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NILでひと儲け!

NILでひと儲け!

先日もお伝えしたようにこのオフシーズンはプレーオフ制度の拡張やらNCAAアルストン訴訟での敗訴などで話題に事欠きませんが、長いカレッジフットボールの歴史の中でもそれらに勝るとも劣らない変化が訪れようとしています。

それは学生アスリートたちがNIL(Name/Image/Likeness)を糧にお金を稼ぐことが許されるということです。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

前回の記事でもご紹介したとおり、NCAAの柱の1つであるのは大学スポーツをアマチュアスポーツとして維持するということでした。そのためにお金のためにプレーをするというコンセプトを頑なに禁止し続け、学生アスリートたちが手にすることができるのはスポーツ奨学金(スカラシップ)や寮費や食費の免除、その他の微々たるベネフィット(利益)だけでした。

しかしカレッジスポーツ、特にフットボールやバスケットボールが巨大ビジネスに成長しそれにより巨額の利益が生まれる中で、その源とも言える選手たちがその恩恵を受け取ることができていない現在のシステムには批判が湧いており、選手も何らかのリワードを受け取ってもいいのではないかという論調が高まっていました。

そこに来て2019年にカリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサム氏はそれを可能にする州法「Fair Pay to Play Act(SB206)」に署名をし、同州内で2023年から学生アスリートがNILを元手にお金稼ぎができるようになる事になったのです。

NILとは?

先程も紹介しましたが、NILとは「Name/Image/Likeness」の略であり、選手の名前、イメージ(画像)、およびそれに似せられたもの、という3つのカテゴリーに分けられ、いずれも選手自身の肖像権や商標権のようなものだと理解していただけるとわかりやすいかもしれません。

例えば「Name」で言えば、自分の名前を冠したイベントを行って収益を得るとか、サイン入りのグッズを売って収益を得るとかできますし、「Image」で言えば、売店やレストランの広告塔としてポスターに起用されることでその見返りを受け取るとか、そのポスターを直接売るとかできますし、「Likeness」で言えばかつてEAスポーツが販売していた「NCAAフットボール」のようなゲームで自分に似せた選手が登場することでその見返りを受け取ることができるとかが可能になります。

それ以外でもYouTubeチャンネルを経て利益を受け取ったり、テレビやラジオのCMに出て利益をもらったり、自分のブランディングを経てフットボールキャンプを開催して利益を手に入れたり、スポンサーシップによる収入も可能になります。

実際にフットボールをプレーすることに対する対価は受け取れないものの、やりようによってはかなりの収益を手に入れることができるようになるポテンシャルを秘めており、これまで大人に搾取され続けてきた学生アスリートにしてみれば大変な朗報なのです。


NIL容認の動き

この動きは州ごとに広がりを見せ、カリフォルニア州だけでなく他の多くの州もNILによる学生アスリートの収入を許可する州法が確立されていきました。そして当初これに反発していたNCAAも前向きにこの流れを受け止めるよう方向転換しました。ただその後彼らは具体的なプランを打ち出すことはありませんでしたが、その間もNILを認可する州は増え続けていきました。

そこに来て前回紹介したアルストン訴訟での敗訴。詳しくは記事を読んでいただければ早いと思いますが、この敗訴により学生アスリートにも利益が還元されるシステムの誕生が加速されそうな風潮が生まれ始め、そうなればNCAAはコントロール不能となることをようやく察知したのか、いよいよ彼らもNILを使用して選手たちがお金稼ぎをできるような仕組みを導入すると重い腰を上げたのです。

そしてNCAAの評議会は今週水曜日にもこのルール改正を容認し、その翌日となる7月1日から学生たちに新システムを開放することが見込まれています。

実はNILルールを独自に導入しようとする州の数が増えてきたなか、NCAAは連邦機関に統一された法律を制定するようにお願いしていたのですが(ほぼ丸投げという意見もあり)、「自分たちの尻拭いは自分たちでやれ」とばかりに連邦機関はこれを却下。結果的に多くの州でこのルールが7月1日から開放されるそのまさに直前にNCAAがNILによる選手たちの利益獲得を認め、それに関するルールを制定しようという動きに至ったのです。

これにより全米においてすべての学生アスリートがNILを用いてお金を得る事が可能になります。すでに州法が確立された州ではそのルールに則って選手たちが利益を得ることができ、そうでない州ではNCAAが定めるルールに則って同じことをすることができます。

危惧

これまで学生アスリートたちがその立場とNCAAのルールにより金的利益を手にできなかったことを考えれば今回の動きはおおむね世間に受け入れられているようです。しかしだからといってこの新しい動きに超えなければいけないハードルが無いというわけではありません。

やはりこれまでやったことのないことが可能になったからと言ってすぐにそれが形になるということはありません。実際何をやったらいいの?という選手も出てくるでしょうし、そのことばかりに気を取られて練習や学業がおろそかにならないかという不安もあります。

また、このNILの新ルールをリクルーティングの道具に使われる可能性は十分にあります。例えば「うちの大学に来ればNILを使っていろいろなことをできる基盤が揃っているよー。」などという甘い言葉を使って選手らを勧誘するチームは現れてくるでしょう。そうなればそのリソースが揃っている大学とそうでない大学のギャップは開いていきますし、それはおそらく強豪校と中堅校という現存するギャップに拍車をかける可能性も否定できません。

さらに強豪校のスター選手ならば場合によってはとんでもない額のお金を手に入れることができる可能性もありますが、と同時に同じチーム内の仲間との間でそれによる格差が生じてしまうというケースも発生してしまうのではないでしょうか。

そしてそれを利用してひと稼ぎしようとする大人たちの存在を忘れてはなりません。

今回のNILを使って学生たちが収入を得ることができるようになるというムーヴメントは確実にカレッジフットボール史に刻まれる大事件となりますが、それと同時に大学スポーツというダイナミクスが大きく揺らぐきっかけになるのではないかと考えずにいられません。

アメリカのカレッジスポーツの新たな夜明け・・・しかしそれが結果的に何をもたらすのか。改革か混沌か・・・。いずれにしても大きな渦が押し寄せてくることは間違いないようです。

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