2024年度シーズンに2014年度以来の悲願のナショナルタイトルを獲得したオハイオ州立大は、そのチームを牽引したライアン・デイ(Ryan Day)監督とこの度契約更新する運びとなったようです。これにより契約年数は2031年までの7年間に延長。また年収は1250万ドル(1ドル100円計算だと約12億5000万円)に増額することがわかりました。
このサラリーアップにより、現在カレッジフットボール界で最も高額監督と言われるジョージア大のカービー・スマート(Kirby Smart)監督の1328万ドルに続き2番目の高年収監督に躍り出ました。また、3番目に高額サラリーを受け取っているのがクレムソン大のダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督ですが、この上位3人が揃って現役監督として唯一全米制覇を成し遂げたことがある監督という構図となっていることは偶然ではないでしょう。
デイ監督のボスとも言える、オハイオ州立大の体育局長(AD)であるロス・ビョーク(Ross Bjork)氏は、「ライアンは我がチームを全米を代表するチームに育て上げただけでなく、未来ある学生たちを将来のリーダーたる人間に成長させ、フットボール以外の世界でも通用する価値観を彼らに植え付けてくれた人物です」と今回の契約更新に際してデイ監督を高く称賛しています。
今回のサラリー増額は昨年までの年収と比べると約250万ドル(約2億5000万円)となりますが、オハイオ州立大に優勝をもたらした功労者ですから、サラリーアップも契約年数延長も当然の結果といえます。特に今後も最前線で全米優勝を争う上で最も重要なのは「スタビリティ(安定性)」であり、成功しているシステムが昇華していく為には同じリーダーの元でのチーム育成は必須。そんな中で2031年までデイ監督体制で行こうという意気込みを大学側が示したことで、在校生がトランスファー経由で流出するのを防ぎ、尚且つ全米に散らばる有能な高校生リクルートを勧誘することが可能になるわけです。
デイ監督は2019年に前任だったアーバン・マイアー(Urban Meyer)氏の後を引き継ぎ自身初の監督職を拝命。以来総合戦績は70勝10敗。勝率でいうと87.5%となりますが、これは現在の現役の監督の中では最高値となっており、腕の立つ監督であることは確かでした。
ただ悲願の全米タイトルを獲得できないばかりか、最近では宿敵・ミシガン大に4連敗を喫しており、特に絶対に勝てると思われていた2024年度の対戦でもホームで敗れてしまい、挙げ句の果てにはそのミシガン大選手に校旗をホームフィールド中央のロゴの上に突き刺されるという、最大級の侮辱を味わってしまったファンたちは、デイ監督を解雇しろという声を上げ始めていました。
そんな折、昨年度から導入された12チーム制度のCFP(カレッジフットボールプレーオフ)に第8シードとして参戦したオハイオ州立大は、テネシー大、オレゴン大、テキサス大、そしてタイトルゲームでノートルダム大を次々に破って全米優勝を果たし、デイ監督にとって初の栄冠を遂に手に入れることに成功。この事でデイ監督はオハイオ州立大という名門大学で優勝を経験するという称号を手にいれ、彼を解雇しろと言っていたファンを黙らすことに成功したのでした。
過去、オハイオ州立大で複数回タイトルを獲得したことがある監督は、かの有名なウディ・ヘイズ(Woody Hayes)氏ただ一人。ヘイズ氏は1954年、1957年、1961年、1968年、1970年と合計5度のタイトルをオハイオ州立大にもたらしましたが、若干45歳のデイ監督にはヘイズ氏に続き、2つ以上の全米タイトルを獲得できるかという、新たなハードルが設けられたことになります。
ところで、新たな契約更新内容にはバイアウト(違約金)費も含まれています。これは契約内にオハイオ州立大がデイ監督を解雇する場合にデイ監督に支払われる違約金ですが、最大で8050万ドル(約80億5000万円)にまで上ります。毎年その額は1100万ドルずつ減額されていきますが、一方でもし契約期間にデイ監督が他大学へ移籍するなどした場合に発生する、デイ監督がオハイオ州立大へ支払わなければならないバイアウト費は最大600万ドル(約6億円)となっており、これも毎年減っていくという寸法になっています。
ナショナルタイトルをついに手に入れたデイ監督は名実ともにエリート監督の仲間入りを果たしたわけですが、そのことでサラリーもバイアウト費も破格の数字に跳ね上がりました。残されたタスクは4連敗中である憎きミシガン大との連敗記録を打ち破るだけです・・・。
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