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Coaching Carousel【マリオ・クリストバルの場合】

Coaching Carousel【マリオ・クリストバルの場合】

今シーズンはシーズン途中からレギュラーシーズン後にかけて過去例に見ないほどコーチング市場が活発になっています。過去2回に渡りリンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督がオクラホマ大からサザンカリフォルニア大に、ブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督がノートルダム大からルイジアナ州立大に移籍する話をご紹介しました。この2つのケースに言えることは2人とも監督キャリアを終えるにふさわしいチーム「Destination Team」に在籍していたにも関わらず、大御所チームから大御所チームへと移籍していったと言う点です。

そして今週もまた3つ目の大御所チーム間での監督交代劇が起きたのでした。

参考記事Coaching Carousel【リンカーン・ライリーの場合】

参考記事Coaching Carousel【ブライアン・ケリーの場合】

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ベースボール・マガジン社 (編集)

「古豪」マイアミ大

マイアミ大はかつて1980年代に荒くれ者集団として世間を席巻し1984年、1987年、1989年、1991年に全米王者に輝きマイアミ大と言うブランドを確固なものにしました。その後も存在感をいかん無く発揮し2001年には再び全米制覇を成し遂げ常勝チームとして長く知られてきました。

そのブランド力を持って2004年にはBig Eastカンファレンス(フットボールカンファレンスとしてはすでに消滅)からアトランティックコーストカンファレンス(ACC)に移籍。そこでマイアミ大が暴れまくると誰もが思いましたが、移籍後は鳴かず飛ばず。勝ち越すのがやっとと言うらしくないシーズンがしばらく続くとリクルーティングにおいて他の強豪チームから遅れを取り、悪循環の末にいつの間にか全米の表舞台から消えてしまったのでした。

そんな折2015年度シーズンにジョージア大がベテランコーチのマーク・リクト(Mark Richt)監督を解雇。そこでマイアミ大は卒業生でもあったリクト監督を母校に凱旋させることに成功。就任2年目となった2017年には開幕後10連勝を飾るなど世間を賑わせACC海岸地区を制覇。惜しくもACCタイトルはクレムソン大に奪われましたが、マイアミ大復活の兆しが大きく成長したシーズンでした。

しかしリクト監督は3年目が終わった2018年度後に何の前触れもなくコーチング業から引退を表明。マイアミ大復活へ向けて確かな道を歩み始めていたと思われた矢先の出来事に関係者並びにファンたちは大きなショックを受けたのです。

そのリクト監督を受け継いだのが彼のもとでディフェンシブコーディネーターを務めていたマニー・ディアス(Manny Diaz)氏。実はリクト監督引退表明の数日前にディアス氏はテンプル大の新監督に就任しており、リクト監督引退のニュースが流れると大学上層部はディアス氏に監督就任を要請。結局ディアス氏はテンプル大監督に就任してから3週間も経たない間にマイアミ大に凱旋。マイアミ市周辺で生まれ育ったディアス氏にしてみればこれはまたとないチャンスだったのです。

そのディアス新監督の下で再発進したマイアミ大でしたが、ここまで3年間での戦績は21勝15敗と古豪復活には程遠い数字。とはいえディアス監督の息のかかったリクルートたちを集め育て上げてチームを自分色に染めるには時間がかかります。それはどのチームにも言えることですが、残念ながら彼に期待を寄せる関係者、特に莫大な資金を援助した後援者たちは忍耐力がそこまで備わっていないんですね。

今季14位で開幕を迎えるも6戦終わって2勝4敗と大失速。その頃からすでにディアス監督の去就問題が話題に上がっており、いわゆる「ホットシート」に座する形になってしまいます。しかしながらそこから後半は持ち直して5勝1敗とし7勝5敗でシーズンを終えました。そういった意味ではチームは軌道に乗り出していたといっても良く、ディアス監督の去就問題は一旦保留になったかに見えました。

しかしシーズン後半には大学側が体育局長であるブレイク・ジェームズ氏が解雇に。彼はディアス監督を雇用した張本人であり、彼の後ろ盾を失ってしまったディアス監督は新しい体育局長によって解雇されるのではないかと言う噂が立ちました。

そんな噂ばかりが渦巻く中、ディアス監督や彼のアシスタントコーチは来季も続投することを前提にリクルーティング活動に奔走していたのですが・・・。


ディアス、アウト。クリストバル、イン。

同じ頃、オレゴン大は出場したPac-12カンファレンス優勝決定戦でユタ大に敗退。それにより彼らのレギュラーシーズンは終幕を迎え残すは年末年始に行われるボウルゲームに出場するだけとなりました。そしてユタ大戦の翌日となる日曜日、全米のスポーツアウトレットは一斉にマイアミ大がオレゴン大のマリオ・クリストバル(Mario Cristobal)監督に接触を試みたと報道。一部にはすでに監督就任のオファーが提示され月曜日までに返事を待つと言う生々しいニュースまで飛び込んできたのです。

恐ろしいのはこの話が浮上した時点でディアス監督はまだマイアミ大の監督として高校生をリクルートしていたと言う事実。つまりまだ解雇されていないのに、次期監督として他の誰かに自分の監督の座がオファーされていたと言うことです。

大抵この様な決断は体育局長が行うのですが、前述の通りジェームズ氏が解雇された後いまだにその後釜は見つかっておらず、複数の人物(話によると40人から50人もの人物が絡んでいたとか)があーでもないこーでもないと自分たちの要望をぶちまけあっていたのだとか。ある人物はこの状況をカオスだと表現したそうです。

そんな中、ついに月曜日の午前中にディアス監督が正式にマイアミ大監督職を解かれてしまいます。そしてその午後にはオレゴン大でクリストバル監督がチームにオレゴン大監督を辞任することを発表。その数時間後にはマイアミ大がクリストバル監督を正式に新監督に起用することを決定する発表を行なったのです。

オレゴン大がユタ大に敗れてから24時間も経たずにチームは監督を失ってしまうと言うこの異常さ。異常とはいえこれまでも似た様なことは各地で起こっていましたが、やはりオレゴン大と言う上位校でこの様なことが起きる事が異常だと思ってしまいます。

遡ればオレゴン大はクリストバル監督の前任者であるウィリー・タガート(Willie Taggart、現フロリダアトランティック大)監督を1年も満たずにフロリダ州立大へ奪われたと言う過去があります。オレゴン大ほどのチームでもステップストーン(キャリアの踏み台)に使われてしまうのです。

といってもクリストバル監督にとって個人的な繋がりがあると言うポイントは見逃せません。大きな点はやはりクリストバル監督にとってマイアミ大は母校であると言う事。彼は1989年から1991年までマイアミ大でOTとして活躍し1989年と1991年の全米優勝チームの一員。また生まれも育ちもマイアミと言う事で彼にとってはこここそが「Destination」だったわけです。

過去のマイアミ大の栄光を知り、コーチとしても名を挙げてきているクリストバル監督を母校の関係者や後援者が欲しない訳がありません。他の大学からもクリストバル監督を引き抜く話が出てくる中、マイアミ大としてはこのチャンスを逃したらまたしばらくクリストバル監督を母校へ連れ戻す機会を失うと感じてこの様なアグレッシブな方法で同氏を呼び寄せたのでしょう。

あとはクリストバル監督は病気持ちの母親をマイアミに残していると言う事実もあります。いくら監督権限でプライベートジェットを飛ばせたとしてもやはりオレゴン州とフロリダ州は離れ過ぎており、そういった面もクリストバル監督のマイアミ大監督就任受諾を後押ししたのかもしれません。

いずれにしてもマイアミ大にとってはここ最近でも最大級の大物監督を招聘することに成功したのは大きいです。特にクリストバル監督はリクルーティング力の高さで知られている人物。リクルーティングが全てとも言われるカレッジフットボール界においてクリストバル監督のその能力は宝です。

フロリダ州内の高校フットボールのレベルは非常に高いですから、フロリダ州出身の有能選手を州内に留めておくことは将来的にも重要です。同じフロリダ州のフロリダ大も新たにビリー・ネイピアー(Billy Napier)監督を新HCに任命しましたが、彼もまた高いリクルーティング力で知られる人物。フロリダ州内の人材をフロリダ大に全部持っていかれない様にするためにはクリストバル監督の様な人間が必要なわけです。

オレゴン大は・・・

一方のオレゴン大は当然新監督を早急に探さなければなりません。オレゴン大の強みは世界的スポーツメーカーであるナイキの惜しみない援助を受けていることであり、彼らのスポーツ施設は他のどのプロチームよりも素晴らしいものを持っています。高校生たちはこのきらびやかな施設や試合ごとに新たに用意されるギアに目を輝かせながらオレゴン大進学を決めるのです。

しかしやはりそれとは別にコーチ陣の方針に共感して進学を決めると言う面も当然存在しますから、クリストバル監督の下でプレーしたいと決めていたリクルートたちにしてみれば、マイアミ大へクリストバル監督が去ってしまった後のオレゴン大に興味がなくなると言うのは当然あり得る話。実際にすでに3人のリクルートがオレゴン大進学をいったん取りやめると表明しています。

今後この様なリクルートたちの流出を抑えるためにも魅力的な新監督の起用は急務な訳です。高校生たちが進学先を公式のものにできる「早期サイニングピリオド」は12月15日から始まります。それまでに何とか新指揮官を指名したいところです。

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