先日ルイジアナ州立大に下されたNCAAの制裁（37勝が記録から抹消）のニュースをお届けしましたが、彼らと同じSEC（サウスイースタンカンファレンス）のテネシー大もこの度NCAAルール違反を受けた制裁を下されました。
テネシー大に課せられた処分は2019年から2020年の間に獲得した11勝をNCAAの公式記録から抹消するというものでした。
これは当時の監督だったジェレミー・プルイット（Jeremy Pruitt）氏体制下で行われたリクルーティング違反を受けての決定となります。また彼らは11勝を抹消させられただけでなく、約800万ドル（1ドル100円計算で約8億円）という巨額の罰金を支払うこと、さらには5年間のプロベーション（執行猶予期間）も課せられ、おまけに28人分のスカラシップ（スポーツ奨学金）の削減というかなり痛手な処分を受けることになってしまいました。
ここまでの厳しい処分がNCAAから下されたのにはそれなりの訳があります。
調査の結果、テネシー大はプルイット前監督指揮下で何と200件ものリクルーティング違反を犯しており、そのうちの18個は最も重いと言われるレベル1相当の違反だったのだそうです。
その際たるルール違反は、リクルートにお金をばら撒いていたことがバレたことです。このご時世になって・・・と思うかもしれませんが、おそらく似たようなことをしているところが他にあってもおかしくはありません。ただテネシー大ほどあからさまにはやってないと思いますが。
調査によると、2018年から2020年の間、プルイット氏は大学側が金銭的なサポートをしてはいけないリクルートの訪問（アンオフィシャルビジット）にてその渡航費や宿泊費などを提供していたというルール違反も行なっていたそうです。
さらに2020年は新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、対面式のリクルーティングは禁止されていたのにも関わらず、リクルートたちをテネシー大のキャンパスに呼び寄せ、費用は全て大学持ちの接待を行なっていたのだとか。
おまけにプルイット氏本人および彼の奥様が直々に高校生リクルートに現金を渡していたことも発覚。中にはファーストフードの紙袋の中に6000ドル（約60万円）を忍ばせて渡されたと証言した人物もいるほど。この手法が何というか80年代っぽい（笑）。
この処分の影響でテネシー大の2019年の戦績は0勝5敗、2020年の戦績は0勝7敗に修正され、プルイット氏のテネシー大での総合戦績は5勝19敗に訂正されてしまいました。
プルイット氏自身は2020年度シーズン終了後にNCAAルール違反疑惑が発覚した時点で大学から解雇を言い渡されています。200件ものルール違反を犯し、残された大学は800万ドルの罰金やスカラシップの削減を余儀なくされてしまいましたが、そこまでしながらプルイット氏は大したチームを世に送り出すことができなかったのですから、テネシー大としてみれば偉い人物を雇ってしまったということになるでしょう。
プルイット氏は2016年と2017年にアラバマ大でディフェンシブコーディネーターを務め、2017年の全米優勝に貢献。その腕を買われて2018年にテネシー大の監督に就任しました。史上最高の呼び声高いアラバマ大のニック・セイバン（Nick Saban）監督の帝王学を学んだ人物として古豪テネシー復活のために期待度は高かったのですが、その期待度がしぼむまでそう時間はかかりませんでした。
しかもこんなスキャンダルを起こしてしまったことで、同じようなことをアラバマ大でもやっていたのではないかという疑惑の声すら上がる始末。実際アラバマ大にいた時、不自然なほどの多額の現金を銀行から出し入れしていたことが記録からわかっており、その疑惑は深まるばかりです。
現在のテネシー大は元オクラホマ大QBで前セントラルフロリダ大HCのジョシュ・ハイペル（Josh Heupel）監督が率いていますが、2年目の昨年度は11勝2敗と大躍進。一時は全米一位に躍り出るほどに。
お金をばら撒きまくって選手を集めようとして、それに失敗したばかりか白星も増えず、結局そのボロが出て自らの信頼度がガタ落ちしたばかりかテネシー大自身も飛んだとばっちりを食らった訳ですが、そこまで派手にお金を使っていたことが大学側が分からなかったというのも疑問ですから、彼を制止できなかった大学側にも落ち度はあったとみるべきですね。
不幸中の幸いなのは、テネシー大はボウルゲーム出場禁止という重い処分はどうやら免れたこと。流石にプルイット監督と何ら関係ない今の現場の選手らにしてみればこれでプレーオフに行けないとなればいたたまれないですものね。
