オハイオ州立大の抹消された勝利数

オハイオ州立大の抹消された勝利数

2000年以降のオハイオ州立大

現在歴代勝利数で全米2位(タイ)となる942勝を挙げているのが名門・オハイオ州立大。実はこの数字、本当は954勝であったはずなのですが、2010年に獲得した12勝がNCAAによって剥奪されたため、公式記録では勝利数が少し少ないのです。

何が起きたかというと、2010年度シーズンに所属選手5人が自分たちのサインや大学から支給されたギアを彫り師に譲渡する代わりにただでタトゥーを彫ってもらっていたことが発覚したからです。

この不適切な行動がバレてしまったため、NCAA(全米大学体育協会)はまずこの5人が翌シーズンとなる2011年度の開幕から5試合の試合出場禁止処分を下します。さらにこの5人が出場して得た12勝が公式記録から抹消。その結果2010年度のオハイオ州立大のNCAA上の公式戦績は0勝1敗(唯一の敗戦となったウィスコンシン大戦での黒星のみ)となったのでした。

アメリカではスキャンダルが起きるとしばしば「OXOXゲート」と呼称されますが、おそらくこれは1972年に米国で起きた政治スキャンダル「ウォーターゲート(Watergate)」スキャンダルが語源となっていると思われます。そしてこのオハイオ州立大でのスキャンダルをこれをもじって「タトゥーゲート(Tattoogate)」と度々呼ばれるようになりました。

またこれを受けて2011年には当時のHCだったジム・トレッセル(Jim Tressel)監督が謹慎処分になり、25万ドル(1ドル100円計算で約2500万円)の罰金を科しました。というのもトレッセル監督は選手らが上に挙げたような不適切な便宜を受けていたことを知っていたからだと結論づけたからです。

Embed from Getty Images

オハイオ州立大元HCジム・トレッセル氏

さらにトレッセル監督も2011年度の開幕5試合の現場指揮が禁止される処分を受け、結果的にシーズン開幕前の6月にトレッセル監督は自ら辞任する決断をしたのでした。

そして後の調査によりほかにも2002年から2010年まで合計28選手が同じような施しをこの彫り師から受けていたことが発覚。こういったことがトレッセル監督指揮下で横行していたことが明らかになったのです。

オハイオ州立大はトレッセル監督体制で2002年にナショナルタイトルを獲得。名門ながらこれ以前にタイトルを獲ったのが1970年のことだったこともあり、長いこと日の目を見なかった古豪を復活させたとしてトレッセル監督は当時名将として崇められていました。

そんな彼がこういった形でチームを去ることになり、オハイオ州立大ファンの間にはチームの行く末を案ずる声が多く上がっていたのも事実。

そんな感じで2011年度シーズンは開幕前に指揮官を失うという状況に陥りましたが、この年臨時監督を務めたのは当時ディフェンシブコーディネーターを務めていたルーク・フィッケル(Luke Fickell)氏。フィッケル氏はかつてオハイオ州立大でLBとしてプレーしていた生粋のバッカイ(Buckeye、オハイオ州立大のニックネーム)でした。

(ちなみにこのフィッケル監督は昨年プレーオフに進出したシンシナティ大の現監督です)

フィッケル臨時監督指揮下のオハイオ州立大は6勝7敗と低迷。そして2012年に正式に監督の座についたのが元フロリダ大HCのアーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督でした。

Embed from Getty Images

オハイオ州立大元HCアーバン・マイヤー氏

自身の健康上の都合によりフロリダ大HCを辞していたマイヤー監督。しかしかつてコーチングキャリアのスタートラインがオハイオ州立大だった(1986年)だったことからこのオファーを断りきれずにコーチ業引退を撤回してオハイオ州立大の監督に就いたのでした。

初年度から12勝0敗と下馬評以上の戦績を残したマイヤー監督は翌年も12勝2敗と好成績を残し、そして2014年度シーズン、カレッジフットボールプレーオフ(CFP)導入初年度に見事全米制覇を成し遂げ、2002年度以来12年ぶりの栄冠をキャンパスに持ち帰ることに成功。

以降も常に二桁勝利を収めて全米トップ10以内を確保し続けますが、マイヤー監督に再び健康上の危機が訪れ2018年度を最後に監督業から引退したのでした。

(2021年に2度目の復帰を果たしNFLジャクソンビルジャガーズの監督に就任した際のゴタゴタはあえて割愛させていただきます)

そのマイヤー監督の後を継いだのが現HCのライアン・デイ(Ryan Day)監督。2017年にオフェンシブコーディネーターとしてオハイオ州立大にやってくるまではフィラデルフィアイーグルスサンフランシスコ49ersでいちコーチとして帯同したものの、全米中の目にとまるようなコーチではありませんでしたが、マイヤー監督直々に指名されたデイ監督はマイヤー監督が作り上げた勝者の流れを途絶えさせることなく今日まで至っています。

失われた12勝を取り戻すために

そんな感じでトレッセル監督が去った後もオハイオ州立大は大きく崩れることなく全米を代表する強豪校として知られていますが、今回そのトレッセル監督指揮下で剥奪されてしまった12勝を取り戻そうとする動きが起き始めています。

というのもオハイオ州の共和党衆院議員であるブライアン・スチュワート(Brian Stewart)氏が勝利数回復に向けて声を挙げたのです。

この背景には昨年から許可された、NIL(Name/Image/Likeness)の存在があるようです。

(NILとは自身の肖像権等でお金を儲けることが許されることになった新たな仕組みのことを指します)

当時の5選手は自分のサインの対価としてタトゥーを入れてもらったということですが、現在のNILのコンセプトで言えば自分のサインでお金を儲けることは許されており、スチュワート氏は時代が変わりNILが許される中で、当時の5人(ないしその他の大勢の選手)の行動は許されるべきで、そうならば剥奪された12勝も記録に戻されるべきだと言っているわけです。

この5選手の中にはかつてオークランド(現ラスベガス)レイダースでプレーしたテレル・プライヤー(Terrelle Pryor)も含まれているのですが、昨年7月にNILが解禁になった際にプライヤーは他の4選手と連名で消された記録をもとに戻してほしいと懇願するメッセージをソーシャルメディアで公表しています。

ツイートには恩師でもあるトレッセル監督の名誉回復のためにも記録を復活してくれと綴っています。

ただ、当のNCAAは「過去に下されたペナルティーはそれが何年も前のことだとしても再び調査の対象になることはないし、現在のNILの状況がそれに反映することもない」と突き放しています。

しかしながらスチュワート議員はNCAAがペンシルバニア州立大で起こった「サンダスキー事件」の際に没収した111勝を後に復活させている先例を挙げて諦める気配を見せていない模様。

(サンダスキー事件とはチームの元守備コーディネーターだったジェリー・サンダスキー氏が男児への性的虐待を長年行っていたことを知りながら適切な行動を起こさなかったとして1998年から2011年までの111勝を抹消した事件。その影響で当時HCだったジョー・パターノ氏も解雇に追い込まれました)

何かと世間を騒がせているNILですが、こんなところにも影響を及ぼしているようです。

👇記事が気に入ったらいいねやリツイートで拡散お願いいたします!

この記事が気に入ったら拡散&フォローお願いします!
ツイート
この記事が気に入ったら拡散&フォローお願いします!
ツイート
このエントリーをはてなブックマークに追加
このエントリーをはてなブックマークに追加

ANY GIVEN 
SATURDAY

全米カレッジフットボールファンサイト