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トランスファールールの改正

トランスファールールの改正

トランスファーとは?

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日本の大学スポーツ界ではほぼ皆無なのかも知れませんが、アメリカの大学スポーツ界では学生アスリートが転校(トランスファー)してチームを替えるというケースは少なくありません。その理由はコーチとの反りが合わないからとか、チームに馴染めないからとか、出場機会が与えられないからだとか、実家の近くに戻りたいからだとか、いろいろな理由が挙げられます。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

とはいえ大学を替えるという行為自体は決してかんたんなことではありませんから、トランスファーしたいからと言ってそれがそう簡単にできるわけでもありません。またスポーツ奨学金(スカラシップ)をもらって入部してきた選手がトランスファーする場合に新天地でスカラシップが授与されなかったり、そういった制限が転校元のチームから課せられたりする場合もありますし、同じカンファレンス内でのトランスファーをブロックされるというケースもあったりします。

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それらのトランスファーに際するルールや制限は選手たちがおいそれと簡単にチームを乗り換えられないようにするためであり、トランスファーすることが可能なことだとは言え大ごとであることを示しているという側面もあります。

一昔前ならば選手の所属チームへの忠誠心はある程度高いものでしたが、選手たちのプロ志向(NFLでプレーするという志)がどんどん高まっていくにつれて出場機会を求めて他大学へと出ていく選手がどんどん増えてきています。それはチーム主義から個人主義へ今のジェネレーションの意識が変わってきている現れなのかも知れません。

ただこれが乱用されると転校生を他チームがむさぼり合ったり、チームの戦力が偏ったり、何よりも学生アスリートがスポーツ一辺倒になり学業をおろそかにするという危険性をはらんでいます。それを制限するためにNCAAはトランスファーに関するルールを制定してきました。


トランスファー後即試合出場可能に?

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最も知られているトランスファールールに「特別な理由がない限り転校先では1年間試合に出場できない」というものがあります。これに当てはまる選手は練習には参加できるものの即戦力として試合に出場することが許されません。例外としては既に学士号を取得し卒業しつつまだプレー資格を残している選手(卒業生トランスファー)、またはNCAAから特例で許された場合です。最近ではジョージア大で人種差別を受けたとしてオハイオ州立大に転校したQBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)が特例を受けて転校した昨年度に先発としてチームをCFP(カレッジフットボールプレーオフ)にまで導きました。

しかし今オフこのトランスファールールを改めるという動きが勃発。1度だけならば転校先で即試合出場を可能とするルール改正の提案をNCAAが提示。これについての話合いが4月に行われる予定でした。

現行のトランスファールールにおいて転校先で即試合出場可能という特例が出ることが2018年からケースバイケースとなりそのハードルが低くなってはいましたが、結果的にこれによってメリットを得ることが出来ているのが非常に腕の立つ弁護士を雇えるだけの資金力を持つ選手だけであり、かえって批判を浴びてきたのも事実だったのです。だったら特例など作らずに1度だけならば無条件で転校先での即試合出場を認めようというのがこのルール改正への動機でした。

が、この話し合いの場は現在も蔓延しているコロナ禍の影響で先送りになり続け、結果的にNCAAは現時点でのトランスファールール改正は適当ではないという発表を行いました。

こんなところにもコロナの影響が及んでいたのですね。

卒業生トランスファールールの改正

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一方前述の学位取得後の卒業生トランスファー(Graduate Transfer)のルールにはテコ入れが入りました。

卒業生トランスファーのルールとは、大学での学位取得時に選手としてのプレー資格(通常4年間分)を使い切っていなかった場合に大学院生として転校すれば新天地でも即試合出場が可能になるというもの。例えば現役時代の何処かでレッドシャツ(試合資格を温存するための仕組み)扱いを受けたか、もしくは授業をたくさん取って4年以内に卒業までに必要な単位をとってしまった場合4年間分のプレー資格を使い切る前に卒業できる可能性が出てくるのです。そういった選手がトランスファーした場合は通常のように1年間試合に出場できないというルールが適用されないのです。

同じ大学で大学院へ進みながらチームに留まる選手もいますが、出場機会を求めるためにこの制度を利用する選手も少なくありません。最近ならばオハイオ州立大からルイジアナ州立大に転校して昨年ハイズマントロフィーを獲得しチームの全米制覇に大いに貢献したQBジョー・バロウ(Joe Burrow、現シンシナティベンガルズ)やアラバマ大からオクラホマ大へ転校したQBジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts、現フィラデルフィアイーグルス)が卒業生トランスファーの制度を使って転校した例に当たります。彼らの活躍を見ればこの卒業生トランスファーが大きな可能性を秘めていることがよく分かると思います。

しかしながら、2013年から2018年の間に卒業生トランスファーを利用した生徒の数は倍以上に増えましたが、この大学院トランスファーが乱用されていることも事実。というのも大学院の修士号プログラムは大抵の場合が2年プログラムであり、フットボール目的で大学院入りする選手にとって大学院進学はあくまでもう一年学生アスリートを続けるための名目に過ぎず、特にハーツのように卒業生トランスファーで大学院のプログラムを始めたにもかかわらず、シーズンが終了しNFL入りを果たした選手はその時点で学業とはおさらば。当然プログラムを終えて修士号を取ることなく大学を去っていくのです。

これが横行することによって起こるのは大学体育局と大学側の軋轢です。学問に重きを置く大学の教授陣たちからすれば大学院で学ぶ気がサラサラ無い選手たちを受け入れるこの現状を忌み嫌う人は少なくないからです。

そこでNCAAは今年4月に、学士号を習得し卒業たあとにまだプレー資格が残っている選手が転校して現役を続けたい場合、転校先で修士号のプログラムを履修しなければならないというルールを撤廃しました。その代わり2つ目の学士号プログラムを取るというていで学生ステータスを維持することを許可したのです。

修士課程はより専門的であり、ある程度選ばれた生徒だけが進める学問の道と言えますが、学士過程は当然修士課程よりも門戸が開かれておりよりカジュアルに受講できる上に修士課程のプログラムが形だけの大学院生である転校生アスリートを受け入れる負担を軽減させることができるという利点が生まれます。

もちろん全ての生徒がプロの道へ進むという訳ではないので、純粋に学生アスリートを続けながら将来のために修士号を獲得するために転校する道を選ぶ学生たちも多くいますから必ずしも全ての学生アスリート(フットボール選手以外でも)が大学院に行かずに大学に戻ってくるという選択をするとも限りません。

どちらにしても昔よりも学生アスリートが転校する事例が増えそれによりNCAAがルールを改正したということで、長いこと堅物で知られてきた彼らにしては時代に寄り添う珍しくも選手に優しい決定だと思います。

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