シトラスボウルプレビュー

シトラスボウルプレビュー

シトラスボウル

#14 ミシガン大 vs #13 アラバマ大
1月1日午後1時(日本時間1月2日午前3時分)キックオフ
キャンピングワールドスタジアム(フロリダ州オーランド市)

ニューイヤーズ6」ボウル以外のプレビュー記事は時間の関係上書くことが出来ずにここまで来ましたが、このシトラスボウルは流石に注目したいマッチアップです。なぜならばこの試合に出場するのがアラバマ大ミシガン大というカレッジフットボール界でも有数の名門校だからです。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

アラバマ大とミシガン大はそれぞれ歴史が長く、この2つのチームのこれまでの全試合数を足せば2500試合を軽く超えます。そして歴代勝利数でも現時点(2019年12月31日現在)でミシガン大がFBS(フットボールボウルサブディビジョン)で1位(936勝)、アラバマ大が2位(929勝)となっておりまさにカレッジフットボール界を代表する2チームが激突するのです。

しかし両校とも長いことカレッジフットボール界に存在し続ける割に実は今まで彼らは4度しか対戦したことがなく今回で5度目の顔合わせという意外な事実もあります。一番最近では2012年の開幕戦(41対14でアラバマ大の勝利)がありますが、そのもう一つ前の2000年のオレンジボウルでの対戦をかくいうこの筆者は生で観戦しました。この試合はオーバータイムにもつれ込むもアラバマ大キッカーがPATを外して負ける(35対34)という劇的な試合でした。ちなみにこの時のミシガン大のQBは現ニューイングランドペイトリオッツトム・ブレディ(Tom Brady)でした。

アラバマ大

2014年にカレッジフットボールプレーオフ(CFP)が導入されて以来5年連続でプレーオフに進出してきたアラバマ大ですが、今年は御存知の通りルイジアナ州立大アーバン大に負けて2敗としプレーオフレースから脱落。CFPランキングも13位ということでここ10年間の勢力図を考えると現状のアラバマ大を見るのは非常に奇妙な感じです。しかもCFPに出られないばかりか「ニューイヤーズ6」のどのボウルゲームにも出場できず、CFP以外のボウルゲームに出場するのは2010年度シーズン以来です。この時の試合は今回出場するシトラスボウルの前身であるキャピタルワンボウルでした。

ですからおそらくCFPゲームを含む「ニューイヤーズ6」ボウルに出場することが常習化していた彼らにとってそれ以外のボウルゲームに出る、そしてそれに向けて準備を行うことは新境地であるともいえます。

アラバマ大オフェンスはシーズン後半にエースQBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)が股大腿関節の脱臼という大怪我を負い戦線離脱。このことがアラバマ大失速の原因ともいえますが、彼に代わって登場したのが2年生のマック・ジョーンズ(Mac Jones)。彼はここまで1176ヤードに11TD(3INT)という数字を残してきました。彼にとって大一番となったアーバン大戦ではアウェーながら335パスヤードに4TDという数字を残した反面、2つのINTパスも犯しており(そのうち1つはピックシックス)タガヴァイロアのレベルには到底届くものではありません。

しかし彼の周りには全米でも1、2を争うWR陣が控えています。昨年のビレントニコフ賞受賞選手であるジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy)、今年オールアメリカンに選出されたデヴォンタ・スミス(DeVonta Smith)、次期ドラフトで注目されるヘンリー・ラグス(Henry Ruggs III)、そしてアーバン大戦で4TDという鬼神のごとしパフォーマンスを見せた2年生のジェイレン・ワドル(Jaylen Waddle)。このユニットだけ見てもCFPという大舞台で彼らの活躍が見れなかったのが残念でなりません。ジョーンズは自分がヒーローになるのではなく、彼の回りにいるスーパーWR陣たちに仕事をさせるようなプレーが求められます。

ただ、アラバマ大がタガヴァイロアを失ったのは確かに痛手でしたが彼らが今年プレーオフに進めなかった真の理由はディフェンス陣の苦戦でした。これまでならランディフェンスで相手に許したヤードが二桁だったのが普通でしたが今年は1試合平均135ヤード(全米34位)と落ち込みました。それこそが今年のアラバマ大、とくにフロントセブンの戦力ダウンを物語っています。LBディラン・モーゼス(Dylan Moses)をプレシーズンに怪我で失ったのは大きな痛手でしたが、それだけでなく全体的にその前の年に抜けた穴を埋められていない感は拭えませんでした。

この試合に関して言えばCBトレヴォン・ディグス(Trevon Diggs)とLBテレル・ルイス(Terrell Lewis)がNFLドラフトを控えて出場を差し控えることを既に言明しておりさらなる守備力低下が心配されますが、一方でこれまでのリクルーティングのお陰で選手層は厚いはず。来年以降先発の座を奪いたい飢えた若獅子たちがステップアップすることが必要となります。


ミシガン大

一方のミシガン大ですが今年は開幕前からいよいよBig Tenカンファレンスの雄となると期待されていましたが、ウィスコンシン大ペンシルバニア州立大オハイオ州立大に破れカンファレンスタイトルどころか地区優勝も果たせず、永遠のライバル・オハイオ州立大には8連敗となってしまいました。

ミシガン大のQBシェイ・パターソン(Shea Patterson)は実はアラバマ大と対峙するのは初めてではありません。というのも彼は元々アラバマ大と同じSEC西地区所属のミシシッピ大でプレーしていたからです。2017年に対戦したその時は66対3と大敗しましたが、その時敗れたチームとはまったく違うもパターソン自身も成長しており彼としては是非ともリベンジを果たしたいところでしょう。

ミシガン大のオフェンスは今年からジョシュ・ガティス(Josh Gattis)氏に指揮されていますが、何を隠そうガティス氏は昨年までアラバマ大のコーチングスタッフでした。ミシガン大の今シーズンのオフェンスはガティス氏の下で激変したということはありませんでしたが、こと古巣のアラバマ大と対戦するとあれば多少のアドバンテージがあってもおかしくはありません。もっともそれは逆も同じなのですが。

とはいえペンシルバニア州立大との敗戦ゲームでは結果的に負けはしたもののその試合の後半に何かのスイッチが入ったようにギアを上げてきたのも事実。それ以来ミシガン大は平均38得点という数字を残しており、オハイオ州立大にはしてやられたものの今後にある程度の季を兎を見いだせるほどのものには仕上がってきているように思えます。

ただOL陣からはD.J.デイル(D.J. Dale)とラブライアン・レイ(LaBryan Ray)がこの試合に出場しないことが分かっており、パターソンをアラバマ大のパスラッシュから守れるか・・・。

また前述の通りアラバマ大ランディフェンスはいつもよりも苦戦していますが、パスディフェンスは全米9位(SECでは1位)と強固なセカンダリーが揃っており、ディグスが欠場するとしても一筋縄ではいかないでしょう。ミシガン大のスターWRドノヴァン・ピープル・ジョーンズ(Donovan Peoples-Jones)やニコ・コリンズ(Nico Collins)、更にはTEショーン・マッキオン(Sean McKeon)らにパターソンがいかに効果的に球をさばけるかに注目したいです。

さらにはアラバマ大のフロントセブンが手薄であることを考えればRBハッサン・ハスキンズ(Hassan Haskins)、ザック・シャーボネット(Zach Charbonnet)の双頭ラッシャーの活躍も求められそうです。

そしてディフェンス陣ですがディフェンシブコーディネーターのドン・ブラウン(Don Brown)氏率いるアグレッシブなユニットは健在。トータルディフェンスは全米7位ということで数字の上ではアラバマ大が対戦してきたどのチームよりも優れた守備力を持ったチームだといえます。しかしオハイオ州立大戦では313ヤードもパスで奪われ、更にランでは264ヤードも相手に稼がれるなど完全に丸裸にされました。もしオハイオ州立大戦でのミシガン大の姿が真の姿だとしたらこのシトラスボウルは長丁場になりそうです。

総評

アラバマ大にしてもミシガン大にしても名門故にいつのときでも目指すものは全米王者であり周りはそれを常に求めるものです。アラバマ大は過去10年間で5度ものナショナルタイトルを獲得していますから、ニック・セイバン(Nick Saban)監督は今回シトラスボウルに出場する事になってもファンたちが彼にやんや言うこともないでしょう。しかしミシガン大のジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督としては「優勝請負人」として母校に凱旋するも過去5年間でいまだ無冠。これまでハーボー監督の去就に触れることは「聖域」とされてきましたが、いかにカリスマ性を持つハーボー監督でもそろそろファンたちはある程度の形を見ないと我慢も限界に達してしまうでしょう。

そういった意味では現在9勝3敗のミシガン大はこのアラバマ大戦に勝ち10勝目を上げて勝利数を二桁に乗せることは見栄えだけでなく今後のリクルーティングにおいても非常に重要になってくるはずです。特にアラバマ大を倒したとなればそれなりの達成感を持って今シーズンの幕を閉じることができるでしょうし。

またアラバマ大も今年CFP連続出場記録が切れたことでいよいよアラバマ大のダイナスティーに陰りが見えてきたという声が多く聞こえますから、それを払拭するためにもこの試合に勝ってアラバマ大はここにありというところを世間に示したいところ。また勝てばおそらくファイナルAPランキングで10位以内を確保することもできるでしょうし。

はたしてこの名門対名門の豪華なマッチアップの軍配はどちらに?

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