2020年度シーズン開幕への道④ - ANY GIVEN SATURDAY

2020年度シーズン開幕への道④

2020年度シーズン開幕への道④

7月も後半に差し掛かり、いよいよカレッジフットボールが開幕する8月も目前となりました。通常ならばそれぞれのチームは8月初旬から始まるプレシーズンキャンプ入りに備え入念な準備が行われている頃です。

が、今年は御存知の通り世界中で大流行している新型コロナウイルスの影響で私達の生活が大ダメージを受けています。それはスポーツ界においても同様で、特に感染数が約400万人と世界1位となっているアメリカではその影響は深刻です。

これまでのおさらい

カレッジフットボール界にもそれは当然言えることで、通常行われる夏のワークアウト(自主トレ)も制限付きで解禁されるも多数のキャンパスでクラスター感染が起きて中止措置を余儀なくされています。

またNCAA1部のFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン、旧1部AA)に所属するアイビーリーグペイトリオットリーグミッドイースタンアスレティックカンファレンスらはそれぞれフットボールを含めた秋シーズンスポーツを中止する苦渋の決断を下しています。さらにフットボールを持たないBig Eastカンファレンスアトランティック10カンファレンスアメリカンイーストカンファレンスも秋スポーツを行わないことをすでに決めました。

一方NCAA1部FBS(フットボールボウルサブディビジョン、旧1部A)では今の所、その中でも更に上位カンファレンス群と言われる「パワー5」のBig TenカンファレンスPac-12カンファレンスが交流戦(ノンカンファレンス戦)を排除してカンファレンス戦のみを行う変則スケジュールで今シーズンを乗り切る作戦に家事を切りました。残りの「パワー5」カンファレンス(アトランティックコーストカンファレンスBig 12カンファレンスサウスイースタンカンファレンス)は未だに沈黙を守り続けていますが、彼らもカンファレンス戦のみのスケジュールに転換することが予想されています。

しかし、そもそもカレッジフットボールが開催されるのか、もっといえば開催されるべきなのか?その答えはまだ出ていません。


ハズレたNCAAの予測

先週NCAAは大学スポーツ開催のためのガイドラインを発表しました。その資料の中には非常に興味深く、同時にあまりうれしくない統計が含まれていました。

それはアメリカ国内におけるコロナウイルス感染数とそれに関連するNCAAの意思決定のプロセスです。

(NCAAの公式サイトより)

アメリカで感染が拡大したのが3月中旬。このときの感染の中心地は主にニューヨーク州やカリフォルニア州といった外からの出入りが多い地域でした。ご覧になって分かる通り3月から4月にかけた感染者数増加のスピードは尋常ではありませんでした。

この影響で3月の時点ですべての大学スポーツがキャンセルされシーズンが途中だった冬スポーツや春スポーツはあっけない幕切れを見ました。そしてグラフにも記されている通り、4月後半にNCAAはすでに大学スポーツ活動再開について協議を始めています。これはおそらく感染者数がピークを越えたかと感じたからでしょう。

その後多少の浮き沈みがあったにせよ感染者数は緩やかに減少の傾向を見せ、その結果NCAAが6月1日からキャンパス内における自主トレを解禁する通達を出しました。

それを受け多くのFBSチームが選手たちをキャンパスに呼び戻して自主トレを開始しますが、程なくして各地で前述のようなクラスター感染が確認され始めました。

グラフと見ると分かる通り、6月から再び感染者数が増加。これは国内、特に南部で早々にビジネスを再開させはじめた頃と合致しています。しかもこの第2波の主な影響地域は初期にあまりダメージを受けなかった南部の地域であり、それは遠巻きでニューヨークらの惨状を見ていた他の州がその脅威を甘く見ていたからだと言われています。

ここで面白いフレーズをこのグラフに見つけることが出来ます。NCAAが予想した、破線で示された感染者数減少のトレンドです。彼らが考えていた感染者数はそのまま数を減らしています。この「Where we thought we’d be compared to trajectory at end of April」というフレーズ、つまりNCAAは今後感染者数が増加することはないと踏んでいたのに対し、実際は「Where we are」(現状)と記されているように現在は初期段階を超えるほどの感染者数を出しているのです。

これだけ見ると本当にカレッジフットボールを含めた秋スポーツを行う余地があるのか疑問を持ってしまいます。


NCAAのガイドライン

NCAAが発表したガイドラインにはコロナウイルス検査のことも記されていますが、これに強制力はなくあくまで推奨の域にとどまっています。現状はと言えばそのテストの取組みは各大学の判断に任されています。故に全米レベルで見るとそれにはムラがあり、統一感は感じられません。ですからNCAAが定める確固な指針は必要不可欠です。

フットボールを含めた「ハイリスクスポーツ」(選手同士のコンタクトが避けられないスポーツ)において、NCAAは試合前72時間以内までに検査を受けることを強く推奨しています。そしてもしそれが出来ないのであれば試合は延期かキャンセルされるべきだとも言っています。

たとえばフットボールの場合、通常土曜日に試合がありますから、選手たちは水曜日までにこのテストを受ける必要があります。現在使用されている検査は複数ありますが、検査同日に結果が出るものも出回り始めており結果が出るまで3日もかかることは無いと思われますが、一方で複数ある検査の信用度はまちまちでここを統一させる必要はあると思います。

ただこの72時間という間隔は適当ではないという専門家の話もあります。つまり水曜日に陰性でもその後試合までに感染して陽性となる可能性は十分あるというわけです。

またこの検査にかかる費用はそれぞれの大学持ちとされており、フットボールだけ見ればカンファレンス戦のみなら8試合から9試合、通常スケジュールなら12試合が予定されており、その数の分だけ全選手(そしておそらくコーチやスタッフらも)がテストを受けることになります。単純計算で約100選手を抱えるチームは今シーズン述べ1000人分のテストを自費で賄わなければならないというわけです。ウエストバージニア大の体育局長であるシェーン・リヨンズ氏はこの費用を2万ドルから25000ドル(1ドル100円計算で約200万円から250万円)と試算しています。

これはフットボール部のみの話ですから、その他のハイリスクスポーツ(バスケットボール、フィールドホッケー、サッカー、レスリングなど)も同様のステップを踏むとなると更に体育局の財源を圧迫することになります。彼らはすでに春スポーツがキャンセルされてしまったことでジリ貧であるにも関わらずです。


もし陽性反応を示した選手が出たら?

そして最大の疑問とも言える、「もし陽性反応を示した選手がでたらどうするのか?」という点にもNCAAはガイドラインで触れています。

それによると、陽性を示した選手は14日間の自主隔離を強く推奨しています。もしそのような選手が試合に出たとしたら相手選手(もしくはチーム)にもこの処置が推奨される、と言っています。

文書には陽性選手にコンタクトしたと思われる選手(ハイリスク選手=Individuals with a high risk of exposure)について定義づけしていますが、それは次のとおりです。

・キャリア(陽性選手)から2メートル以内に最低15分間近づいた者
・キャリアに直接触れた者

フットボールだけで考えてみればオフェンスの誰かがキャリアであった場合、試合中に15分間分ハドルを組んだらこのユニットは皆全滅ということになります。全プレーノーハドルなんてこともないでしょうし、それよりも陽性であることを知っていて試合に出すコーチなどいないでしょうし(と願いたい)。そうでなくてもオフェンスユニットは大抵同じエリアのベンチに座っていますし、試合前のロッカールームでも同じことです。

もっといえばそのような選手が遠征中に乗っていたバスは密閉空間に何時間も複数選手やスタッフを閉じ込めていたということになり、このバスに乗っていた選手たちもアウトになるでしょう。同じようなシナリオは数多考えられるのです(練習時のことを考えると頭が痛くなるので考えたくもないです😱)。

そして14日間の自主隔離となれば最低2試合は出られないことになります。集団隔離ともなれば試合を行うことは出来ないでしょうし、そうなればその時点で彼らのシーズンは終わったも同然です。そしてそれは選手だけでなくコーチにも言えます。コーチたちは通常ミーティングを毎日行っていますから、この中の1人が陽性反応を示したらおそらく全コーチ陣が隔離されなければならなくなるでしょう。

つまり、ガイドラインを読めば読むほど今シーズンを無事に行うことが綱渡りなのだと再確認させてくれるのです。

そしてこれはあくまでNCAAの推奨であり、それを実際に取り入れるかは各々のカンファレンスの手に委ねられます。Big TenやPac-12がカンファレンス戦に絞ったのはカンファレンス内のルールでコロナウイルス対策を統一できるからとも言われ、これは大変賢明な決断だと言えます。ルールが違う他カンファレンスチームと対戦する際にそれをすり合わせるのは大変な労力がいるでしょうから。


リスク

このハイリスク選手をどのように定義するか、そして実際にそうなった時誰がそのような選手を指定するのか。これはおそらくチームの医療スタッフの手に委ねられることでしょう。

それはチームドクターやアスレティックトレーナーということになるのでしょうが、実際のシナリオを考えると果たしてガイドライン通りに上手くいくのかという疑問が湧いてきます。

例えばクレムソン大のスターQBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)が陽性を示したとしましょう。となれば彼は自動的に2試合出場出来ないということになります。これはまだいいのですが、彼の周囲の選手が陽性を示した時にその選手にコンタクトしたと思われるハイリスク選手を定義するのもおそらくチームの医療スタッフとなるでしょう。

もしそのハイリスク選手のなかにローレンスがいたとしたら?ローレンスがハイリスク選手と定義されれば彼もまた14日間の自主隔離に置かれなければなりません。それを知りながら果たしてコーチらからの圧力なく医療チームが彼のようなハイプロファイル選手に自主隔離の決断を下すことが出来るのか?

医療チームはコーチ陣たちの圧力を受けずに医学的見地から独自の判断を下せるようにNCAAから保護されています。ただそれが本当に行われているのかは分かりません。例えば脳震とう(Concussion)の場合ですが、通常これを負えば1週間はプレーすることが出来きませんが、これがナショナルチャンピオンシップに出場するスター選手に起きた時に彼を不出場にすることが出来るのか?というジレンマに今回のケースは似ています。

リアリティー

ガイドラインを発表したNCAAは「選手たちが安全にスポーツ活動に戻るための推奨事項は国内のコロナウイルス感染の推移に大いに依存する」とし、「国内の感染数が下火になるという過程の上でのガイドラインである」ということを明言しています。

一方でNCAAのプレジデントであるマーク・エマート(Mark Emmert)氏はこうも述べています。

「昨春我々は春スポーツをキャンセルするという決断を断腸の思いで下しました。それは当時我々にはスポーツを安全に開催する術がなかったからです。今回発表したこのガイドラインは医療の専門家の指針のもと、新型コロナウイルス感染の勢いをある程度抑え込むことが出来る状況に至った際にどのように大学スポーツを再開させるかを明文化したものです。しかし残念なことに現在我々が予期していた復帰へのデータ(感染数)は逆方向へ向かっています。もし今秋大学スポーツが開催されるのであれば、このパンデミックを我々はもっとしっかりと制御しなければなりません。」

NCAAの頂点に立つエマート氏の論調は非常に危機的です。ただFBSのフットボールに関して言えばエマート氏に発言権はそこまでなく、フットボール以外のスポーツはその強権でシャットダウンさせられるものの、FBSフットボールのそういった決断はすべて各カンファレンスに委ねられているのが現状なのです。

カレッジフットボール開幕を目前にして国内は未だ新型コロナウイルスの新規感染者を増やしています。その中でもフロリダ州、テキサス州、カリフォルニア州と言ったフットボール王国でその惨状が繰り広げられているとすれば、普通なら「なぜそこまでして開幕を急ぐのか?」と考えれるのが普通です。

そこには大きな利権が絡んでくるのでしょうが、だからといって選手の安全面をないがしろにするというわけではないでしょう。各大学では選手の健康管理のための厳しいプロトコルを実施していますし、開幕が期待できるならば試合開催に関わる全ての側面にベストを尽くして対応することでしょう。

しかし自主トレというコンタクトがあまりないアクティビティ下でも感染は起きており、これが実戦(練習や試合)となれば一体どうなってしまうのかというのは大きな疑問でしょう。

それでも現場の人間は大層楽観的なものです。

例えばルイジアナ州立大エド・オルジェロン(Ed Orgeron)監督は「私の勘をして今季開幕はあり得る」と話したり、ノートルダム大ブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督は「今季フットボールは開催される」と断言してみたり、オクラホマ大リンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督は「今季開幕しないというシナリオを想像できない」と言ってみたり・・・。

観客は?

現在はある程度感染数が安定しているニューヨーク州では州知事が今季カレッジフットボールが開催されるならば無観客で行うという発言をしました。となればシラキュース大バッファロー大陸軍士官学校がこれに当てはまり空のスタンドで試合を行うことになります。

またそのお隣のニュージャージー州では州知事が観客数の上限を500人とするという達しが下されました。これによりBig Tenカンファレンス所属のラトガース大はホームスタジアムの収容員数52454人の約1パーセント分しかファンを招くことが出来ないことになります。

500人というはっきりとした数字で観客数が制限されるのはFBSではラトガース大が初のケースとなりましたが、他チームでも流石にフルキャパでファンを動員できるとは誰も考えていないようです。

たとえば最近テキサス大は観客動員を50パーセントまで減らすという考えを打ち出しました。彼らのスタジアム「ダレル・ロイヤル・テキサス・メモリアルスタジアム」のシート数は約10万人。これの半分ということですから単純計算で5万人を動員したいという考えになりますが、テキサス州が現在ウイルス感染で大変な目にあっているのにこのような数字を試算することに正直疑問を呈さずに入られません。

最近日本のプロ野球が有観客を解禁しましたがそれでも上限が5000人でした。その10倍の人数を入れようというのですから、いくら屋外だとは言え夢物語としか言いようがありません。

ドナルド・トランプ大統領ですらとうとう「この新型コロナウイルスは状況が良くなる以前に再び悪化するだろう」とつい最近述べていました。あのトランプ大統領がです。

これから更に悪くなると言っているのですから、少なくとも開幕するならもっと観客数を減らすか無観客にするかというのが常識的と考えてしまいますが、やはりチケットの売上などを考えるとなるべくお客を入れたいと思うんでしょうか・・・。

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