総括
そんな感じで紆余曲折あった2020年度シーズンはアラバマ大の圧倒的強さをもって幕を閉じました。
開幕すら危ぶまれたシーズンでしたが、選手たち、コーチ陣、並びに多くのスタッフが膨大な時間と労力と犠牲を払って最後まで走り切ることが出来ました。
そのプロセスの中でこんな世界的パンデミックの中でスポーツをやるべきなのかという疑問やそれに関連して学生たちが大学の経営維持のために搾取されているなんていう批判も起きたものです。
スタジアムはガラガラで盛り上がりに欠け、また試合前日や当日に開催がキャセルになるかもしれないという不安要素を抱えながら最後までシーズンを乗り越えることが出来たのも選手たちがフットボールをしたいと強く願ったことも当然そこにはあったのです。
また今回はこのパンデミックの影響でNCAAや各カンファレンスの構造的欠陥が浮き彫りになりそれに関連する形で「Name/Image/Likeliness」(肖像権)を用いて選手たちがお小遣いを稼ぐとことが容認されるような風潮になったり、FBSがNCAAから独立するというアイデアが浮かび上がったり、プレーオフに参加できるチームの数を拡張するという議論が沸き起こったりしました。
後にも先にも2020年度のようなシーズンは超特異であり、願わくばもう二度とパンデミックの驚異にさらされず、選手たちは学業そしてアメフトをプレーすることだけに集中できる環境が整い、ファンたちも安全にスタジアムに足を運べる様になることを祈るばかりですが、そんな中にもヴァンダービル大の女性キッカー、サラ・フラーのような史上初の偉業や、ノートルダム大がACCに限定的ながら加入するという歴史的瞬間にも立ち会うことが出来ました。
そしてフィールド上でも数々の熱戦が繰り広げられ、特に「グループオブ5」カンファレンス群出身のシンシナティ大、コースタルカロライナ大、ルイジアナ大ラフィエット校、リバティー大などに加え無所属のブリガムヤング大が予想外の快進撃を見せてファンを楽しませてくれました。
CFPレースではアラバマ大をその他が追う展開が繰り広げられ、またプレーオフの選出に際しては6試合しか消化していなかったオハイオ州立大を進出させるべきか、また直前で敗れたノートルダム大は上位4チームに入るに値するチームなのかという議論がかわされましたが、結果的にアラバマ大とその他の力の差は歴然であり、それはオハイオ州立大とのタイトルゲームの結果にも如実に反映されました。
しかし一番心に響いたのはこのタイトルゲーム後のセイバン監督の言葉でした。というのは、新型コロナというパンデミックに対処する中で選手たちには今までになかったフットボールをプレーできることの喜びが芽生え、またチームが一丸となってゴールへと向かっていく中で絆が深まっていった、それが今回の勝因である、と述べたことでした。
コロナウイルスに感染したあとの人体に関わる長期的影響はまだ分かっていませんから、この状況下でシーズンを強行したことが良かったことなのかどうかはもう少しあとになってみないと答えは出ないでしょう。しかし一方でこの様な大変な時期に生み出せたものの大きさを考えれば、選手や関係者たちの苦労は報われたのではないでしょうか。当然負け続けてしまったチームはそう割り切れるものではないかもしれませんが(苦笑)。
どちらにしてもあとになって振り返ったとき、2020年度シーズンのカレッジフットボールは様々な意味で歴史に刻まれるシーズンとなったのでした。