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シュガーボウルプレビュー【2020年度シーズン】

シュガーボウルプレビュー【2020年度シーズン】

カレッジフットボールの王者を決定するカレッジフットボールプレーオフ(CFP)。その準決勝第2試合目を飾るのはシュガーボウルで対戦するCFP2位のクレムソン大と同3位のオハイオ州立大です。

【シュガーボウル】

オハイオ州立大vsクレムソン大
開催日時:1月1日東部時間午後8時(日本時間1月2日午前10時)
開催地:メルセデスベンツスーパードーム(ルイジアナ州ニューオーリンズ市)
TV放映:ESPN

2014年から導入されたカレッジフットボールプレーオフ(CFP)ですが、以来実に3度目の顔合わせとなるこのマッチアップ。最初の対戦は2014年度のフィエスタボウル(30対0でクレムソン大の勝利)、そして2度目は昨年のフィエスタボウル(29対23でクレムソン大の勝利)でした。実はもっと過去にさかのぼると両チームはこれまで4度の対戦があり対戦成績は4勝0敗とクレムソン大がオハイオ州立大に対して圧倒的な強さを発揮してきました。

当然現在のオハイオ州立大選手にしてみれば過去3回の敗戦の記憶などはありませんが、昨年の敗戦は忘れたくても忘れることは出来ません。2014年度以来のナショナルタイトルを目指していた彼らは昨年そのチャンスをクレムソン大に阻まれてしまったわけでから、リベンジに燃える気持ちは相当なものでしょう。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ここまでの歩み


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クレムソン大

開幕時全米1位発進したクレムソン大は当時からナショナルタイトルレースで最有力候補と言われてきました。その要因はなんと言ってもスターQBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)の存在。

夏の時点で新型コロナウイルスの影響からまともなトレーニングを行えないという異常な状況に上乗せする形でアメリカ全土で「Black Lives Matter」運動が発生。アフリカン・アメリカンにも平等の人権をと訴える動きはカレッジスポーツにも広がり、ローレンスはその先頭に立ってリーダーシップを発揮していました。

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BLM集会でスピーチを行うローレンス

そんな精神的リーダーでもあるローレンスを司令塔にクレムソン大は確実に勝ち星を重ねて首位を守り続けますが、第10週目のノートルダム大戦ではそのローレンスやLBジェームス・スカルスキ(Jame Skalski)ら先発メンバー数人を新型コロナや怪我の影響で欠く布陣で臨み、OTの末47対40で今シーズン初の黒星を喫してしまいます。

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この敗戦で彼らは1位から4位まで転落してしまいましたが、その後はその1敗を守りレギュラーシーズンを終えました。そしてアトランティックコーストカンファレンス(ACC)の優勝決定戦に駒を進めたクレムソン大はそこで再びノートルダム大と対決。しかしこの時は前回欠場した選手らが揃って出場。フルパワーのクレムソン大は34対10と快勝し見事リベンジ達成。

そしてリリースされたファイナルCFPランキングでは2位に上昇して6年連続となるプレーオフ出場を決めました。まさに近代の常勝チームに相応しい出で立ちです。

オハイオ州立大

一方のオハイオ州立大は所属するBig Tenカンファレンスが8月の時点で今秋の開幕を断念する意向を発表し他のメジャーカンファレンスがシーズンを迎える中彼らはそれを指を加えてみることしか出来ませんでした。

しかし内外からのプレッシャーもありカンファレンス運営部はその方針を180度変えて10月後半に遅ればせながらシーズンを開幕させることを決定。それが決まると8週間試合がなかったのにも関わらずオハイオ州立大は6位にランクされるという高評価を得ました。

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試合総数8試合を8週間でこなさなければならない強行スケジュール。すでに先行組では多くの試合が新型コロナウイルスの影響でキャンセルや延期になっている中、Big Tenカンファレンスのこのスケジュールがどうなるか注目されましたが、彼らももれなくパンデミックの洗礼を受けることに。

メリーランド大イリノイ大戦がキャンセルになり、ライアン・デイ(Ryan Day)監督自身も感染してしまうという不運にも見舞われます。途中今季快進撃を続けたインディアナ大との死闘を制し確実に無敗を守りましたが、彼らの前に立ちはだかったのはやはり新型コロナとBig Tenカンファレンスの特別ルールでした。

そのルールとは、Big Tenカンファレンスに出場するためには最低でも6試合を行わなければならないというルール。最終戦のミシガン大戦を前に彼らはすでに全行程8試合のうち2試合がキャンセルされており、ミシガン大戦が行われなくなると6試合を行わなければならないというルールに抵触して優勝決定戦に進めなくなるという事態に陥りかねませんでした。

そして案の定ミシガン大部内でコロナウイルスが蔓延しこの試合がキャンセルに。この「6試合ルール」に則れば5勝0敗のオハイオ州立大はタイトルゲームに進めないという問題に直面したのです。

世間体はあるにせよ今回Big Tenカンファレンスが遅れながらも開幕にかじを切ったのはオハイオ州立大にCFP進出のチャンスがあると思われていたから。しかしその野望が自分たちの定めたルールに首を絞められるというなんとも皮肉な状態を迎えてしまったわけです。

そこでBig Tenカンファレンスはオハイオ州立大がタイトルゲームに進むことが出来るためにこの「6試合ルール」を撤廃。彼らは晴れて優勝決定戦に駒を進め西地区代表のノースウエスタン大と対戦。この試合に見事に勝ってBig Tenカンファレンス4連覇を飾って最終CFPランキングで3位に入りこのCFPの舞台に再び戻ってきました。

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チーム分析

クレムソン大


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前述の通りクレムソン大のオフェンスはQBローレンスが絶対的リーダーとして率います。1年生時から先発QBを任されてきたローレンスは今年3年生ですが、このシーズンが終われば4年生シーズンをスキップしてNFLドラフトに早期入りすることが確実視されています。そうなれば総合ドライチでジャクソンビルジャガーズから指名がかかると言われています。

そのローレンスは開幕前からハイズマントロフィー候補の最右翼と言われ続けましたが、シーズン途中に新型コロナに感染しボストンカレッジ戦並びにノートルダム大戦に欠場。その影響でスタッツが他の候補選手らより劣ってしまいトロフィーレースでの絶対的地位はなくなってしまいました。それでもファイナリストにはしっかりと選ばれてはいます。

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まさにプロ級のローレンスは投げてよし走ってよしという高いスキルから、ディフェンスを読む力、そしてリーダーシップとどこをとっても最高レベルとされ、10年に1人という逸材とされる選手。そのローレンスと対峙しなければならないオハイオ州立大ディフェンスは大変なタスクを背負うことになります。

また昨年度後NFLドラフト入りしてもおかしくなかったRBトラヴィス・エティエン(Travis Etienne)も健在。彼は今年は目立った数字を残すことはなく882ヤード(13TD)と昨年の半分しか稼げませんでしたが、一方でレシーバーとしては500ヤード以上を記録してマルチな才能を発揮。当然ローレンスとしては頼りになる武器となります。

ディフェンス陣ではやはり柱であるLBスカルスキの存在が大きな鍵を握ります。ACC優勝決定戦では5つのタックルに1つのQBサックを記録。守備陣の司令塔としてフロントセブンをまとめバックフィールドに安心感を与えています。

オハイオ州立大のRBトレイ・サーモン(後述)やマスター・ティーグ(Master Teague III)らのランアタックをスカルスキらが抑えることができれば、オハイオ州立大はフィールズのパスに頼らざるを得なくなりますが、これこそがクレムソン大Dの狙い所。特にフィールズはプレッシャー下でミスが目立ちますから、ラインを押し込むことが最大の攻略点と言えそうです。

オハイオ州立大


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前述の通りオハイオ州立大はパンデミック下で全6試合しか行うことが出来ませんでした。クレムソン大が11試合をこなしたことを考えると彼らは約半分しか実戦経験が無いことになります。

そのすべての試合を勝ち抜いて6勝無敗という戦績を残しましたが、インディアナ大やノースウエスタン大のような強敵チームに競り勝ったのは評価できるとはいえ、他の試合のうち3試合での対戦チームの総合戦績が11勝21敗ということで全体的に手強い相手と渡り合ってきたとは必ずしも言えません。

開幕戦のネブラスカ大戦で21投中20投のパスを成功させる離れ業を見せたQBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)はこの試合のパフォーマンスだけで一気にハイズマントロフィー候補レースに殴り込み。その後も前評判通りの数字を重ねましたが、一方でインディアナ大戦やノースウエスタン大戦のような手強い相手の試合で苦戦する姿が見られるなどしてハイズマントロフィーレースから脱落してしまいました。

一方でBig Tenカンファレンスゲームのノースウエスタン大戦ではフィールズに代わりRBトレイ・サーモン(Trey Sermon)が331ランヤード(2TD)を記録するというモンスターゲーム。クレムソン大との試合に向けて嬉しい好材料も生まれています。

フィールズが調子が悪くてもチーム全体として得点を重ねることが出来たことは逆にいい手土産になったといえます。それにこのノースウエスタン大戦では新型コロナの影響でWRクリス・オラヴェ(Chris Olave)が欠場したこともあり、今回のクレムソン大では彼が復帰してくることが予想されるためフィールズにとって駒が増えることは歓迎すべきところ。

ただこの試合ではOL陣から先発3人がオラヴェと同じく新型コロナの影響でBig Tenタイトルゲームを欠場。彼らにとってもこのクレムソン大戦は約4週間ぶりの実戦ということで、復帰してくることはもちろん嬉しいニュースですが試合勘がどこまで戻ってくるのかも気になります。

ディフェンス面ではパスディフェンスにおいてバックフィールドの経験不足が目立ちます。特にインディアナ大戦では試合に勝ったとはいえ相手QBマイケル・ペニックス・Jr(Michael Penix Jr.)に491ヤードに5TDも奪われる失態を犯しました。もしフロントセブンがクレムソン大のローレンスにプレッシャーを与えることが出来ずにローレンスをポケット内で自由にしてしまえば、オハイオ州立大はインディアナ大戦の二の舞になりかねません。

総評

クレムソン大のローレンスとオハイオ州立大のフィールズという今季を代表するQBが相見えるこの試合。当然二人が直接対決すると言ってもおのおのが相手にするのはお互いの敵ディフェンス陣なわけですが、来年のNFLドラフトでふたりとも第1巡候補となれば注目度が挙がらない理由はありません。

最近のトレンドとして優れたQBプレーが試合を制するとも言えるわけですから上の二人のパフォーマンスは見逃せませんが、それ以外で注目したいマッチアップはオハイオ州立大のOL陣とクレムソン大フロントセブンの対決。

オハイオ州立大は6試合とはいえQBサックを許した数で全米104位(18回)とお世辞にも褒められた数字を残していません。これは1試合平均3つのQBサックを許したことになり、苦しめられたインディアナ大戦では5度もフィールズは地面に叩きつけられました。

一方のクレムソン大フロントセブンは経験値の高い選手ばかりでQBサック数はなんと全米2位。この対決はまさにミスマッチとしか言いようがありませんから、オハイオ州立大のOL陣には是非とも頑張ってもらいたいところです。いくらフィールズに機動力があると言っても限界があるわけですから。

また冒頭でも紹介したとおりこの試合は昨年のセミファイナルと同一カードとなります。オハイオ州立大としては是非とも2年連続同じステージで同じ相手にやられることだけは避けたいところ。クレムソン大もまたゴールデンボーイのローレンスの最後となる試合がセミファイナル戦となってしまうことは避けたいところですから、当然どちらにも絶対に負けたくないというモチベーションはあるわけです。

気がかりなのはクレムソン大のオフェンシブコーディネーターであるトニー・エリオット(Tony Elliott)氏が新型コロナのプロトコルによりこの試合に参戦しないこと。プレーコールの上でこのことがクレムソン大オフェンスにどれほどの影響を及ぼすか・・・。

またコーチという面では、場外戦としてクレムソン大のダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督がオハイオ州立大への「口撃」を続けていることにも着目したいです。

というのも、コーチの投票によって決められるAmway/コーチランキングではスウィニー監督はオハイオ州立大をなんと11位にランクしたのですが、これはたった6試合しかプレーしていないチームはどんなに強いと言われていても10位以上にランクされるべきではないという信念があるからです。

この発言をしてから何度もその真意を尋ねられてきましたが、スウィニー監督は一貫して自身の主張を曲げていません。これはいわゆる「ロッカールームマテリアル」、つまり相手チームの闘志という炎に油を注ぐに十分なポイントです

またオハイオ州立大のデイ監督も、「クレムソン大ディフェンスは相手オフェンスの心を読み取る能力があるみたいだ」と遠回しに彼らが相手のサインを盗み見ているのではないかとチクリと刺すような発言をして相手ディフェンシブコーディネーター、ブレント・ヴェナブルズ(Brent Venables)氏を挑発したりしています。

様々な思惑が渦巻くこのビッグゲーム。果たしてクレムソン大が3年連続となるナショナルチャンピオンシップゲームへ進出するか、もしくはオハイオ州立大が2014年以来2度目の進出を果たすか・・・。目が離せません。

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