勝ち負け>パブリックヘルス? - ANY GIVEN SATURDAY

勝ち負け>パブリックヘルス?

勝ち負け>パブリックヘルス?

コロナ禍の中開催が続く今季のカレッジフットボール。開幕から1ヶ月たち予定された試合の殆どは無事に開催されてきていますが、一方でコロナの部内感染により延期やキャンセルを余儀なくされた試合も少なくありません。

この状況は今季が終わるまで続いていくことでしょうが、新型ウイルスということもありコロナウイルスによる影響は今後も長続きしそうですから細かい部分ではその状況は流動的であるといえます。ひょっとしたら年末に向け第2波、第3波が襲うかもしれないし、逆に事態が収束へと向かっていくかもしれない・・・。

どちらにしても現在進行系であるこのコロナのパンデミックは当然カレッジフットボール界以外でも多大なるインパクトを与えてきていますが、このウイルスと戦っていくために今最も必要なのは「情報」です。

コロナ情報は開示されるべきか?

情報と言っても様々ですが、例えば医師や研究者たちがこのウイルスを解析してどんな薬やワクチンが有効なのかを定める上での実験結果も「情報」ですし、現在世の中でどのような場所でどのように感染が広まっているか、まだどのようなバックグラウンド(性別、年齢、人種など)を持つ人々の間で感染しやすいか、感染したら症状はどれくらい続くのか、という公共から得られるデータも「情報」なわけです。

そしてどちらの「情報」も今後このウイルスと戦っていく上で重要な武器であり、これらの武器は世界中でこのウイルスが蔓延していくことを考えると分け隔てなくシェアされるべきだと考えます。

しかし他のスポーツ界ではわかりませんが、当サイトが追っているカレッジフットボール界ではこの事に関して懸念を抱く状況が起きつつあります。

それは各チームで感染者のデータを公表しないという動きが増えてきたということです。

一番最初にこれを公言したのはオクラホマ大リンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督。彼は開幕前にチーム内におけるコロナウイルスの感染状況を公表しないことを表明。その理由は公表することによってチームが不利な状況に置かれるからということ。つまり勝利ための優位性(Competitive Advantage)を確保するためにコロナ関連の情報を漏洩しないというわけです。

これに追随するチームが増えていったことは想像に容易いですが、果たしてこれが本当に正しい行動なのでしょうか?

おそらく公表しないからと言って部内感染が起きたことを隠蔽するということではないでしょう(願わくば)。そういった事態に陥ればそのチームはガイドラインに基づいて適切な機関に情報が渡ることになるでしょうが、それは一般の目には触れられにくいものです。

もしこのようなチームが今後更に増えていけば、シーズンが続行される中で実はコロナ感染はカレッジフットボール界で蔓延していた、なんて話が後から出てこないとも限りません。感染者がしっかりと隔離され感染が広がらないような処置が施されていたとしても、その時その時の生の情報は社会に生かされるはずです。


ドリンクウィッツ監督の正論

そんな中先週4週遅れで開幕したサウスイースタンカンファレンス(SEC)に所属するミズーリ大イーライ・ドリンクウィッツ(Eliah Drinkwitz)監督があるインタビューでSEC内でのコロナウイルスに関する情報が共有されているのかどうかと聞かれてこう答えました。

「ある意味無いも等しいですね。」

ドリンクウィッツ監督は開幕前からコロナウイルスの情報の透明性を訴えてきました。ですから先週のアラバマ大戦に先立ってもその試合で出場可能な選手の総数がコロナのせいで通常よりも少ない69人であることを前もって公表していましたし、今後もこの姿勢を変えないと言っています。

「(コロナウイルスのパンデミックは)全国民の健康に関する問題であり、試合の結果を左右する問題とは違います。そしてそれは我々が普段公表しないスポーツ外傷とも異なる問題です。このパンデミックに際し我々フットボール部内で起きていることはコミュニティー全体が知るべき情報なのです。私にとって見ればそのことのほうが試合で勝ち負けを左右するとされるCompetitive Advantageなんかよりもよっぽど重要なことだと考えます。」

ドリンクウィッツ監督は今年からミズーリ大を率いる37歳の若手コーチ。本格的に大学レベルでのコーチングの道に入ったのは2010年頃まえで2019年に初めてアパラチアン州立大で監督の職を任されていきなり12勝2敗という好成績を残したことが認められて今年からSECの一員となったのです。たった10年でこのカンファレンスで監督として迎えられたという事実からもやり手コーチであることは明らかです。

とはいえSECでミズーリ大は中堅レベルであることは否めず、例えば先週のアラバマ大との試合はひっくり返っても勝つことは出来なかったでしょう。そんなチームだからこんな綺麗事が言えるのだ、と考える人もいるかも知れませんが、筆者としてはこれくらいの潔さがあったほうが清々しいと感じます。

考えてみればオクラホマ大ほどのチームが試合の優位性を保つためにコロナの情報を開示しないというのは情けないです。彼らぐらいになればコロナ感染のために複数の選手が出場できなくても堂々と勝てるはず。その方が王者の風格を感じることが出来るのです。

米スポーツ専門局ESPNによると、9月初旬の時点で「パワー5」チームの半分以上がESPNにコロナ関連の情報を共有することを拒否したといいます。その理由は個人情報保護、大学のプロトコル、その他の秘匿義務があるから、ということだったそうですが、法律の専門家によると個人情報に関わらないデータ、例えばチーム内で何人が感染したかなど、は大学が言う個人のプライバシーデータには当たらないとしています。これまで情報を開示してきたチームでも当然個人名を羅列してコロナ感染が起きたことを発表するようなことはしていませんから。


ぶっちゃけすぎたオルジェロン監督

そういえばちょっと話が変わりますが、ディフェンディングチャンピオンのルイジアナ州立大監督、エド・オルジェロン(Ed Orgeron)氏はこんなことを最近話していました。

「我々フットボール部ではその殆どの選手が既にコロナウイルスに感染している。だから3ヶ月あるシーズンを無事乗り越えられるはずだ。」

しかし6月の時点で30人が自主隔離に置かれたという話が出て以来、ルイジアナ州立大でコロナ感染者を出したという話は私が知る限り出てきていませんでした。

しかも一度コロナウイルスに感染すると体内に出来た抗体が3ヶ月間有効になるとう仮説のもと、感染者は向こう3ヶ月はコロナウイルスのPCR検査を受けなくていいというSECのルールを引き合いにしている点も見逃せません。おそらくその殆どの選手が感染してしまったのであとは感染者を出すことはないだろうと高をくくって後付けのようにこのようなコメントを残したのでしょう。

ここまで聞くと、ルイジアナ州立大にコロナに感染した際のプロトコールがあったのか、そしてあったとしたら感染者を出しつづけた間チームの部活動はどのように続行されてきたのかという疑問が湧いてきます。コロナに関して言えば別の記事でも紹介したとおり、各大学やカンファレンス内でのプロトコルはあっても全米で統一されたプロトコルは存在しませんでした。

そして無いとは思いますが、もし彼らがわざと選手たちにコロナ感染させて抗体を自発的に発生させようとしたのなら・・・。これは医学的にも倫理的にも大問題です。

実際このオルジェロン監督の発言があった翌日、同大学の体育局長であるスコット・ウッドワード氏はこのオルジェロン監督の発言を受け「あれはぶっちゃけすぎた」と苦笑い。でも嘘を隠さずさらけ出すことはオルジェロン監督のいいところだと擁護していました。

すべて包み隠さず公表するという点ではドリンクウィッツ監督とオルジェロン監督は似ています。その中身については一考の余地ありですが(笑)。いずれにしてもコロナ禍という史上稀に見るパンデミックに際し、勝つために情報開示を拒むチームが増えているという点はなんとも嘆かわしいことです。カレッジフットボール界にも「勝つためには手段を選ばない」とい風潮は年々増えているような気がしますが、ことコロナウイルスに関して言えばそんな垣根を取っ払って取り組んでほしいものです。

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