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オハイオ州立大ADスミス氏の憂い

オハイオ州立大ADスミス氏の憂い

Big Tenカンファレンスの決断

当サイトのツイッターでもお伝えしましたが、NCAA1部の上位カンファレンス群であるFBS(フットボールボウルサブディビジョン、旧NCAA-1A)の中でもさらに上のカンファレンス群、通称「パワー5」カンファレンス群の1つであるBig Tenカンファレンスが、コロナ禍を受けて12試合のレギュラーシーズンゲームのうちそれぞれのチームで予定されている3試合のノンカンファレンス戦(交流戦)をキャンセルし、カンファレンス戦のみでシーズンを乗り切るという決定が下されました。

当初コロナ禍が収束に向かっているようなトレンドを確認し、NCAAが6月にキャンパスでの自主トレを許可したことにより2020年度シーズン開幕も現実味を帯びてきたかに見えました。しかし全米でビジネスや公共施設が再開されると特に南部を中心にコロナ感染数が拡大。再び全米中を混沌の時へと連れ戻したのです。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

そんな中、昨日(7月8日)FBSの下部ディビジョンであるFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)所属のアイビーリーグがNCAA1部としては初めてフットボールを含めた秋の全スポーツのシーズン開幕を断念する苦渋の選択を下しました。

そして当然今後注目されていくのはアイビーリーグ以外のFBS及びFCSカンファレンスの動向ですが、Big Tenカンファレンスはどのパワー5カンファレンスよりも真っ先に上に挙げたようなカンファレンス戦オンリーの変則スケジュールを発表。この方法でなんとか2020年度シーズンを迎えようとしているわけです。

Big Tenカンファレンスに限らずその他のFBSカンファレンスにとって資金源となるフットボールシーズン開幕は死活問題。とりわけナショナルタイトルを狙える「パワー5」に属するチームとしてはなおさらのこと。ですから開幕しないとなると数多のチームが財政難に陥ることが大いに考えられるのです。

今回Big Tenカンファレンスがカンファレンス戦に絞ってシーズンを迎えようとしているのは、いまだ収まる気配のないコロナ感染の拡大の中で試合数を減らすことによって開幕日を遅らすことでコロナ禍収束のための時間稼ぎをするためだと思われます。NCAAは開幕までに6週間のステップを踏むことを強く推奨していますが、今のままだと9月8日の開幕には間に合わなくなってしまいます。だからこそ開幕の先延ばしが必要になったわけです。

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Big Tenカンファレンスというカレッジフットボール界でも有数のカンファレンスがこのような発表をしたわけですからおそらく他のカンファレンスもこのモデルを採用していくことと思われます。「パワー5」の1つであるACC(アトランティックコーストカンファレンス)は正式な発表は無いにせよ同じようにカンファレンス戦のみのスケジュールに舵を切るという情報もあります。

Big Tenと並び称される強豪校揃いのカンファレンスであるSEC(サウスイースタンカンファレンス)は今の所静観を決めていますが、Pac-12カンファレンスBig 12カンファレンスとともにBig Tenカンファレンスに追随することは時間の問題でしょう。なんといってもこの3つのカンファレンスの主戦場となっている地域は現在皆コロナウイルス感染数が尋常じゃないほど増えているのですから。


スミス氏の憂い

Big Tenカンファレンスの中でも毎年優勝候補に挙げられるオハイオ州立大では6月から自主トレが続けられていましたが、つい先日部内でコロナ感染が広がり自主トレが打ち止めとなるというニュースが流れました。

あの名門ですらコロナウイルスの脅威に屈したとあって、これまで「なんだかんだいっても開幕するんでしょ」という風潮が「オハイオ州立大がこうなってしまったらいよいよ開幕も怪しいんじゃないか」という風に変わっていきました。

そのオハイオ州立大の体育局長(AD)であるジーン・スミス(Gene Smith)氏も現在の状況に大変な危機感を感じている人物の一人です。

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オハイオ州立大ADジーン・スミス氏

2005年よりオハイオ州立大体育局を束ねているスミス氏は2017年から2018年までカレッジフットボールプレーオフ(CFP)の選考委員も務めたほどの実力者。オハイオ州立大の絶対的な強さは彼のリーダーシップによるところも多いですが、そんなスミス氏は現在のコロナ禍による今季のカレッジフットボール開幕に大変な懸念を抱いています。

「(今季開幕するかどうかについて)大変憂慮しています。5月の時点では状況は良い方向に向かっていたと思われていたのに、現在の全米中での状況を見ると・・・。この状態は世界最悪ではないにしろ世界でも非常に良くないの状態の一つと言っていいと思います。」

オハイオ州立大は今年オレゴン大ボーリンググリーン州立大バッファロー大との交流戦を予定していましたが、これらの試合がキャンセルとなりそれぞれのチームとの来年以降の振替開催のための調整にスミス氏は奔走していることでしょう。そのスミス氏は2ヶ月前の時点で今季の開幕の可能性を非常に楽観視する発言をしていました。そのことを問われると彼は迷わず「今われわれはとっくにそのような状況にない」と事態が急変したことを受け止めていました。

Big Tenカンファレンスがカンファレンス戦のみのシーズンに切り替えたということはなんとしても開幕を迎えたいとする彼らの思惑を考えれば想定の範囲内の決断でした。しかしだからといってシーズンが開幕すると決まったわけではありません。行政府や大学レベルで生徒をキャンパスに迎え入れることが許されなければ秋スポーツ開催は叶わないのです。先程も言った通りその時間稼ぎのためにBig Tenカンファレンスは変則スケジュールでいくことを決意したのです。

オハイオ州立大というカレッジフットボールの世界になくてはならないチームの体育局長であるスミス氏ですら今季開幕に弱気を見せてしまうほどの現在のアメリカの状況。スミス氏にとっては開幕するかどうかという問題の他に、もし開幕した時に生まれる数々の問題をどうクリアしていくかという難題も待っています。

そのうちの一つが観客動員です。

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観客動員数約10万5千人を誇るオハイオスタジアム

スミス氏は5月の時点で観客を入れてシーズンを迎えるならば動員数を制限すると明言していました。状況があまり良くなければマックス時の2割程度の2万人程度の観客を、制限がある程度緩やかであればマックス時の半分ほどの5万人を動員できるのではないかと皮算用していたのです。

しかし今回スミス氏は現状を踏まえてホームスタジアムにファンを招き入れることに関して「あまり良い状況とは言えない」とトーンダウンしています。実際どれくらいの人数の観戦を許すかどうかについては発言を控えましたが、もし開幕して観客動員が許される場合には「CDC(米疾病予防管理センター)のガイドラインを忠実に守る」とだけ話しました。

最近のデータではアメリカにおけるコロナウイルス感染者数は300万人を越えたと言われており、現時点で状況が良くなっているとはお世辞にも言えません。遅かれ早かれNCAAや各カンファレンスは今季開幕の件について決断を余儀なくされる日が来るわけですが、そのオッズはあまりよくないのです。スミス氏の憂いは続きそうです。

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