1998年といえば筆者がカレッジフットボールに本格的にのめり込み始めた年ですが(もう20年も前か!!)、その年はテネシー大が初めて導入されたBCS(ボウルチャンピオンシップシリーズ)ナショナルタイトルゲームでフロリダ州立大を倒して全米制覇を成し遂げた年でした。この頃のテネシー大は本当に強くて、また同じく強かったフロリダ大とのシーズン初旬の激突を毎年楽しみにしていたものです。
その当時のテネシー大のQBはティー・マーティン(Tee Martin)氏でした。彼はその前年まで同チームの顔として君臨し続けたペイトン・マニング(Payton Manning)氏の後を継ぐという大役を任されましたが、結果的にマニング氏が果たせなかった全米制覇をやってのけました。彼は卒業後にプロの道へ進見ましたがそこでは鳴かず飛ばず。結局日の目を見ずに現役を引退したあとはそのままコーチングの道へと転身します。
現役時代のマーティン氏(#17)
2009年にニューメキシコ大でQBコーチデビューするとその後はケンタッキー大を経て2012年にサザンカリフォルニア大のWRコーチに就任。以来現在までUSCで指導し続け2016年からはオフェンシブコーディネーターを任されています。
マーティン氏といえば今オフ母校のテネシー大に監督の空きが出た時にチームにヘッドコーチとして凱旋するのではないかと囁かれました。テネシー大最後のナショナルチャンピオンチームを率いた先発QBがHCとして古巣に戻ってくる・・・ストーリー的にはなかなか良くできていましたが、結局テネシー大はマーティン氏に監督の経験がなかったことを理由に彼に白羽の矢を立てることはありませんでした。
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現在39歳と若いマーティン氏が今後カレッジフットボールのコーチ界隈で名を上げていくことは容易に想像できますが、現在彼が所属するサザンカリフォルニア大はしばらく彼を手元に置いておきたいようで、今回大学側はマーティン氏と契約更新を果たしました。
実は彼はその前にNFLオークランドレイダースの監督のポジションの面接を行なっていました。オークランドは結局以前同チームを率いたことがあるジョン・グルーデン(Jon Gruden)氏を復帰させることになります。オークランドがマーティン氏と面接を行なったのは、NFLチームが監督を新たに起用する際に最低一人は黒人コーチと面接をしなければならないという「ルーニールール(Rooney Rule)」を満たすためであり、グルーデン監督起用は出来レースであったと言われています。にしてもマーティン氏が面接まで漕ぎ着けることができたのは少なくとも彼にそのポテンシャルがあるからに他ありません。
そんなダイヤの原石のようなマーティン氏を複数年留めておくことができたサザンカリフォルニア大にとってこれは朗報だといえます。ただでさえ今オフにQBサム・ダーノルド(Sam Darnold)、RBロナルド・ジョーンズ(Ronald Jones)、WRデオンテイ・バーネット(Deontay Burnett)をNFLドラフト入りで失い、オフェンスの戦力低下が懸念されていますから、マーティン氏が戻ってくるのはそんな状況の中で大きなプラスとなるでしょう。
さらに重要なのはマーティン氏が非常に優れたリクルーターであること。彼だけの力ではないにしろ2018年のナショナルサイニングデー後のリクルーティングランキングではトップテン入りを果たすなどし、既存の戦力が流出する一方で新戦力補充もうまくいったようです。
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果たしてマーティン氏があと何年サザンカリフォルニア大に滞在するか、そしていつ彼が監督となる日が来るのか、彼の現役時を知る物として非常に興味があるところです。