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「春季トレーニング」の基礎知識!

「春季トレーニング」の基礎知識!

3月21日は春分の日でした。春の始まりを予感させてくれる・・・と思いきや日本の都心部では雪が降ったみたいですね。筆者が住むアメリカの北東部も昨日は大雪で午後には公共交通機関がストップするなどして大変でした。雪かきしすぎて節々が痛い・・・。

一方でアメリカの南部の方は徐々に暖かさを取り戻しており、それに準じて各大学チームは「春季トレーニング(スプリングトレーニング)」が始まりだしています。このサイトでも「春季トレーニング」のことは度々取り上げていますが、今回はこの「春季トレーニング」とは何なのかをご紹介したいと思います。

NCAAによって厳しく管理されるフットボール活動

NCAA(全米大学体育協会)は大学スポーツ全てを統括する非営利団体ですが、彼らの主な仕事はそれぞれのスポーツチームが大学内で公平・安全に運営されるように管理することです。そのために彼らは様々なルールを作り出すわけですが、フットボールでいえばシーズン中にどれだけ練習していいかだとか、オフシーズンに何をしてはいけないだとか、コーチたちが選手たちを過剰にフットボール関連の活動で縛り付けないようにするために試行錯誤してきました。

学生アスリートの本分は学業であり、それがスポーツ活動でおろそかにならないことを狙ってのルールであるわけです。それがたとえ建前だけであっても(苦笑)。また練習をすればするほど選手が怪我をする確率は増えるわけで、それをなるべく防ぐためにも練習していい日、そして選手にオフを与えなければいけない日などを制定しています。

カレッジフットボールのシーズンはご存知の通り8月末ないし9月初頭から1月まで行われますが、シーズン開幕前には約1ヶ月ほどのプレシーズンキャンプを行うことが許されています。このキャンプ中の練習回数ももちろん定められているのですが、それとは別に大学の春学期中にも通常の練習を行って良いことになっています。これが「春季トレーニング」と呼ばれる代物です。


春季に練習することを許される期間「春季トレーニング」

ルール上オフシーズンはコーチが帯同するフットボール関連のトレーニング(ストレングストレーニングやコンディショニングを除く)を行うことは禁止されています。ストレングスコーチとのトレーニングにおいても実際のフットボールを使用することすら制限されているくらいです。そのルールを掻い潜る手段としてラグビーボウルやソフトボールなどを使ってコンディショニングを行うチームもあるくらいです。

しかしこの春季トレーニングではシーズン中と同じようにコーチ付きの通常練習をすることが許されます。しかしその回数は15回。そのうち最初の3回は体を慣れさせるためにコンタクト(タックルなどのぶつかり合い)を含む練習は禁止されているので実際の本練習は12回ということになります。しかもその最後の練習は大抵チーム内の紅白戦(スクリメージ)がスタジアムで大々的に行われるのが慣習となっています。これを「スプリングボウル」とか「スプリングゲーム」とか呼びますが、チームごとの呼び名は大抵各大学のチームカラーからとって「ブルー&ホワイトゲーム」(ペンシルバニア州立大)とか「オレンジ&ホワイトゲーム」(テキサス大)とか言われたりもします。(後述参照)

春季トレーニングは基本的に通常の練習となりますのでそれぞれのチームは自身のキャンパス内で練習を行うことになりますが、NCAAのルール上では特に場所の指定などはされていないため、ミシガン大が2016年にフロリダまで遠征して春季トレーニングを行ったなんてこともありました。もっともこれは大きな批判を呼び、後日「パワー5カンファレンス」は独自のルールを盛り込んでキャンパス外で春季トレーニングを行うことを禁止したという経緯もあります。

【関連記事】ミシガン大の春季キャンプにSECがもの申す?!

また1日に練習やミーティングなどを行っていい時間(4時間まで:全てのフットボール関連の活動を含む)や1週間に費やしていい時間(20時間まで)もNCAAによって定められており、これを違反したことが明らかになればそのチームには当然NCAAからのペナルティーを受けることになります。ですからコーチたちは限られた時間の中で最大限に効果を上げられるような春季トレーニングのスケジュールを組み立てなければならないわけです。


開催時期

春季トレーニングとはいえ、地域によって「春」がいつ来るかは変わります。それは冒頭のように3月中旬でも雪が降っている地域もあれば、同じ時期にぽかぽかの春日和となる地域もあるくらいです。ですから一概に春季トレーニングが行われる時期が同じとなるとは言えません。屋内練習場があるチームにとっては気候はあまり関係なくなるでしょうが、そうで無いチームは外の気温が上がるまで待たなければならなくなります。しかしながら2月の時点で練習を始めるチームも稀にあります。NCAAのルールを遵守すれば何をやってもいいというのが実際のところ。


参加選手

前年度のシーズンが終わると4年生はそのキャリアを終え、また3年生以下でもNFLの早期ドラフト入りを宣言した選手たちもチームを離れるため、春季トレーニング時のチーム内の選手数は当然少なくなっています。ということはコーチたちの目はシーズン中よりもより多くの選手たちに行き届くことになりますが、一方で選手たちにすれば人数が少なくなるために個人個人のプレー数も増えることになります。これに文句を垂れる選手もいるとかいないとか・・・(笑)。

ただ例外として高校生の中ですでにそのチームに進学することを決定し、しかも高校を12月の時点で卒業できてしまった選手ならば1月から大学に入学でさえすれば(アメリカの大学は主に9月と1月に入学することができます)、彼らも春季トレーニングに参加することができます。ただこの条件を満たす選手はそう多くはなく、ポジションによっては高校出たての選手ではフィジカル的に上級生たちと差がありすぎるという状況も出てきますのでその点の考慮も必要となってきます。


ファンのお楽しみ

プレシーズンキャンプもシーズン中の練習も基本的にファンやメディアをシャットアウトして行われますが、当然ながら春季トレーニングもそれに準じてきます。しかしながらシーズンが終了してから次のシーズンが始まるまで8ヶ月あまりあり、フットボールに飢えているファンにとってはこの春季トレーニングはシーズン中とはまた違う目線で贔屓のチームを追いかけることになります。

例えば主力選手が抜けた後にどの選手がその穴を埋めるのかとか、新しいコーチ陣を迎えたチームならその監督らがどのように新チームを育成しているのかとか、シーズン中に怪我で戦線離脱していた選手がいればその選手の復帰具合はどうだとか・・・。

そのようにファンの注目が集まる中、練習を公開するチームもたまに現れます。シーズンが終わってからカレッジフットボール関連のネタがあまり無くて記事を書くのに苦労しているメディア連中にしてみればこの春季トレーニングは願っても無い「イベント」でもあります。そのメディアの春季トレーニングへの過熱さは年を追うごとに肥大し、今では紅白戦である「スプリングゲーム」をテレビ放映するほどにまでになってしまいました。

紅白戦「スプリングゲーム」

春季トレーニングの締めくくりとして行われるのが「スプリングゲーム」です。上でも述べたようにこのゲームは紅白戦であり、もっと言えば練習の一部であるのですが、一方でこのゲームはファンにも公開されるため多くのファンをもつチームのスプリングゲームならばたとえ紅白戦でも10万人を超える観客が集まります。

スプリングゲームに関しては別の記事で私見を述べていますからそちらを読んでいただきたいのですが、とにかくこのスプリングゲームまでの春季トレーニングのメディアのカベレージの過熱さには少し興ざめすらしてしまいます。「たかが春季トレーニングなのに」と。その当日の盛り上がりといえば、屋台が繰り出されたり、マーチングバンドやチアリーダーのパフォーマンスがあったり、移動遊園地が設置されたりと一大イベントに発展しています。正直なところ練習の延長であるはずの紅白戦に「やりすぎだろ!」と感じずにはいられません。

【関連記事】スプリングフットボール: 失われた伝統

スプリングゲーム自体はというと、「ゲーム」とは言え実際はシチュエーションプレーであることが大多数で、プレーごとに仕切り直しをするという感じ。コーチがプレーの出来に満足しなければ何度でも繰り返す事もあるでしょうし、どのプレーを試すかもあらかじめ決まっている事もあることからどんなにエンドゾーンに近ずいてもTDを狙わない(狙わせない)こともあるでしょう。QBには他の選手達とは違うジャージを着させ、ディフェンダー達はQBに触れる事が許されない(怪我予防のため)のも至極普通の事ですから、やはり実際の試合とは大きく異なります。

得点の方式も結構変わっていたりします。紅白戦は基本的に「1軍オフェンス」vs「1軍ディフェンス」という体型になっていますので、ディフェンスがいいプレーをすればそれに応じて点数が入るという仕組みを取り入れるチームもあります。たとえばディフェンスがパスをインターセプトしたら3点とか。だから「紅組が白組に勝った」といっても大した意味をなさないわけです

にも関わらずメディアでの春季トレーニングの報道は加熱し、もともと無料で観戦できていたのに有料になったり。春季トレーニングは各チームにとっては次期シーズンに向けてのいいプレビューになりますが、メディアやビジネスマンにとってこれは格好の商売チャンスとなっているという事実は否定できません。

まとめ

春季トレーニングはあくまでチーム育成のプロセスの一部でしかなく、むしろこれ以外で行われている筋トレやコンディショニングのほうがこの時期は重要だと個人的には考えます。ですからできれば春季トレーニングは片意地張らず、「あの子たち頑張って練習してるかなー」というスタンスで見守ってもらいたいなーというのが筆者の密かな願いです(笑)。

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