最近ではカレッジ選手たちが出場機会を求めてトランスファー(転校)することが至極普通になってきました。自分が進学した大学に添い遂げるというような前時代の考えは薄れ、究極的には自分がプロ選手になるための最高の環境が整っているところでプレーしたいと考えるのが現在のメインストリームと言えます。
トランスファー全盛時代
もちろんおいそれとトランスファーするのは超カレッジ級の一握りの人材ですが、一方でそのような風潮に苦言を呈する古株衆も存在します。
確かに私自身も先発の座が奪われたからと言ってそれを奪い返すこともなく別の大学へ移ってしまうのはいかがなものか、と考えてしまう人間の1人ですが、一方でプロでやりたいと願い、その可能性が少しでもある選手ならば、どんな手を使ってもその可能性を膨らませたいと考えることでしょう。
誰かのバックアップで4年間過ごすぐらいならばレベルを下げてでも先発選手として出場した方が経験値も上がりますし、世間からの注目度も増すと考えるのは自然です。
ならば現代のようなトランスファーが簡単に行われてしまう風潮も受け入れなければならないでしょうね。
ただ、移籍していくのは何も選手ばかりではありません。
常習化する監督の移籍
カレッジチームの監督も、昔と違って同じチームに何十年も在籍することは稀になってきました。かつての名将と言われる人たちは皆その大学で長きに渡り指導を続けてきました。それがいいか悪いかは別として、そのような流れはチームの色を作ることにもなりますし、成功し続けている限り、それはリクルーティングでも威力を発揮します。
例えばここ20年近くで引退した中では、ペンシルバニア州立大のジョー・パターノ(Joe Paterno)氏、フロリダ州立大のボビー・バウデン(Bobby Bowden)氏、バージニア工科大のフランク・ビーマー(Frank Beamer)氏、カンザス州立大のビル・シュナイダー(Bill Snyder)氏、ブリガムヤング大のラヴェル・エドワーズ(LaVell Edwards)氏などは30年以上同じチームを率いていたという名称ばかりです。
現在、現役コーチで最長記録なのはアイオワ大のカーク・フェレンツ(Kirk Ferentz)監督で2022年度シーズンで24年目を迎えます。
勝てないとすぐに監督を入れ替えてしまう大学側、そして自分のステップアップのために大学を鞍替えするコーチ、その両方の面でコーチの入れ替わりも激しいのがカレッジフットボール界なのです。
バイアウト費
ところで、監督を契約期間内に解雇したり、また監督が契約期間内に他の大学へ移籍した場合には違約費が発生します。これをバイアウト(Buyout)費というのですが、契約時に設定されるバイアウト費は年々増加しています。
監督の代理人であるエージェントとしては、契約途中で解雇された時のためにバイアウト費が多くクライアント(=監督)に入ってくるようにしたいところですし、また大学側としては監督が契約途中で去ってしまうことを阻止するためにそう言ったケースのバイアウト費を高く見積もる傾向があります。
このバランスは非常に重要であり、かつ難しいところです。高くバイアウト費を設定してしまい、蓋を開けてみればその監督が全く試合に勝てなかった場合に途中で解雇するためには多額のバイアウト費を支払わなければならなくなります。この費用はデッドマネーとも言われ、以前の記事でもその規模について紹介しましたが、有能な監督ならばなるべく囲っておきたいと思うためにこのバイアウト費は高騰しているのが現状です。
ミシガン大ハーボー監督のバイアウト費
そんな中、今オフに移籍するかしないかで騒がせた人物がいます。ミシガン大のジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督です。
ハーボー監督はミシガン大OBとして2015年に母校に凱旋。名門復活を期待されるもなかなか結果が出ませんでしたが、昨年度遂に開花。宿敵オハイオ州立大を倒し、Big Tenカンファレンス優勝決定戦でもアイオワ大を倒して1997年以来のカンファレンスタイトル奪取。悲願だったCFP(カレッジ符ットボールプレーオフ)にも進出を果たし、ハーボー政権下で最高のシーズンとなりました。
そんな中、ハーボー監督がNFLに戻りたがっているという噂が噴出。元々サンフランシスコ49ersで指揮をとりスーパーボウルにも出場したことのある指導者。ハーボー監督の去就には毎年注目が集まっていましたが、ミシガン大との契約最終年だった昨年度にはいよいよハーボー監督が動くのではないかと言われていました。
実際彼はミネソタヴァイキングスと面談も行っており、ミシガン大もいよいよハーボー監督と袂を分たなければならなくなるかと思ったところでしたが、ハーボー監督は結局ミシガン大に残留を決定し、2026年シーズンまでの契約更新となりました。
ただ、ハーボー監督がいずれまたミシガン大を去ってしまうのではないかという危惧は当然大学側も持っていたことでしょう。そこで新たに契約更新した際にミシガン大側はハーボー監督と新たなバイアウト費についても合意に至っていたようです。それが以下のもの。
Harbaugh contract buyout pic.twitter.com/t8QCWrgtwK
— angelique (@chengelis) February 17, 2022
簡単にいうと2022年度シーズン内にチームを去ることになった場合、ハーボー監督はバイアウト費としてミシガン大に300万ドル(1ドル100円計算で約3億円)を支払わなければならないというもの。そして年が進むにつれてバイアウト費の額は減っていくわけです。
バイアウト費に3億円とは物凄い額ですよね。ミシガン大としては「もしこんなに早期に去ってしまうならこれだけの額を支払ってもらいますよ」というメッセージな訳です。
ただ仮にハーボー監督がNFLに本当に戻ることになった場合、おそらくそのNFLチームがこのバイアウト費を肩代わりしてくれることでしょうから、ハーボー監督としてはそれがクサビになるとは思えませんが、少なくとも大学側としては、どうせ監督を失うならばなるべく多くのバイアウト費を剥ぎ取ってやろう、という意志も見え隠れしていると言えそうです。
何にしても金がかかるカレッジフットボール。監督のクビを切るのも、監督を失うのにも金がかかるというわけです。
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【記事更新しました】
— Any Given Saturday (@ags_football1) May 28, 2022
契約途中に監督が解雇されたり監督がチームを去ってしまうと違約金としてバイアウト費が発生しますが、このバイアウト費はは高騰するばかり。そんな中ミシガン大のジム・ハーボー監督のバイアウト費も・・・。
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