UCLAローゼンのコメントの真意とは?

NFL級の才能を持つと言われながらも昨年肩に負った怪我のせいで戦線離脱余儀なくされたUCLAのQBジョシュ・ローゼン(Josh Rosen)。今季はこの怪我から完全復活して再びチームを率いる準備は整っているようですが、最近彼が残したコメントがちょっとした一悶着を起こしています。

インタビュー

先春「Bleacher Report」の記者と交わしたインタビューが先日公表されたのですが、ローゼンはそのなかで学業とスポーツの両立はどれだけ大変かという質問をされこのように話しました。

「学校は好きです。大変ですけれどね。でも自分が学びたいと思っている分野(ローゼンの専攻は経済学)で役立つことを学んでいることはすごい楽しいです。でも本当に受講したいクラスはフットボールのスケジュールと重なって履行できないんです。」

するとこの記者はローゼンに対し「学業よりフットボールを優先するのか?」とつっこまれ、こう答えました。

「私はそんなこと言ってませんよ。あなたが言ってるんじゃないですか(笑)。でも言ってしまえばフットボールと学業は相容れないものなんです。これは事実です。両方を完璧にこなすということは、フルタイムの仕事を二つ同時にこなすようなものです。」

「大学にはどうしたって似つかわない連中はいます。でもここにいることはNFLに進むためには避けて通れないから居るだけの事です。じゃあSAT(大学入試テストのようなもの)の必須スコアのレベルを上げればいいなんていう人もいるでしょう。ではもしそれをアラバマ大でやってみることを想像してください。一体どんな選手がチームに残ると思いますか?いいアスリートは居なくなり、チームの戦力は失われてしまうことでしょう。」

来年のNFLドラフトでは第1巡目で指名されることが早くも予想されているローゼンですが、NFLに進めるカレッジフットボーラーはごく一部です。その大多数の選手たちはカレッジキャリアが終わればそれぞれが普通の仕事についていくわけです。そんな中、大学はアメフトからの多額の収入で懐が温まる一方、その収入の元となっている選手たちはそれ相応の扱いを受けていないとローゼンは話します。

「フットボールの世界に身を投じたその瞬間から選手たちの学業への時間は奪われてしまいます。選手たちはその事が後になって自分の首を締めることを理解できず、気付いた時には遅すぎたという事態に陥ってしまいます。大学には我々学生を助けてくれる人たちがたくさんいる筈ですが、彼らがしてくれることといったら我々のプレー資格が剥奪されないようにすることぐらいです。大学は我々学生アスリートが大学生活、そして卒業後の進路で成功するための準備ができるように手を差し伸べるべきです。私たちがプレーすることで大学は巨額の富を得ているのですから、彼らが私達にできる限りのことをしてくれないというのはもはや罪であると思うのです。」

世間の反応

ローゼンの言っていることはおそらく100%正論です。それはカレッジスポーツの内情を知っている人間ならばうんうんとうなづいて聞ける話です。しかしそれを表立って、しかもまだ現役の選手が声に出してきたことは滅多になかったからちょっと目立ってしまったんですね。

彼の主張に同調する声も多く聞こえますが、こういう場合は大抵批判の声も上がるものです。上のコメントを聞いた一部の人間はローゼンがフットボールに全力を注いでいないのではないか、もっと言えばそんなにフットボールが好きではないのではないか、と疑問を感じているというのです。それはNFLのスカウト連中からも聞こえてくる話だそうです。それを聞いたローゼンは勿論反論しました。

「私がフットボールを愛していないんじゃないかって?そんなわけないじゃないですか!もし愛していないんなら私は大変な思いをしてまでここにいる筈ありません。なんでスカウトの人たちがそんなことを言うのか理解できません。自分がフットボールと関係ない話をしたからでしょうか?冗談じゃないですよ。」

「私はプロの世界で長くプレーしたいと願っている人間です。私は偉大な選手になりたいと思っていますし、私がプレーするチームがチャンピオンになることを夢見ているような人間です。私はNFLで求められる限りプレーし続けたいと思っていますし、体が続く限り夢を追っていきたいと願っています。これがフットボール愛ではなかったらなんだというんでしょう?!」

NFLのドラフトでは選手の能力だけでなく、選手の資質も問われる(もっとも資質がなくても能力が高ければどこかのチームが指名することになるでしょうが)ので、万が一でもローゼンにプロ選手としての資格がないと疑われたくないためにそんな釈明コメントしたとも取れなくもありませんが(意地が悪いか?笑)、出る杭は打たれると昔から言うものでローゼンもその餌食になったともいえます。

一線を越えた?

しかしローゼンの最大の失敗は、インタビューのなかでのたとえ話でアラバマ大の名前を出してしまったことです。これはよく読めばすぐわかりますが、遠回しにアラバマ大の選手たちは賢くない人間の集まりだ、と言っているのと同じよう聞こえるからです。おそらくこれはある意味当たっているかもしれませんが(苦笑)、でも言われた当人にしてみれば面白くないに決まっています。しかもUCLAという全米でも賢い分野に入れられる大学の選手がそんなことをいうのですから、言われた方の神経を逆なでしてもおかしくありません。

ただ、今のところ表立ってローゼンを批判するアラバマ大選手の声は聞こえてきません。もちろん選手のツイッターやらインスタグラムなどを全部見ていけばなんらかの反応は見られるのでしょうが、ひょっとしたらアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督が情報統制しているのかもしれません。不必要に反応してことを荒立てるな、と。

そんな中アラバマ大の卒業生であるレロン・マクレーン(Le’Ron McClain)は一連のローゼンのコメントに対しこう答えました。

「(ローゼンのコメントは)アラバマ大に対する皮肉ではなかったんだと思います。彼が言うようにもしSATの必須スコアを上げたとしたら、カレッジフットボール界に大きな変化を及ぼすことでしょう。おそらく多くの選手が大学に進めなくなるに違いありません。」

マクレーンはローゼンのコメントに一定の理解を示していますが、一方でSATスコアを上げればローゼンが所属するUCLA自身もその影響を受けるだろうとも言っています。UCLAにだってもしフットボールのスカラシップ(スポーツ奨学金)制度がなければ入学できていなかった選手はおそらく山ほどいるでしょう。

その一方でアラバマ大関係者ではありませんが、ローゼンのコメントに真っ向から噛み付いた人物がいます。元オハイオ州立大QBカーデル・ジョーンズ(Cardale Jones)です。彼は1年生時にはばからず「俺たちは勉強するために大学に来たんじゃない」とごうごした人物。そんな彼にしてみればローゼンのコメントは理解に苦しむものだったのでしょう。そこでジョーンズ
こんなツイートを残しました。

ようするに「学業に専念してろ」と言いたいのでしょう。ただローゼンは学業とフットボールの両立に弱音を吐いているのではなく、あくまでその両立は非常に大変なことだと言っているだけです。ジョーンズのツイートは少し論点から離れており、浅はかさだけが際立ってしまいましたが・・・。

どちらにしてもそのコメントのせいで注目を浴びてしまったローゼンですが、チームはすでにプレシーズンキャンプ中で来るシーズンに向けて準備を進めているわけです。そんなときにこのような騒動が起きてしまったことでチームにとっては雑音となっていそうですが、ヘッドコーチのジム・モーラ(Jim Mora)監督は以下のように話しています。

「私がジョシュに言ったことは『意見を持つことはいいことだ』ということです。彼は自分よりも若干運に恵まれていない選手(=プロに進めない選手)のために代弁したまでのことです。そういった選手たちは利用されているだけではないのかと彼は感じたのでしょう。」

「20歳の青年ならば22、23、30、50、60歳の時とは違う考えを持っているでしょう。しかしいつの時でも自分の考えをこのように公にすると場合によっては人々の関心を引きもし、ひと騒動になることもあります。その意見に賛成する人も現れれば、批判する人も現れる。そしてその発言をしたのであればその後に起こりうる様々な過程を受け入れなければならないのです。」

モーラ監督はローゼンが上記のようなコメントを残したことを悪いことだとは思っていないようですが、自分で放った言葉には責任を持たなければならない、と言いたかったようです。

個人的にも長い間で現場で学業とスポーツを両立させている選手たちをたくさん見てきました。ですからUCLAのような賢いとされる大学でいい成績を保ちながら強豪チーム相手にフットボールしなければならないことは大変であることは言うまでもありません。だからローゼンの言っていることはよくわかります。

しかしUCLAにはこれまで多くの学生選手達がフットボールと勉学を両立させて来たのも事実。それはUCLAだけに限らず彼らと同じように賢いと言われるスタンフォード大カリフォルニア大バージニア大、もっと言えばFCSレベルでフットボール部に所属する超エリート校であるハーバード大やプリンストン大の選手も皆フットボールをしながらレベルの高いといわれる教育を受け、多くの選手が両立させてきました。そもそも大学のレベルは違えどどの大学に所属していようが(=アラバマ大)クラスを取りながらフットボールを続けるのは並みの努力では成し遂げることは出来ないでしょう。

ローゼンが正しいことを多くのカレッジフットボーラーを代弁したのか、はたまたただ単に今の状況に文句を言っているだけなのか・・・。それは聞く人によって異なってくるんでしょうね。