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9月の通信簿【2020年度シーズン】

9月の通信簿【2020年度シーズン】

早いもので暦は10月を迎えます。筆者が住むアメリカ北東部でもめっきり秋らしさを感じられ、夜になればかなり肌寒い日々が訪れています。

カレッジフットボール界もコロナ禍下で開幕が危ぶまれながら何とかここまでスケジュールをこなすことが出来ています。それでも毎週ウイルスの影響で延期になったりキャンセルになったりする試合は続出しており、想定の範囲内とはいえ物凄い世界で今シーズンのカレッジフットボールが開催されているのだと改めて思い知らされます。

9月に開幕して以来既に4週が経ちましたが、ここでは今月のカレッジフットボール界を振り返り、更にはいろいろな意味で話題をさらったチームに独断で通信簿をつけていきたいと思います。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

コロナウイルスの脅威

既に述べたとおり、今年3月から本格的に全米を襲ったコロナウイルスのパンデミックのせいで今シーズンが開幕できるかどうかすら定かでないまま夏が過ぎて行きましたが、いざ開幕することが決まった頃には例年よりも既にキャンプインの日時が大分遅れており、開幕までにチームが仕上がるのかという不安もよぎっていました。

その不安はある意味的中し、開幕から攻守に渡り錆びついたチームが続出。タックルミス、スペシャルチームのミスアサインメント、QBとレシーバー陣のミスタイミング、シャープさにかけるOL陣の動きなど、いつもよりも開幕の時点での出来が甘いチームが多く見られました。仕方のないことではありますが。

そして開幕後も各地で部内での感染が発生し、スケジュールに大きく穴をあけるチームも出ました。その最たるチームがヒューストン大で開幕以来対戦相手が次々とコロナ感染の影響で試合をキャンセルした結果、彼らは未だにシーズン初戦を迎えていません。今週末にはようやく試合ができそうですが、9月だけ見ると彼らは1試合も行うことが出来なかったのです。


マスクアップ!

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コロナウイルスを根本的に撃退する特効薬などが無い現在、カレッジフットボール界に限らず社会的に言ってコロナウイルスを増やさないことが最大の防御策であります。そのためにはマスクを着用したりソーシャルディスタンスを守ったりする人の持つ良心とか常識とかに頼らざるを得ない状況です。

フットボールに勤しむ上でソーシャルディスタンシングを保つことはほぼ不可能です。だったらマスクで感染を防ぐことが最低限の予防法であると言えます。チームごとに細かな決め事は違うのかもしれませんが、基本的にサイドラインでは何かしらのマスクを着用することが強く望まれています。

それは当然コーチらにも当てはまることで、TVを見ているとかなりの割合でマスクをつけながら指導するコーチの姿を見つけることが出来ます。

が、マスクをつけていないコーチもちらほら見受けれたりして、逆に目立ったりします。前半にマスクを外したままの監督が後半になるとしっかりとマスクアップしているのを見ると、TVを見ていたチーム関係者がハーフタイム中にその監督にマスクをするように注意したのではないかと勝手に想像してニヤッとしたりして。

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マスクを外したままのジョージア大・スマート監督

またマスクもそれぞれのチームでカラーを統一したりロゴを散りばめたりしてそれ自体がブランディングの媒体と化しているのを眺めるのも一興です。

そんな中気になったのがアラバマ大のコーチ陣が着用していたマスク。上記のように各チームがチームのアイデンティティを全面に打ち出すマスクを採用する中、ニック・セイバン(Nick Saban)監督らはアラバマ大のチームカラーである真紅でもなければロゴも入っていない非常にシンプルなものを付けていました。

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アラバマ大セイバン監督が着用するのはハイテクマスク?!/p>
派手さよりも質や機能を求めそうなセイバン監督の考え方を反映しているようなマスクでしたが、アラバマ大ほどのチームならおそらくとんでもなく高性能でまだ世に出ていないようなスーパーマスクなんじゃないかと勘ぐってみたり。

でも一番凄いなと思ったのはクレムソン大のOL陣。彼らはベンチに戻ってくるなりマスクではなくフェイスシールドを着用していたのです。

おそらくマスクだと息ができないためにこの策を採用したのでしょうが、流石にここまでくるとこんなことをしてまでプレーするべきなのかと疑問を感じてしまいました。

スカスカのスタジアム

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コロナ禍の影響はフィールド上だけでなくスタンドの方にも当然及んでいます。

カレッジフットボールの醍醐味としてホームチームの学生やファンたちがスタジアムを埋め尽くして大歓声を上げたりマーチングバンドの演奏があったりして試合を盛り上げてくれるものです。

しかし今年はスタジアムを観客で埋めることは叶わず、州によっては観客を入れるイベントが開催禁止となっており、その州で試合をするチームは無観客試合を余儀なくされています。開幕後3週間はかなり多くのチームで念の為無観客で試合を開催しているようでした。

また観客動員を許可しているところでも多くても最大収容人数の25%に制限するところがほとんどです。そのような試合では人が入っていてもスタジアムはスカスカ。無観客スタジアムよりも歓声は届くものの相手チームを怖気づかせるほどの騒音を作り出すことは不可能です。

これは通常なら7万8万以上の観客を入れることが出来るようなスタジアムをもつチームにしてみると大変不利な面だと言えます。例えば先週で言うとオクラホマ大ルイジアナ州立大はホームゲームながら敗戦を喫してしまいました。オクラホマ大のメモリアルスタジアムは約8万3000人収容可能なところこの日は2万2000人、一方のルイジアナ州立大のタイガースタジアムは約10万人収容のところこの日はたったの約2万人。

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ルイジアナ州立大の本拠地・タイガースタジアム

筆者はラッキーなことにかつてこのタイガースタジアムに居合わせたことがありますが、当時おそらく8万ほどの観客の入りでその歓声の大きさと言ったら凄いもの。実際タイガースタジアムは全米でもその声援の大きさから相手チームにとってやりづらいと言われる場所のうちの1つ。その声援がチームを鼓舞し相手チームにとっては大変な脅威となるのです。

その声援がないというのは波に乗れない時には不利に働きますし、逆に相手チームとしてはアウェーの洗礼を感じることなくプレーできるという利点にもなります。ルイジアナ州立大にせよオクラホマ大にせよ、先週まさかのアップセットを食らったのはこのことが遠因だったりして。

ただ、観客やバンドがいないことで声援がゲームから消え寂しさを覚える反面、その騒音がないお陰でフィールド上でプレーする選手たちのショルダーパッドやヘルメットがぶつかり合う音やプレーコーリングの声、またサイドラインから飛ばされるコーチたちの檄が聞こえてくるという副産物も生んでくれました。逆に臨場感が生まれて筆者は嫌いではありませんね。

9月の通信簿

大変良く出来ました

フロリダ大

QBカイル・トラスク(Kyle Trask)は開幕戦となったミシシッピ大戦で6つのTDを奪い、TEカイル・ピッツ(Kyle Pitts)は170ヤードに4TDというモンスター級のパフォーマンス。ディフェンス陣に一抹の不安を覚えるも、この試合だけで彼らが今季タイトル争いに絡んでこれるチームであることを世に知らしめました。

マイアミ大

ディフェンス陣には定評があったもののオンフェンスの面で頼れるスター選手が長いこと現れてこなかったマイアミ大ですが、今季はヒューストン大からの転校生QBデリック・キング(D’Eriq King)という逸材を遂に手に入れ9月は負け無しの3勝を記録。いよいよ名門完全復活となるか?

ミシシッピ州立大

今季からSECに殴り込んでくるのがミシシッピ州立大の新監督であるマイク・リーチ(Mike Leach)監督。超パス重視オフェンスである「エアーレイド」オフェンスを引っさげて開幕戦では前年度覇者であるルイジアナ州立大から見事金星を奪いました。QBのK.J.コステロ(K.J. Costello)は600ヤード以上のパスを投げリーチ政権初戦から「エアーレイドの申し子」の名に恥じない華々しいデビューを飾りました。今季のSECは彼らが大いにかき回してくれそうです。

ブリガムヤング大

開幕戦の海軍士官学校戦では55対3、2試合目のトロイ大戦では48対7と圧倒的な点差をつけて勝利を収めてきたブリガムヤング大。開幕以来2試合での得失点数が103対10で相手が弱かったとはいえこの数字は立派。今後彼らのスケジュールを見ると物凄い強敵がいるわけではないので、このまま無敗を貫くことも大いに可能です。

ピッツバーグ大

古豪ピッツバーグ大もここまで無傷の3連勝でランキング入りを果たしています。派手さはないもののこの状況下で白星を積み重ねることが出来ていることは評価されるべきです。このまま行けば5連勝でマイアミ大戦を迎えることになりそうですが、そうなればこの試合はACCの今後を占う上で非常に重要な試合となるでしょう。

ルイジアナ大ラフィエット校

破竹の3連勝で最高19位まで上昇したルイジアナ大ラフィエット校は最新のランキングにBig Tenチームが復活してしまったせいでそのランキングでは圏外に落ちてしまいましたが、彼らは9月のカレッジフットボール界を盛り上げてくれたチームの1つであることに変わりありません。もし再び彼らがラキングに戻ってきたときには、それが20位台であったとしても素晴らしい偉業だと褒め称えてあげたいです。

よく出来ました

クレムソン大

クレムソン大は無敗でトップの座を守っていますが、これまでの対戦相手(ウェイクフォレスト大、シタデル)を考えれば当然の結果。来週のマイアミ大との大一番で彼らの真価が試されるでしょう。

アラバマ大、ジョージア大、アーバン大

先週開幕したSEC所属のこれらの大学もトップ10チームとして開幕戦を白星で飾りました。アラバマ大はQBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)やWRジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy)らを失いましたが、新QBマック・ジョーンズ(Mac Jones)は予想以上にパスの精度が高く、WRデヴォンテ・スミス(DeVonta Smith)、ジェイレン・ワドル(Jaylen Waddle)といった近年のアラバマ大WRの系譜を受けつづタレントが健在です。

ジョージア大は初戦で勝利を収めましたが彼らの今後の課題は誰がQBとなるのかということでしょう。アーバン大は先週23位のケンタッキー大を倒しランカーからの勝ち星という貴重なポイントをゲット。このジョージア大とアーバン大は今週末いきなり激突。目が離せません。

ノートルダム大

名門ノートルダム大も昨年の勢いを殺すことなくトップ10内をキープしています。彼らの問題は部内で感染が確認されているコロナウイルスとの戦いでしょうか。このせいで先週のウェイクフォレスト大戦が延期になってしまいましたから。

セントラルフロリダ大、シンシナティ大

この2つの「グループオブ5」勢もここまでそれぞれ勝ち星を重ねて11位と15位という好位置に現在ランクされています。シーズン序盤でセントラルフロリダ大が11位というのは絶好なポジション。このまま勝ち進めばトップ10入りも夢ではないでしょう。

がんばりましょう

テキサス大

テキサス大は現在9位で2勝0敗と数字的には悪くないのですが、先週のテキサス工科大との試合を見るとディフェンス陣の出来の悪さがかなり気になりました。アンランクチームに56失点とはいただけません。彼らが悲願のCFP出場を果たすためには、守備力の無さを得点力で補うようなチームから脱皮しなければなりません。

テキサスA&M大

第4週目の時点で全米10位の評価を受けて開幕したテキサスA&M大ですが、先週のヴァンダービル大との試合だけを見ればどんなにひっくり返っても彼らがトップ10のチーム力を持っているとは思えませんでした。期待されたQBカレン・モンド(Kallen Mond)の一層の活躍が必須です。

オクラホマ州立大

今季Big 12カンファレンスタイトルも狙えると下馬評が高かったオクラホマ州立大ですが、それに見合うだけの圧倒的な強さを見せるまでにはまだ至っていません。開幕戦では格下タルサ大に大苦戦。初戦でエースQBスペンサー・サンダース(Spencer Sanders)を怪我で失ったのは確かに痛かったですが、もし彼が長期離脱するようであればRBチュバ・ハバード(Chubba Habbard)のハイズマン級の活躍が必要不可欠です。

オクラホマ大

全米5位発進のオクラホマ大は初戦で格下ミズーリ州立大相手に48対0という圧倒的強さで勝利を収め、リンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督の秘蔵っ子QBスペンサー・ラトラー(Spencer Rattler)のポテンシャルの高さに興奮しました。が、先週はランク外のカンザス州立大にまさかの逆転負け。攻撃力はあるものの守備力がイマイチというちょっと前のオクラホマ大に戻ってしまいました。

もっとがんばりましょう

ルイジアナ州立大

前年度覇者のルイジアナ州立大は昨年の優勝メンバーのうち実に14人もの先発選手がチームをさり、さらに開幕直前にスターWRジャマー・チェイス(Ja’Marr Chase)も今季オプトアウト。また昨年の快進撃を影で支えたOC(ジョー・ブレディ、現カロライナパンサーズOC)とDC(デイヴ・アランダ、現ベイラー大監督)が去ったこともチーム力の低下につながると予想はされていました。しかしまさかホームでの開幕戦でミシシッピ州立大に敗れるとは思いもよりませんでした。昨年の出来が「一発屋」的なものではなかったと証明するにはエド・オルジェロン(Ed Orgeron)監督の手腕にかかっています。

フロリダ州立大

今季から名門復活を託されてチームを率いるのは昨年までメンフィス大で指揮を執っていたマイク・ノーヴェル(Mike Norvell)監督。しかし蓋を開けてみれば攻守ともにパンチ力のまったくない平凡なチームになっておりファンらをがっかりさせました。ノーヴェル監督自身がコロナに感染してしまい先週のマイアミ大戦で陣頭指揮を取れなかったのは痛かったとはいえ、彼がいてもいなくても結果は変わらなかったでしょう。このままだとノーヴェル監督は1年目にして早くも不要論の批判を受けかねません。

カンザス大

当然といえば当然の結果なのかもしれませが、万年弱小のカンザス大はここまでまだ勝ち星なし。初戦で格下コースタルカロライナ大に敗れれば2戦目のベイラー大戦では手も足も出ず。かつてルイジアナ州立大を率いてナショナルチャピオンにまでたどり着いたことのあるレス・マイルズ(Les Miles)監督ならこのチームを何とかしてくれるのではないかという淡い期待を持っていましたが、あらゆる面で「パワー5」チームに見合った力を持っておらず、マイルズ監督ですらこのチームを立て直せないのかと哀れみの気持ちすら生まれてきてしまいました・・・。

===

10月4週目にはBig Tenカンファレンスが遅ればせながら参戦しますが、彼らが開幕することに全米の勢力図がどうなっているのか・・・。10月のカレッジフットボールも楽しみです。

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