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トリプルオプションの行く末【前編】

トリプルオプションの行く末【前編】

腕の立つ指導者は時代が変わっても増えていきますが、彼らに共通して言えるのはすでに存在しているコンセプトを取り入れそれを自分なりに昇華させることで彼らは他の指導者と一線を画しているということです。そんなコンセプトの中に果たしてトリプルオプションの生きる道はあるのか?それとも過去の遺産として消えゆく運命にあるのか・・・。オプションフットボール好きの筆者としては気になるところです。

得点力の高い現在のオフェンス

ここ最近アメフトのトレンドと言えばとかくオフェンス。オフェンススキームの発展によりオフェンスの出来によってチームの勝敗が決まると言っても過言ではない世の中になってきました。

若いこれからのコーチたちは戦術に柔軟で新しいものを取り入れることにハードルを感じません。その最たる人物はオクラホマ大のリンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督かと思いますが、昨年こそCFP(カレッジフットボールプレーオフ)進出を逃しましたが、オクラホマ大監督就任以来4年連続でBig 12カンファレンスを制し2017年のQBベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield、現クリーブランドブラウンズ)、2018年のカイラー・マレー(Kyler Murray、現アリゾナカーディナルズ)はハイズマントロフィー受賞者であり、NFLドラフトではどちらも総合ドライチの称号を獲得した選手。また2019年のQBであるジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)も受賞はのがしたもののハイズマントロフィー投票ではジョー・バロウ(Joe Burrow、元ルイジアナ州立大、現シンシナティベンガルズ)に次ぐ2位につけました。

類まれなるタレント揃いのロースターに加え、モーション、スペースを巧みに使いこなすライリー監督のオフェンスは現在のカレッジフットボール界では最新のシステムと言えます。これにRPO(ランパスオプション)を組み合わせれば相手ディフェンスは後手に回らざるを得ず、こういったオフェンス相手ならば「どんなディフェンスも止められない」とかのニック・セイバン(Nick Saban、アラバマ大)監督も認めるほどのものです。

しかし長いこと同じシステムでコーチングを行ってきた指導者にとってトレンドに適応することはそう簡単なことではありません。特に古代の産物ともいわれるトリプルオプションの使い手がそれを手放すのは容易なことではないでしょう。


ヴィアーオプション

カレッジレベルでのトリプルオプションの話をする前にアメリカの高校アメフトでの状況を見てみましょう。

個々の能力の差が激しい高校レベルでは組織的に攻めることが出来て、反復練習でかなり精度を上げることができるオプションフットボールはまだ十分主戦力として戦っていける戦術です。例えばルイジアナ州にあるアカディアナ高校のマット・マックロー監督は同校出身選手として長いことトリプルオプションが骨身にしみている人物。その中でも彼は特に「ヴィアー(Veer)」と呼ばれるトリプルオプションを用いています。

ヴィアーオプションは1960年代に当時ヒューストン大の監督だったビル・ヨーマン(Bill Yeoman)氏によって発案されたオフェンス。2人のハーフバックとストロングサイドにTEを配置するトリプルオプション。ストロングサイドに特化したオプションオフェンスと言え、わかりやすいフォーメーションながら極めれば高校レベルではかなり威力を発揮する戦術です。

アカディアナ高校でも1974年に当時の監督だったビル・ドットソン氏が導入して以来実に46年間に渡りこのヴィアーオプションが使われ続けてきました。もはや信仰とも言えるほど受け継がれてきているこのフォーメーションはアカディアナ高校の代名詞といえます。世間ではよりパス重視のオフェンスが生まれ採用されてきていますが、そんなトレンドに左右されることなく彼らはこのオフェンスで過去12年間で4度もルイジアナ州タイトルを獲得しました。ヴィアーオフェンスはアルカディナ高校では十分機能しているのです。


トリプルオプションの使い手

カレッジレベルで現在もトリプルオプションを使っているチームは数えるほどしか存在しません。FBS(フットボールボウルサブディビジョン)においては最近だとジョージア工科大が「パワー5」カンファレンス勢(ACC/アトランティックコーストカンファレンス)として唯一トリプルオプションを駆使してきました。このオフェンスで彼らは2009年にACCタイトルを獲得しましたが、彼らも時代の波には逆らえず2018年度シーズン後にトリプルオプション使いの名将ポール・ジョンソン(Paul Johnson)監督が引退したことで彼らはトリプルオプションを過去のものとしてしまいました。

ジョンソン監督が引退した今、FBSでトリプルオプションを主に使っているのは士官学校(陸軍、海軍、空軍)とジョージアサザン大、それに加えてトゥレーン大、オハイオ大が少し取り入れている程度。3つある士官学校は歴史的にずっとトリプルオプションを取り入れ続けていますが、それはそれぞれの選手が与えられたアサインメントを確実にこなし、個ではなくチームとしてプレーを遂行していくというトリプルオプションのコンセプトが将来軍人となる彼らの育成に通ずるものがあるからに他ありません。

しかしだからといって形だけで彼らがオプションフットボールを続けているわけではありません。例えば2018年のオクラホマ大陸軍士官学校戦、2019年のミシガン大陸軍士官学校戦ではともに大御所を相手に陸軍士官学校がトリプルオプションで真っ向から挑戦状を叩きつけてあと少しのところで金星かという善戦を見せました。完璧に遂行されるトリプルオプションは試合の流れ如何では十分に威力を発揮する武器であることが明らかになったのです。

2018年度の陸軍士官学校vsオクラホマ大

2019年度の陸軍士官学校vsミシガン大


変化するオプションフットボール

トリプルオプションが現代でも威力を発揮する可能性を秘めている最大の理由は、このオフェンスを使うチームが極端に減ってしまったため、相手チームがオプション対策を取りづらくなってしまったことが挙げられると思います。フィルムで研究することはできても実際の練習でスカウトチームが完璧にトリプルオプションを体現することは難しく、その未熟なスカウトチーム相手に練習するのと実戦でトリプルオプションをマスターしたチームと対戦するのでは雲泥の差があるからです。

またトリプルオプションの利点はQBがボールキャリアになることで数的有利な状況を生み出すことができることです。これによって相手の優秀なDLやLBをダブルチームでブロックすることが可能になり、QBが優れたランナーであればあるほどQBキープは威力を発揮するのです。ただこの利点はトリプルオプションが全盛期だった頃に比べると近代では相手ディフェンダーのスピードが格段に上がってしまったせいで無敵の利点と言えなくなってしまいましたが。

ここ20年ほどはトリプルオプションの進展型であるスプレッドオプションリードオプションが高校アメフトや大学アメフトを飲み込んできましたが、そんな中でもトリプルオプションは絶滅することなく生き延びています。前述の士官学校がその主なチームですが、そのうちの一つである空軍士官学校ですらスプレッドオプションをスパイスに効かした変形型のトリプルオプションを使用しています。

さらにかつてトリプルオプションを使い2000年代前半までその威力を発揮していたネブラスカ大はその後ウエストコーストオフェンスに乗り換えてしまいましたが、1995年までQBとして活躍していたスコット・フロスト(Scott Frost)監督を迎え、彼らはスプレッドのコンセプトを混ぜ合わせたオプションプレーを今でも採用しています。

とは言え、スプレッドやリードオプションのようなショットガンスタイルのオプションではなく、オリジナルのスタイルであるセンターから直にスナップを受けるトリプルオプションは衰退の一途をたどっているのは確かです。実際に現場でトリプルオプションを使っている指導者ですらオリジナルのトリプルオプションがスプレッドなどの新型オプションに完全に取って代わられる日は近いと認めているほどです。

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