「The Eyes of Texas」に見るテキサス大の内情

「The Eyes of Texas」に見るテキサス大の内情

最近テキサス大フットボール部が世間を少々騒がしています。

テキサス大で最近あったことといえば、新監督に元アラバマ大オフェンシブコーディネーターのスティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian)氏が就任というニュースがありました。しかし世間を騒がせているのはそのことではありません。

テキサス大のファイトソングである「The Eyes of Texas」です。

各大学にはそれぞれ独自のファイトソングが存在します。その殆どが長年演奏され在校生や卒業生、さらには多くのファンから愛されるアイコニックな存在となり、スクールカラー、ニックネーム、マスコットと並んでその大学のアイデンティティとなっています。

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そしてテキサス大にも「Texas Fight」というファイトソングがあり、試合のある日にスタジアムへ行けば何度もこの曲を聞くことができます。これを聞けば「テキサス大ロングホーンズ」を思い浮かべる人はファンならずとも多いと思いますが、特にテキサス大OBならびにファンにとっては特に思い入れの強い曲となっています。

しかしそれとは別に応援ソングとして「The Eyes of Texas」という曲があります。これは特に試合終了時などにマーチングバンドが演奏する曲として「Texas Fight」と並んでファンらに愛され続けた曲です。

(ちなみにメロディーはまさに「線路は続くよどこまでも」と全く同じです)

しかしそんな「The Eyes of Texas」に絡んでちょっと嫌な感じのニュースが報道されています。

「The Eyes of Texas」拒絶運動と脅迫騒動

実はちょっと前にもこのサイトで「Eyes of Texas」絡みの騒動を紹介したことがあります。

というのもちょうど去年の夏頃、世間で「Black Lives Matter」運動が盛り上がった際に「Eyes of Texas」の誕生の話に黒人差別が絡んでいたからです。

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かいつまんで言うと、1903年にこの「The Eyes of Texas」が初めてお披露目となった際、一緒に歌って踊った白人学生たちが黒人に模すために顔を黒く塗っていたという歴史的事実があり、これが黒人を侮辱しているという批判が起きたのです。

またこの曲の歌詞はかつて蔓延っていた古い南部の大義、つまり奴隷制度を容認していたころの大義を容認する様を暗に歌っていると分析されることもあり、BLM運動でこのような黒人差別の事象に敏感になっていたタイミングで一気に非難の声が膨れ上がったという訳です。

当時テキサス大フットボール部内でもこの「The Eyes of Texas」の使用を辞めることを訴える選手もおり、またマーチングバンドはこの曲を試合で演奏しないことにする決定を下しました。結局試合では録音済みの曲を流すのみにとどまったのです。

昨年はBLM運動がここ最近でも一番人々の関心を集めたムーブメントとなり、未だに根強く残っている人種差別のカルチャーを浮き彫りにし、そしてそれを改善すべく多くの人たちが立ち上がりました。それはテキサス大だけに限ったことでなく、他の大学にあり親しまれた伝統もこの時代の流れに対応すべく変化していきました。

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ただ「The Eyes of Texas」に関して言えば同大卒業のレジェンドであり黒人選手でもあるアール・キャンベル(Earl Campbell)氏やリッキー・ウィリアムス(Ricky Williams)氏もその存続を支持するコメントを出しており、曲の存在意義は大学内でも割れていました。

しかし最近になって、現役選手や元選手らが「The Eyes of Texas」を支持しないことに脅迫じみたメールをブースターらから送りつけられたことを暴露したのです。

カレッジフットボールの強豪校ともなると資金補助をしてくれるブースターという存在をちらほら見かけることができます。簡単に言えば後援者ということになりますが、テキサス大ではこのブースターたちが強大な影響力を持っていると言われ、テキサス大の監督はチームでのコーチングはもとよりこのブースターたちのご機嫌を取れるかどうかで長期政権を担えるかどうかが判断されると言われるくらいです。

この発言権の高いブースターの一部が「The Eyes of Texas」不要論が噴出していることに憤慨し、この曲を支持しない選手たちに「支持しないなら卒業後にテキサス州内で仕事を見つけられないようにしてやる」いったり、大学側に「この問題を穏便に解決できないならばもうお金を寄付しない」という脅しを仕掛けてきたというのです。


テキサスという気質

テキサス大はテキサス州の旗艦大学として圧倒的なブランド力を誇っていますが、それはテキサス州内だけでなく全米においても言えることです。

1800年代には一時「テキサス共和国」として独立したという歴史があることもあり、その名残からかテキサス州は他の州とは一線を画す自尊心を持っています。そのため現在までもテキサス州出身者はそのことに人一倍のプライドを持っているのです。

面白いエピソードを紹介しましょう。私の友人とその彼氏がある時イギリスに旅行にでかけました。私の友人はカナダ人、その彼氏はアメリカ人でテキサス出身でした。その旅行先で入ったバーで知り合った地元の人達と飲むことになったのですが、イギリス人たちは彼らに「どこから来たのか?」と訪ねたそうです。すると彼氏は「アメリカからです」というと思いきや、「テキサスからきました」と答えその場が爆笑の渦に包まれたのだとか。いかにもテキサスっぽい話だといまだに覚えています。

そんな感じでテキサス人はテキサス人であることに誇りを持っているのですが、特にテキサス大出身者でビジネスで成功してお金持ちになった人たち、特にそれが縁でテキサス大のブースターになった人物たちはそのプライドが行き過ぎてちょっと強権的になっているのは周知の事実なのです。


発言権を持つブースター達

前述の通りテキサス大で成功するには試合に勝つだけでなくブースターの機嫌を取ることができなければならないと言われており、大学の体育局長はその板挟みにあって苦しんでいます。かつてナショナルタイトルを獲得したマック・ブラウン(Mac Brown)監督も、チーム史上初の黒人監督となったチャーリー・ストロング(Charlie Strong)氏も、そしてつい最近解雇されたばかりのトム・ハーマン(Tom Herman)氏も解雇となった裏にはブースターたちの強い影響力があったと言われています。

かつてテキサス大はレジェンドであるダレル・ロイヤル(Darrell Royal)監督が率いた1960年代から1970年代にかけて3度の全米制覇を成し遂げており、テキサス大が栄華を誇った時代があったわけです。その強いテキサス大を再び復活させたいと願うブースターが資金寄付の代わりに発言権を強めているのです。

(ちなみに1969年度は11勝0敗のテキサス大と同じく11勝0敗のペンシルバニア州立大のどちらが全米王座か注目が集まったシーズンでしたが、当時の大統領であるリチャード・ニクソン大統領がテキサス大がチャンピオンだと発言したことが最終投票の結果に影響したと言われています)

おそらく昔からブースターが影響力を持っていた状況は変わらなかったことでしょう。しかしBLM運動のときのように自分たちの意見をアウトプットできるようなプラットフォームが増え、また世論的にもレイシズムやパワハラなどに敏感になってきた今のご時世で、選手たちに脅迫まがいのメールを送りつけてしまうところに、テキサス大のブースター(もちろん全員がそうだとはいいませんが)の時代錯誤さが見え隠れします。

このニュースが流れると一斉に世間はこのブースターへの非難の声を挙げましたが、流石にテキサス大の大学長もこの発言を容認することはできず、「テキサス大にこのような排他的な思想はいらない」と強い口調で非難しました。

現役の学生の中には「The Eyes of Texas」の廃絶を訴える声は少なくありませんし、チーム内にも同じ思いの選手は存在することでしょう。これからを生きる若者の主張が通るのか、はたまた巨額の寄付金を提供してくれるブースターに大学側が忖度するのか・・・。


サーキジアン監督の試練

ところで、これに関して非常に気になる事がありました。

それはつい先日就任したばかりのサーキジアン新監督の公式表明でした。

「The Eyes of Texas」の存続問題は非常にデリケートであり、根が深い問題であることはおわかりいただけたと思いますが、テキサス大となんの接点もなくその敏腕さだけで起用されることになったサーキジアン監督は就任して間もないというのにすでに「The Eyes of Texas」は今後もチームのファイトソングとして使用していくと明言したのです。

未だこの使用については議論が交わされているのにも関わらず、就任直後にこの曲を支持する発言をしたサーキジアン監督には違和感を感じました。

そしてひょっとしたらテキサス大監督就任の条件としてブースター側から「The Eyes of Texas」を公式に使用し続けることを提示されていたのではないか、という疑問が湧いたのです。ブースターらの強権性を考えれば不思議ではありません。

チームの半分は黒人選手である現状で、その彼らの気持ちを逆撫でる可能性のある「The Eyes of Texas」の使用を許可してしまったことで、出だしからいきなりチーム内で不協和音を起こしてしまったのではないかという懸念と、果たしてサーキジアン監督にこの難癖ある「後援者たち」と上手く渡り合うことができるのかという心配が沸き起こりました。

「The Eyes of Texas」をめぐるこの騒動は今後もなんらかしらの展開があるかもしれません。

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