嵐の予感・・・

嵐の予感・・・

2021年度のカレッジフットボール開幕まであと5週間ほどに迫りました。昨年度は御存知の通り新型コロナウイルスのパンデミックの影響でかなり特異なシーズンとなりましたが、今年はほぼ全域においてスタジアムにはフルキャパで観客を動員する予定になっており、いつものようなにぎやかなシーズンが戻ってきそうです。とはいえデルタ株の脅威もあったりなかったりしますが・・・。

巷では各カンファレンスが一斉にメディアデーを開催し、来るシーズンに向けての豊富などを報道陣の前で語るコーチや選手たちの姿がTVなどで報じられていますが、ここに至るまでのオフシーズンでは今年は何かと話題に事欠きませんでした。例えばカレッジフットボールプレーオフ(CFP)が4チーム制から12チーム制に拡大する話が持ち上がったり、NCAA(全米大学体育協会)の歴史的な裁判での敗北があったり、そして選手たちが自分たちの肖像権など(NIL=Name/Image/Likeness)を用いて収入を得ることが可能になったり・・・。

参考記事CFPが4チームから12チームへ?
参考記事NCAA、岐路に立つ
参考記事NILでひと儲け!

どれもこれもカレッジフットボールの歴史に刻まれるような大きな出来事や節目ですが、ここに来て更に度肝を抜かれるようなスクープが飛び込んできました。

テキサス大とオクラホマ大がSECに加入?

それは現在Big 12カンファレンスに所属している強豪・テキサス大オクラホマ大が同カンファレンスを脱退してサウスイースタンカンファレンス(SEC)に移籍しようとしている話が浮かび上がったのです。

最初にこの話が出たのが火曜日(7月20日)のことでしたが、その時は誰かが始めた悪いジョーク7日と思ったものです。しかしそのことについてテキサス大、オクラホマ大、SECも完全否定することなく「噂話には言及しない」という曖昧な態度に終始。そして翌日の水曜日(7月21日)にはさらにこの話がつい最近の話ではなく水面下でそれなりの時間をかけて模索されていたことだと判明。にわかにこの歴史的移籍が現実味を帯びてきたのです。

オクラホマ大はBig 12カンファレンスの前身であるBig 8カンファレンスのチャーターメンバー(創始メンバー)。Big 8は1990年代初頭に起きたカンファレンスリアラインメント(再編成)の煽りを受けて1996年に消滅。その代わりに所属していた8チームとサウスウエストカンファレンス(SWC)から4チームを加えて所属チームを12チームとしたBig 12が発足したのです。

そしてテキサス大はそのSWCに所属していた名門中の名門。SWCこそがこのリアラインメントで最初に犠牲になったカンファレンスだったのですが、テキサス大はそこからBig 12に合流したチームの1つでした。以来テキサス大およびオクラホマ大はBig 12カンファレンス内でしのぎを削ってきたのです。

そうして1996年以来20年間Big 12カンファレンスのメンバーとして切磋琢磨してきたテキサス大とオクラホマ大ですが、ここにきてなぜ彼らはBig 12を抜けてSEC入りを模索しだしたのでしょうか?

(そしてこの記事のドラフトの時点でオクラホマ大とテキサス大はBig 12所属チーム内で結ばれたメディア権利の契約を2024-2025年以降は更新しない旨を正式にカンファレンス側に伝えました。Big 12脱退の第一歩といえます)


移籍のモチベーション

一般的にチームがカンファレンスを移籍する際に生まれるモチベーションは主に2つ有ると思います。

1つ目は移籍することで環境を変えて勝負という面でチームに便宜を図ること。つまり移籍先でより多くの勝利を見込めると踏んだときに移籍を決意するということです。

しかしながらSECは現在カレッジフットボール界において最強といわれるカンファレンス。アラバマ大の6度を筆頭に過去15年間で実に11度のナショナルタイトルがSEC出身チームによって手にされてきました。現在の所CFPに出場するにはカンファレンスで優勝することが前提とされており、この強豪ひしめくカンファレンスにあえて乗り込むよりも、現在のBig 12カンファレンスに所属していたほうがその確率は高くなると考えるのが普通でしょう。

となれば彼らのモチベーションは「お金」以外に考えられません。

SECはその強さからメディアバリューが非常に高く、またカレッジフットボールを裏で牛耳っていると言っても過言ではない米スポーツ専門局ESPNが巨額の投資を行っているカンファレンスでもあります。市場として増収が見込め、現在のBig 12カンファレンスでの収益状況に満足できないオクラホマ大とテキサス大がSECへと鞍替えしようとしたと考えるのが妥当です。

もしくはこれをネタにBig 12カンファレンスから自分たちに有利な条件を引き出すためのブラフなのかもしれません。Big 12にしてみれば稼ぎ頭のこの2チームが脱退してしまっては死活問題。それを阻止するために既にBig 12はいかにこの2チームをカンファレンスにとどまらせるかを話し合っていると言われ、一部の報道ではそのためにオクラホマ大とテキサス大に配られる配当金を1.5倍に増やすという案もあるそうです。ただその代わり他のチームの分配金が減る可能性もあり、そうなればそれらのチームが黙ってはいないでしょう。

もし実現すると・・・

今の所オクラホマ大もテキサス大も正式に脱退の意思があることをBig 12カンファレンスに表明していませんが、その発表は近いうちに行われる可能性もあると言われています。とはいえ発表されたからと言って今年から彼らがSEC所属になる訳でもありませんが、Big 12カンファレンスには彼ら自身のメディア契約があり、現行だと2025年まで所属チームは脱退できない事になっています。それを破って脱退に踏み切った場合には契約違反金が発生するのですが、その額は7600万ドル(1ドル100円計算で約76億円)にのぼると言われており、さすがの両校もこの額は無視できなそうです。

ただ一方でSECに参加することで得ることができる利益を考えればこの違約金はすぐにでももとが取れるとも言われており、このことがどこまで彼らを引き止めるだけの材料になるのかは不明です。

もしオクラホマ大とテキサス大がSECに移籍したとすると、カレッジフットボールの全体像を大きく揺るがしかねないと言われています。

まずSECですが、現在14チームが所属しているため両校が合流すれば16チームの大所帯に拡大します。同カンファレンスは東地区と西地区に分けれれており、単純に考えれば最西端に位置することになるオクラホマ大とテキサス大は西地区に所属することになります。ここには既にアラバマ大ルイジアナ州立大アーバン大テキサスA&M大などの強豪校が所属しており、この地区を勝ち上がるだけでも一苦労となりそうです。見るファンにしてみれば毎週が名勝負となりそうで垂涎ものですが。

そうなれば西地区から1チームが東地区に移らなければならなくなりそうです。そこがどのチームになるのかも気になります。

そしてこのカンファレンス拡張で一番被害を被るのはBig 12カンファレンスです。現在10あるFBS(フットボールボウルサブディビジョン)カンファレンス群の中でも最小となる10チーム編成の同カンファレンスからオクラホマ大とテキサス大の二巨塔が脱退すれば所属チームは8チームにまで減りますし、何よりもカンファレンスの顔とも言える彼らが居なくなることでカンファレンス自体の価値がガタ落ちとなってしまいます。

そうなれば上位カンファレンス群の名称である「パワー5」カンファレンス群としての存在意義も疑われてしまいますし、いかに違約金として総額約1億5000万ドル(約150億円)が懐に入ってくるとしても、長期的に見れば2校の流失はカンファレンスを運営するに当たり致命傷となりかねません。

彼らが生き残るには周辺チームを勧誘してBig 12自体を拡張するしか他にありませんが、誘致できそうなチームは中堅カンファレンス群である「グループオブ5」のチームとなりやはりイメージダウンはまのがれません。

またその「グループオブ5」勢の筆頭であるアメリカンアスレティックカンファレンス(AAC)が残されたBig 12カンファレンスを吸収するかもしれないなんて話もありますが、「パワー5」として知られてきたチームたちが「グループオブ5」チームに成り下がるとは考えづらく、また前述の通りBig 8やサウスウエストカンファレンスといった歴史あるカンファレンスの系譜を継ぐBig 12カンファレンスという名を歴史に埋もれさせるとも考えられません。

ただBig 12カンファレンス所属チームもこの状況にうかうかしていられません。既にアイオワ州立大カンザス大Big Tenカンファレンスに接触したとも言われています。もしテキサス大やオクラホマ大が本当にBig 12を脱出し、同カンファレンスの存続危機になったときになってから他カンファレンス移籍を考えていたら手遅れともなりかねません。アイオワ州立大は同じアイオワ州にキャンパスをもつアイオワ大と元々ライバル関係にありますからBig Ten加入は有り得る話ですし、またカンザス大は地理的にBig 12加入校の中では北寄りのチーム。彼らのBig Ten入りは無いこともないかもしれません。

そのBig Tenカンファレンスやアトランティックコーストカンファレンス(ACC)さらにはPac-12カンファレンスもこの動きを見過ごすことはできません。ただでさえSECが突出している現在、オクラホマ大とテキサス大の強豪チームがSEC入りすればさらにパワーバランスの不均衡が加速することは明白。たとえばACCなら昨年限定でメンバーとなっていた独立校/無所属のノートルダム大を本格的にフルメンバーとして迎え入れたいでしょうし、Big Tenなら昨年躍進したシンシナティ大を囲うこともない話ではないかもしれません。

(とはいえ各チームがカンファレンスに打診することは許されていてもカンファレンス自身がチームを誘致することは原則禁止されていますが)

黙っていないのはテキサスA&M大

とはいえ、Big 12からオクラホマ大とテキサス大が脱退したとしてもそれが自動的にSEC入りにつながるのかと言えばそういう訳でもありません。SECの規定として外部から他チームを勧誘する場合所属する14大学のうち11大学がその案に賛成しなければ誘致はおじゃんになるのです。

現在の所はっきりとこの拡張に反対意見を示しているのがテキサスA&M大です。

テキサスA&M大は元々Big 12カンファレンス所属チームでしたが、元を辿ればテキサス大と同じSWCのチャーターメンバー。そしてその名前からも察することができる通りテキサス大とテキサスA&M大は長いことテキサス州内で雌雄を争ってきたライバル関係にありました。

しかしBig 12カンファレンスではその知名度は完全にテキサス大に握られ、テキサス州出身大学として常にテキサス大に先をいかれる関係が続いており、彼らはなんとか彼ら自身のアイデンティティを築きたいともがいていました。

そして2011年。彼らはBig 12からSECに鞍替えして世間を大いに驚かしました。以来テキサス州に所属する大学では唯一のSEC加盟チームという看板を引っさげてテキサス大とは一線を画す存在感を確立することができたのです。

しかしここに来てそのテキサス大がSECに加入することになれば再びテキサス大の亡霊に付き纏われる事になってしまいます。それを嫌ったテキサスA&M大はテキサス大及びオクラホマ大のSEC移籍に難色を示したのというわけです。

ただこの2チームの合流を阻止するためには反対派チームがあと3チームなければなりません。今の所賛成はら反対という意見を表明しているのはテキサスA&M大以外おらず、これに反対するチームが本当に現れるのかは微妙な所。またオクラホマ大やテキサス大にしてもBig 12を抜けるからには確実にSECに加入できるような根回しをしなければなりません。だからこそ先にも述べたとおりこの話し合いは水面下で何ヶ月も前から行われてきたわけです。

難点は・・・

ここまで読んでいただければこの一連の動きはお金に端を発していることがおわかりいただけたと思いますが、ここで忘れていけないことが一つ。

それはそれぞれの大学にはアメフトチームだけでなくその他にも多くの部が存在しており、アメフトチームのSEC移籍はその他のチームのSEC移籍も意味しているということです。

フットボールチームは大学体育局の花形であり稼ぎ頭であることは明白です。彼らは普段から移動は専用機やチャーター機を使ってアウェーゲームのために他キャンパスを行き来していました。しかしそれをどの部にも押し付けるのは簡単なことではありません。専用機などでは搭乗時のチェックなどか簡素化される可能性もありますが、一般の乗客と一緒に乗らなければならない場合遠征時間が伸びてしまいます。

そして所属するスポーツ部が遠征のために皆飛行機を使わなければならなくなればその費用負担は馬鹿になりません。当然バスで移動できる試合もあるかもしれませんが、例えばオクラホマ大がSECに移った場合、フロリダ大ジョージア大サウスカロライナ大らと戦わなければならななくなり、フットボールに限らずどのチームにしてもどう考えても飛行機で移動しなければ無理な話です。

アメフト部や男子バスケ部などは普段から移動に飛行機を使っていることでしょうが、それ以外のチームらは大抵移動はバスです。彼らも飛行機で移動できればいいですが、予算の都合で今までよりも更に遠い遠征地にもバスで向かわなければならなくなればそれはとんだとばっちりとなります。たとえ補助金が出たとしても、選手たちが移動しなければならない時間と労力は変わらないわけで、試合数の多い野球部などの移動の際の負担は計り知れません。

収入が見込めるスポーツ(Revenue Sports)ばかりがちやほやされてそれ以外の部活動がとばっちりを受けないかどうか心配なのです。

さらに・・・

過去カレッジフットボールの歴史を紐解けば、カンファレンスの拡張や消滅は何度も起きてきました。最近ならば2000年代にBig Eastカンファレンスからマイアミ大バージニア工科大などが次々と脱退してBig Eastが消滅してしまった件や、2010年代にBig 12、Pac-12、SECでカンファレンスの拡張が起こったり・・・。またその前には既にご紹介したとおりBig 8とSWCが合体してBig 12になったり・・・。

しかし今回のオクラホマ大とテキサス大のBig 12脱退及びSEC加入の件が現実のものとなった場合、それはこれまでのどのカンファレンス拡張よりもインパクトが大きいと言われています。

当然SECに並み居るツワモノたちがひしめく事になる自体も凄いことですが、これによってカレッジフットボールの大編成が起こるのではないかと言われていることです。

現在前述の通りFBSは「パワー5」と「グループオブ5」に区分されていますが、実質ナショナルタイトルを争えるのは「パワー5」チームの中でも上位チームのみとされています。これまでも、どうせ「グループオブ5」所属チームにナショナルタイトルを争えるだけのチャンスがないのならば一層リーグを分けて「グループオブ5」独自のナショナルチャンピオンを決めるような新たな枠組みが必要なのではないか、という話は存在しました。

そして「パワー5」チームを64チームに編成して彼らは彼らで独自のスーパーリーグを新たに立ち上げるという案も聞こえます。

それを可能にさせるような布石は今オフ起きていました。大学アスリートが自身の肖像権など(NIL)を元手にお金儲けができるようになったことです。

これまで学生アスリートの金儲けはアマチュアリズムの精神を掲げてきたNCAAが阻止し続けてきました。選手のプレー資格(エリジビリティ)やルールの制定、違反者への罰則、そしてアマチュアリズムの死守がNCAAの存在意義であったわけですが、今回世論に負けてついにNCAAはNILによる選手の収入を看過したのです。

これによりNCAAの存在意義の一つがもろくも崩れ、世間ではNCAAの存在意義すら疑う声が出てきています。現在NILに関しては無法地帯であり、NCAAはこれに関してさじを投げているようにも見えます。連邦法で規制ができないまでは州法やそれぞれの大学のルールに従うほかなく、必然的に各地で不公平な事態が出てしまいます。

それはさておき、今回のNIL容認により実質的にカレッジアスリートはお金を稼ぎながらプレーをしても良いことになりました。例えばアラバマ大のQBブライス・ヤング(Brice Young)はこの新制度を用いて既に1万ドル(約100万円)以上を手にすることができていると同校のニック・セイバン(Nick Saban)監督は話していました。ヤングはまだ一度も先発出場したことがないのにも関わらずです。

今後このようにスター選手がとんでもない額の収入を得るようになれば実質カレッジフットボールはプロスポーツのようなものになってしまいます。NCAAでは手が負えなくなり、その延長線上に主要64チームがNCAAを抜けて独自のカレッジフットボールリーグを設立させるという構想もあったりなかったり・・・です。

そして今回の一連のオクラホマ大とテキサス大の動きはこの構想を加速させるのではないかとい話す人達もいます。 

また今オフに話題になったCFP参加チームの拡張に関しても話がふり出しにもどる可能性もあります。現行の4チームから12チームに増やすというのが暫定案ですが、例えばオクラホマ大とテキサス大がBig 12を抜けることでBig 12自体が消滅してしまったら12チームにする必要も無いと考える人も出てくるかもしれません。例えば6チームとか8チームとか10チームでもいいんじゃないかと。

いずれにしてももし実現すればカレッジフットボールの勢力図に大きな変化が生まれるだけでなく、ドミノ式にその他の方面に影響を与えかねない今回の騒動。個人的には現行のまま地域に根ざしたカンファレンスで争ってほしいと思いますし、同時にお金のためにこのような動きにでたオクラホマ大やテキサス大に多少の嫌悪感をを覚えたのも事実。

そして何よりも先にも述べたとおり、現在のカレッジフットボールのお金の流れを牛耳っているとも言えるESPNの影響力に愕然とするのです。彼らが放映権を盾に発言力や影響力を強めたおかげで皆彼らがちらつかせる札束に踊らされているような気がしてならないのです・・・。

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