かつてオレゴン大をナショナルタイトルゲームに牽引するなど短期間でチームを全米の表舞台へ押し上げたチップ・ケリー(Chip Kelly)監督。超高速オフェンス、謎のサインボード(笑)でその存在を確固たるしたケリー監督はオレゴン大の潤沢な資金源にも後押しされリクルーティングでも大成功。2009年から所属するPac-12カンファレンス3連覇。BCSボウルにも4年連続出場(ローズ2回、BCSタイトルゲーム、フィエスタ)を果たすなどまさに押しも押されぬ監督になったのでした。
そんな手腕を見込まれて2013年にはプロ入りを果たしフィラデルフィアイーグルスの新監督に就任。初年度こそプレーオフ進出を果たしますが彼のフィラデルフィアでのキャリアは選手との不協和音が響き3年という短年で幕を閉じます。解雇された翌年にはサンフランシスコ49ersがケリー監督にセカンドチャンスを与えるという驚きの起用を見せますが、2勝14敗と惨敗してたったの1年でお払い箱に・・・。
そんなケリー監督がUCLAの監督としてカレッジフットボールに帰ってきたのが昨年。カリフォルニア大の公立大学として監督に大金を払えないUCLAでしたが、ケリー監督という著名な人物を呼び寄せたことはUCLAファンを大いに興奮させました。
しかし初年度の2018年度は3勝9敗と1971年に2勝7敗1分けとした以来の惨敗。そして今年も開幕後3連敗し、ワシントン州立大との点取合戦を制する金星を挙げたもののここまで1勝5敗。ケリー監督の2シーズンのトータルが4勝14敗ということでかなり厳しいことになっています。そしてもちろんファンたちの落胆度は想像に難くないです。
苦戦が続くUCLAのケリー監督
そんなケリー監督にがっかりさせられたファンの一人がなかなかおもしろい、大胆な行動に出ました。
アメリカには「クレイグスリスト(Craigslist)」というクラシファイドサイトがあります。ここでは売りたいものを掲載してそれを見つけた人が買うということが可能で、結構なんでも売られたりしています。
そして今回あるUCLAファンがチップ・ケリー監督をこのクレイグスリストで「売り」に出したのです。
「中古のチップ・ケリー、故障しているので900万ドルで売ります」となっています。概要欄には「このアンティーク品は手詰まりなフットボールチームへのクリスプレゼントにはある程度の価値があるかもしれません。が、修復不可能な商品であるため部品のみの販売となります。」というひどい言われようです。
900万ドルというのはケリー監督解雇時に発生すると言われているバイアウト費(違約金)です。またかつてオレゴン大で一世を風靡したものの、彼がカレッジ界を離れている間に他のチームがケリー氏の手法を取り入れ更にそれが進化したため、UCLAでのケリー監督のシステムにはなんの新しさもないことへの皮肉もこの説明文には込められています。
UCLAはあと2敗で負け越しが確定となってしまいます。結果が出ないからと言って2年で首を切ってしまうのはいかがなものかと思いますし、せめてケリー監督がリクルートしている選手たちがチームに出揃うまでは時間的猶予を与えてあげてほしいですが、あまりにもチームの方向性が定まらないとなるとケリー監督のUCLAでの(もしくはカレッジフットボール界での)居場所はなくなってしまうかもしれません。ただオレゴン大でのケリー監督のオフェンスは観る者をたいへん楽しませてくれましたから、UCLAが強くなる姿をぜひ見たいものです。