日本時間1月23日に日本代表アメフトチームとアメリカ・アイビーリーグ選抜チームが東京新国立競技場で国際親善試合を行います。それが「Japan US ドリームボウル」です。
以前はアイビーボウルという、アイビー選抜と日本学生選抜のボウルゲームが1989年から1996年まで行われたことがあり、また2004年から2006年まではアイビーリーグの中から選ばれた2校から数名の選手とコーチが来日して、日本の大学生と混合チームを編成して試合をしたアイビーサムライボウルというのも開催されました。
もっと遡ると、1976年から1993年まで日本でアメリカ大学選手のオールスターゲーム、ジャパンボウルが開催されたり、NCAA(全米大学体育協会)の公式戦が日本で行われていた時期があり(コカコーラクラシック:1988年〜1993年)、オクラホマ州立大RBでハイズマントロフィーを獲得したバリー・サンダース(Barry Sanders)氏がプレーしたこともあります。
一番最近ではプリンストン大と関西学院大学が2015年にレガシーボウルで対戦したこともありました。今回はそれ以来の国内での国際試合になるようです。
アイビーボウル開催という歴史からアイビーリーグとの繋がりが強かったということで今回アイビーリーグ選抜チームが来日という形になったようですね。
目次
アイビーリーグとは何か?
アイビーリーグとはNCAA1部の中でも中堅カンファレンス群であるFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン、旧NCAA I-AA)に位置付けられるカンファレンスの一つ。アメリカ北東部に位置し、所属するチームは以下の8チームです。
- ブラウン大
- コロンビア大
- コーネル大
- ダートマスカレッジ
- ハーバード大
- ペンシルバニア大
- プリンストン大
- イェール大
お察しの通りどの大学もアメリカだけでなく世界的に学問で有名なエリート大学ばかり。そんな彼らで構成されるリーグですが、実はカレッジフットボール、ないしアメリカンフットボールの興隆はアイビーリーグのチームを語らずしてそれを理解することはできません。
詳しくは以前当サイトで紹介した「アイビーリーグ」の記事をチェックしてみてください。
NCAAという大きな括りで言えば、全米タイトルを最も獲得しているのは2023年時点ではアラバマ大の16個ではなくイェール大の18個ということになります。これはカレッジフットボール創成期にアイビーリーグチームが一世風靡していたからに他ありません。
他のカレッジチームが力をつけ始め、リクルーティングやスカラシップの授与などが加速するとアイビーリーグチームは次第に全米の表舞台に立てなくなりましたが、その歴史的観点からFCS内で独特の色を打ち出し続けています。
アイビーリーグの特徴
シーズンは10試合
FBS(フットボールボウルサブディビジョン)およびFCSチームは最大15試合が行われますが、アイビーリーグは10試合しか行われません。7試合のリーグ戦に3試合の交流戦(ノンカンファレンス戦)が行われます。
スケジュール
10試合しかないので開幕はFBSチームの第3週目からでシーズン最終戦はサンクスギビング(感謝祭)の前の週末である11月第3週目で終了。よってプレシーズンのキャンプも8月中旬から開始(他のチームは8月初旬)とコンパクトになっています。
これは学業第一という観点から期末試験期間(12月)に試合を行わないためだと言われています。
チャンピオンシップ
現在どのカンファレンスもレギュラーシーズン後にカンファレンス優勝決定戦を行いますが、アイビーリーグはそれがありません。レギュラーシーズンが終わった時点での勝敗で優勝を決めます。タイブレーカーも存在しないため、勝敗数が並べば同時優勝となります。これまで最大で3校の同時優勝というのが何回か起きました。
ポストシーズン
アイビーリーグチームはFCSに所属していますが、どんなに成績が良くてもFCSのプレーオフに参加することはありません。FCSの全米ランキングに登場することもありますが、10試合で予定されていた試合が終了し優勝チームが決まったその時点で彼らのシーズンは終了となります。
スカラシップ(スポーツ奨学金)
アイビーリーグの大学はスポーツ奨学金を授与していません。この理由はそれぞれの大学に入学することが学問レベルで大変難しく、それゆえにスポーツができるという理由だけで優先的に学生アスリートを受け入れることを嫌っているからです。学問もトップレベルで更にスポーツにも秀でているという稀なタレントを受け入れるためです。
しかしこれはいい選手をリクルートする際にネックになります。これが先ほども述べたようにアイビーリーグが全米レベルで戦えなくなった理由でもあります。が、ハーバード大、プリンストン大、イェール大といった世界的に知られている大学にはそのバリューを受け取るために敢えて有能な選手がFBSチームに進学せずにアイビーリーグにやってくることもあります。
The Game
アイビーリーグの中でも特にハーバード大とイェール大の試合は「The Game」と呼ばれる、全米でも著名なライバリー(宿敵)ゲームです。普段のアイビーリーグの試合の観客動員数と比べるとこの試合はスタジアムが満員になるほどの注目度。レギュラーシーズン最終戦となるこの試合だけはESPNなどアメリカの大手スポーツメディアも取り上げます。
アイビーリーグ出身の主な選手
そんな全米の表舞台とは程遠いところで切磋琢磨しているアイビーリーグのチームたちですが、だからといって有能な選手が生まれないというわけではありません。以下の選手は大学卒業後にNFLで活躍したというレアな選手たちです。
- キャメロン・ブレイト(Cameron Brate)
- 元ハーバード大、現タンパベイバッカニアーズ
- ブランドン・コープランド(Brandon Coleland)
- 元ペンシルバニア大、現在FA中
- グレッグ・ヴァン・ロテン(Greg Van Roten)
- 元ペンシルバニア大、現バッファロービルズ
- フォーセイド・オルオクン(Foyesade Oluokun)
- 元イェール大、現ジャクソンビルジャガーズ
- カイル・ユーズチェック(Kyle Juszczyk)
- 元ハーバード大、現サンフランシスコ49ers
- ライアン・フィッツパトリック(Ryan Fitzpatrick)
- 元ハーバード大、9つのNFLチームでプレー
当然このほかにもいますが、他の大御所チームよりも圧倒的にその数は少ないとは言え、NFL級のタレントを持つ選手も稀に生まれたりします。
ドリームボウルで来日する選手たち
アイビー選抜チームは「オールスター」と銘打たれていますが、実際に来日した選手たちは4年間のアイビーリーグでのプレー資格を使い終えた選手のみとされています。それゆえ現役の選手を連れてくることができないので完全なる「オールスター」チームではないようです。
またアイビーリーグでのプレー資格を終了したものの、いまだに他リーグでプレーする資格を保持している選手はトランスファー(転校、この場合は大学院への転校)するため、そしてこの試合で怪我をしてしまわないようにオプトアウトする選手もいたようですし、さらには卒業生でもNFLのプロデーに備える選手もやはり同じ理由で選抜チーム入りを回避したという背景もあるようです。
ですから、必ずしも今回来日したチームがアイビーチームの最強チームというわけではないわけです。そんなチームが対戦するのが日本代表チームですが、彼らは社会人のトップリーグであるXリーグの猛者たちに加え、大学リーグからも数名選抜され、さらには日本でプレーするアメリカ人選手も何人か選ばれているようです。
構図的には2番煎じ的な「アイビー選抜」と日本の最強のメンバーが組まれた「日本代表」チームがあい見えるということになりますね。果たしてどれだけの力差がこの両チームにあるのか・・・。
ちなみに今回のアイビーリーグ選抜チームはコロンビア大のコーチ陣によって指揮されます。HCであるアル・バグノリ(Al Bagnoli)監督はアイビーリーグのベテランHCでこれまでペンシルバニア大とコロンビア大合わせて31年指揮して9度のリーグタイトル獲得を果たしています。
さらに現在までバグノリ監督が獲得した269勝はFCS内では現役監督としては最多勝利数となります。
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東京オリンピックのために新設された新国立競技場が試合会場ですが、球技としてはサッカーとラグビーに続き3つ目のイベントがこのアメフトの試合であるドリームボウルとなるそうです。収容観客数6万8000人ということですが、果たしてどれだけのお客さんが集まるか・・・。しかも寒くなるそうですしね。
日本では日テレG+が録画放送、アメリカでもESPN+が放送するそうです(詳細未定)。国内でのアメフトの国際試合、そして日本代表チームの試合としては久しぶりに試合になりますが、どんな内容になるにしろ、面白い試合になってほしいですね。