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Coaching Carousel【リンカーン・ライリーの場合】

Coaching Carousel【リンカーン・ライリーの場合】

第14週目のチャンピオンシップウィークを迎え各カンファレンスの優勝決定戦の行方に注目が集まっていますが、今週はそれをひっくり返すようなコーチの移籍に関するニュースが立て続けに飛び込んできました。カレッジフットボール界の勢力図を変えてしまうなんて大げさな言われ方もしていますが、少なくとも今回のような大物監督が大御所チームから大御所チームに乗り換えるようなシーズンを少なくとも筆者は覚えていません。その中でもこれから2人の驚きの移籍騒動を取り上げます。まずは・・・。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ライリー監督がオクラホマ大からUSCへ


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まず飛び込んできたのはオクラホマ大を率いてきたリンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督がサザンカリフォルニア大の新監督にヘッドハントされたことです。

オクラホマ大は先週末「ベッドラムシリーズ」と呼ばれるオクラホマ州立大との決戦があり、勝てばBig 12カンファレンス優勝決定戦進出、負ければそれを逃すばかりかカレッジフットボールプレーオフ(CFP)への道も閉ざされるという一大ゲームでしたが、残念ながらオクラホマ大は惜しくもライバルに敗れてしまいました。

参考記事オクラホマ州立大37、オクラホマ大33

その試合後の記者会見でそれまで噂されていたライリー監督のルイジアナ州立大(LSU)監督就任の噂を質問されたライリー監督は「私はLSUの監督にはなりません!」と敗戦後のフラストレーションもあってか強い口調で否定。ライリー監督がLSUに奪われてしまうのではないかとヤキモキしていたファンたちはこれを聞いてホッと胸をなでおろしたのでした。

ただ、もともとこういった監督移籍の噂が流れるとそれが本当だったとしても噂話にチームが翻弄されないように監督本人は大抵否定することが普通です。ですからライリー監督がLSUの監督にはならないといったことが嘘であってもおかしくはなかったのです。

しかしその敗戦から一夜明けた日曜日。全米のスポーツアウトレットは一斉にライリー監督がサザンカリフォルニア大(USC)と接触し当日中にも新監督に就任という速報を流し、その夜には正式にライリー監督がオクラホマ大を離れてUSCの新監督に決まったことが矢継ぎ早に決まったのでした。

 


タイミング


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オクラホマ州立大戦後の記者会見で「LSUの監督にはならない」というライリー監督の言葉は嘘ではなかったわけですが、それはLSUの監督にはならないということで他の大学の監督にはならないと入っていなかったわけですから。メディアがその質問をしなかったというのは少なくともその時点でライリー監督がUSCに移籍するという噂はまったく漏れていなかったことになります。

しかし実際その時点では本当にUSCからの勧誘がなかったのかも知れません。オクラホマ大でのライリー監督の直属のボスである体育局長(AD)のジョー・カスティグリオン氏も後にこのライリー監督移籍のニュースは寝耳に水だったと述べています。

ただ一体どのタイミングでUSCがライリー監督にアプローチを掛けたのでしょうか?いくら誰も知らなかったからと言ってオクラホマ州立大との試合直後にオファーを打診されて24時間以内にライリー監督がそれを受諾したのでしょうか?だとしたらオクラホマ大にしてみればかなりのショックでしょう。オクラホマ大自体は全米に名のしれている歴史ある強豪校ですが、その大学からUSCに乗り換えるのを決断するまで24時間もいらなかったとなれば、所詮ライリー監督にとってオクラホマ大はそんな程度の存在なのか、ということになってしまいます。

それにライリー監督には家族も居ます。いきなりカリフォルニアに引っ越すぞといって「はいそうですね」と奥さんら家族が納得するとも考えられません。もっとも莫大な契約金を見せられて「いいえ」と言えなかったかも知れませんが。それにオクラホマ州ノーマン氏とカリフォルニア州ロサンゼルス市を天秤にかけた時、ロサンゼルスに釣られてしまったと言われたら納得してしまいますし。

話を元に戻すと、おそらくUSCの話は少なくとも先週末よりも前からちらつかされていたのではないでしょうか。でなければこんなタイミングで決断を下せるとは思えません。オクラホマ大はオクラホマ州立大に勝てばBig 12カンファレンス優勝決定戦に進出し、ここで再びオクラホマ州立大を倒せばCFP出場も夢ではなかったのです。しかし実際は負けてしまい、その先のプランが無くなってしまったこのタイミングでUSCとの話がまとまったことからも、もしこの試合に負けてレギュラーシーズンが終了してしまったら移籍を正式なものにするという話が水面下であったとしても不思議ではありません。

なぜサザンカリフォルニア大?


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オクラホマ大も立派な全米を代表する名門チーム。そのチームを捨ててUSCに行くからにはそれなりの理由があったはず。それは地理的な問題かも知れませんし、家族との生活とのことかも知れませんし、莫大な契約金に惹かれたからかも知れません。

しかし中には「USCならびにPac-12へ逃げた」と感じている人もいるようです。

というのも、今季開幕前にオクラホマ大およびテキサス大はBig 12カンファレンスから猛者集うサウスイースタンカンファレンス(SEC)に移籍することが決まりましたが、オクラホマ大はSECではジョージア大、アラバマ大、フロリダ大、テキサスA&M大、ルイジアナ州立大らと毎年戦わなければならなくなり、SEC所属のオクラホマ大として全米制覇を目指すよりも、競争率が比較的穏やかなPac-12のUSCの方が全米優勝できる可能性が高いと踏んでUSCへ移籍したのだ、と。つまりライリー監督はSECのレベルの高さにビビってUSCへ逃げたのだという声も聞かれます。

この論調は比較的オクラホマ大寄りの人たちから聞こえてくる声であり、半ば恨み節にも聞こえますが(苦笑)、もしそうだとしたら一理あるといえるでしょう。現在のSECとPac-12のレベルを比べれば雲泥の差ですし、もし全米タイトルを取ることが目標であるならばUSCの方がそれを達成しやすいというのは事実です。

USCに「逃げた」と感じるか、USCを「選んだ」と感じるかはそれぞれのスタンスで変わってくるでしょうね。

当然ですが、こんな風に寝耳に水状態でチームを去られたとしたら選手だけでなくファンは裏切られたおともうでしょう。現にオクラホマ大キャンパスには「Traitor(裏切り者)」というバナーがあちらこちらで見られるようです。

彼らの気持ちもわかりますが、これはもう仕方のないことなのです。こんな風に監督が去ってしまうという例は過去にも数え切れないほどあります。監督に掛けられるサラリーが肥大しすぎて金額がおかしなことになっており、そんな大金をちらつかされたら人間というものはおそらくロイヤリティよりもそちらを取ってしまうのでしょうね。彼らの怒り、悲しみ、憎しみは次の監督が決まるまでは止むことはないでしょう。たとえ過去にオクラホマ大を何度もプレーオフに連れて行った監督であっても評価は一瞬で変わってしまうのですから。

サザンカリフォルニア大への影響


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サザンカリフォルニア大は今季3週目には既にクレイ・ヘルトン(Clay Helton、次期ジョージアサザン大監督)氏を解雇していました。そこから約10週間の間次期監督を絞り込む作業をしていたはずです。シーズン序盤にヘルトン氏を解雇したのは次期に起こるコーチ争奪戦で先手を打つためだったに違いありません。

USCはカレッジフットボール創成期から西海岸の雄として名を馳せた大御所です。近年一時衰退するもピート・キャロル(Pete Carroll)監督を招聘した2001年から2009年までに一時代を築き、その巧みなリクルーティング術で全米中の有能選手をかき集めて2002年から2008年までPac-10(現在のPac-12)7連覇、2003年と2004年には全米タイトル連覇を果たすなど栄華を極めました。

しかしそのキャロル監督がNFLシアトルシーホークスの監督に就任するためにチームを去るとそこからUSCは暗黒時代に突入。レーン・キフィン(Lane Kiffin、現ミシシッピ大監督)、スティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian、現テキサス大監督)氏、そしてヘルトン氏と監督が3人も変わりますが、2017年にQBサム・ダーノルド(Sam Darnold、現カロライナパンサーズ)を擁してPac-12を制した以外は鳴かず飛ばず。USCのブランド力が泣き続ける時間が続いたのです。

特にヘルトン監督はロサンゼルスっ子の心を射止めるようなカリスマ性にかけており、早い段階からファンにあまり受けがよくありませんでした。そうやっているうちにチームは下降線をたどり、今季開幕直後に解雇になったわけです。

USCの問題はリクルーティング戦争で常に遅れを取っていることです。もともとカリフォルニア州はアメフトが盛んな土壌であり、その影響で多くの逸材が育つ土地なのですが、その地元の有能選手がUSCを目指さずに他州の大学へと出ていってしまっているこの現状を変えることが必要なのです。例えばアラバマ大QBブライス・ヤング(Bryce Young)、オハイオ州立大QB C.J.ストラウド(C.J. Stroud)、クレムソン大QB D.J.ウイアンガラレイ(D.J. Uiagalelei)、オレゴン大DLケイヴォン・ティボデウ(Kayvon Thibodeaux)らは皆カリフォルニア州出身の逸材と言われた選手ばかり。

リクルーティングで成功することはチームの強化に直結します。現在プレーオフを争う上位チームたちはそれに長けたチームばかり。どんなに素晴らしい戦術を持っていてもそれを体現する選手のポテンシャルが低ければ勝利という結果には結びつかないわけです。

そこに来てライリー監督の登場です。

ライリー監督はこれまで2人のハイズマントロフィー受賞者(ベーカー・メイフィールド/現クリーブランドブラウンズ、カイラー・マレー/現アリゾナカーディナルズ)そして1人のファイナリスト(ジェイレン・ハーツ/現フィラデルフィアイーグルス)を輩出したQB伯楽として知られており、チームとしても4度もCFPに出場していることもありコーチとしてのレジメ(履歴)は抜群。「ライリー監督なら自分たちのポテンシャルを引き出してくれるんじゃないか」と感じる高校生が彼を追ってUSC進学を決めることは大いに考えられます。

また若干38歳という若さも魅力的です。USCというカリフォルニアのハイトレンドを行くチームの監督としてはこのエネルギッシュさとか選手に多少近めなカルチャーを持っている人物というのは意外とリクルーティングでは強みになります。しかもただ若いだけでなくオクラホマ大でしっかりと結果を残してきた敏腕コーチなのですから。

彼が持ち込むスキーム、リクルーティング力、ブランディング、どれをとっても今後そう遠くない将来USCが過去の栄光を取り戻す日が来ることが容易に想像できます。監督一人でこれだけの影響力が皮算用ながら立つことを考えれば、USCがライリー監督を口説き落とせたことがどれだけのインパクトを与えるかがおわかりいただけるかと思います。

それにUSCが強くなるということはPac-12カンファレンス自体にスポットライトが当たるということにもなり、双方においてこの電撃起用は途方も無い影響を与えることは必死なのです。

当然いきなり来年からUSCが全米タイトルを狙えるのかといえばわかりませんが、ライリー監督就任1年目のオクラホマ大ではいきなりCFP出場を果たしていますから何が起こるかはわかりません。

一方オクラホマ大は・・・


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ライリー監督獲得でロサンゼルスは歓喜に湧いていますが、一方オクラホマ大関係者並びにファンにとってはまさに青天の霹靂だったことでしょう。昨日まで自分たちの監督だった人物がその次の日にはUSCのギアをまとって家族とキャンパスを歩いているのですから。

ライリー監督は既に複数のアシスタントコーチを引き連れてLA入りしているとも言われていますが、既にリクルーティングにおいてもその影響が出始めています。というのも既にライリー監督が勧誘してオクラホマ大進学を決めていた有能高校生たちがこのニュースを見た途端にオクラホマ大進学を取りやめる決断を下したことをソーシャルメディアで多々見つけることが出来ます。

特に2023年度入学クラスのなかでナンバー3という評価を受けている5つ星QBマラチ・ネルソン(Malachi Nelson)君はオクラホマ大進学をすぐさま取り消してUSCに鞍替えすることをツイッターで報告したのはなかなかの衝撃でした。

また在校生の中でも今後転校することを前提としてトランスファーポータルに登録を始める選手も出てくるでしょう。オクラホマ大は早いこと新監督を決めないと人材流出に歯止めがかからな無くなってしまいます。しかも彼らを思いとどまらせることが出来るほどの逸材コーチでなければならないわけです。

しかもあと2週間で高校生たちの早期サイニングピリオドがやってきてしまいます。これは高校生リクルートたちが進学先を正式なものにするために書類に署名出来る期間のことを言います。これまでは2月の第1水曜日がナショナルサイニングデーとしてとりだたされてきましたが、既に進学先を決めてしまっている高校生はこの早期サイニングピリオドで面倒なリクルーティングのプロセスを終わらせることが出来るのです。

そして全体の8割ほどものリクルートたちがこの早期サイニングピリオドで署名すると言われており、そうなるとオクラホマ大に残された時間はそう長くはありません。のんびりしているとオクラホマ大に行くことにしていた選手たちが次々と行き先を変えて別の大学へ進学することにしてしまうからです。

果たしてだれが後を継ぐのか・・・。

ライリー監督は移籍後にオクラホマ大に関して「オクラホマ大は偉大な大学であり、カレッジフットボールを代表する強豪校であることは私が居なくても変わらない事実だ」と述べています。それは確かに当たっていると思いますが、一方で監督の選択を間違えるとその名門ですら地に落ちる可能性もあります。

たとえば彼らのライバルであるテキサス大は2005年に全米制覇したマック・ブラウン(Mack Brown)監督をフライング気味に解雇してしまったせいで未だにナショナルタイトルを争えるようなチームが世に送り出されていません。テキサス大という全米ナンバーワンのブランド力を持っていたとしてもチームが強くなければ何もならないのです。

オクラホマ大は年末年始に行われるボウルゲームに出場が予定されていますが、この試合はライリー監督を監督に仕立てた元HCボブ・ストゥープス(Bob Stoops)氏が臨時監督として乗り切るそうです。しかし引退していた彼が現場に正式に復帰するとも思えず、やはり誰か別な人物を探さないとです。

ところで同校のレジェンド、バリー・スウィッツアー(Barry Switzer)氏はライリー監督移籍後に誰を新監督に迎えたほうがいいかと聞かれたところ、現ミシシッピ州立大マイク・リーチ(Mike Leach)監督を推しました。

何故ならリーチ監督は1999年にストゥープス氏が監督に就任した際のオフェンシブコーディネーターで超パスオフェンスである「エアーレイド」オフェンスを持ち込んだ張本人。2000年にリーチ監督はオクラホマ大を離れてテキサス工科大の監督に就任しますが、ストゥープス氏はそのエアーレイドを用いて2000年にナショナルタイトルを獲得します。

一方リーチ監督のテキサス工科大では2002年にQBとしてこのライリー監督が在籍していました。現アリゾナカーディナルズ監督のクリフ・キングスバリー(Kliff Kingsburry)監督のバックアップだった(3番手)ライリー監督は程なくして学生コーチに転向。そこからリーチ監督直伝のエアーレイドオフェンスを仕込まれます。イーストカロライナ大でオフェンシブコーディネーターを経て2015年にストゥープス監督率いるオクラホマ大にやってきたライリー監督はOCとして活躍。そして2017年度シーズン開幕直前に引退を表明したストゥープス氏の後継者としてライリー監督がオクラホマ大のHCに就任したという経緯があります。

つまりライリー監督を育てエアーレイドを叩き込んだ張本人であるリーチ監督ならオクラホマ大のオフェンスをうまく昇華させてくれるだろうというのがスウィッツアー氏の論理なわけです。

誰がオクラホマ大の監督になるかはまだわかりませんが、ここ20年間安定したチームづくりをしてきたこの大学がこの流れを維持できるのかどうかは非常に気になるところです。

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