昨年惜しくも2連覇をクレムソン大に阻まれたアラバマ大。しかもスコアは44対16とまさに完敗で、これまで帝国を築いてきたアラバマ大の先行きを不安にさせかねない敗退振りを見せてしまいました。それはクレムソン大の新たな王朝の始まりすら匂わせるくらい・・・。
関連記事2018年度CFPナショナルチャンピオンシップゲームレビューしかしだからといってニック・セイバン(Nick Saban)監督率いるアラバマ大の時代は終わってしまうということでしょうか?
それは否!
確かに「栄枯盛衰」なんて言葉もありますから、この10年ぐらい続くアラバマ大のダイナスティーも永遠に続くこともないでしょう。昨年度のナショナルタイトルゲームはまさにクレムソン大が一枚(もしくはそれ以上)でしたが、しかしだからといってそれがアラバマ大の終焉を意味するわけではありません。
昨年のレギュラーシーズン中、最小得失点差は22点(テキサスA&M大との試合、45対23)でした。ポストシーズンではサウスイースタンカンファレンス(SEC)優勝決定戦のジョージア大との試合で大苦戦するも逆転勝ち、そしてオクラホマ大とのカレッジフットボールプレーオフ(CFP)準決勝戦では出だしから28対0という大量リードを携えこれに勝利しました。
関連記事第14週目レビュー 関連記事オレンジボウル:アラバマ大45、オクラホマ大34つまりCFPナショナルチャンピオンシップゲームまでの14試合のなかで、彼らの手を焼かせた唯一のチームはジョージア大だた1チームだったわけです。昨年の彼らの平均得点数が約48点、平均失点数は約16点ということで、これをすればクレムソン大にあんなに大量得点差で敗れたことが不思議でならないと誰もが思うでしょう。
昨年はハイズマントロフィーフロントランナーだったQBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)がQBとして多くのスクールレコードを書き替え、また3人のRBで2000ヤード超えに20TDを記録。スターWRジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy)は最優秀WR賞であるビレンティニコフ賞を獲得し、彼以外でも4人合わせて600ヤードを超えるレシーバーを擁していました。
QBトゥア・タガヴァイロア
実際タイトルゲームで対戦したクレムソン大の名ディフェンシブコーディネーター、ブレント・ヴェナブルズ(Brent Venables)氏も「私が対戦してきた中で最高のオフェンスだった。2004年のサザンカリフォルニア大よりも上回っていた」という評価を与えていたほどです。
(2004年のサザンカリフォルニア大はマット・ライナート、レジー・ブッシュなどを擁するスーパータレント軍団でした)
もちろんクレムソン大が確実にアラバマ大に肩を並べたことに二言はありませんが、それと同時にこの2チームとそれ以外の差が激しく開き始めていると見ることもできます。この2チームに誰が勝負を挑めるのか、というのも2019年度の見どころかもしれません。
アラバマ大の強みはセイバン監督率いるコーチ陣の手腕もさることながらリクルーティングの成功も大きな要因といえます。1昨年は8年ぶりにリクルーティングラインキングで1位の座から陥落(ジョージア大が王座に)。しかも7位にまで落ち込み、いよいよアラバマ大の時代も・・・なんて思わせましたが、今オフのリクルーティングランキングではちゃっかり1位を奪い返していました。彼らの「リビルドではなくリロード」という仕組みは相変わらず維持されているようです。
関連記事2019年度ナショナルサイニングデー終わって・・・それは今オフRBジョシュ・ジェイコブス(Josh Jacobs、現オークランドレイダース)、RBダミアン・ハリス(Damien Harris、現ニューイングランドペイトリオッツ)、TEアーヴ・スミス(Irv Smith Jr.、現ミネソタバイキングス)、更にはOLジョナ・ウィリアムス(Jonah Williams、シンシナティベンガルズ)などの主力選手が攻撃陣から抜けることを考えれば尚更不可欠なことです。
残留組で言えばやはり前述のタガヴァイロアが今年もスター選手としてチームを引っ張っていくでしょう。確かに彼はクレムソン大戦では精彩を欠いていました。しかしそれでも昨年若干2年生だった彼は、先発1年目にして4000ヤード以上のパスヤードに合計48つのTDを奪うパフォーマンスを見せてくれました。来るシーズンには相手ディフェンスを読む力も向上していることでしょうし、既に全米でも1、2位を争う高い精度のパサーであることを考えれば、彼が再びハイズマントロフィー候補に名を連ねることは明白です。
彼をサポートするジュディ、ヘンリー・ラグス(Henry Ruggs)、デヴォンタ・スミス(DeVonta Smith)ら有能なWR陣をすれば、彼らを止めることは容易ではありません。それこそまさにクレムソン大レベルのディフェンスが必要になってくるわけですが、中々そんなチームが存在するわけでもありません。
WRジェリー・ジュディ
ただ2019年度を迎えるにあたり不安がないわけでもありません。先に上げたウィリアムスが抜けるOL陣です。特にウィリアムスが健在であった昨年のOL陣でさえクレムソン大ディフェンス陣に手こずっていましたから、このウィリアムス、並びにロス・ピアースベーカー(Ross Pierschbacher、現ワシントンレッドスキンズ)が抜けてしまうことは痛手だといえるでしょう。とはいえ後続には5つ星並びに4つ星選手たちが控えてはいますが。
ということで昨年から幾人かの主力選手が抜けるとしてもアラバマ大オフェンスは今年も全米トップレベルのパワーを要していると言えそうですが、ディフェンス陣はどうでしょうか。
DLクインエン・ウィリアムス(Quinen Williams、現ニューヨークジェッツ)、DLアイゼア・バグス(Isaiah Buggs、現ピッツバーグ・スティーラーズ)、LBクリスチャン・ミラー(Christian Miller、現カロライナパンサーズ)、LBマック・ウィルソン(Mack Wilson、現クリーブランドブラウンズ)、Sデオンテ・トンプソン(Deionte Thompson、現アリゾナカーディナルス)という、NFL級の選手たちがチームを去ってしまいました。
しかしチームにはDLラブライアン・レイ(LaBryan Ray)、LBディラン・モーゼス(Dylan Moses)、CBパトリック・サーテイン(Patrick Surtain II)、Sゼヴィアー・マッキニー(Xavier McKinney)などの若手有能どころが健在。そしてオフェンスと同じく、リクルーティングのお陰で選手の層も厚くなっており、今年こそはと思っている選手も山ほどいるに違いありません。
Sゼヴィアー・マッキニー
昨年度クレムソン大に優勝を阻まれたこと・・・しかもそれが完敗だったということは選手やコーチたちにとってはこれ以上ない挫折感であったことでしょう。しかしそれは同時に今季に向けての最大のモチベーションであるに違いありません。
モチベーション、選手のタレントの質、トップレベルのコーチ陣。この3つを携えたアラバマ大は今年も優勝争いに絡んでくることは容易に想像ができます。当然アラバマ大は猛者ぞろいのSECを勝ち抜かなければなりませんが、彼らの本当に目指す敵はディフェンディングチャンピオンであり、最大の倒すべき敵であるクレムソン大であります。
今年もCFPでのアラバマ大対クレムソン大の「第5ラウンド」が拝めるでしょうか?