2018年度CFPナショナルチャンピオンシップゲームプレビュー⑥【総括】



いよいよ今年度のカレッジフットボールの頂上対決、アラバマ大対クレムソン大の試合があと数時間に迫りました。この試合のプレビュー記事を数個掲載してきましたが、それらを総括した「Final Thoughts」をここに紹介してこの大一番の観戦へ挑みたいと思います。


ベストライバリー?

プレビュー記事でも紹介しましたが、この2チームは今夜で実に4年連続の対戦となります。その内3度はナショナルタイトルゲーム。「またこの2チームか!」という半ば食傷気味のコメントも聞こえてきそうですが、こうして同じチームがこの大舞台で毎年対戦する・・・。これはもはや「ライバリー」の域に達していると言っても過言ではありません。

ライバリーとは宿命関係の事を言いますが、有名なところで言えばミシガン大オハイオ州立大があります。その歴史からこの関係性がカレッジフットボール界で最も注目されるライバリーという声は多いですが、一方で最近の対戦成績を見てみると2000年以来15勝3敗でオハイオ州立大が圧倒的にミシガン大をリードしています。いくら名のあるライバリーだからと言ってここまで一方のチームが相手を駆逐しているとライバリーという言葉が霞んでしまいます。

その点このアラバマ大とクレムソン大はお互いがナショナルタイトルを賭けて4年連続戦っているわけで、その試合のレベルは必然的に高いものになります。過去3戦でアラバマ大が2勝、クレムソン大が1勝ということでどちらかが一方的に相手を叩きのめすという風になっているわけでもありません。

最強で何が悪い?

今年で第4ラウンド目となるアラバマ大対クレムソン大ですが、先程も書いたとおりこの対戦カードを見飽きたと言う人も結構多いです。この2校が現時点でカレッジフットボール界の異次元に位置することは分かっていたとしても、カジュアルなファンが同じマッチアップを見飽きることもわからないことはありません。そんなことからアラバマ大とクレムソン大が強すぎることがかえってカレッジフットボール界にとってはマイナスだ、という人も存在します。それはアメリカの大学女子バスケットボールでコネチカット大があまりにも強すぎて試合にならないといい、大学女子バスケ界にとっては歓迎し難い現象だというのと同じ意見です。

しかしそんな声にアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督とクレムソン大のダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督は真っ向から反発しています。ふたりとも「全米最強を目指してチームづくりをし、その結果我々が雌雄を決する事になること、強くなりすぎることを少しも悪いことだとは思わないし、誰に謝罪することもない」と話しています。

確かに毎日同じものを食べていると好きだったものも嫌いになってしまうということはあるでしょう。しかし何年か後になって今の状況を振り返った時、「あのときのアラバマ大とクレムソン大の死闘はすごかったなぁ」と回想する日が来るでしょう。今はとにかくこの2つの強豪チームのぶつかり合いを存分に楽しむことが一番なのではないかと思います。

そして彼ら以外のチームにも是非頑張っていただいて、同じチーム同士の対決が見飽きたと言うならば彼ら以外のチームがもっと強くなれ!と声援を送ってあげたいものです。

Xファクター

この試合のプレビュー記事の中で両チームの注目選手をご紹介しましたが、その他の選手の中で今夜ダークホース的な活躍をしそうな選手を各チームから1人ずつ選んでみます。

【関連記事】2018年度CFPナショナルチャンピオンシップゲームプレビュー③

アラバマ大:デヴォンテイ・スミス(WR)

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今年のWR陣では毎年最優秀レシーバーに贈られるビレンティニコフ賞を獲得したジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy)ばかりが取り上げられますが、アラバマ大には他にも多くの有能WRが揃っています。その中でも気になるのは2年生のデヴォンテイ・スミス(DeVonta Smith)です。彼は今年チーム5番手となる524ヤードに5TDという数字を残していますが、先日のオクラホマ大とのオレンジボウルでは6回のキャッチで104ヤードに1TDという結果を出しました。これは彼にとって今季最高の数字。この勢いに乗ってタイトル戦でも何かやってくれそうです。

ちなみに彼は昨年のジョージア大との頂上決戦のオーバータイムでQBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)から決勝のTDをキャッチした選手でもあります。

クレムソン大:ハンター・レンフロー(WR)

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2015年の最初のアラバマ大との決戦を経験している数少ない4年生の一人。レンフローは元々スポーツ奨学金(スカラシップ)なしの選手でしたが、今ではチームに無くてはならない選手となりました。1年生の時は2TDをアラバマ大から奪い、2年生時には決勝点となるTDをQBデショーン・ワトソン(Deshaun Watson、現ヒューストンテキサンズ)から受け取るなどし、アラバマ大を手こずらせた選手。そのレンフローも今年で大学キャリアが終わってしまうとあり、2年ぶりのナショナルタイトルに向けて彼の勝負強さに期待がかかります。

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展望

さて今夜の大一番、一体どういった試合になるのか・・・。

ラスベガスのオッズやエキスパートたちの予想はアラバマ大の優勝というのが大半です。両チームが現時点でのトップ2チームであることはおそらく間違いないないのでしょうが、マッチアップを見るとアラバマ大が有利だという見方が多いのです。

考えてみるとアラバマ大のQBタガヴァイロア、そしてクレムソン大のQBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)はどちらも今季初めてフルタイムの先発QBということになります。2年生のタガヴァイロアは昨年はジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)のバックアップを務めており、彼がジョージア大とのタイトル戦で途中出場してチームに逆転勝利をお膳立てしたことで彼はハーツから先発の座を奪ったという経緯があります。そして1年生のローレンスも今年はケリー・ブライアント(Kelly Bryant)のバックアップとして最初の4試合は途中出場していましたが、5試合目のシラキュース大戦には先発を言い渡され、以降彼がそのままルーキーながら非凡な才能を披露してクレムソン大のオフェンスを率いてきました。

しかしバックアップだったとは言えタガヴァイロアは既にこの大舞台を昨年度踏んでおり、そのことは何らかの形で彼にとってはプラスに働くでしょう。ローレンスは未来を約束された若きスーパースターですが、昨年まで高校生だったことに変わりはなく、この大事な試合にアラバマ大と言う彼らがこれまで対峙してきたことのない強力ディフェンスを相手にどこまで自分らしさを出していけるかは未知数です。

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昨年途中出場でチームを全米チャンプに導いたタガヴァイロア

スウィニー監督がブライアントに代えてローレンスを先発に起用するようになったのは、ブライアントではアラバマ大には勝てないと悟ったからだと言われています。それだけ彼がローレンスの才能を見込んで彼にシーズンを賭けようとした結果の決断であり、またそのことでブライアントが転校してしまったことを考えれば、ローレンスにはこの試合でスウィニー監督以下コーチ陣の大きな賭けに勝ってもらわないと困るわけです。

もしローレンスがアラバマ大の怒涛の守備にあい万が一でも負傷退場するようなことがあれば、チェイス・ブライス(Chase Brice)が代打を務めなければならないくなります。彼は上に触れたシラキュース大でローレンスが負傷退場した際に起用されなんとか敗戦を逃れましたが、アラバマ大ディフェンスとシラキュース大ディフェンスでは比べようも無いほどの力の差があります。そうなればクレムソン大には大ピンチが訪れるでしょう。

怪我がなかったとしてもクウィンエン・ウィリアムス(Quinnen Williams)やアイゼア・バグス(Isaiah Bugs)を擁する重戦車並みのパワーをもつアラバマ大DLにクレムソン大OL陣が翻弄され続ければローレンスのパスアタックの威力は激減することでしょうから、ウィリアムスがどれだけローレンスにプレッシャーをかけ続けられるかにも注目です。

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クレムソン大のスーパールーキー、トレヴァー・ローレンス

アラバマ大QBタガヴァイロアはSEC優勝決定戦のジョージア大戦で足首を痛めて退場。この怪我は手術が必要なほどのものでしたが、最先端の技術とリハビリで復帰。80%(本人談)の回復具合ながら準決勝戦のオレンジボウルではオクラホマ大相手に4TDに0INTという足首の不安を微塵も感じさせないプレーを見せました。その回復具合はタイトルゲームに向け更に上がっていることでしょうから、OL陣がクレムソン大DLのプレッシャーを防げればタガヴァイロアはこれまでどおりのハイズマン級のプレーを見せてくれるでしょう。

一つ気になるのは前日試合会場のリーバイススタジアムがあるサンタクララ市(カリフォルニア州)では雨が降ったということで、フィールドをカバーしたとは言っても現地の報道だとかなり芝のコンディションは悪いということ。足首に不安を抱えるタガヴァイロアにしてみればちょっと気になるポイントです。もっともそれは出場する全ての選手に言えることなのですが。

もし仮にタガヴァイロアが怪我をした、または不調に陥ったとしたら・・・。そんな時は心配ご無用。何と言っても彼のバックアップは前述のハーツだからです。彼はバックアップに甘んじてはいますが、昨年までの2年間は正QBとして26勝2敗という成績を持っているQBです。今年は点差が離れたときの出場に限られていましたが、モチベーションを下げずにチームに残留したことはアラバマ大ファンらから大きな敬意を表されています。そしてSECタイトル戦のジョージア大戦でタガヴァイロアが退場した時、フィールドに送り込まれたハーツは追う状況で2つのTDに絡む活躍をして、自らの存在意義を大いにアピールしていました。

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タガヴァイロアが倒れてもハーツが控えているというこの状況はまさに「鬼に金棒」といった感じ。もちろんパサー的にはタガヴァイロアに軍配が上がりそうですが、この試合の後にメリーランド大の監督に就任するオフェンシブコーディネーターのマイク・ロックスリー(Mike Locksley)の後釜に指名されている現QBコーチ、ダン・イーノス(Dan Enos)氏の指導の下で格段にパス能力が上がったハーツならば緊急時にもしっかりと対処できそうです。

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今季SEC決勝戦で救世主となったジェイレン・ハーツ

ただジョージア大戦では怪我をする前から明らかに本調子でなかったタガヴァイロアですが、それは守備の天才であるカービー・スマート(Kirby Smart)監督並びにディフェンシブコーディネーター、メル・タッカー(Mel Tucker、新コロラド大監督)氏がタガヴァイロアを撹乱させる素晴らしい布陣を敷いたからでもあります。ですからクレムソン大がアラバマ大の全米トップクラスのオフェンスを制するには何としてもタガヴァイロアを混乱させるようなスキーム、そしてクリスチャン・ウィルキンス(Christian Wilkins)、クレリン・フェレル(Clelin Ferrell)といった超カレッジ級のDL陣がタガヴァイロアを捕える必要があります。そういった意味では彼らの第3の選手であるデクスター・ローレンス(Dexter Lawrence)が薬物検査で失格したことにより前回のコットンボウルに続きこの晴れの舞台にも出場できないのは大きな損失と言えるでしょう。

もしタガヴァイロアに自由にディフェンスを読む時間を与えてしまえば、その時は彼の生まれ持った正確なパス能力と全米でもトップクラスのレシーバー陣によってクレムソン大バックフィールドは悪夢を見る事になりかねません。なんといってもアラバマ大レシーバー陣には1プレー平均17ヤード以上を記録している選手が実に5人もいるのです。この5人で合計36TDを叩き出していますから、このホットラインを食い止めなければクレムソン大は厳しくなります。

しかしそれはアラバマ大に関しても同じことです。QBレーティングが今季全米17位という、1年制としては驚異的な史上稀に見る逸材であるローレンスはその長身から放たれるクイックリリースでたとえアラバマ大ディフェンスであってもダメージを与えることは十分可能です。そして彼のメインターゲットとなる長身WRティー・ヒギンズ(Tee Higgins)ならば、その身長差を活かして比較的小柄なアラバマ大DB陣からそれなりの結果を奪えるはずです。

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期待がかかるWRティー・ヒギンズ

またアグレッシブなアラバマ大のフロントセブンの逆手を取るスクリーンパスやバブルパスなど短中距離のパスは過去のケースから見て効果を発揮しているようです。アラバマ大も強力ディフェンスとは言え最近2試合では合計62失点をしており、いかに対戦相手のオフェンスが素晴らしかったとはいえ、この点からも彼らは決して無敵というわけではないのです。

この試合はお互いのチームが14勝0敗でぶつかることになり、勝ったほうが史上初めて15勝0敗という大記録を作ることになります(NCAA全体で言えば1897年に現在アイビーリーグ所属のペンシルバニア大が15勝0敗という記録を作ったことあり)。2015年度はクレムソン大が、2016年度はアラバマ大がそれぞれ14勝0敗でタイトルゲームに臨みましたが、それぞれが潰し合ってこの大記録達成には至っていません。しかし今回はどちらが勝ってもこの新記録が達成されることになるわけです。

ちなみに今年で5回目を迎えるCFPナショナルチャンピオンシップゲームですが、実はこれまで打1シードチームは一度も優勝したことがありません。今年はアラバマ大が全米1位ですが、いったいこのジンクスが今年も当てはまることになるのでしょうか・・・。

さあ、一体どちらが全米最強の称号を手に入れるのか・・・あとは試合開始のキックオフを待つことにしましょう!!



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