あの名作が復活か?!

かつてこのサイトでも紹介したことがありますが、過去にアメリカのカレッジフットボールファンなら誰でも一度はプレーしたことがあるのではないかと言うぐらいポピュラーなゲーム、「NCAA Football」というフランチャイズがありました。

1993年に「Bill Walsh College Football」としてデビューしたこのゲーム。これは明らかにNFLの「Madden Football」の弟分として発表された作品でしたが、1997年に「NCAA Football」に改名。以来カレッジフットボールファンのバイブル的ゲームになりました。筆者も贔屓のチームをダイナスティーモードでプレーし、ありえないほど最強のチームにして夢に酔いしれたものでした。

しかしこの超人気ゲームも「NCAA Football 2014」以来製造中止となっています。

なぜなら元UCLAの男子バスケ選手エド・オバノン(Ed O’Bannon)らが2009年に起こした訴訟に敗れた製造者のエレクトロニクス・アーツ(EA)社が総額6000万ドル(1ドル100円計算で約60億円)を支払う羽目になったからです。

ちょっと巻き戻してこの訴訟に関するお話をしましょう。

NCAA(全米大学体育協会)の主な仕事は、アメフトに限らず全ての大学スポーツにおいて公正が保たれているか監視し、ルールを破るものがあれば罰していく閻魔大王(言い過ぎか?)のような団体です。彼らのモットーの一つが「アマチュアリズム」。つまり大学アスリートはあくまで大学生であり、どんなにカレッジスポーツが肥大して商業化してもその一線は絶対に越えてはならない、と言うものです。

これに関しては一理あるものの、時代遅れだという意見も聞かれます。

NCAAが正式に発足したのが1915年。この頃の大学スポーツといえばほぼアメフトの事を指していました。参加するチームが増えたためルールを統一しようということになりこの団体が設立されたのです。その時からアマチュアリズムに関しては重要事項であり、当時イェール大(アイビーリーグ)のジェームス・ホーガン(James Hogan)氏は大学でプレーしながらなんとタバコ会社からスポンサーシップを受けていたというようなケースも存在しており、これをなんとかしようとNCAAが立ち上がったという背景もあります。

それから100年以上が経ち、未だにアマチュアリズムはNCAAの屋台骨です。しかし時代の変化とともにカレッジフットボールの様相は大きく変わりました。その最たるものはこのスポーツに渦巻くお金の動きです。特に2000年代を過ぎてからはテレビ放映権やカンファレンス独自のネットワーク、並びにボウルゲームから支払われる報酬の額が毎年跳ね上がる一方。

そしてもっと凄いのはヘッドコーチたちの年収額です。私がカレッジフットボールにハマりだした1990年代後半、当時フロリダ大で栄華を誇っていたスティーヴ・スパリアー(Steve Spurrier)氏が100万ドル(約1億円)の大台に乗った!と大騒ぎしていたのを覚えていますが、あれから20年。現在カレッジフットボールで最高年収額を稼いでいるアラバマ大ニック・セイバン(Nick Saban)監督のサラリーはなんと900万ドル(約9億円)。ルイジアナ州立大のディフェンシブコーディネーターのデイヴ・アランダ(Dave Aranda)氏はアシスタントコーチであるにもかかわらず200万ドルの年収を受け取っています。

カレッジコーチはこのように法外なサラリーを受取り、そしてそのために大学を転々とすることを許されているのに、選手はお小遣いをもらうことも許されていないのです(基本的に)。もちろんそれは彼らがアマチュアアスリートだからです。

それゆえに彼らの名前、肖像権などを元に利益を得ることも許されていないのです。これをNIL(Name, Image, Likeliness)ルールといいます。

ですから大学選手は自分のブランドを立ち上げることも出来ませんし、ユーチューバーとして利益を得ることも許されていません。

そしてそこにNCAA Footballです。

初代プレステやプレステ2版のNCAA Footballはゲームを見ただけでは誰が誰だか分かりませんでした。しかしデフォルト選手のステータスを見れば前年の実際の選手たちのパフォーマンスが反映されているのは明らかでした。しかもプレステ3にもなれば見た目もまさに実際の選手とそっくり。流石に実名は使われていませんが、凝りに凝った筆者は実際に選手をエディットして実名を登録したものです(私だけではないはず!)。

この実際の選手とそっくりなプレーヤーをフィーチャーしたEAスポーツ社のNCAA Footballは、明らかに特定の選手を模してデザインされています。そしてこのフランチャイズはこれまで総計8000万ドル(約80億円)を稼いだとされています。つまりアマチュアアスリートであるカレッジフットボーラーたちを利用して大儲けしたゲームであるということです。

これに異を唱えたのが前述のUCLAのオバノンや彼に賛同する元大学アスリートたち。自分たちの肖像権を利用してお金儲けをしてはいけないはずなのに第三者であるEAがお金儲けしているのはおかしいと訴えを起こしたのです。

その結果EAは総額6000万ドルを膨大な数の元プレーヤーたちに支払わなければならなくなったのです。選手たちが受け取った平均額は1200ドル(約12万円)だったそうです。

そしてさらにEAのNCAA FootballはNILに抵触しているということになり、商標権契約を結んでいた多くの大学チームもEAとスポンサー契約を解除するか更新することを拒み、結果的にEAは大学チーム自体をゲームに登場させることができなくなり、実質製造中止を余儀なくされたのです。これは単に各大学側がNCAAからの制裁にビビって尻込みしたからに他ありません。

そうしてカレッジフットボールファンのバイブルでもあるNCAA Footballは2014年度版を最後に発売されておりません。

このことに関しては多くの人々ががっかりし、しかも選手側には「和解金なんかいらないからNCAA Footballを復活させてくれ」という声を上げる人々も少なくありませんでした。

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しかしこの状況に一筋の光が。

NCAAがこのNILに関する問題をあらためてディベートするための委員会を設立。この話し合いでNILの内容が改正されればひょっとしたらNCAA Footballが復活されるかもしれない、とにわかに期待されているのです。

どういうことかというと、先に紹介したオバノン訴訟を受け、今後EAや他のゲーム会社が実際の選手に似せたプレーヤーをゲームに登場させるには、それらの選手に報酬を支払わなければならなくなります。しかしNILによってアマチュア選手である大学アスリートたちはそのような報酬を受け取ることは出来ないわけです。

つまりもしNILルールが改正され、アマチュアである学生アスリートたちが自分の肖像権をもとに報酬を受け取ることが可能になるならば、EAが選手たちに報酬を与える代わりにNCAA Footballを復活させる可能性が出るわけです。

もちろんまだ何も話し合いは行われていませんし、こういった案件にはあまり乗り気にはならないと思われるNCAAが相手ですから、おそらく実際に復活する可能性はかすかであると言わざるを得ませんが、少なくとも周囲の声に耳を傾けて彼らが委員会を組織したという事実は評価したいです。

当人であるEAはこの話に大変乗り気のようです。

「カレッジフットボールのビデオゲームを制作するのは我々は大好きです。もしそういった機会がまた得られるのならば、ぜひゲームを復活させたいです」とはNCAA Footballの元エクゼクティブプロデューサー、ベン・ハウミラー氏。

カレッジフットボールファンを沸かせたあの名作、NCAA Footballが返ってくることがあれば、ひょっとしたらプレステ2止まりの筆者もプレステ4を買ってしまうかもしれません(笑)。

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