以前オハイオ州立大からディフェンシブコーディネーターのジム・ノールズ(Jim Knowles)氏がペンシルバニア州立大へ移籍したニュースをお伝えしましたが、今度はオフェンシブコーディネーターだったチップ・ケリー(Chip Kelly)氏がNFLラスベガスレイダースへ移籍となりました。
レイダースでの年棒は約600万ドル(1ドル100円計算だと約6億円)となるようですが、これは現在のNFLでのコーディネーター色としては最高額のサラリーとなります。オハイオ州立大での年棒が200万ドルということでしたから、1年でサラリーが3倍に膨れ上がったことになります。
かつて2009年から2012年までオレゴン大で監督を務めて一世風靡したケリー監督は2013年から2015年までフィラデルフィアイーグルスで監督を務めた後2016年にサンフランシスコ49ersでも監督を任されますが、NFLではトータルで28勝35敗と振るわず。
その後2018年にUCLAの監督に就任することでカレッジに復帰。2022年に9勝、2023年に8勝とゆっくりながら力をつけてきたところ、2023年度シーズン後に電撃的にUCLAの監督職を辞任してオハイオ州立大のコーディネーターに就任したのでした。
わざわざ監督の座を辞してまでコーディネーターに「降格」したケリー氏の決断には驚かされましたが、オハイオ州立大の監督であるライアン・デイ(Ryan Day)監督との深い縁がこの決断をさせたのだと思います。
ケリー氏は元々ニューハンプシャー州出身でカレッジもニューハンプシャー大にてDBをプレーしたという人物。1984年に卒業した後にコーチングの道に足を踏み入れ、1994年からは母校のニューハンプシャー大に戻ってきて1999年にはオフェンシブコーディネーターに昇格します。この時彼の元でQBをしていたのが、オハイオ州立大のデイ監督だったという繋がりがあったのです。
さらにケリー氏がイーグルスの監督をしていた際にデイ監督はQBコーチとして合流し、49ersでも共闘。その後デイ監督はオハイオ州立大に流れつき、2019年にはヘッドコーチに抜擢され今に至るというわけです。ですから、ケリー氏は教え子のデイ監督と共に戦うためにわざわざUCLAを去ったということになるわけです。
ケリー氏としてはこれで3つ目のNFLチーム。レイダースはすでに元サザンカリフォルニア大のHCでシアトルシーホークスでも指揮を執ったピート・キャロル(Pete Carroll)氏が新監督に就任。キャロル監督とケリー氏はかつてお互いがサザンカリフォルニア大とオレゴン大でチームを率いていた際に対戦経験がある間柄。当時はまだPac-10カンファレンスでしたが、キャロル監督はケリー氏のプレーコーラーとして腕を高く評価していると思われ、レイダースオフェンスの再建を彼に託したということになるわけです。
オハイオ州立大では就任たった1年目で悲願の全米制覇を達成するまでにチームに貢献。特にQBウィル・ハワード(Will Howard)の成長はケリー氏の手腕によるところが大きく、ハワードはプレーオフでの活躍を経てNFLドラフトでは2巡目選手にまで評価が上がっているとも言われていますから、キャロル監督がケリー氏を招聘したくなるのも頷けます。
たった1年でオハイオ州立大から去っていくことになったケリー氏ですが、優勝を請け負ってそれを本当に達成して1年で姿を消すというのは、何とも爽快だと考えられなくもなさそうです。
実際「恩師」であるケリー氏を招聘して1年でチームに2014年以来の全米タイトルをもたらしたデイ監督は、ケリー氏の離脱に際して「今後何年後かに二人でビールでも飲み交わし、今回二人で一緒に戦いタイトルを取ったことを語り合える日が来れば、それは何事にも代え難いことです」と、たったの1年で嵐のように去っていったケリー氏に対して微塵もわだかまりがないコメントを残しています。
レイダースは昨年スコアリングオフェンスで32チーム中29位、トータルヤードで27位と苦戦。さらにフランチャイズQBも不在ということでケリー氏のタスクは山積みです。果たしてNFLでの挑戦が3度目の正直となるでしょうか?
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