Big Tenカンファレンスの名門校で2021年と2022年にカンファレンスを二連覇し、CFP（カレッジフットボールプレーオフ）にも二年連続で出場したミシガン大。その彼らの長であるジム・ハーボー（Jim Harbaugh）監督が来たる2023年度シーズンの開幕後4試合でチームを指揮できなくなってしまいました。
今年1月、NCAA（全米大学体育協会）はミシガン大が2020年度シーズン、新型コロナウイルスの大流行の影響で対面のリクルーティングが禁止されていたのにも関わらずそれを行なっていたという疑惑や、フィールド上で指導する資格のない人物を中に入れていたといったような、NCAAの罰則レベルでいうとレベル2（レベル1が最も重い）の違反行為を4ケース発見したのだとか。
さらに悪いことに、このことに関する聞き取り調査で、ハーボー監督が虚偽の発言をしていたことが分かりますが、これはレベル1相当の違反行為と判定されてしまいました。
NCAAとミシガン大側はこの件に関して話し合いを持っていましたが、ハーボー監督は頑として自身の不正を認めなかったため、今回のような4試合の謹慎処分が下されたということでした。
昨年のBig Tenカンファレンスタイトル覇者であり、今季もカンファレンスタイトルレースで最有力候補と目されているミシガン大ですから、そのリーダーであるハーボー監督を開幕後4試合も失うのは得策とは言えません。
ただ、その開幕後4試合というのが全てホームゲームであり、しかもその対戦相手がイーストカロライナ大、UNLV（ネバダ大ラスベガス校）、ボーリンググリーン州立大、そしてBig Ten戦初戦となるラトガース大というマッチアップとなりますが、どのチームもハーボー監督なしでも十分勝てそうな相手。
当然監督が謹慎処分などということはそうあることではありませんから、ハーボー監督的には汚点となってしまうかもしれませんが、一方でカンファレンスタイトル三連覇、さらには1997年以来の全米優勝を目指すミシガン大にとって、この開幕4連戦のカードでのハーボー監督不在は正直そこまで痛手となる感じではありません。
おそらく4試合が終わった時点でミシガン大は4勝無敗となっていることでしょうし、ランキングでもトップ3以内に収まっている可能性は大。そうなれば満を持してハーボー監督が戻ってくる頃にはミシガン大ファンのボルテージはかなり上がっているに違いありません。
また、ハーボー監督が戻ってくる5試合目は、今季からマット・ルール（Matt Rhule）監督に率いられるネブラスカ大が相手。密かにネブラスカ大での期待度が上がっている中、その試合にタイミングよくハーボー監督が戻ってくるのも興味深いところ。
そういった意味でも果たしてこのペナルティーはミシガン大やハーボー監督にとって痛手なのかといったら定かではありません。むしろ甘すぎると言っても過言ではないでしょう。
しかも、彼らの最大のライバルであるオハイオ州立大としてはこの制裁はゆるゆるだと感じずにはいられないことでしょう。
というのも、2009年にオハイオ州立大に所属していた5選手がタトゥーを入れてもらう代わりにサイン入りのギアーなどを譲渡した「タトゥーゲート（Tatoo-gate）」が発覚した際、その選手たちを庇うために虚偽の発言をしたジム・トレッセル（Jim Tressell）監督が2010年度シーズン前に解雇されてしまったと言う過去があったからです。
トレッセル監督は2002年にオハイオ州立大に全米制覇をもたらした名将でしたが、その彼ですら解雇されてしまったのに、ハーボー監督はたったの4試合の謹慎、しかもそれが大したダメージとならないとは何事かと憤慨してしまうわけです。
そう考えれば10年間でNCAAは骨抜きになってしまったのか、とも思ってしまいますが、一方で以前お伝えしたように、ルイジアナ州立大は37勝を、テネシー大は11勝を記録から剥奪されてしまうような非常に厳しい処罰も下しています。
そうなればNCAAはミシガン大やハーボー監督に甘いのか、と思われてしまっても仕方ないわけです。
ちなみにミシガン大はオフェンシブコーディネーターのシェローン・ムーア（Sherrone Moore）氏、並びにTEコーチのグラント・ニューサム（Grant Newsome）氏も1試合の謹慎処分となり、果たして誰がオフェンスをコールするのかも気になるところ。
さらにはハーボー監督不在の中、誰が臨時監督を務めるのかということにも注目が集まります。
もし現在RBコーチであり、2004年から2007年まで母校でプレーしたマイク・ハート（Mike Hart）氏が臨時コーチに指名されたらちょっと熱いと思ってしまいます。
