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Pac-12カンファレンスの台所事情

Pac-12カンファレンスの台所事情

NCAA(全米大学体育協会)にはご存知の通り大きく分けて3つのディビジョンがあり、1部、2部、3部と分けられています。1部はトップディビジョンと位置付けられていますが、フットボールに関していえば1部はさらにFBS(フットボールボウルサブディビジョン)とFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)に分けられます。

参考記事NCAAとディビジョン

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ベースボール・マガジン社 (編集)

もっと言えば、FBSは便宜上さらに上位の「パワー5」カンファレンス群と中堅の「グループオブ5」に区分けされ、「パワー5」とされる5つのカンファレンスにはナショナルタイトルを争う強豪チームがひしめいています。その5つのうちの1つに主戦場を西海岸に構えるPac-12カンファレンスがあります。

2011年にユタ大コロラド大を迎え入れ名前をPac-10カンファレンスからPac-12カンファレンスと改名しましたが、同時に彼らは当時カレッジフットボール史上最高額となるテレビ放映権を取り付けました。その額は12年間で30億ドル(1ドル100円計算で約3000億円)と超破格。Pac-10時代のテレビ放映収益の3倍近い額が約束されたのです。

しかしその後Pac-12がどうなったかと言うと・・・。

経営難?なPac-12

各パワー5カンファレンスの納税文書を見比べてみると、当時の破格の契約にもかかわらずPac-12の収益は他のカンファレンスに抜かれてしまっているというのが現状です。

特にSEC(サウスイースタンカンファレンス)とBig Tenカンファレンスには大きく差をつけられてしまい、結果Pac-12が各所属大学に分け与える配当金額が他のカンファレンスチームと比べて減少してしまうことに。

何が起きたかといえば、2011年にPac-10がESPNFOXと破格の契約を結んだ後、2013年にSECはESPNとの契約を延長した上に独自のメディアネットワークであるSECネットワークを設立。これによりSECの収益は倍に跳ね上がりました。

またBig Tenは2017年に前出のESPNとFOXと6年間の業務提携を結び、この結果26億4000万ドル(約2640億円)が懐に入ってくることに。この結果2016年度の収益が5億1200万ドルだったところ、2017年度には7億5800万ドルにまで増加しパワー5内でトップに躍り出たのです。

2011年に史上最高額となる契約に漕ぎ着けたPac-12カンファレンスはパワー5(当時はBig Eastカンファレンスを含めてBCSカンファレンスと言われていました) 内でトップの収益を誇っていましたが、現在のところ彼らは3番手に甘んじています。

しかし各チームが手にすることができる分配金を見てみるとPac-12は収益でBig 12カンファレンスに抜かれて4番手にまで順位を落としてしまいます。2018年度の数字によると収益面でPac-12に240万ドル劣るBig Tenでしたが、それぞれのチームに分配した金額はPac-12のそれに比べると700万ドルも上回る額だったそうです。


なぜPac-12がジリ貧なのか?

Big 12の所属チーム数が10チームである一方Pac-12が12チームであることを考慮したとしても、Pac-12の各チームへの分配金は他の3カンファレンスを大きく下回る数字となりました。一体なぜこのようなことが起きたのでしょうか。

それはPac-12が取り分を各チームに分配する前に他方面でお金を使っているからなのです。

その中でも最もカンファレンスがお金を費やしているのがスタッフへのサラリーや手当てです。どれくらいかというと、他のパワー5勢がこの分野につぎ込んでいる割合が全体の2.3%未満であるところ、Pac-12は3倍以上となる7.2%であるという数字が残っています。

また彼ら独自のメディアネットワークであるPac-12ネットワークの維持費だけでも2018年度には1000万ドル(約10億円)を支払っていることも分かっています。この数字はパワー5勢の中でも突出しており、彼らの次に自身のネットワークにかける費用が多いBig TenとBig 12でも42万ドル(約4200万円)ととんでもない差が出ています。

その結果、Pac-12が所属チームに分配した金額の総額は全体の74.5%(2018年度)にとどまりましたが、これでも2011年度シーズン以来最高額である事がわかっています。一方ACC、Big Ten、Big 12は92%、SECも89%とPac-12と差をつけています。

薄まっていくPac-12の存在感

Pac-12の運営方法にはここ何年も批判の声が挙がっており、このカンファレンスを11年率いてきたコミッショナーのラリー・スコット氏は今年の6月で勇退することになっていますが、これはおそらく内外からのプレッシャーにより経営のトップから引きずり降ろされたと考えるほうが妥当でしょう。

フットボールに関して言えばPac-12の存在感がなくなって久しいです。最後にPac-12チームがナショナルタイトルを獲得したのが2004年度のサザンカリフォルニア大ですが、この時のタイトルは当時のスターRBだったレジー・ブッシュ(Reggie Bush)氏に絡むスキャンダルのせいで剥奪されてしまいました。

また、2014年度から導入されたカレッジフットボールプレーオフ(CFP)においても過去7年間のうちでPac-12チームが出場を果たしたのは2014年のオレゴン大と2016年度のワシントン大のみ。これまでのべ28チームがCFPに進出していることを考えると、Pac-12カンファレンスチームの出場率はたったの7%にしか満たないなのです。CFPにチームを送り出したカンファレンスにはボーナスが配分されることになっていますから、Pac-12はその恩恵を全く受けることができないでいるわけです。

さらに昔から「ウエスト・コースト・バイアス」という言葉があるように西海岸のチームが全米の注目を浴びないという状況も存在するとかしないとか。

これは単純にアメリカでの標準時間が東海岸に設定されがちな昨今、そこから3時間の時差がある西海岸ではプライムタイムと言われる時間帯(東部標準時で8時以降)がずれ込んでしまうことに起因しています。そのせいで西海岸のプライムタイム時には東海岸ではすでにもうそろそろ就寝の時間となってしまい、Pac-12チームの試合がお茶の間の目に届かないという状況に陥ってしまうわけです。

その結果、東部標準時間ないし中部時間に多くのチームを有するBig Ten、ACC、SEC、一部のBig 12カンファレンスの試合にメディアの注目が集中することでPac-12カンファレンスチームへの偏見やネガティブな先入観が植え付けられてしまう・・・といのが「ウエスト・コースト・バイアス」です。

しかし実際には2000年代に栄華を誇ったサザンカリフォルニア大の存在もあったわけで、Pac-12だってやってやれないことはない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかしここしばらくの間Pac-12の存在感が薄れてしまったせいで西海岸の有能なリクルートたちがPac-12カンファレンス以外の所属チームに流れてしまうせいで、チーム力の格差は広がるばかり。この負のスパイラルから脱出するためにはそのような将来を担う高校生たちを西海岸に留める必要があります。

そして良質な試合を全国放送で放映するための根回しも必要不可欠であり、そのためには注目される試合を西海岸時間で5時(東部標準時で8時のプライムタイム)にぶつけていくというような策も必要になってくるでしょう。

昨年は土曜日の最初にキックオフとなる東部時間の12時に合わせて実験的に西海岸時間で朝9時にキックオフしたPac-12の試合がいくつかありましたが、流石にそれではチームへの負担は大きすぎます。

(通常カレッジフットボールのキックオフ時間は東部標準時で12時、3時半、8時に設定されています。西海岸のプライムタイムゲームは東海岸で夜10時半ごろにキックオフとなります)

また2020年度シーズンは新型コロナウイルスに振り回された年となりましたが、Pac-12カンファレンスはBig Tenカンファレンスに追随する形で開幕前に秋シーズン開催を見送る決定を下しました。しかしACC、Big 12、SECは変速スケジュールながら開幕へこぎつけ、Big Tenにおんぶにだっこで秋開幕を断念したPac-12は途中から参戦することに舵を切らざるを得なくなりました。

しかし西海岸の州間で意見をすり合わせるのに時間がかかり、結局開幕したのが11月過ぎという後手後手な展開に。カンファレンスタイトルゲームはワシントン大とサザンカリフォルニア大の対戦となるも、ワシントン大でコロナ感染が起きて出場を辞退。そのバックアップとして登場したオレゴン大が優勝をかっさらうというつぶしあいの展開となり、CFPレースにはPac-12チームは全く絡むことはありませんでした。

その結果としてコミッショナーであるスコット氏体制の終焉を招いたわけですが、Pac-12カンファレンスが経済的にも実力的にも潤うためには強力なリーダーシップが望まれます。スコット氏の後任はまだ決まっていませんが、彼らがパワー5カンファレンズ群のなかでその存在感を打ち出すためにもこの人選は大変重要になってきます。

果たしてPac-12の復活はあるでしょうか?

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