ハイズマントロフィーファイナリスト

ハイズマントロフィーファイナリスト

カレッジフットボール界でチームが手にできる最高峰のアワードがナショナルチャンピオンだとすると、個人で受け取ることのできる最高峰のアワードといえばハイズマントロフィーです。この賞を手にした選手は今後永遠にカレッジフットボール史に刻まれることになり、カレッジフットボーラーなら誰しもが憧れるトロフィーなのです。

今週土曜日にその栄えあるトロフィーの授賞式がニューヨークで行われますが、それに先立ち今年のファイナリスト4選手が発表されました。その4選手を紹介したいと思います。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ジョー・バロウ(Joe Burrow)

ルイジアナ州立大4年生QB

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主なスタッツ
パスヤード:4715ヤード(48TD)
ランヤード:289ヤード(3TD)

CFPランキング1位となったルイジアナ州立大オフェンスの原動力にしてチームの精神的リーダー。元はオハイオ州立大に所属していましたが2018シーズン前にルイジアナ州立大にトランスファー(転校)してきました。

今年チームは過去に類を見ないほどの強さを見せトップランカーたちを次々と片付けて13勝0敗を記録。そのチームを率いてきたバロウですが、ルイジアナ州立大出身選手としては実に2人目となる2年連続二桁勝利シーズンを演出したQBとなり、今年のSEC(サウスイースタンカンファレンス)の最優秀オフェンス選手に選ばれました。

今季NCAAで最高値となるパス成功率77.9%という数字を残し、しかも犯したINTパスはたったの6つ。QBの活躍度を示すQBレーティング(パサーレーティング)は今のところ全米トップの201.5ポイント。この調子で今シーズンを終えればNCAA新記録となります。また1試合で4つ以上のTDを記録した試合が実に7試合もあり、パス成功率が82%を超えた試合も4つあります。

もちろん数字だけで選手のすべてを計り知ることは出来ませんが、やはりシーズンを通して調子が落ちることがまったくなかったこと、そしてあの強豪アラバマ大ディフェンスを完全攻略し、SECタイトルゲームでもジョージア大ディフェンスを寄せ付けなかったことが強く印象に残っています。

筆者が唸ったプレーはこの2つ。

(12分10秒あたり)対アラバマ大戦。ルイジアナ州立大が39対34でリードして迎えた3rd&2ヤード。この前のドライブでアラバマ大がスコアし反撃の狼煙が上がったかに見え、この3rdダウンを止めれば攻撃権を取り戻せると思ったところのこのバロウのラン。このコンバージョンのお陰でLSUは追加点を奪えたのです。

もう一つは先日のジョージア大戦。みればわかると思いますが、ジョージア大DLのプレッシャーを掻い潜って見事WRジャスティン・ジョンソンに71ヤードのロングパスを決めたのです。

今季バロウが最有力候補とされていますが、もしバロウがこの栄誉を手に入れることができれば1959年にRBビリー・キャノン(Billy Cannon)氏が受賞した以来チーム史上2人目の快挙となります。


ジャスティン・フィールズ(Justin Fields)

オハイオ州立大2年生QB

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主なスタッツ
パスヤード:2953ヤード(40TD)
ランヤード:471ヤード(10TD)

オハイオ州立大のジャスティン・フィールズも実は転校生。彼は昨オフにジョージア大から出場機会を求めてトランスファーし、NCAAからの特例を受けて今年から試合に出場。開幕時には高い前評判を引っさげて先発に任命されましたが、ここまで期待通りもしくはそれ以上の働きをしてきました。

今季レギュラーシーズンを13勝0敗で終えたチームの司令塔として活躍したフィールズはヤード数こそバロウに劣るものの犯したINTパスの数がなんとたったの1つ。QBレーティングも全米3位(190.3ポイント)と間違いなく今季を代表するQBとしてニューヨークに招待されます。

今季13試合中すべての試合において最低でも2つのTDパスを成功させてきたフィールズですが、その中でも3つ以上が9試合、3つ以上が5試合とコンスタントにTDを量産してきました。その結果Big Tenカンファレンスの最優秀オフェンス選手に選ばれたのですが、彼は機動力でも相手を崩せるデュアルQB。足でも471ヤードに10TDを稼ぎ、Big Tenカンファレンスタイトルゲームでは追う展開で迎えた後半にウィスコンシン大ディフェンスを手玉に取って3TDを奪い逆転勝利に大きく貢献。その結果フィールズはこの試合のMVPにも輝きました。

筆者的に選ぶ彼のベストプレーはミシガン大戦で膝を負傷して一時サイドラインに引っ込むも、復帰した最初のプレーで見事なTDパスを通したシーンです。

オハイオ州立大出身選手としては昨年のドゥウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins、現ワシントンレッドスキンズ)に続き2年連続のファイナリスト。そしてもし受賞となれば2006年のトロイ・スミス(Troy Smith)以来の快挙、そしてオハイオ州立大としては8つ目のトロフィー(人数的には7人目、アーチー・グリフィン氏が74年と75年に受賞しているため)獲得となります。

ジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)

オクラホマ大4年生QB

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主なスタッツ
パスヤード:3634ヤード(32TD)
ランヤード:1255ヤード(18TD)

こちらのハーツもアラバマ大からの転校生。カレッジキャリア最後のシーズンを先発QBとして過ごすために彼はオクラホマ大にやってきましたが、彼は2017年のベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield、現クリーブランドブラウンズ)、昨年のカイラー・マレー(Kyle Murray、現アリゾナカーディナルズ)という二人のハイズマントロフィー受賞QBの後を継ぐという高い期待度を背負うことになります。

そんな期待を裏切ること無くハーツはオクラホマ大オフェンスを牽引。QB名伯楽リンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督のシステム下でパサーとしての才能を開花させたハーツは2018年度にアラバマ大トゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)に先発の座を奪われた鬱憤を晴らすように開幕後からトロフィー候補に名を連ねてきました。

彼もハイブリットQBというカテゴリーに入る選手ですが、上に挙げたフィールズと違い彼のランスタイルはそのタフネスを武器にしたパワーラン系。デザインランで稼いだヤードは実に1255ヤードとチームのRBを出し抜いてチーム最多ランヤードを記録。トータルオフェンスで4889ヤードを一人で稼ぐ荒業を見せました。挙句の果てにはレシーブTDも1つ記録するおまけ付き。

ここまでのパス成功率は71.8%ですが、このままならメイフィールドが2016年に記録したスクールレコード(70.9%)を塗り替えスペースです。QBレーティングもバロウに次ぐ全米2位となる200.3ポイント。チーム全体でも1プレー平均ヤード数で全米1位となる8.2ヤード、1試合平均ヤードでは全米2位となる554.2ヤードという今季を代表するオフェンスの大黒柱として君臨しました。

ハーツの最も印象に残っているシーンというか試合はベイラー大とのレギュラーシーズンゲーム。この試合では一時28対3と25点差をつけられていましたが、後半にハーツが3つのTDパスを決めるなどして大逆転をお膳立てしました。負けていたらプレーオフへの道は閉ざされていたことでしょうから、この時のハーツの鬼神のごとしパフォーマンスがチームをプレーオフ出場へ導いたとも言えると思います。 

メイフィールド、マレーに続くオクラホマ大QBのトロフィー三連覇は難しいですが、ファイナリストとして授賞式に招待される事自体が既に名誉なことですから、ハーツとしてはアラバマ大から転校して正解だったといえるでしょうね。

チェイス・ヤング(Chase Young)

オハイオ州立大3年生DL

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主なスタッツ
タックル数:44
タックルフォーロス:16(-129ヤード)
QBサック:16.5
フォースドファンブル:6

フィールズに続き二人目のオハイオ州立大選手がファイナリストに選ばれました。しかもチェイス・ヤングはディフェンシブラインマン。守備選手がファイナリストに残ること事態が稀ですから、それだけでも如何にヤングの今季の活躍が目覚ましかったかが分かると思います。

今季Big Tenカンファレンスの最優秀ディフェンス選手に選ばれたヤングは13試合中11試合しか出場していない(NCAAから2試合の謹慎処分にあったため)のにもかかわらず、QBサック数で全米1位(16.5)という数字を残しました。これは名門オハイオ州立大の長いフットボール部史において最多記録であり、Big Tenカンファレンス全体で見ても過去20年間で最多数であります。

またタックルフォーロス(TFL、ヤード減退を誘ったタックル)数でも全米1位となる16タックル(単独)で、奪った総ヤード数はマイナス129ヤード(全米2位)と圧倒的。そのヤングが中心となった今季のバッカイズ守備陣は全米2位となるトータルディフェンス(247.6ヤード)、3位となるスコアリングディフェンス(12.5失点)という鉄壁のディフェンスを見せてきました。

今季の試合の中でも特に印象的だったのはシーズン中のウィスコンシン大戦。Big Tenカンファレンスの動向を見極める上で重要な試合だったこの決戦でヤングは4つのQBサックに5つのTFLを御見舞するという圧倒的なパフォーマンスを見せました。 

ディフェンス選手が過去にハイズマントロフィーを獲得したのは1997年のチャールズ・ウッドソン(Charles Woodson、元ミシガン大CB)のみ。ファイナリストとしては2016年のジャブリル・ペッパーズ(Jabrill Peppers、元ミシガン大LB、現クリーブランドブラウンズS)、2012年のマンタイ・テオ(Manti Te’o、元ノートルダム大LB、現ニューオーリンズセインツ)、2011年のタイラン・マシュー(Tyrann Mathieu、元ルイジアナ州立大CB、現ヒューストンテキサンズS)と過去10年でも数えるほど。NFLスカウトも注目する将来有望な選手です。

今週土曜日にハイズマントロフィーを手にするのは果たして・・・?

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