出場できるかどうかは当日まで分からないということですが、この話題だけでもオハイオ州立大にとっては大きな悩みの種です。

ワドルはハイズマントロフィー受賞者のスミスよりもスピードがありこれまでもその俊足を生かして数々のアクロバティックなプレーを見せてくれました。その彼がもしラインアップに戻ってくるとしたらオハイオ州立大ディフェンスにとって悪夢となります。

とはいえ実戦から2ヶ月半も離れておりしかも足首の怪我のためWRとしてはルートをとるためにかなりの負担がかかりますから、本当にこの試合に間に合ったとしてもフルパワーであるとは考えづらいです。

しかしピンポイントでの使用やデコイとしての使用でも十分威力を発揮しそうですから、試合時に「背番号17」がフィールドに立っているかどうかは最大級の注目事項であると言えそうです。

モチベーション

これまでテレビや他のメディアでこの試合に関する予想や分析が数多行われてきていますが、その殆どがアラバマ大の絶対的有利ということになっています。このことがオハイオ州立大の闘志に火をつけることはまず間違いありません。

ただでさえ今季は試合数が少ないために「CFP進出に値するチームではない」と言われ続けてきた彼らですから、そんな外野連中の鼻をあかしたいと士気は上がっているはずです。また先のクレムソン大戦では相手HCダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督がオハイオ州立大をコーチランキングで11位に投票したことで選手たちはディスられたと憤慨。これが直接的に試合結果に結びついたとは言いませんが、モチベーションの高い選手は持っている能力以上のものを発揮することはこれまでもいろいろな場面で見てきましたから、ここまできて相手を逆なでするのはノンセンスなのです。

そういった意味では先週ちょっとした騒動が起きました。それはアラバマ大セイバン監督のご息女がツイッターでオハイオ州立大を逆なでする発言をしたのです。

まさか身内からボロが出るとはセイバン監督も夢にも思っていなかったでしょうね。

とはいえアラバマ大にはその様なジンクス的なことを跳ね返すほどの分厚い豊富な経験があります。

アラバマ大とって今回ナショナルタイトルゲームに登場するのは過去14年間で実に8度目のこと。つまりこの14年間で半分以上のシーズンフィナーレを全米王座決定戦で迎えているという計算になります。これは単純にすごいことです。

もちろん選手は基本的に4年間で入れ替わっていきますからその経験値が選手個人に還元されているかどうかは分かりません。ただそのようなチームを毎年世に送り出しているセイバン監督の手腕、そして大舞台で何をしなければいけないのか、選手たちはどう備えなければならないのかということは場数の多いセイバン監督にとって何者にも代え難い資産です。

そのDNAを注入された選手たちですから、相手がどんなにいきり立って自分たちを倒してこようともそれに惑わされること無く「普段通り」の自分たちを発揮することが出来るでしょう。当然それは1日2日で身になることではありませんし、日々の行動の繰り返しにより常習化されるものです。アラバマ大には「ナショナルタイトルを獲る」というモチベーション以外他にいらないのです。

試合予想

さて、いよいよ今シーズンの頂上決戦まで数時間と迫ったわけですが・・・。

これだけのオフェンシブパワーを持っているアラバマ大が本命扱いを受けるのは至極当然なことです。昨年見たルイジアナ州立大は20年以上カレッジフットボールを見てきた筆者の記憶の中でも完璧に近いチームで、特にQBジョー・バロウ(Joe Burrow、元シンシナティベンガルズ)率いるオフェンスはまさに誰も止めることが出来ないと言えるくらいの領域をもつユニットでした。

そのオフェンスは何年に1度しか現れないという稀有な存在だったわけですが、その翌年となる今年のアラバマ大はオフェンス面でルイジアナ州立大を上回っていると評価するアナリストたちも多いです。個人的にはバロウのほうがよりプレーメーキングの能力で少々ジョーンズよりも上回っている気もしますが。

しかしQBレーティングでは昨年新記録(202ポイント)を樹立したバロウをジョーンズは超えてきました(203ポイント)。たかが数字、されど数字です。ほぼミスを侵さないジョーンズは球離れが早くディフェンスを読むことに長けており、スミスをワン・オン・ワンにしてしまったら最後、ロングゲインは否めません。

またジョーンズはブリッツを交わすテクニックは天下一品。彼の残した今季のTD数(36)のうち実に半数近い17個のTDは相手のブリッツ時のパスから奪ったもの。むしろオハイオ州立大はブリッツは諦めて長い距離を奪われるのだけに気をつけて、あとはレッドゾーンディフェンスで勝負に出るという方法しかないのかな・・・なんて考えてしまいます。

アラバマ大ディフェンスは数字的には全米トップという力を持っているわけではありません。ただシーズンを通して磨きがかかっていることは確かです。そういった意味では12試合をこなしたアラバマ大と7試合しかこなしていないオハイオ州立大との実戦経験の差が出るかもしれません。

もしQBフィールズを含めオフェンス陣が万全の体制でなおかつクレムソン大戦で見せたようなここ一番の戦いぶりを披露することができれば、彼らがアラバマ大から勝利を奪うことは十分に考えら得ます。今季アラバマ大が対戦してきた中で僅差に持ち込まれたチームはミシシッピ大とフロリダ大の2チームですが、どちらもパス重視のオフェンスでした。今回対戦するオハイオ州立大はフィールズのパス能力も去ることながらRBサーモンという好バックを擁しており、アラバマ大にとってこの様なチームと対戦するのはほぼ初の経験となります。

いかに数字の上で一方のチームが勝っていても、プレースタイル次第ではもう一方のチームにも十分チャンスはあるはずです。ですからシュガーボウル時のような神がかった力をオハイオ州立大が再び見せることができれば彼らにも勝機はあるでしょう。

そういった意味でフィールズの怪我の状況は気になるところですし、DL陣がどの様なメンツを揃えてくるかも試合を左右する重要なポイントと言えます。

一方でもしオハイオ州立大が昨年の準決勝戦でのクレムソン大に対するリベンジ、ならびに先に挙げたスウィニー監督にディスられたことから生まれた闘志によりシュガーボウルでクレムソン大から金星を奪ってすべてを使い果たしてしまっていたとしたら、気が抜けたチームがアラバマ大に為す術もなくやぶれる、なんてことも無いこともありません。

オハイオ州立大が再び闘志を燃やして真の力を振り絞るか、はたまたアラバマ大が通常通りのしごとをこなして相手をアウトスコアするか。どちらも得点力はありますから史上稀に見る点取り合戦になる可能性もあるかも。

個人的にはオハイオ州立大がデイ監督の緻密な作戦の下アラバマ大の懐に入って予想外のプレッシャーをかけてくることによる点の取り合いが行われるんじゃないかと考えます。そうなった時試合を決めるのは限られたチャンスをものにしたディフェンス陣を擁するチームとなるのではないでしょうか。とにかくRBサーモンがどれだけアラバマ大ディフェンスを苦しめるかに注目したいです。それにもしフィールズが怪我の影響を感じさせない機動力を見せることがあれば、機動型QBに弱いアラバマ大が後手に回る可能もあるんじゃないでしょうか。

さあ、試合開始まであと5時間。あとは黙って観戦するとしましょう。子どもたちを寝かしつけることに試合観戦が妨げられないことを祈りながら(笑)。

【AGS予想スコア】

アラバマ大54、オハイオ州立大45

参考記事

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