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2020年度シーズン開幕への道③

2020年度シーズン開幕への道③

新たなるアウトブレイク

アメリカにおけるコロナウィルス感染による死者総数はコロナ禍初期に猛威を振るわれたニューヨーク州が依然として突出していますが、それにほど近い場所に住んでいる筆者的にはその脅威は以前ほど感じることはなくなりました。もちろん生活する上でマスク着用やソーシャルディスタンスは必須ですが、厳しい条件下でも人々がルールを守りながら外に出ていける環境がゆっくりと戻りつつあります。

しかし現在アメリカではコロナ禍初期にあまり感染数が出なかった地域で数ヶ月遅れでアウトブレイクが広がっています。アリゾナ州、テキサス州、フロリダ州、サウスカロライナ州、ルイジアナ州、アラバマ州といった南部の州だけでなくミシガン州、オハイオ州、イリノイ州といった中西部の地域でも感染者の増加が見られます。

そしてここに挙げた州名を見ていただいただけでもピンとくる方は多いかと思いますが、これらの州には軒並みカレッジフットボールの強豪チームがキャンパスを構えています。

2020年度シーズンを迎えることが出来るかどうかは未だに公式な決断は下されていませんが、6月1日にNCAAがキャンパス内での自主トレーニングを解禁したことをきっかけに6月中に多くのFBSチームが選手たちをキャンパスに戻してきました。

当然その過程では事細かいステップを踏んでコロナウイルスを持ち込まないような手はずが取られていたはずですが、それでもはやり感染者を出すチームが続出。テキサス大クレムソン大アラバマ大ルイジアナ州立大などという南部の強豪校で複数の陽性反応が出ただけでなく、7月8日にはノースカロライナ大オハイオ州立大でも複数の感染者が出たために両校とも自主トレを中断することにしたのです。

6月当初は感染者数が落ち着いてきたこともあり、自主トレも解禁したことで2020年度シーズン開幕までこぎつけることが出来るかという一筋の希望が見えていました。しかし、現状を見る限りではむしろそれは悪化の一途をたどっていると言わざるを得ません。


アイビーリーグの決断

そんな中かねてから2020年度シーズンを中止にするのではないかと目されていたカンファレンスがあります。NCAA1部でもFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)所属のアイビーリーグです。

彼らは7月8日に正式にフットボールを含む全ての秋スポーツを今季は開催しないという苦渋の決断を下しました。NCAA1部に所属するカンファレンスとしては全米でも初となる重大な決定です。

アイビーリーグといえばコロナ禍が上陸し徐々に感染数が増加しだした3月中旬に男女バスケ部を含む全ての冬・春スポーツシーズンをキャンセルするという当時にしてみれば大変大胆な決断を下しました。

しかしコロナ感染数の急増により他のカンファレンスもアイビーリーグに同調。1週間後には全ての大学スポーツがシャットダウンされるという異例の自体に陥ったのです。

そしてこの状況下で大学スポーツ再開が危ぶまれる中、2020年度秋シーズンもキャンセルするような大胆な決断を下せるカンファレンスがいるとすればそれはアイビーリーグ以外に存在しないと言われてきました。

それには彼らのスポーツと大学運営との関係性が大きく反映されていると思われます。

このサイトでも何度か触れてきましたが、NCAA1部でもFCSよりもさらに上位カンファレンス群とされるFBS(フットボールボウルサブディビジョン)ではフットボール部やバスケットボール部を持つことによって莫大なお金が大学に流れ込んでくるという構図ができあがっています。それはチケット代であったり、グッズの売上だったり、テレビの放映権であったり、ボウルゲーム出場による報酬だったりと様々ですが、それらの部活動関連で桁違いの収入があることにより大学自体が大いに潤うという具合になっているのです。

ですから学生アスリートの健康管理、ウイルス予防が最優先であると分かっていても彼らは可能な限りシーズン開幕までたどり着きたいと画策しているわけです。もしシーズン開幕が不可能となれば彼らにとっては致命的な大損となる可能性があるからです。

しかしアイビーリーグはハーバード大プリンストン大イェール大コロンビア大などというメンバーからも分かるように学業面で世界的にトップな大学からなるカンファレンス。彼らはカレッジスポーツで懐が潤うような構図を持っておらず、また逆に言えばそれがなくても大学自体は研究基金や卒業生や後援者たちからの莫大な寄付金で成り立っている大学ばかり。

だから彼らは生徒たちをコロナ感染の危機に晒してまでフットボールを含む秋スポーツ(主に男女サッカー、フィールドホッケー、バレーボール、クロスカントリーなど)を開催する必要性を感じないというわけです。

もちろん今年大学競技生活最後となる4年生たちにとってはシーズンを迎えることなく引退に追い込まれることになり、そういったアスリートを生み出してしまうという決断であったことからも決して安易な決定であったとは思えません。しかしこの決断を下すに当たりアイビーリーグ側は上に挙げたようなFBSカンファレンス所属チームのような利害関係を持ち得ていないという事実が今回の決断を後押ししたと考えても不思議ではないでしょう。

春シーズンがアイビーリーグの決断によって連鎖反応的に全米中に広がっていったことは前述しましたが、では果たして今回の彼らのフットボールシーズン中止という決断が他のカンファレンスにも飛び火するのでしょうか・・・。

もしフットボールが開催されないとなると上記のように大損失を被ってしまう大学は多々出てくるでしょう。しかも彼らはすでに毎年3月に行われ、TV放映権だけで言えばアメフトよりも美味しいと言われるバスケットボールの全米選手権「マーチ・マッドネス」をキャンセルされており、ここでの収入はすでにゼロということで、アメフト開催も叶わなければ彼らの台所事情は火の車と化すのです。

ですから彼らとしてはアイビーリーグの決定があったとしてもギリギリまで開幕への道を模索していくことでしょう。そしてその決断はアイビーリーグの大学長および体育局長らが下したものの何十倍も難しいものとなるでしょうね。

秋開催を諦めて春開催へ?

とはいえFBS所属大学の上層部もバカではありませんから、現在のコロナ禍の状況を見れば秋開催に関して懐疑的な目で見ている人たちも多いことでしょう。

そこで秋がだめならば春にシーズン開催すればいいじゃないか?という代案はこれまでもあるにはありました。そして現在各地で感染数が増え続ける中、この春開催案を支持する声は日増しに多くなってきています。

例えばPac-12カンファレンスのコミッショナーであるラリー・スコット氏は春開催の選択肢も用意していると話しています。同カンファレンスには現在感染数が急増中であるアリゾナ州、カリフォルニア州、ユタ州らが含まれています。このままでいくとこの地域であと8週間後に開幕戦が行われるとは想像し難いです。

その他にもオクラホマ大リンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督も秋開催が可能でないならば春にシーズンを迎えてもよいと話しています。無観客にして秋にシーズンを迎えるくらいなら一層のこと春まで延期したほうがマシだという考えもあるようです。

ただ一方でペンシルバニア州立大の体育局長であるサンディ・バーバー氏が「フットボールの春開催は最終手段だ」と慎重な構えを見せているように、全てのチームがどんな手段を使ってでもフットボール開催を断行しようとしているわけではなさそうです。

春開催の問題点

まずはリソースの問題。大学スポーツは当然アメフト部やバスケ部という「金づるスポーツ」だけなくほかにも複数の部が存在するわけで、これまではシーズンで分散されていたものが春学期という5ヶ月ほどの間に全チームの開催を詰め込むためにはそれ相応のキャパシティが要求されます。

そして秋開催のフットボール部だけ春開催となれば、他の秋季スポーツ部たちも黙ってはいないでしょう。「フットボール部が試合できるなら、俺たちに(わたしたち)にもシーズンを送らせてくれ」と声を上げる選手やコーチたちも出てくることでしょう。そうなれば施設や人件費といったリソースを捻出できないチームは厳しい運営を強いられることになります。

そしてもともと春にシーズン開催するチームたちからすればフットボール部が我が物顔で自分たちのシーズンを邪魔するようなことがあればそこに軋轢が生まれかねないのです。

ですから「秋がだめなら春にすればいーじゃん」と簡単に決定することは出来ないわけです。とはいっても手元に入ってくる金銭的利益を考えれば大学や体育局的にはなんとしてでも開催まで持ち込みたいわけで、結局そのしわ寄せは現場の人間たちに襲ってくるのですが。

前回の記事でも紹介しましたが、NCAAが提示した開幕までの6週間ロードマップによれば、9月に開幕するためには7月中旬までには自主トレを開始できていることを強く推奨しています。

すでに紹介したとおりオハイオ州立大、ノースカロライナ大は自主トレを中止してしまいましたし、その他にもヒューストン大、カンザス州立大、カンザス大なども自主トレをやめてしまっています。この状況下で彼らがこの6週間ロードマップを踏襲できるとは思えませんから、いよいよ今季の秋シーズン開幕に黄色信号が灯ったといってもいいのかもしれません・・・

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