当サイトではNCAA1部、特にフットボールボウルサブディビジョン(FBS)のチームやシーズンを紹介していますが、NCAAには2部、さらにその下に3部とレベルや大学の規模によって区分けされています。FBSチームばかりが取り上げられる(当サイトもそうですが)のが常ではありますが、その下部リーグでも多くの選手がフットボールに勤しんでいるわけです。
【参考記事】NCAAとディビジョン
そしてこの度その一番下のレベルである3部(ディビジョンIII)にて伝説を作ったレジェンド、ジョン・ガグリアーディ(John Gagliardi)氏が先週日曜日に他界されました。91歳でした。
1949年にディビジョンIIIのキャロルカレッジ(モンタナ州)で監督就任して以来2012年に現役を退くまで60年以上もヘッドコーチを務めてきた鉄人ガグリアーディ氏ですが、彼の名が世に轟いたのは1953年から引退するまで率いたセントジョーンズ大(ミネソタ州)での偉業です。彼は同大学で通算465勝132敗10分けという今後破られることはほぼ不可能な記録を打ち立てたのでした。またこの間セントジョーンズ大はNCAA3部ナショナルチャンピオン5度、そして所属カンファレンス優勝回数27度を達成。
そしてガグリアーディ氏の生涯総勝利数489勝はNCAAすべてのディビジョンで最多と前人未到のレコードとなり、ディビジョンIIIの世界だけでなくカレッジフットボール史上最も尊敬されるフィギュアとなったのです。
在りし日のガグリアーディ氏
ガグリアーディ氏の指導法はかなり変わっていました。選手には自分のことをファーストネームで呼ばせ、練習中にはチームメートをタックするすることを禁止。1日の練習時間も90分ときっちり決まっており、さらには春季トレーニング(スプリングトレーニング)も行いませんでした。
ディビジョンIIIとディビジョンIを直接比べることは出来ませんが、このような手法でも400勝以上を挙げたことは特筆すべきことでしょう。
その功績から2006年にはカレッジフットボールの殿堂入りを果たしたガグリアーディ氏。ディビジョンIIIでのハイズマントロフィーに値するMVP賞、「ガグリアーディトロフィー」はもちろん彼の名前を冠したものであります。
私がこのニュースを調べていて一番感銘を受けたのは、ガグリアーディ氏が成功の秘訣を尋ねられたときのの以下の返答です。
「We have ordinary guys doing ordinary things extraordinary well」
至って普通の選手たちが至って普通のことを人並み外れて上手にこなしているのです。
またガグリアーディ監督はチームの4年生すべてをキャプテンに任命していました。これは就職活動の時に4年生全員がフットボール部のキャプテンをしていたと履歴書に書けることで彼らの就職の手助けをするためだったそうです。
選手たちの人間形成に尽力したガグリアーディ氏。勝ち負けばかりが取りだたされ、何億円もの高額サラリーを受け取る監督が増えるばかりですが、こういった勝負だけがカレッジフットボールの全てではないという信念を持った人物は今後どんどん減っていくのかなぁと思うと寂しく思うばかりです。もちろん上に挙げた記録にも表れている通りガグリアーディ氏はフィールド上でも大きな成功を残し続けてきたわけですが。だからこそ彼がレジェンドと言われるわけです。
ご冥福をお祈りいたします。