Big Tenカンファレンス優勝決定戦は全米1位のオハイオ州立大と12位のウィスコンシン大の2チームの戦いとなりますが、このマッチアップはレギュラーシーズンで既に行われた対戦カードと同じ、つまりリマッチということになります。
10月26日に行われた試合ではオハイオ州立大が38対7でウィスコンシン大を一蹴。この試合ではオハイオ州立大が相手よりも15個も多くの1stダウンを奪い、獲得ヤード数でも431ヤード対191ヤードと圧倒。特に当時ハイズマントロフィー候補に挙げられていたウィスコンシン大RBジョナサン・テイラー(Jonathan Taylor)を52ヤードに押さえ込んだのは圧巻でした。
今季過去に類を見ないほどの完璧なチームと言われるオハイオ州立大にウィスコンシン大がリベンジを決めることが出来るのか・・・。
ウィスコンシン大オフェンス vs オハイオ州立大ディフェンス
オハイオ州立大に手も足も出なかったテイラーですが、今季は様々な記録を更新するなど全米を代表するRBであることは代わりありません。最近2試合では100ヤードには届かなかったものの各試合で2TDずつを獲得していることからも、未だ彼がチームのオフェンスの大黒柱です。
ジョナサン・テイラー
何と言っても過去3年間で5932ヤードを稼ぎ、このタイトルマッチで68ヤード走れば生涯ランヤードで6000ヤードの大台に乗るほどの逸材。ウィスコンシン大からはロン・デイン(Ron Dayne)氏やモンテ・ボール(Montee Ball)氏などの秀逸RBが輩出されていますが、テイラーもこの一員に名を連ねるほどなのですから。
しかし彼に立ちはだかるオハイオ州立大のランディフェンスは1試合平均91.2ヤードで全米4位と鉄壁。過去オハイオ州立大と2回対戦しているテイラーですが、その2試合合わせても93ヤードしか記録できず、オハイオ州立大ディフェンスとの相性の悪さを示しています。
ということはウィスコンシン大はオフェンスのアプローチを変えなければ同じ目に遭う可能性が高いということです。そうなるとQBジェイク・コーン(Jake Coan)の腕に期待がかかる・・・と言いたいところですが、今年からチームの先発に任命されたばかりの彼にはオハイオ州立大のディフェンスは荷が重いというのが正直なところ。
しかも先発WRの一人であるA.J.テイラー(A.J. Taylor)が怪我でこの試合に欠場することが分かっており更に不利な状況に。
そのオハイオ州立大のディフェンスですが、彼らのパスディフェンスは1回のパスで相手に許したヤードの平均数は全米1位となる5.2ヤードとなっています。新しく今年からマンカベレージ重視からゾーンカベレージを混ぜるようになったことでチームが擁するタレントぞろいのDB陣が真価を発揮した形になっています。
そして当然忘れてならないのがDLチェイス・ヤング(Chase Young)。既にBig Ten最優秀守備選手賞を受賞したヤングですが、彼の能力はその器に収まるものではなくディフェンス陣では1997年のチャールズ・ウッドソン(Charles Woodson、元ミシガン大)氏が獲ったのが唯一であるディフェンダーとしてのハイズマントロフィー候補にも挙げられるほどの逸材。
チェイス・ヤング
ヤングは今季スクールレコードとなる16.5個のQBサックを記録しましたが、そのうち4つは先日行われたウィスコンシン大戦で残したもの。この試合ではウィスコンシン大OL陣はヤングに為す術がありませんでした。
全米トップクラスのDB陣にパスラッシャーを擁するオハイオ州立大をウィスコンシン大がどう切り崩すのか・・・。ちょっと想像がつきません(苦笑)。
オハイオ州立大オフェンス vs ウィスコンシン大ディフェンス
オハイオ州立大のディフェンスが凄いのはわかりましたが、そこだけにとどまらないのが今年の彼らの恐ろしいところ。バランスと爆発力を備え持つ彼らの攻撃陣は全米トップクラスであることは言うまでもありません。
ランオフェンスは1試合平均280ヤード(!!!)、パスオフェンスは257ヤードで、平均得点数は49.9点。それを演出するのがQBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)とRB J.K.ドビンズ(J.K. Dobbins)です。
ジャスティ・フィールズ(左)とJ.K.ドビンズ(右)
ジョージア大からの転校生であるフィールズは前評判通りもしくはそれ以上のパフォーマンスでチームのオフェンスを牽引。ここまでトータルオフェンスで3124ヤードに47TDを獲得していますが、最も目を引くのは犯したパスINTがたったの1つであること。
気がかりなのは先週のミシガン大戦で膝を痛めたこと。この試合では復帰直後にパスTDを放るなどそのダメージを微塵も感じさせませんでしたが、リポートによれば膝はまだ完調ではないとこのこと。試合開始時に彼の膝の具合がどうなっているかも気になるところ。特に彼の卓越したパス能力は機動力によって昇華するためその機動力が落ちたときウィスコンシン大ディフェンスがそこに付け込めるのか・・・。
しかし彼らのオフェンスにはドビンズという全米を代表するRBが健在。今季ここまで1857ヤードに21TDを奪っていますが、この試合そしてボウルゲームを残していることを考えれば彼が今季2000ヤードの大台超えを達成することは目に見えています。ウィスコンシン大のテイラーとのラン合戦も見ものです。
オフェンス畑出身のライアン・デイ(Ryan Day)新監督の織りなす独自のスプレッドオフェンスはフィールズ、ドビンズ、及びタレントぞろいのWR陣をして止めるのは超困難。先週のミシガン大ディフェンスはトップ10に入るほどの実力を持つユニットでしたが、彼らをしても56失点も許してしまったのですから。
そんなオフェンスを相手にしなければならないウィスコンシン大ディフェンスですが、前回の対戦では第1Qを無失点に抑えたという事実もあります。もちろん重要なのはファイナルスコアなわけですが、このクォーターだけみればウィスコンシン大ディフェンスが機能していたことも事実です。
つまりウィスコンシン大守備陣がオハイオ州立大のオフェンスを押さえ込むことは可能だということです。問題はそれを4Q通して継続できるかということですが・・・。
この試合ではディフェンスが踏ん張っている間にオフェンスが何も出来ず、徐々にディフェンス陣が決壊していったわけで、それは言い方を変えれば彼らが自滅したともいえます。オフェンスが点を取れないということはディフェンス陣のほうがフィールドに立たされる時間が長くなるということになり、スペースを使わされるオハイオ州立大のオフェンスにウィスコンシン大ディフェンスのスタミナが追いつかなくなったというわけです。
ウィスコンシン大が付け込める隙があるとすればターンオーバーです。前述の通りフィールズは1つしかINTを犯していませんが、チーム全体ではオハイオ州立大はここまで12個ものファンブルを犯しています。ファンブルを誘発してきた数字としては全米15位となる13個を記録しているウィスコンシン大ですから、そこを起点にしてディフェンスがオフェンスにお膳立てするような展開が生まれればひょっとしたら・・・。
注目ポイント
リベンジマッチということで負けたウィスコンシン大としてはぜひ雪辱を晴らしたいと士気が上がっていることでしょう。しかし一方でオハイオ州立大はウィスコンシン大と対戦したあとも尻上がりに調子を上げてこの試合に至るまでにペンシルバニア州立大(当時8位)、ミシンガン大(当時13位)という強豪校から勝利を奪って波に乗るチーム。
ポール・クリスト(Paul Chryst)監督は前回の対戦から何か新しいオハイオ州立大対策を練ってくることでしょうが、これまでどのチームも倒せなかったオハイオ州立大に対して何か弱みを引き出せるのかに興味がそそられます。
と同時にそんなものが存在するのかと個人的には思ってしまいますが、筆者的には決勝戦でオハイオ州立大がオハイオ州立大からの転校生であるQBジョー・バロウ(Joe Burrow)率いるルイジアナ州立大と対戦するという因縁のマッチアップを見てみたい(私だけではないはずですが)ですから、ここは順当にオハイオ州立大が勝ってほしいなと思ったりもします。
ただ当然アップセットはいつの時代もどんなスポーツでも見ていて痛快ですからそれを期待してしまう自分もいたりします。
因みにウィスコンシン大はこの試合に勝てばBig Tenカンファレンスチャンピオンとして伝統のローズボウルに出場することになります。負ければおそらくペンシルバニア州立大がローズボウル行きの切符を手にすることにもなり、この点にも注目したいところ。